高付加価値戦略で、持続的な成長へ
文/HS政経塾3期生 瀬戸優一
◆増税の影響
本年4月に消費税が8%に増税されてから、増税後の消費動向について、セブン&アイ・ホールディングスの村田社長は駆け込み需要の反動減が前回(1997年)とあまり変わらないとした一方で、前回に比べ6月からの戻りが悪いと指摘しています。(10/2 日経新聞)
消費においては消費は心理とも言われるように、心理的な影響が大きいとされています。3%という数字は小さく見えて、消費者心理的には少なからず影響が出ていると言えるのです。
セールなどで「3%引き」などと銘打たれているだけでも、お得な感じがするものですが、行動経済学では、人間は得よりも損の方を大きく見てしまう傾向があるとされています。
つまり、増税が消費に与える影響は決して少なくないと言えるでしょう。
◆迫られる戦略の転換
そのため、2015年に行われる可能性のある消費税の再増税はさらなる消費の冷え込みにつながり、景気回復どころか大きなブレーキになってしまいかねません。
それ故に再増税は避けなければならないと言えますが、現状8%となり、すでに消費が冷え込んでしまっている以上、各企業にとっては価格戦略で勝負をしていく場合には、増税分を負担しなければならないため、消耗戦となってしまうと言えます。
こうした状況下で持続的な成長をしていくための戦略の一つとして、高付加価値戦略を挙げることができます。
そもそも、日本企業は諸外国に比べても、商品やサービスの品質に定評があり、「Made in Japan」であるということ自体がブランドになっているという面もあります。
こうした付加価値の高さ、品質の高さといった部分がこうした厳しい消費の時代を切り抜けていき、成長していくための一つの戦略であると言えるのではないでしょうか。
◆高品質米の例
今、日本の米の品質の良さが海外でも評判を得ています。
もともと品質の良い米であるだけでなく、現地に精米所を構え精米することで、日本で精米するのに比べて船便などの輸送時間を短縮でき、鮮度の高い米を提供することができるため、シンガポールに店を構える懐石料理店の料理長は、顧客から米を分けてくれないかと要望されるなどしているとのことです。(10/19 日経新聞)
こうした設備投資などは費用もかかるだけでなくリスクも伴うため、難しい判断ではありますが、結果的に成功している事例であると言えます。
また、中国の百貨店では店頭に「純日本品質 越光」というジャポニカ米が、産地は中国であるにも関わらず、2kg1500円と一般的な中国産米の2倍の価格の商品が並んでいることからも、日本のブランドの強さが伺い知れます。
これは輸出の例ではありますが、日本のブランド力の高さや高付加価値のものの需要があることを表していると言えるのではないでしょうか。
◆高価格家電の例
また、もちろん輸出だけではなく、日本国内においても高価格商品の需要を見出すことができます。ビックカメラでは、消費増税後の4月は単体ベースの売上高が約1割落ち込んだものの、6~8月では前年同期比でプラスとなっています。
天候不順などでエアコンは伸び悩んだものの高機能の冷蔵庫や洗濯機がけん引したということです。
さらには、CDよりも音の良い高品質オーディオ「ハイレゾ」の関連製品や理美容家電、タブレット、そして高画質の4Kテレビも堅調で、8月にはテレビの売上高の25%程度を占めるまでになり、特に50代以上の男性中心に売れているとのことです。(10/6 日経新聞)
こうした国内消費の状況を見ても、高付加価値のものは消費が冷え込んでも需要があることを読み取ることができます。
◆高付加価値と日本経済の成長
モノが溢れ、消費が飽和してきていると言われる昨今、必要のないものや価値が感じられないものに対する消費は落ち込み、対して必要なものや価値が感じられるものに対しては、消費意欲がまだまだ存在するとも言えるのではないでしょうか。
これ以上の消費意欲の低下を招くであろう消費税10%への増税は避ける必要があることはもちろんのこと、各企業の強みを生かした高付加価値戦略が、今後景気回復と更なる経済成長につながっていく道の一つなのではないかと思います。