ウイグルで死者2000人以上――真実を明らかにし、国際社会に正義を問える日本に
文/HS政経塾1期卒塾生 伊藤のぞみ
◆「2000人以上のウイグル人が中国の治安部隊に殺害された」
ラマダン(断食)明けの7月28日、ウイグル自治区のカシュガルにおいて暴動が発生しました。
事件直後、中国の政府系メディア「天山網」は漢族35人、ウイグル族2人、犯行グループ59人が死亡したと報じました。
しかし、8月5日、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長は、「少なくとも2000人以上のウイグル人が中国の治安部隊に殺害された証拠を得ている」と米政府系メディア「ラジオ自由アジア(RFA)」の放送で発言しています。
※参考;8月6日産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140806/chn14080620590011-n1.htm
ラビア・カーディル議長は、3日間程度かけて中国当局は遺体を片付けた、とも述べています。
国際ウイグル人権民主財団日本全権代表のトゥール・ムハメット氏は現地からの情報として女性や子供を含めて3000人が亡くなったと訴え、8月8日東京都港区で抗議活動を行いました。
事件が発生したカシュガルのヤルカンド県には、外国メディアの立ち入りが禁止され、中国政府に不都合な情報は完全に隠されている状況です。さらに、中国政府はこの件に関して中国版ツイッター「微博」に投稿された情報を削除しています。
政府によって情報統制がされているなか、中国系メディアの発表を信じることはできません。
◆カシュガル暴動の背景
ウイグル自治区では5年前のウルムチ暴動以降、厳戒態勢がとられています。街の至るところに監視カメラが設置され、公安と武装警察が200メートルごとに立っていたそうです。
※The Liberty web「中国・新疆ウイグル自治区の実態に迫る – 態勢のカシュガル潜入レポート」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7262
多くの人がイスラム教徒ですが、女性のスカーフの着用や、ひげを伸ばすことを禁止したり、モスクでの礼拝が制限されるなど、締め付けが強まっていました。
7月8日には、スカーフを着用している女性の取り締まりをしていた警察官が、7歳の少年を含む家族5人を射殺する事件も起きています。
2013年度の米国務省の信教の自由報告書には、中国治安部隊はテロリストと特定したウイグル族を自宅で銃撃しているという人権団体の話があります。また亡命を図ろうとしたウイグル族は投獄され、拷問が加えられているそうです。
こうした中国政府の弾圧とウイグルの文化・宗教に対する無理解が、今回の暴動につながったと考えられます。
◆日本政府は中国政府に厳重に抗議すべき
思想、信教の自由は人間にとって最も基本的な人権です。信教の自由、価値観の多様性が認められなければ、人間に許されるのは無目的に生きるだけの「家畜の自由」でしかありません。
思想、信教の自由は、人間がいかに生きるか、理想とする人生とは何か、という人間を人間たらしめるために必要な条件です。
内心の自由、信教の自由を捨て、ただ生きるために与えられた環境のなかで生きていくというのは、あまりにも人間として悲しいあり方ではないでしょうか。
現在、ヤルカンド県は中国政府の完全な統制下におかれています。もし、ラビア・カーディル議長が主張するように、わずか2日間で女性も子供も含めて2000人以上のウイグル人が犠牲になったとすれば、中東のガザ地区より遥かに問題は深刻です。
日本政府はこの問題を重要視し、ウイグル自治区で何が起こっているのか真相を究明すべきです。真実を白日のもとにさらし、正義とは何かを国際社会に問う覚悟が必要です。