世界のリーダー日本の在り方――シリア難民問題にどう立ち向かう?
文/HS政経塾4期生 窪田 真人
◆深刻化するシリア難民問題
シリア難民の受け入れをめぐるニュースが連日数多く報じられています。
シリア内戦が始まって4年半、戦乱を逃れて国内外に避難したシリア人は全国民(2240万人)の約半数以上にのぼりました。
特に最近は、難民に対する保障が充実し、経済的にも豊かなドイツを目指し、沢山の人々が移動しています。
その結果、ドイツへの入り口となっているハンガリーでは幹線道路が混乱したり、列車の運行に支障をきたすなど、多くの問題が発生しています。
こうしたシリア難民への対応に関して、それぞれの国が対応を求められています。
◆積極的な欧米諸国
欧米諸国内ではドイツ、スウェーデンといった国が積極的に対応を進めています。
ドイツは既に約10万人以上のシリア難民を受け入れており、今年だけで80万人を受け入れることを表明しています。
スウェーデンは今年7万4000人を受け入れることを表明し、更には難民認定したシリア人全員に永住権を与え、すぐに家族を呼び寄せることができるようにするといった特別な施策を行っています。
また欧州へ向かう途中に船が転覆し、トルコの海岸に漂着したシリア人男児、3歳のアイラン君の遺体写真は多くの国々に大きな衝撃を与えました。
その報道以降、受け入れに消極的だった欧米諸国でも、人道的理由から受け入れの表明が数多くなされました。
イギリスのキャメロン首相が一転してシリア難民受け入れを表明したほか、オーストラリア、ニュージーランドなど同様の声明が出されました。またアメリカにおいても、来年までに1万人のシリア難民受け入れる旨の声明が出されています。
このように欧米諸国の流れとしては、全般的に積極的な難民受け入れに動いている状況です。
◆消極的なアラブ諸国
その一方で欧州よりも文化や宗教的価値観がシリアに近い、GCC加盟6か国(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦/UAE)については、難民の受け入れに対して消極的な姿勢を見せています。
難民の絶対数が多過ぎるため、国内秩序が乱れ、経済の混乱を招く可能性がある点、またシリア難民とISISのつながりがある可能性があり、安全保障上の観点からも、これら諸国では消極的な対応がなされています。
◆日本の現状
こうした問題について、日本に対しても国際社会の一員としての対応が求められています。
国連の外務担当者より日本に対し「シリア難民400万人の受け入れ協力を要請する」というコメントが出されました。
また難民受け入れに消極的な態度を続ける日本に対し、「お金は出すが難民は受け入れない」とワシントン・ポスト、英インデペンデント紙など多くの海外メディアにおいて、批判的な記事が相次いで出されています。
実際にこれまで日本に難民申請をしたシリア人は60人で、そのうち認められたのは3人、また30人が「人道上の理由」により、長期滞在許可を得ている状況です。
昨年2014年は、ネパール、ベトナム、タイなどを中心に過去最高の合計5000件の難民申請を受け、認められたのは11件でした。
この認可された難民申請数の割合は先進国の中で最も低く、非常に難民の受け入れに厳しい態度を取っていると言えます。
◆日本はシリア難民問題にどう立ち向かう?
では日本はこのシリア難民問題にどう立ち向かい、対応するべきでしょうか。
言語の問題や、宗教的、文化的違いから受け入れ体制が不十分である、更にはISISとの繋がりが可能性として考えられ安全保障面が脅かされるなど、現段階では問題点が山積みというのが正直なところでしょう。
しかし世界のリーダー国としての立場、また外交面、特に欧米諸国との関係構築強化といった側面から見れば、やはりシリア難民の受け入れは避けるべきポイントではないと考えられます。
また今後、労働人口の減少、国家の経済力の低下が危惧される日本では移民の受け入れは避けて通ることができない道でしょう。
その1つのケースとして、今回のシリア難民の受け入れを捉えることも可能であると思います。
実際にドイツでは、難民の受け入れを経済力へと転化する試みが積極的になされ、今回のシリア難民の受け入れもそうした理由が強く働いていると言われています。
よって、日本はこのシリア難民の受け入れを、今後の移民受け入れのモデルケースとし、受け入れ体制の構築を進めることが望ましいのではないでしょうか。
まずシリア難民については受け入れを進め、世界のリーダー国としての役割を果たしていくことも検討すべきではないかと考えます。
執筆者:窪田真人