東電悪玉論を検証する
文/岐阜県本部政調会長 加納有輝彦
◆朝日新聞の化けの皮?
朝日新聞の誤報記事の撤回、謝罪に端を発し、喧々囂々たる非難が渦巻いています。
朝日新聞側は言い訳に終始し、あたり障りのないチェック体制の甘さ等に原因を求めていますが、大方の批判の論調は、朝日が日本をおとしめるために、ある事実は取り上げ、ある事実は捨象し、恣意的に事実を捻じ曲げ、捏造したのだと見ています。
とりわけ、福島第一原発吉田昌郎所長(故人)の命令に違反し、9割の所員が現場から撤退したという「吉田調書スクープ」に関しては、後に公開された「吉田調書」を精読した上で、あのような記事が書けるという事は、意図的に「日本をおとしめる」という目的なくしてあり得ないと識者は口を揃えます。
NHK経営委員の百田尚樹氏は、九州「正論」懇話会(9/20)の席上、「(朝日新聞が)『検証した結果、誤っていた』という説明は大嘘で、政府が吉田調書の公開に踏み切らなければ、絶対に黙っていた。公開されたら嘘がばれるので、慌てて謝った」との見方を示しました。
◆東電悪玉論という空気
特に、福島第一原発事故発生後、東電責任論が追及され、その他の電力会社に対しても厳しい視線が向けられることになりました。
東電悪玉論の空気が日本に醸成されていたと言っても過言ではありません。このような空気の中で、政治家からも感情的な発言もしばしば見られました。
例えば、自民党河野太郎衆議院議員は、昨年末自身のブログで「経産省によるボッタクリ」と題して、2012年から始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で、私たち消費者の電気料金に上乗せされている再エネ賦課金のうち1000億円以上が、そのまま電力会社の懐に入っている!すなわちボッタクリと批判しました。
これに関し、識者は電力事業者が私腹を肥やしているわけでもなんでもないと理論的に反論しています。
(再エネ全量固定価格買取制度の回避可能費用をめぐる迷走http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4206)
この議論の中で注目すべきは、電力会社が、原価が上昇すれば電気料金上昇につながると指摘した事に関し、河野氏は、以下のように指摘します。
例えば「トヨタが、原価が上がったから当然に自動車の販売価格が上がります、というだろうか。モノの値段が市場価格で決まっているマーケットでは、原価が上昇したからといって、当然には価格は上がらない。電力会社は、まず、水膨れしたコストを削らなくてはならない」と電力会社のさらなる経営努力を要求していることです。
◆河野太郎氏の矛盾
河野氏がこれを言うのであれば、消費増税により仕入れ価格が上昇し、原価が上昇したので小売価格を上げますという企業に対しても、消費増税も価格に転嫁せず経営努力で吸収せよ、と主張しなければ辻褄が合いません。
なぜなら、電力会社は、再生エネルギーに関しては、全量固定価格で買い取ることが法律で義務付けられており、在庫調整できる消費税より厳しい条件となっているからです。仕入れを減らすということも出来ないわけです。
消費税に関しては、政府は、「転嫁対策特別措置法」を成立させ、消費税の転嫁、すなわち値上げを推奨サポートしているのです。
消費税よりある意味強制力の強い、「再生エネルギー特別措置法」においても、電力会社に対して、原価上昇に見合った電気代値上げを推奨する立場になければ辻褄が合いません。
そこには、東電悪玉論という空気の中で、河野氏の「ボッタクリ」発言になっている面も否めないと思います。この他、河野氏は東電に対し、「東電の嫌がらせ」「東電の暴挙」という言葉を使って批判を続けています。
◆空気に支配されないための勇気
電力会社に対する一定の批判の正当性を全て否定するものではありません。しかし、東電悪玉論が支配していた中で、幸福実現党大川隆法総裁は、「東電こそ東日本大震災の最大の被害者であるとも言える」と一定の文脈の中で発言されました。
多くの優秀な人材が東電を離れていった中で、この大川総裁の言葉に支えられ、東電に踏みとどまっている方も実際に存じ上げております。
日本をおとしめることを目的とした朝日新聞が、また東電悪玉論の発信源の一つであったことを振り返れば、私たちは空気に支配されない「勇気」を持つことが大事であると認識されます。