ウクライナ情勢を日露関係前進のテコとせよ
文責:HS政経塾部長(兼)政務本部部長 幸福実現党東京第9選挙区支部長 吉井としみつ
今、世界中がロシアの動向に注目しており、ウクライナ南部のクリミア半島の行方を巡り、アメリカ・EU諸国とロシアの駆け引きが激化しています。
◆クリミア半島の情勢
ウクライナ南部のクリミア自治共和国は、16日にロシア領になるか否かを決める住民投票を行う予定です。
クリミア自治共和国の人口の58%はロシア人であることもあり、ロシアへの親和性が強く、多数の賛成によりロシアへの編入賛成することが予想されています。
ロシア側も、クリミア共和国を併合するための手続きを簡素化する法案の審議が進んでいます。
◆アメリカ・EU諸国の対応
こうした動きを牽制するために、12日に、日米欧の主要7カ国と欧州連合(EU)の首脳が、ロシアによるクリミア自治共和国の編入に向けた動きに対して、停止を求める共同声明を発表しました。
ロシア側の行動が、沈静化しない限り、ロシアに対する資産凍結や渡航禁止の制裁措置を課すことや、6月に予定されているソチでのG8首脳会議を中止に追い込むことを検討しています。
◆米欧諸国の抱えるジレンマ
しかし、米欧諸国とも、ロシアに対する経済措置に対しての足並みは揃っているとは言えません。
EU諸国は、ロシアとの経済的な結び付きも強く、ロシアへの経済制裁は自国の経済にとっても打撃を受けることになるのです。
またEU最大の経済規模を持つドイツがロシアへの経済制裁に対して慎重であることも、ロシアへの経済制裁に足並みが揃わない大きな理由と言えるでしょう。
14日にアメリカのケリー国防長官とロシアのラブロフ外相が、ロンドンで会談することになっていますが、ロシアは米欧の抱えるジレンマを踏まえて交渉すると考えられるため、妥協点を見つけられるかは依然不透明な情勢です。
◆日本はいかなる対処をするべきか
3/11のFinancial Timesには「ウクライナ情勢は、アメリカのパワーへの試しである」(Ukraine is a test case for American power)というタイトルの論説では、アメリカのロシアへの対応は、今後台頭してくる中国にどう対応するかにも関わってくることが論じられています。
つまり、ウクライナを巡る一連の動きは、一見、日本に無関係に見えるかもしれませんが、日本の安全保障を考える上でも重要で、これからの日露関係に大きく関わっています。
中国が軍事力を高めていくなか、日本がロシアとの関係を強めておくことは、日本の安全保障上、極めて重要です。
欧米諸国は、ロシア国内で同性愛の宣伝を禁止する法律への反発から、ソチ五輪の開会式に欠席しましたが、安倍首相は開会式に出席するなど、就任以来、五度のプーチン大統領との会談を通じて、信頼関係を深めています。
今年の秋もプーチン大統領は来日することが決まっており、今後良好な関係が続けば、長年の懸案である北方領土問題についても、前進する可能性もあります。
アメリカとEU諸国は、ロシアに対する制裁を議論していますが、日本はロシアへの経済制裁についての態度を明確にしていません。
◆日本に求められるしたたかさ
アメリカが先頭になって、ロシアを批判するなか、露骨なロシア擁護を日本はやりにくい状況にあるのは確かです。
ただ、だからといって、せっかく良好になっている日露関係をみすみす悪化させるわけにもいきません。
国家安全保障局の谷内局長が、ロシアのラブロフ外相と12日に会談しており、「いかなる状況でも、日ロ間ではしっかりとした対話と意見交換を持ち続けることが大切だ」(3/13読売2面)という谷内氏のコメントもあり、布石は打っているようにも見えます。
日米同盟に配慮しながら、ロシアとの結び付きを強めていく一手を捻り出さねばなりません。
積極的平和主義には、したたかさも必要なのです。