観光立国日本の実現を目指して
文/HS政経塾4期生 窪田真人
◆2014年訪日外国人観光客数は1200万人突破
ここ数年、銀座、新宿など都内の有名スポットに行くと、外国人観光客が多いという印象を持っている方も多いのではないでしょうか。
2003年当時の小泉政権によるビジット・ジャパンキャンペーンの開始から、2006年観光立国推進基本法の成立、2008年観光庁の設置、そして現安倍政権になってからは観光立国推進閣僚会議が中心となり、観光立国を目指した様々な政策が実行されてきています。
具体的には日本再興戦略において、2020年オリンピックには2000万人、2030年には3000万人の訪日外国人観光客を獲得するべく、訪日プロモーション、新規就航に伴う航空座席増加と航空運賃の低下、ビザ要件緩和などが進められています。
その結果、観光庁の調査によると、2014年は近隣諸国の経済成長、円安が追い風となったこともあり、外国人旅行者は史上最高の1200万人台後半に達すると言われています。
◆高まる観光立国慎重論
そんな中、観光立国政策の推進に対して、異議を唱える論調が少しずつ高まってきている印象を受けます。
そうした論調の多くは、外国人観光客のマナーの悪さ、ビザ要件緩和に伴う不法滞在者の増加の2点を主たる問題点として挙げています。
その対応として、現在外国人観光客のマナーの改善を目指し、観光庁が主体となり外国人観光客に対するマナーブックの作成、頒布による対応が進められています。
またビザ要件緩和対象国の不法滞在者数は確かに増加している傾向があり、その対策が早急に求められます。
例として2013年7月よりビザ要件が緩和されたタイについては、タイ国籍者の不法滞在者数は2013年度前年比23%増と急増しています。
現在、ビザ要件緩和対象国の国籍を持つ旅行者の入国時の審査を強化することで、不法滞在者を減らすべく対応が進められています。
◆観光立国になることで得られる大きなメリット
観光立国を目指す上でこうした問題点は実際にあり、対応を進めていかなければならない面は確かにあります。
しかしその問題点を大きく捉え過ぎることで、観光立国の推進を止めるべきではありません。
日本は観光立国を目指すことで、大きな経済効果が期待できる、民間外交を通して相互理解を高めることができるといったメリットを享受することができるためです。
特に、大きな経済効果は期待できるでしょう。
例として2009 年度に日本で支払われた経済波及効果は 27.1 兆円、雇用誘発効果が 462 万人となっており、日本において既に大きな市場として成立しています。
さらに生産年齢の急減により、他の多くの分野で内需縮小が予想される一方で、アジア諸外国の成長力の取り込みが期待できる、数少ない成長分野として、観光産業を捉えることができます。
このような潜在的な市場の大きさ、そして今後更なる広がりが期待できる点で、観光産業は重視されるべきです。
◆より力強い観光立国を目指して
では観光立国日本を実現するためには何が必要でしょうか。
最も力を入れるべきは、PR力の強化であると考えます。
世界の有名観光地を見るとドイツのロマンチック街道、フランスのロワール渓谷古城群など、観光地を点ではなく線で結んで誘客に成功している例が多く見られます。
現在日本も、観光庁の観光圏構想など地域連携の観光振興を図る動きもありますが、多くの場合、市町村や県単位で観光客の誘致を図っているため小規模であり、外国人観光客にとって認知すらされていないという状況です。
すなわち日本国内において一つ一つの観光地は大変魅力的なものであるにも関わらず、訴求したい相手にうまくPRできていないのです。
こうした問題に対して、観光庁、都道府県、そして市町村が一丸となり、日本国内の観光地を結ぶ魅力的なルートを作り、そのルート単位にてPRを行い、外国人観光客の獲得に努めていくといった政策が有効に働くはずです。
観光におけるPR力の強化を通して、必ずや観光立国日本を実現して参りましょう!
執筆者:窪田真人