富裕層を脅かす累進課税、努力した者が報われる国家へ!
文/幸福実現党・神奈川県本部副代表 HS政経塾第4期生 壹岐愛子
◆現代のマルクスが日本で累進課税推進を提言
『21世紀の資本』で、全世界で注目を集めているフランスの経済学者トマ・ピケティが初来日し、各所で「格差のない社会のための累進課税の強化」を提言しております。
彼の主張に対して日本でも賛否が分かれておりますが、今後、税金を国民から吸い上げたい財務省はじめとする役人官僚が、ピケティ論を錦の御旗にし、日本の富裕層に対しての累進課税をさらに加速していく危険性があります。
しかし、ピケティの御膝元であるフランスでは、2013年に最高税率75%を課税し、その後850社の企業が海外に本社移転し、ベルギーに216人が移籍しました。
結局、成長率0%台、失業率が10%を超える状況は変わらず、逆に、大量の国富が流出され、2015年年初から政策を転換せざるおえなくなっております。
◆高所得者と政府の愚かな争い
日本はどうでしょうか。
2015年1月より、所得税の累進課税は6段階から7段階制度に変更になり、新たに4000万円超える所得に対して最高税率45%、住民税とあわせると55%の税金を払う制度になりました。
最高税率55%は先進国でもトップクラスです。
日本は今、江戸時代にあった収穫の半分を年貢として納め、残りの半分を農民のものとする「五公五民」を超える重税に耐えなければならず、富裕層の財産を脅かす国家になっています。
この結果、日本の大手企業の経営陣も国外に移住する傾向にあり、シンガポール、香港、スイスをはじめとするタックスヘブンと呼ばれる租税回避地への移住が進んでおります。
富裕層は、税負担の軽い国に移住して保有する株式等を売り、売却益への課税を逃れていました。
こうした富裕層の海外移住を受けて、政府は今年の7月から富裕層の税逃れ対策として、移住する時点で「含み益」に課税する方針です。
まさに政府と富裕層との壮絶な節税バトルが行われており、優秀な人達が節税対策という国を富ませる方向ではないことに労力を使っています。
今回の制度変更は、低所得者の負担増が強い消費税を増税していくのに対して、高額所得者の税負担を強化するのが狙いですが、日本の発展にとってこの路線は正しいのでしょうか。
◆累進課税制度の問題点
ここで累進課税制度の問題点について確認します。
まず1つ目に憲法29条にある「財産権をおかしてはならない」の私有財産の自由を脅かす制度です。
近代にとって財産権とは身分的平等の保障を守る生命線です。個人の経済的自由である、私有財産を守ることが、民主主義国家の前提なのです。
2つ目に差別的税制である点です。
人によって税率が異なることは、努力する者が報われる制度とは言えません。
結果平等、格差是正のために、稼いでいる人からはお金をとってもよいという理論は、稼ぎの多い人を差別的に扱っています。「貧しい人々に分配する」「所得再分配」をお題目とする政策は社会主義的な政策に他なりません。
3つ目に民主主義の多数決の原理を悪用しております。
富裕層も低所得層も一人一票を与えられており、多数者の原理の中で、富裕層は必ず負けてしまいます。
政治家は自分達の票取りのために所得層の大半である低中所得層が喜ぶような政策を掲げ、非課税の最低レベルの幅を上げてきました。
日本では低所得者の課税率は先進国で特に低く、所得350万以下の層は殆ど所得税を払っておりません。(但し日本は所得税以外にも60種類以上の税金があり、低所得者の税負担が少ないとは一概に言えません。)
累進課税制度は多数者の専制をもたらし、結果として国家を衰退させているのです。
◆税制のフラット化を目指し、日本の国富流出を防ごう!
高度な累進課税の根底にある心理は「富裕層への嫉妬心」です。
長年、税金の「一律一割」を推奨している渡部昇一氏は、累進課税に対して「ふつうの人間関係では恥ずべき劣情を、社会正義という名で堂々と公表」していると述べております。
一律平等な課税制度は、国民の勤労意欲をかきたてるだけでなく、海外から富裕層を引き寄せることにも繋がります。
当たり前のように努力した人が報われる社会を築いていかなければ、日本の国富流出による衰退は免れないでしょう。
幸福実現党は立党以来、税制のフラット化を推進しております。
フラット化を導入し、私有財産を守り、税逃れではなく、税金を払うことを「国民としての義務」と思って誇りをもって努力する人を増やしていくことが必要なのです。
参考書籍:『税高くして国亡ぶ』渡部昇一著/出版社: ワック