中国海洋調査船が沖縄県久米島沖で活動
文/HS経塾一期生 彦川太志
◆隅々まで調査される日本の経済水域
4月23日付けの産経新聞1面で、中国の海洋調査船が沖縄県久米島沖で「過去最長」の活動を実施していることが取り上げられました。調査は潜水艦隊の活動を前提とした軍事目的のものとみられており、日本政府は再三の中止要請を出しています。
ところが中国側は2001年から日中間で運用を開始された「相互事前通報制度」を根拠に、中止要請に応じない姿勢をとっています。
日中間の「相互事前通報制度」とは、国連海洋法条約に基づき、中国の海洋調査船が自国の排他的経済水域(EEZ)内で調査活動をする場合、「純粋に科学的な調査」であることを前提として、2ヶ月前までに事前通報があれば、日本政府が活動を許可する取り決めとなっています。
◆海洋進出の軍事的意図を見抜けなかった日本政府
問題は、この中国海洋調査船の調査活動の「内容」について、「一般的な科学調査」であると中国側が説明すれば、どんな調査でも許可が出されてしまうという点にあります。中国側はまさにこの点を逆手にとって、日本側の中止要請を無視しているのです。
この点、「相互事前通報制度」創設を主導した外務省は、中国側の活動について、軍事的な意図に対して「見ないふり」をしていた可能性があります。
事実、中国による東シナ海での海洋調査がすでに問題となっていた1995年、当事の外務省アジア局長は中国の調査活動の意図について「一般的な科学調査」だと断定※しているのです。
2001年に運用が開始された「相互事前通報制度」も、このような解釈が前提にあるがために、中国の海洋調査活動を受け入れる制度となってしまっていることは明らかです。
(95年12月12日:参議院外務委員)
しかし、幸福実現党の立党以来、全国で中国政府の覇権主義的意図と、わが国の国防強化の必要性を訴え続けてきた結果、中国の海洋進出に対する日本政府・日本国民の警戒感も高まっています。
中国海軍が西太平洋での軍事演習を活発化させ、米軍に伍する外洋型海軍としての規模と能力の拡大をめざしていることは、世界的な問題となっているのです。
◆中国の海洋進出を助長させた村山・河野コンビ
ところで、東シナ海における中国の「自由な行動」を許した判断が積み重ねられていった重要な時期に、内閣で「村山・河野談話」が発表されていたことは偶然ではありません。
先ほど、外務省は中国の軍事的な意図について「見てみぬふり」をしていたと書きましたが、「日本は侵略国家であった」とする中国共産党の歴史観に迎合する内閣であればこそ、このような国難を招く制度を実施してしまったのではないでしょうか。
◆「相互事前通報」の枠組みを見直し、実効性のある領域警備を
去る4月22日、133,080筆を集めた「河野談話の白紙撤回を求める署名」の安倍首相への提出が幸福実現党によって行われましたが、河野洋平氏が外務大臣であった時期に実施された「相互事前通報制度」の見直しも、早急に行うべきであると考えます。
例えば、「相互事前通報」制度の前提として、「純粋に科学的な調査である」という条件がありますが、それ以外にも「事前に通報された区域で調査が実施されていること」等の条件があります。
中国側は過去すでに、これらの条件を破り、通告区域外での活動を実施するなどの違反行為を繰り返しています。今回の調査活動においても、海上保安庁が再三の中止要請を出していることをみると、「軍事目的ではないか」という疑いのほか、何らかの問題行為があることが想定されます。
こうした違反行為が現に行われ、軍事目的の調査が行われている可能性がある以上、日本政府は集団的自衛権の容認によって日米同盟を強化するとともに、南西諸島の防衛体制を固めた上で、「中国側に改善の意思が見られない限り、今後一切の中国側の調査要求に応じない」などの対抗手段をとるべきであると考えます。