「海洋大国・日本」―新たな国家ビジョンと安全保障【連載第6回】
文/幸福実現党総務会長兼出版局長 矢内筆勝
《海洋国家日本の国家戦略と安全保障》
前回まで「海洋大国・日本」に眠る海洋資源、それを狙う中国の軍事力と海洋戦略、そして日本のシーレーンの重要性を述べてきました。
今回より、そのような情勢を踏まえ、日本は21世紀以降の未来に向けて、どのような国家戦略を持たねばならないのかについて、安全保障、外交、経済の観点からその方向性を論じたいと考えます。
◆アメリカが「世界の警察」を放棄する可能性
日本の防衛戦略の要が「日米同盟」であることは論を待ちません。しかし、その同盟関係が今、アメリカの国内問題によって大きく変化しつつあります。
2013年3月から始まった政府の歳出強制削減によって、アメリカは向こう10年間で3兆9000億ドル、日本円にして390兆円の歳出削減を迫られ、それに伴って国防予算は大きく削減されることになります。
その額は実に10年間で約5000億ドル(約50兆円)、一年間で日本の防衛予算(平成25年度4・68兆円)に匹敵する規模です。
これによって、アメリカは「世界の警察」であることを放棄し、アジア太平洋地域における戦力や運用も、縮小せざるを得ない事態に追い込まれているのです。
ゆえに日本は今後、自らの力で中国の軍事的脅威と対峙できる体制を構築すべく、全力を尽くさなければなりません。
◆防衛費の倍増と、自主防衛体制の確立
すなわち「自分の国は自分で守る」――「自主防衛体制」の確立です。それは明治維新以降、日本が一貫して歩んできた道でもあり、独立国家としては当然の姿勢です。
しかし、そのためにはそれ相応の防衛予算が必要で、最低でも日本は防衛予算を現在の5兆円弱から10兆円規模に「倍増」すべきであると考えます。
出来うるならば、中国が海洋戦略の完成を目指している2040年までは、「3倍」にまで増やすのが望ましいと考えています。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI) が発表した2010年の世界の主要国の軍事費のGDP比ランキングによると、日本は最低の1%に過ぎません。
サウジアラビアが、10・1%と突出していますが、イスラエル6・5%、米国4・8%、ロシア3・9%あり、韓国とインドが2・7%で並び、イギリス、トルコ、フランスが2%台で続いています。
世界のGDPに占める国防費の割合の世界平均は約2%。中国も、表向きに発表している数字ではありますが、ほぼこの数値となっています。
世界の平均である国防費のGDP比2%は、独立国が国民の生命と安全を守るための「必要最低限の経費」と、日本国民は理解しなければなりません。
いくら国民の福祉のためといって社会保障費を増やしても、国が滅んでしまっては、元も子もないのです。
そうした意味で現在中国は本気で、日本の海洋権益を奪い、あわよくば日本を属国化したいと考えています。そうした国家存亡と民族消滅の危機に直面する今、出来うるならばGDP比3%のコストは必要であろうと考えます。
次回は、日本に向けられた中国のミサイルについて明らかにし、それに対してどう対処していけばよいのかについて論じます。