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大ヒット映画「KANO」が問いかける日台関係

文/政務調査会チーフ 小鮒将人

◆台湾映画「KANO」日台で大ヒット

現在、台湾で製作された映画「KANO」が大ヒット上映中です。

「KANO」とは、戦前の台湾に所在していた「嘉義農林(かぎのうりん)」の愛称の事で、1931年(昭和6年)、近藤兵太郎監督が率いる嘉農野球部が、甲子園高校野球大会に初出場にして、見事準優勝まで勝ち上がる実話を元に製作されたものです。

この映画は、昨年2014年に地元台湾で公開。大ヒットした後に、日本でも1月下旬から公開され、現在も全国各地で上映中です。

映画「KANO」公式サイト 
http://kano1931.com/

戦前、台湾が日本の統治下にあった時代は、台湾や満州国の代表校が甲子園に出場していたのです。

「嘉農」は、元々は、台湾でも無名に近い弱小チームでしたが、松山商業の初代監督としても知られていた近藤監督の着任以来、選手たちは厳しい練習に耐え、めきめきと実力をつけて行きました。

◆「嘉農」チームには、人種差別がなかった

「嘉農」チームの特徴は、日本人だけでなく、中国人、台湾現地人の3民族混成チームである事です。これは、日本の台湾経営に人種差別的な考えがなかった事を示しています。

映画の中でも近藤監督の言葉として「3つの民族はそれぞれ特徴がある。漢人(中国人)は打撃力、蛮人(台湾現地人)は、俊足で、日本人は守備が得意。その特徴を生かしたチーム作りを行う」と語っています。

1931年には好投手・呉明捷を擁した嘉農チームは台湾代表として甲子園に初出場。快進撃を続け、決勝戦にまで進みます。

最終的には、空前絶後の3連覇を達成した中京商業に敗れたものの、はるばる台湾からやってきた球児たちの活躍に当時の日本でも「嘉農」ブームが起きたと言われています。

その後、大黒柱として活躍した呉明捷選手は、早稲田大学に進学。打者として、長嶋茂雄氏に破られるまで東京6大学記録となる7本の本塁打を記録しました。

「野球の本場」と言われた米国では、1930年代はもちろん、戦後まで白人と有色人種が同じフィールドでプレーをすることが許されなかった事と比較すると、同時期の日本において、人種差別の壁がなった事は、大いに誇りとすべき部分でしょう。

◆日本の台湾政策が成功した理由

さて、日本の植民地経営は、中国や朝鮮ではあまり評判は良くないのですが、台湾では現在でも賞賛されている部分が多くあります。

台湾は、日清戦争の勝利の後に日本の領土となりましたが、最初は現地人の抵抗もあり、武力によって鎮圧することが必要でした。

しかし一旦、日本による統治が開始されると、台湾の住民は大変な恩恵を受けることが分かりました。日本は本国の予算の中から、台湾の統治のための予算を割いて、様々な事業を通じて、結果として、下記のように台湾の近代化を進める事に成功しました。

1、治安が良くなった。
2、衛生状態がよくなった。
3、様々なインフラ整備が進んだ。
4、日本人と同様の世界最高水準の教育を受けることができた。

これは、清国時代から考えると、全く考えることができなかった事です。また、満州・朝鮮半島と異なり、コミンテルン(共産主義)の影響が少なく、政略的な謀略が入る余地も少なく、台湾の人たちは素直に日本の統治を受け入れました。

今回の映画「KANO」の中で、話す言葉は9割が日本語です。また1930年代当時、近藤監督の元で、嘉農野球部員で活躍した方数名が現在もお元気で、映画の宣伝番組に登場していますが、驚いたことに、全ての方がごく普通に日本語を語っていました。

そして、異口同音に日本統治の時代を懐かしんでいました。現在に至っても、台湾の人たちにとって日本統治の時代は、幸福だったと言えるのではないでしょうか。

現代の台湾では、中国寄りの政策を掲げる国民党馬英九政権の人気も低迷している中で、この映画の大ヒットを通じて台湾人の親日ぶりが、改めてクローズアップされた形になりました。

◆今年は、日台関係を強化する好機

さて、台湾では昨年、学生たちが中心となって中国との「サービス貿易協定」締結への反対を表明して、国会を占拠するという事件が発生しました。

学生たちにとって、このまま中国共産党政権との関係が強化される事で、自らの自由が制限されるかもしれない、また経済的にも台湾にとって利益になるのか、という大きな危機感があり、捨身の行動となったと思われます。

HRPニュースファイル「岐路に立つ台湾からの現地レポート」
http://hrp-newsfile.jp/2014/1372/

1972年の「ニクソンショック」と言われた米国と中国共産党政権との国交樹立と機を一にして、台湾は日本・米国との国交が断絶し、現在に至っています。

しかし日本にとって、台湾はシーレーンの重要な地域であり、ここの近辺が中国共産党政権の支配下に入ることは、日本にとってエネルギー危機に陥ることを意味しています。

そうした中、現在、映画「KANO」の大ヒットで、台湾の親日ムードが高まっています。日本としては、一層の日台関係の強化を進めていくべきではないでしょうか。

戦後70年という事で、中国習近平政権は、「南京大虐殺」「従軍慰安婦」のユネスコ記憶遺産登録申請などの反日キャンペーンを強めることが予想されますが、中国共産党政権に対し反対の声を挙げた台湾の若者たちは、逆に日本のような自由でかつ、繁栄を求めていく国家との連携を求めているはずです。

今年の日台関係にも大いに注目したいところです。

こぶな 将人

執筆者:こぶな 将人

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