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高まる集団的自衛権「行使容認」への期待――「国防強化」待ったなし!

◆内閣法制局長官に、集団的自衛権の行使容認派を登用

今月8日、次期内閣法制局長官に、集団的自衛権の行使容認に積極的な姿勢を持つ小松一郎駐仏大使を登用する人事が閣議で了承されました。

内閣を補佐する「法の番人」に、集団的自衛権の行使容認派を登用することで、従来より幅の広い防衛協力を米国等と結ぶ可能性が開けてきたと言えます。

小松氏が内閣法制局長官に登用されることで、この国の国防はどのような方向に強化されようとしているのでしょうか?

首相官邸HPで公開されている政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の議事要旨(2/8付)を読むと、政府の目指す方向性が見えてきます。

◆従来より幅広い防衛協力を提言する安保法制懇

(1)集団的自衛権の行使容認

安保法制懇の議事要旨によれば、「憲法の弾力的解釈を可能にすべき」として集団的自衛権の行使容認が提言されるだけでなく、さらに踏み込んで、自衛隊が自国民だけでなく、「他国民の生命・身体」をも守ることができるよう、政府答弁を変更すべきだという意見も飛び出ています。

さらに、米国のみならず、その他の国に対しても「集団的自衛権」を行使できるよう求める意見も出ています。

(2)対中防衛を睨んだ自衛権発動パターンの検討

また、自衛権を発動する要件として、従来の4類型(※)に加えて、(1)シーレーン防衛、(2)サイバー防衛、(3)宇宙分野といった新しい類型が提示されています。

これら3つの新類型は、そのまま中国が行っている「海洋、サイバー空間、宇宙」での軍事拡張に対応するものであることがわかります。

これらの事実から、固有名詞こそ登場しないものの、安保法制懇の提言は、中国の軍拡に対して「対中包囲網」を敷くための布石であると考えることができます。

事実、安保法制懇は提言で示す類型で自衛権を発動できるようにするためにも、集団的自衛権の行使容認を求めています。

※従来の4類型:(1)公海上の米艦防護、(2)米国向けの可能性がある弾道ミサイルの迎撃、(3)PKOなどでの駆けつけ警護、(4)海外での後方支援活動の拡大

◆頼みとなる米軍の台所事情は厳しい

このように「行使容認」の機運が盛り上がる集団的自衛権ですが、その盛り上がりと裏腹に、相手となる米軍の台所事情は極めて厳しいと言わざるを得ません。

米軍は向こう10年間で約5000億ドルの国防予算の強制削減が予定されておりますが、ヘーゲル米国防長官は、この強制削減が続いた場合、将来的に11ある空母艦隊を8から9に削減しなければならず、それは「米国の国益に反する戦略上の大きな誤り」であると指摘しました。(8/1日経「米国防長官『空母3隻減も』」)

◆米軍は東南アジアでも「引っ張りだこ」

オバマ大統領は、西太平洋の戦力を削減し、アジアに艦隊の6割を配置する戦略を打ち出していますが、だからと言って安心することはできません。

米軍のプレゼンスと抑止力に規定しているのは、日本だけではないからです。例えば、フィリピンも中国の海洋進出の脅威を前にして、米軍の抑止力強化に向けた動きを進めています。(8/8 Defense News:「Philippines To Start Talks With US on Greater Military Presence」)

◆米軍の弱体化で動き出す、中ロ海軍

さらに懸念を呼んでいるのは、中国のみならず、ロシアの動向です。

米軍が国防予算の強制削減に直面しているのと対照的に、ロシア海軍は地中海への進出を強めています。

地中海への進出に関して、ロシア紙は往時のソ連海軍のような大海軍の再建を目指すのではないとしつつも「ロシアの観点からすれば不公平な制裁を受けている国々への貨物納入を確保すること」を目的とすると語っています。(4/8 ロシアNOW:ヴェドモスチ紙「ロシア海軍を世界に再展開する意義は」)

シリア内戦において、ロシアが政府側に武器の供与を行っている事実を考慮すれば、軍事費の強制削減に伴う米海軍の弱体化によって、米国はさまざまな「挑戦」に直面することとなるはずです。

◆もう米国頼みはできない。安倍首相は憲法九条改正に踏み込め!

以上の要素をみれば、集団的自衛権の行使容認は、それ自体重要ではあっても、日本を守る「伝家の宝刀」ではないことが明らかです。

むしろ、世界中で混乱に直面する米国から、地域の安定に関わるミッションに、自衛隊の積極的関与を求められる可能性が高いと言えます。

集団的自衛権は、国防強化への一里塚にすぎません。

安倍首相は、集団的自衛権問題を片づけるのみならず、早期に「憲法九条改正」に向けて「勇気ある一歩」を進めるべきです。

終戦記念日が近づく今、国防強化を実現しようとする安倍首相には、山のような非難が積まれる可能性がありますが、ぜひ、踏みとどまって、「アジアの柱」である日本の誇りを取り戻して頂きたいと思います。(文責・幸福実現党神奈川4区支部長 彦川太志)

彦川 だいし

執筆者:彦川 だいし

HS政経塾第1期卒塾生/党政調会・外交部会

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