エネルギー安全保障強化の要諦は「多様化」にあり
文/幸福実現党・福井県本部副代表 白川 康之
◆電気は「インフラ中のインフラ」
前回は、原発が賄ってきた電力を老朽火力発電所でカバーしていることから、電力の予備率の面において、大規模停電になる可能性がある現状は、エネルギー安全保障上、重大な問題であることを指摘しました。
【前回】エネルギー安全保障強化のための原発再稼働
http://hrp-newsfile.jp/2015/1988/
電気は「インフラ中のインフラ」です。水道、ガス、通信、交通など、私達日本国民の生活の基盤となっている各インフラストラクチャーも、電気によって管理されているからです。万が一、電力供給がストップしたならば、それらを維持できなくなるばかりではなく、防衛関連のシステムも、全面的な運用は不可能になってしまいます。
また、電力の供給が不安定になると、国内の製造業も稼働が不可能になります。特に半導体をはじめとする最先端の製造業は、またたく間に操業停止に陥ります。
工場は国外に移され、国内から雇用の場が失われていくことになります。日常、当たり前のように使っている電気ですが、安定した供給がいかに重要であるかを痛感せずにはいられません。
◆原発再稼働で電気料金は下がる
現在、日本は原発を再稼働しないために、鉱物性燃料を中心に輸入が増え続け、貿易赤字が拡大しています。しかしなぜ、為替レートが円安に動いたにもかかわらず、輸出が拡大しないのでしょうか。
現在の日本は、リーマンショック後の工場などの流出により、すでに「構造的」に貿易赤字体質になっている可能性が高いといわれています。
為替レートが円安に振れたことで、外国に流出した工場が日本国内に回帰する可能性はあるものの、現状のまま、原油や、天然ガスなどの輸入が増え続け、電気料金が値上がりしていくと、円安効果は打ち消されてしまいます。
原発を再稼働すれば確実に、電気料金は下がるのです。
◆エネルギー安全保障にとって重要なのは「多様化」
現在、我が国の発電電力量に占める火力発電の割合は88.3%にも達し、過去最高の水準になっています。
そのため、原油やLNG(液化天然ガス)の輸入が増大しているわけですが、このことは、エネルギー安全保障にとって最も危険な状況であると言わざるをえません。
何故ならば、エネルギー安全保障にとって重要なのは「多様化」にあるからです。
日本は、戦後の焼け跡から高度経済成長を経て世界に冠たる経済大国に駆け上がりました。しかし、約20年にわたった高度成長は突然、終わりを迎えます。1973年、イスラエルとアラブ諸国の戦争が勃発、原油価格が急騰したのです。オイルショックです。
安い原油を使って成長を謳歌してきた日本経済は、この直撃で年率20%超のインフレを記録し、戦後初のマイナス成長に陥ったのです。
狂乱物価といわれ、店頭からトイレットペーパーがなくなり、夜の街ではネオンが消えました。このパニックを貴重な教訓に日本は「脱石油」「脱中東」のエネルギー戦略を進め、その柱として原子力発電が位置付けられたのです。
国産電源として活用できる原発の発電比率は30%に高まり、電源の「多様化」が進んでいたのですが、東日本大震災に伴う、福島第一原発の事故により、その後全国全ての原発が止められています。
結果、発電比率において火力発電が9割弱となり、「脱中東」どころか、以前にも増して中東に依存せざるおえない状況になってしまったのです。
◆政府は主導力を示せ
エネルギー供給源やエネルギー供給国は多様化すればするほど、わが国のエネルギー安全保障は強化されます。今やれる最善の策は原発の再稼働なのです。
しかし、未だに将来の具体的な電源比率は示されていないのが現状です。将来的に「何」が起きるかわかりません。そうした非常時を想定し、エネルギー安全保障を強化するための様々な対策を打つ必要があります。
エネルギー安全保障は、政府主導で進めなければならない大切な政策でありべきです。