自由のために闘う香港を見殺しにしてはいけない
文/兵庫県本部副代表 みなと 侑子
◆香港のデモはまだ終わっていない
9月の終わりから始まった香港のセントラルを中心としたデモは、香港の連休であった10月1・2日を盛り上がりの頂点としながら、一週間以上経った今もまだ続いています。
昼間は学生中心、夜や週末になると社会人も集まり、座り込みと抗議を続けるのです。
デモのリーダーの1人である17歳のジョシュア・ウォン君は、2年前香港に中国共産党礼賛教育が押し付けられようとした際、一人で反対運動を始めました。
仲間の集い活動を続けた結果、最終的に10万人を動員し、共産党礼賛教育を打ち返しました。現在は中国共産党から異端分子として見られています。
今年6月彼にインタビューをした際、行動・勇気の源泉を尋ねました。彼の答えは「仲間の存在」と共に、信仰深い両親から影響を受けている信仰について語ってくれました。
「クリスチャンは聖書を読んだり、祈るだけでは十分ではありません。一人ひとりが灯となり光となって行動し、この暗闇の世の中を照らす使命があると思います。」
彼は今回のデモにおいて、公務執行妨害で40時間拘束されました。これが香港市民をさらに怒らせました。一人の若者の勇気ある行動がきっかけとなり、多くの若者の心に火を灯し、今の香港があります。
日本に留学経験があり、日本語を完璧に話す23歳の社会人女性は、「私たち日本人は香港のために何ができるだろうか?」という質問に対してこう答えました。
「世界中の方からの応援は香港人の心に届いています。でもこれは中国政府の問題です。彼らが香港の声を聞かない限りどうしようもないのです。」
◆誰が中国共産党に、圧力をかけることができるか
世界の注目を香港に集めることで、中国共産党は天安門事件の時のように、無抵抗な市民を虐殺することはしにくくなります。しかし、香港市民が求めるのは、現行政長官の辞任と2017年行政長官の完全なる普通選挙です。
現行政長官は、辞任しないこと、公開討論の場を持つこと、選挙を見直すことを発表しましたが、辞任しないこと以外は先延ばしされています。
行政長官を操る中国共産党に圧力をかけることができるのは、アメリカをはじめとする数か国もしくは国際機関しかないでしょう。
しかし、中国は国連の常任理事国でありますし、アメリカはオバマ大統領・ケリー国務長官の声明を発表こそしましたが、不介入主義であることは周知の事実であります。
もちろん、香港民主派も努力はしています。民主派において精神的主柱であるマーティン・リー氏は、アメリカのバイデン副大統領に何度も面会し、香港の現状を伝え支持を訴え続けています。
また、イギリスのキャメロン首相にも面会を求めました。しかしイギリス政府は面会を断っただけでなく、イギリスは香港と中国のどちらにも肩入れしない中立であることを中国政府に伝えたといいます。
1997年まではイギリス領であった香港にとって、イギリスから受けた影響は大きいと推測します。その国に拒絶されたことを、香港市民はどのように感じているのでしょう。
◆使命成就のため、闘う香港
前述の女性は「中国の一体何が優れて世界の王になっているのか。訳が分からない。」と言います。
その言葉の奥に、どうして誰も中国共産党に対して何も言えないのか、何を恐れているのか、という声が聞こえてきます。
意外ですが、香港の民主派たちは中国からの独立を求めているのではありません。彼らが求めているのは、香港における自由と民主主義の確立です。
その理由を、民主派のマーティン・リー氏は、「香港の自由と民主主義を、中国大陸にも弘めていくためだ」と語りました。まさに、“香港の自由化から生まれる、中国の香港化”こそ、香港民主派の願いであり、大きな目から見た香港の使命なのです。
その使命成就のため、後ろ盾を何一つ持たず必死に闘っている学生たちの未来はあやふやです。いつ強制排除にあうかも分からない中、学生たちは自分たちの未来を賭けて、自分たちと未来の中国大陸の人々の自由を守るために抵抗しているのです。
香港の自由が侵され、中国共産党のいいなりとなってしまうことは、中国13億人の人々の不幸でもあります。そして、アジアの自由の弾圧の本当の始まりであることを知らなければなりません。
日本政府は、香港民主派の支持を表明し、自由と民主主義を守る宣言を行うべきですが、そのような勇気ある行動は今はまだ見られません。
しかし、それに落胆するのではなく、ジョシュア・ウォン君が言うとおり、私たち一人ひとりが小さな灯となって行動する時に必ず、この暗闇を照らす光となって、世の中を変える力となることができると信じます。