失業対策から雇用創出へ――シュレーダー改革から学ぶ
文/HS政経塾1期卒塾生 伊藤のぞみ
◆ドイツ経済、マイナス0.2%成長の衝撃
ヨーロッパ経済を牽引していたドイツ経済の経済成長率(GDP成長率)が-0.2%であったということは、前回も触れました。
ドイツはロシアから天然ガスの37%を輸入しており、貿易の取引額は全体の12.5%を占めています。ドイツ景気停滞の第一の原因はロシアへの経済制裁です。
ただ、ドイツ国内では、もう一つ原因があるのではないかといわれています。それが、メルケル首相の経済政策です。
実は、メルケル首相の前にドイツ首相をしていた社会民主党(SPD)のゲアハルト・シュレーダーはSPDの党首でありながら失業手当の削減、労働規制の緩和、社会保障改革、法人税減税を行ない、東西ドイツ統一以降「欧州の病人」といわれたドイツ経済を復活に導きました。
しかし、失業手当の削減と社会保障の縮小を断行したため、従来のSPD支持者を失い、05年の連邦議会選挙でメルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)に僅差で破れ、政権を去りました。
◆左派色の強い大連立政権
現在、問題とされていのは昨年12月に発足した大連立政権が立案した経済政策です。
メルケル首相が率いるCDUは三ヶ月の交渉を経てキリスト教社会同盟とSPDの三党で大連立政権を成立しました。
連立政権参加したSPDは8.5ユーロ(約1200円)の法廷最低賃金の導入や、条件を満たした高齢者に対し、年金の支給開始を二年間前倒しすることを認め、シュレーダー改革とは全く別の方向に舵を切りました。
その影響が出てドイツ経済が停滞しているのではないか、という見方が広がっているため、メルケル首相もシュレーダー改革の方向に針路を戻そうとしているとも伝えられています。
◆シュレーダー改革-アジェンダ2010-の概要
それでは、再評価されつつあるシュレーダー改革「アジェンダ2010」について概要を見ていきます。
この改革の成果が現れるのが2010年頃になるという予測のもとつけられました。この「アジェンダ2010」はフォルクスワーゲンで労務担当役員をしていたペーター・ハルツを委員長とした委員会の報告をもとにつくられ、2003年から実施されました。
「アジェンダ2010」は改革の成果が出るのが2010年頃になる、ということでつけられたものです。シュレーダー元首相が最も重視したことは、「失業者の削減」です。
▼2003年に施行された政策
・失業者を派遣労働者として登録し、仕事を紹介する人材サービス機関を設置する
・起業を通じた自立プログラム
・所得税、社会保険料が部分的に免除される低賃金制度の導入
▼2004年に施行された政策
・ハローワーク機能の強化
・失業手当の受給期間を短縮
▼2005年に施行された政策
・半永久的に給付していた失業扶助と社会扶助を統合し、新しい失業給付に統合
最後にあげた失業扶助の廃止によって、ドイツの失業率が2.8%低下したと、ドイツ連邦銀行のミヒャエル・クラウゼと米シカゴ大学のハラルド・ウーリッヒ教授は論文で述べています。
さらに、面白い政策が「労働時間貯蓄制度」の導入です。これは時間外労働に関して割増賃金を払うのではなく、貯蓄のようにためておいて、仕事が暇になったときに消化する制度です。
これによって景気の動向に雇用が左右されることなく、繁忙期には労働時間を貯めておき、閑散期には貯めた労働時間を使うので、仕事がなくなったからといって解雇される心配はありません。
※会社は解雇する場合、貯蓄した労働時間に見合った割増賃金を払う必要がある。
参考『独の労働市場改革に学べ』鶴 光太郎
http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/tsuru/21.html
◆左翼思想は国を衰退させる
幸福の科学グループの大川隆法総裁の近著『国際政治を見る眼』には、「『左翼思想が流行ってくると、国が凋落する』ということを、もっと徹底的に知ったほうがよいでしょう。」(p.129)とあります。
『国際政治を見る眼――世界秩序[ワールド・オーダー]の新基準とは何か』大川隆法著
http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1307
一つの国という大きなくくりから見ると、失業者が多いということは養わなければならない人が多い、ということです。家族であっても、扶養者が2人、3人、4人であれば養うことができても、10人、20人、30人であれば苦しくなってくるでしょう。
ですから、政府としては働く意欲のある人に仕事を紹介する、新しい仕事を創ることで働いてもらい、養わなくてはいけない人を必要最低限にすることが最優先課題です。
幸いなことに、日本には勤勉の美徳が文化として根付いています。この美徳の上に空前の繁栄を実現し、世界に拡げてゆきたいと思います。