2013年版「防衛白書」と中国の脅威――中国の潜水艦に備えよ!
◆2013年版「防衛白書」を巡る中国の猛反発
政府は9日、2013年版「防衛白書」(以下、「白書」)をまとめました。ネット上で読むことができますので、ぜひ、ご一読をお勧め申し上げます。
⇒http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/
今年の白書の特徴は、何と言っても、中国の脅威を強調し、中国を牽制する内容となっていることが挙げられます。
白書は、中国の尖閣海域における侵略的行動について、「国際法秩序と相いれない独自の主張に基づき、力による現状変更の試みを含む高圧的とも指摘される対応を示している」と批判。
中国に国際規範の順守を強く求めるとともに、日米同盟を基軸に島嶼防衛など国防を強化していく方向性を打ち出しています。
特に、公船の領海侵入など中国の挑発活動を列挙しており、「不測の事態を招きかねない危険な行動を伴うものがあり、極めて遺憾だ」と強く非難しています。
これに対して、中国政府は11日、「(白書は)事実を無視して、これまでに輪をかけて『中国の軍事的脅威』を誇張し、中国の国防と軍建設をみだりに批判している」「中国と周辺国の関係について意図的に挑発するものだ」などと猛反発しています。(7/12 サーチナ「中国国防相が防衛白書に猛反発」)
しかし、白書に書かれている内容は「誇張」でも「挑発」でもなく、淡々とした事実の列記に過ぎません。中国政府は自らの行動こそが「周辺国を意図的に挑発している」ことを猛省すべきです。
◆中国の海洋進出の目的
白書(p.42)には、中国の海洋進出、特に日本近海における活動における目標は次の五つであることが指摘されています。
(1)中国の領土や領海を防衛するために、可能な限り遠方の海域で敵の作戦を阻止すること。
(2)台湾の独立を抑止・阻止するための軍事的能力を整備すること。
(3)中国が独自に領有を主張している島嶼周辺海域において、各種の監視活動や実力行使などにより、当該島嶼に対する他国の実効支配を弱め、自国の領有権に対する主張を強めること。
(4)海洋権益を獲得し、維持し、保護すること。
(5)自国の海上輸送路を保護すること、
すなわち、中国は自国の領土・領海防衛、台湾の独立抑止・阻止、島嶼周辺海域(尖閣諸島を含む)の実効支配の強化、海洋権益の獲得、海上輸送路の確保のために、日本近海への海洋進出を強めていると分析しています。
◆中国の潜水艦戦力の脅威
実際、中国海軍は初の空母「遼寧」を竣工するなど、着実に戦力を増強しています。
中国海軍の中でも特に増強が著しい戦力は、潜水艦戦力です。白書(p.36)によると中国海軍が保有する潜水艦は約60隻と日本の3倍以上の戦力を保有しています。
その内の4隻は「弾道ミサイル原潜」です。一部の弾道ミサイル原潜は新型の潜水艦発射弾道ミサイル「巨浪2号(JL-2)」を搭載することが可能です。
「巨浪2号」とは、大陸間弾道ミサイル「東風31号(DF-31)」の潜水艦版であり、射程は8,000km以上で、中国近海からアメリカ本土を核攻撃できる能力を持っており、米国の「核の傘」を消し去る恐れがあります。
水上艦の行動は監視できても、海中に潜む潜水艦の行動を監視することは容易ではありません。
したがって、地上の核ミサイル発射施設は破壊できても、潜水艦は破壊されずに残存する可能性が高く、中国の潜水艦は、日米にとっては大きな脅威となっています。
◆中国の潜水艦の脅威に備えよ!
ただし、潜水艦が作戦行動を行うには、海の中の環境を熟知しておく必要があります。
海の中の環境を熟知するためには、海水の採取や音波による調査など、海洋資源の探査と同じか、似た手法が使われます。
中国が頻繁に日本近海に海洋調査船を派遣する理由は、まさにここにあります。
7月2日には、尖閣諸島周辺の排他的経済水域で、中国の石油会社所属の海洋調査船「ディスカバラー2」がワイヤを海中に垂らして航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しています。(7/2 産経「尖閣EEZに海洋調査船」)
また、7月3日、沖ノ鳥島から北約85キロの日本の排他的経済水域で、中国の海洋調査船が航行しているのを、海上保安庁のジェット機が発見しています。(7/3 産経「沖ノ鳥島EEZに中国船、2004年以来の確認 海保警戒」)
中国の海洋監視船などは国有化以来、今月7日までに計51回、尖閣周辺の領海内に侵入しています。
中国は、こうした海洋調査によって、潜水艦が潜伏し、行動するための膨大なデータの蓄積を進めていることを知らなくてはなりません。
日本の海上自衛隊の対潜水艦戦能力は世界有数ですが、彼我の戦力差は現在でも3倍以上あり、このまま何もしなければ差は開く一方です。
幸福実現党は、参院選の公約として「シーレーン防衛のための潜水艦の増強」を掲げていますが、早急に日本も潜水艦を増強し、中国の潜水艦の脅威に対処する必要があります。(文責・政務調査会長 黒川白雲)