このエントリーをはてなブックマークに追加

サイバー防衛に日本はどう立ち向かうのか

文/HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ

◆看過できない北朝鮮のサイバー攻撃

サイバー攻撃とテロ予告によりソニーの米子会社の新作上映が中止に追い込まれました。
(※その後、上映は行うと報道されました。)

金正恩第一書記の暗殺計画を描いた映画で、6月には、北朝鮮外務省が「無慈悲な対応を取る」との声明を出していました。

サイバー攻撃が発覚したのは11月で、個人や社内情報が盗まれ、ネット上に小出しに流出させることで脅威を増大させていきました。

その後、上映予定の映画館にテロ予告が行なわれた為、17日に上映中止が決定し、19日にFBIが北朝鮮による攻撃と認定しました。

オバマ大統領は、北朝鮮に対し対抗措置をとる方針を示し、テロ支援国家に再認定することを検討していると発表しました。

北朝鮮によるサイバー攻撃は昨年3月に韓国でも起きています。

また、09年7月4日に、北朝鮮は7発のミサイルを発射するのと同時に、ミサイルが迎撃されないように米韓の中枢部に対して、数日間に渡り、16カ国をも経由してサイバー攻撃を行っているのです。

このようなサイバー攻撃は、歴然たるテロ行為であり、決して許されるべきではなく、その責任は拉致問題などの人権侵害と同時に厳しく追及されるべきです。

◆北朝鮮のサイバー攻撃部隊は世界トップクラス

北朝鮮は、20年以上前からサイバーテロ能力を高めており、中露やイランといった協力国と手を組んで、攻撃力を強めてきました。

特に金正恩体制は、サイバー戦について重視し、12年にサイバー攻撃の専門部隊を「偵察総局」の中に新設し、1700人規模のハッカー部隊が所属しています。

その他にソフトウェア開発機関に所属するエンジニアが4200人おり、有事の際は約6000人がサイバー攻撃に動員される態勢になっています。

優秀な子どもは年間500時間の「英才教育」を受け、専門の大学で養成のための特別講義を受けた、選び抜かれた優秀な人材が訓練に参加しています。

北朝鮮のハッカー部隊は、中露や東南アジアの国々に拠点を置いて、現地のハッカーとも連携しています。海外の支援組織が北朝鮮の部隊の代わりに動くこともあるといいます。

北朝鮮のインターネット回線は中国の通信大手、中国連合通信(チャイナ・ユニコム)を経由しているため、今回のサイバー攻撃に関して、米国が中国に協力を要請したとみられています。

国境を越えたサイバー攻撃に一国だけで対応するのは無理で、国際的な協力関係を築いていく必要があります。

◆日本のサイバー防衛の現状

日本も決して他人事ではありません。日本の政府機関へのサイバー攻撃は、昨年度で580万件と前年度の5倍に増えており、約6秒に1回の割合で攻撃を受けているといいます。その9割が海外からのものです。

政府は、積極的にサイバー防衛に取り組んでおり、米国やオーストラリア、英国、NATO、シンガポールなどの国際社会と協力体制を築いています。

先月には「サイバーセキュリティ基本法」が制定され、内閣にサイバーセキュリティ戦略本部が設立されました。現行の国家安全保障会議(NSC)及び、IT総合戦略本部と緊密に連携しながら、各省庁をまとめる司令塔の役割を持った態勢が出来上がりました。

◆日本に必要な強化策

このように日本も少しずつ、防衛体制が作られていますが、深刻さを増すサイバー攻撃に、更なる強化策が求められています。 今後、日本に必要な強化策として、次の3点が考えられます。

(1)予算の見直し

米国のサイバー関連予算は13年の39億ドル(約4680億円)から14年には47億ドルに増加しています。

また、英国も10億ドル(1000億円)という予算を優先的にサイバー防衛に当てています。それに比べて日本のサイバー防衛予算は585億円(14年度)と少ないのが現状です。

(2)専門家の育成

サイバー防衛強化には、特に、専門部隊の育成がカギを握ります。いくらシステムや制度が充実していても運営する人材がいなければ意味がありません。

日本においてサイバー防衛の人材は人数として約8万人不足しているという試算があります。

米国は現行のサイバー司令部に、6200人規模の防衛・攻撃能力を持つ専門部隊を整備する計画を立てています。日本も今後、大学や企業と協力しながら専門家を集め、育成していくことが必要不可欠です。

(3)憲法9条改正

サイバー攻撃への対応は、国家安全保障上の重要な課題です。国家安全保障のためには、国際的な協力が必要であり、現行の日本国憲法では、自国を守ることも、国際社会との十分な協力体制を築いていくこともできません。

自国民の安全と国際社会の平和のためにも一日でも早く憲法改正を目指すべきです。

サイバー防衛協力も明記された日米防衛指針の改定を、国民の安全より公明党に配慮して、選挙に勝つことを理由に延期することなどあってはならないことではないでしょうか。

サイバー防衛には、国を守るために情報を管理する義務と同時に、個人の自由を担保しなければならない難しい問題があります。自由を守りながらどこまで政府が介入するべきなのかというジレンマを常に抱えています。

独裁国家がそのジレンマを嘲笑うかのように揺さぶりをかけています。しかし、この脅威に屈することなく、自由の大国を目指し、平和と繁栄を築いていくことが私たちの使命です。

服部 まさみ

執筆者:服部 まさみ

HS政経塾2期卒塾生

page top