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「戦争する国」という風潮は、新しい時代の戦争を引き起こす

文/HS政経塾2期卒塾生服部まさみ

◆国会でのズレた議論

集団的自衛権の行使を柱にした安全保障関連法案の国会審議が26日から始まりました。

野党は、自衛隊の活動範囲や戦闘に巻き込まれるリスクばかりを追求し、「戦争法案だ」という声まで飛び出しました。

国会前には900人が詰めかけ、「戦争する国、絶対反対!」と抗議の声を上げました。参加者は、「再び戦争になるのでは。黙って家にいられない」と危機感をつのらせました。

同じ日に、中国政府は国防白書を発表し、海洋進出を本格化させる戦略が打ち出されました。

今回の安保法制の背景には、急激に軍備を増強してきた中国の脅威があります。

その脅威に対して、国民の生命・安全・財産を守り抜くために何が必要かを真剣に議論されなければならないはずです。

しかし、「戦闘に巻き込まれるリスクがある」「日本は戦争をする国になってはいけない」などピンぼけした議論が行われています。

「戦争」というと軍事兵器を使って、戦闘を行うことばかりをイメージしているのかもしれませんが、21世紀型の戦争は新しく変化してきています。

◆ロシアのハイブリッド戦争

例えば、ロシアがウクライナのクリミア半島に非正規軍を送り込んで制圧し、併合した手法を新しく「ハイブリッド戦争」と規定されました。

日本語で「複合型」と訳されますが、ロシアは、目標達成の為にメディアを通じたプロパガンダを使い、工作員や武器を送り込んで、静かに友好的に国論を変え、一気に非正規軍によって制圧してしまいました。

◆中国の三戦

このロシアの手法をじっと注目してみているのが中国です。

中国人民解放軍は、工作活動である「三戦」を戦略として用いることを公式に発表しています。

三戦とは、「世論戦」、「心理戦」、「法律戦」の三つのことをいいます。

世論戦は、様々なメディアを使って、国際世論を中国に有利な方向へ導いていきます。友好的な雰囲気を醸し出して、国内外の大衆の支持を生み出すことが目的です。

心理戦は、敵側の士気や国民の結束力を低下させます。外交的圧力や、噂、嘘の情報を流して、敵国内の指導者層への疑念や反感を作り出し、敵の意思決定能力を遅らせたり、撹乱させることが目的です。

法律戦とは、敵の行動を不法なものだと主張しながら、自国の行動を法律的に合法なものだと正当化することです。

例えば、琉球王国が歴代の中国王朝に対して朝貢を行う「冊封国」だった経緯を説明した上で、「琉球王国は中国の属国だった」と主張したり、「尖閣諸島の国有化は、中国の主権を侵し、世界の反ファシズム戦争の成果を否定し、国連憲章に挑戦している」などと自国の軍事行動を正当化しています。

◆進化する戦争

このようなロシアのハイブリッド戦争や中国の三戦のように、軍事力を直接行使する戦争以外に、平時からメディアを使った世論誘導や、経済的利益、外交、観光などを通じて国民がコントロールされる新しい戦争が仕掛けられる時代なのです。

知らない間に何となく世論を動かされ、指導者層の意思決定能力を奪われ、何となく現状を変えられ、最後に非正規軍によって制圧されてしまう。

しかし、相手が非正規軍であるために、一度、制圧されてしまうと、正規の軍隊を使って武力で取り戻すことが難しくなるという、まさに「戦わずして勝つ」戦法なのです。

◆日本が「普通の国」になることが戦争を抑止する

「戦争する国」、「憲法9条を守ることが平和を守ることだ」と表現する人たちは、その主張が、戦争を止めているのではなく、新しい時代の戦争に加担しているという事実を知るべきです。

米軍基地をなくしたり、憲法9条を守ることが日本の安全や世界の平和を守ることにはなりません。

中国は、軍事力を直接行使する戦争に備えるための軍備増強と並行して、自国に有利な環境を作り出す三戦を着実に実行しています。

「敵に10倍する規模をもって、戦わずし敵を屈服せしめよ」という孫子の兵法を地でいく国に対して、私たち日本に必要なのは、軍事的な能力の備えと政治的な工作に屈しない精神的な備えの両方なのです。

具体的には、速やかに集団的自衛権を始めとする安全保障関連法案を成立させること。そして、憲法改正が必要だという世論をつくっていくことが防衛力を高めます。

憲法9条を改正し、自分の国は自分で守れる体制を築き、日本が「普通の国」になることが戦争をなくす、最大の抑止力になるのです。

服部 まさみ

執筆者:服部 まさみ

HS政経塾2期卒塾生

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