選択の自由が広がる社会保障制度を
文/HS政経塾1期生 伊藤のぞみ
◆深刻化する人手不足
高齢化が進むなか、介護サービスの担い手をいかに確保するかが社会的な問題となっています。
現在、約150万人の方が介護分野で仕事をしており、今後十数年で、さらに100万人が増えるといわれています。
2012年度の「介護実態調査」によると、離職率は17.0%。施設長をのぞく介護従事者の平均賃金は21万1900円となっており、43.3%が「仕事内容の割に賃金が低い」と回答しています。
介護従事者の賃金を引き上げるためには、介護保険料を増やさなければなりません。すでに、2000年の導入時には、平均2911円だった毎月の介護保険料が、4972円に増加しています。
重くなる保険料負担は、年金の減額以上に高齢者の方々の生活を圧迫します。
◆人手不足に対し、「徴介護制」導入を唱える人も
こういった介護事業の状況にたいして、「徴兵制」ならぬ、「徴介護制」を唱える人も出てきました。国民に対し、介護事業に従事する期間を設け、介護問題に対する意識を高めてもらおうという考えです。
この考えを提唱した古閑比佐志氏は、ドイツに留学していた1998年から2000年当時、軍役の代わりに病院や高齢者福祉施設などで働くことができる「良心的兵役拒否」という制度から、「徴介護制」の構想を考えたそうです。
※参考:日経ビジネスオンライン「『徴介護制度』が問いかけるもの
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140204/259278/?P=2&ST=smart
ただ、「例外を除く、ほぼすべての国民に、一定期間の介護ボランティアへの参加を課す」制度は、国民にさらなる負担を課し、国全体の生産性を下げることを指摘しなければなりません。
例えば、年間で5000万円を売り上げられるような営業マンが、営業の仕事をするのではなく、介護の仕事をしなければならないということになれば、本人や企業に与えるダメージは甚大です。
◆自由な社会における介護保険制度を
「徴介護制」はトータルで考えると、かえって社会の負担を増やす施策となる可能性が高いのです。
多くの人に介護について意識をもってほしいということであれば、介護保険料の納入を現金でなく、勤労で支払えるようにするということも一つの手です。
年金の受給を受けているなかで、時間はあるけれどもお金がない、という人に対して、ホームヘルパーの仕事をしてもらうことで、保険料を免除するのです。
少し、突飛なアイデアのように思えますが、実は、私たちはすでに、日々の生活のなかで、こういった選択をしています。
コンビニでお弁当を買うのか、家で作ったお弁当を持っていくのか。子供を保育園に預けるのか、会社を辞めて自分で育児をするのか。限られた時間とお金のなかで、「良い」と思う選択を、私たちは行っています。
そして、何が「良い」選択かは、その人が持つ価値観によって変わるため、政府が一律に決定できないのです。
幸福実現党は、介護や福祉について厳しいと思われていますが、それは選択の自由を守るためであり、それが個人の幸福につながると考えているからです。
今後とも、選択の自由を広げる方向で、社会保障制度について、それを解決する政策を探求し実現するために努力精進して参ります。