日台漁業協定調印――台湾との一層の連携強化を!
日台漁業協定の締結を歓迎する
4月10日、日本と台湾の両政府は、尖閣諸島周辺海域での漁業権をめぐる取り決め(実質的な「協定」)に調印しました。(4/11 東京「台湾 尖閣領土問題棚上げ 日本と漁業協定に調印」)
内容としては、日本の排他的経済水域(EEZ)内に、日台による「共同管理水域」を設け、その水域での台湾漁船の操業を正式に認めるものとなっています。
日本側が大幅に譲歩しただけに、これまで同海域での台湾漁船の不法操業に悩まされてきた沖縄の漁民からは早速、反対や不満の声が上がっています。
沖縄県の仲井真弘多知事は「頭越しとしか言いようがない。この海域はマグロの好漁場。日本の漁民の漁業機会が減り、漁獲高も大きく減少する」と不快感を表明しました。(4/13 日経「沖縄知事、日台漁業協定調印に不快感『頭越しの決定』」)
沖縄側の反応も心情的には理解できますし、沖縄の漁民が実損害を被るのならば、政府として何らかの補償も必要でしょう。
されど大局的な観点で見る限り、今回の日台漁業協定が我が国の外交戦略上、極めて重要な一手であったことは間違いありません。
友好国・台湾と尖閣諸島をめぐる問題
軍事大国化を進める中国との緊張が高まる中、自由と民主主義の価値観を共有し、戦略的要衝に位置する台湾との関係強化は、我が国にとって極めて重要な外交課題です。
台湾はもともと親日的な国民性で、東日本大震災の際もわずか人口2300万人の国ながら、真っ先に200億円もの義捐金を届けてくれたのは、記憶に新しいところです。
そんな日台関係ですが、最近は尖閣諸島を巡り、関係が一部ギクシャクしていたのも事実です。
特に昨年9月25日、多数の台湾漁船や抗議船が尖閣領海へ侵入して、海上デモを敢行。それを海上保安庁の巡視船が放水で阻止しようとする映像が、「台湾は親日的」というイメージを抱いていた日本国民に、少なからぬ衝撃を与えました。
そこには、台湾内でのナショナリズムの高揚に加え、若い頃から尖閣諸島の領有権を主張する「保釣運動」の熱心な活動家でもあった馬英九総統の政治スタンスが影響していたのも間違いありません。
周辺国との戦略的関係強化で、対中国包囲網を!
そんな台湾を自国に有利に取り込もうとしていたのが中国です。中国は台湾に向けて、尖閣領有問題に関する「対日共闘」を呼び掛け続けてきました。
このまま漁業問題で日台の関係がこじれた場合、最も喜ぶのは中国です。
今回の日台漁業協定は日本が一方的に譲歩したかに見えますが、台湾のメンツを立て、かつ実利を与えながら、中国と台湾の連携にくさびを打ち込むという、実は我が国とって極めて戦略的な協定だったと言えましょう。
ちなみに馬総統は尖閣の領有権を強く主張する一方で、「領土問題を棚上げし、資源の共同開発」を呼びかける「東シナ海平和イニシアチブ」を発表するなど、リアリストな面も併せ持っています。
馬総統は「今回の協定により、台湾の対日関係は新たな段階に入った」と歓迎の声明を発しましたが、実際、台湾は人口わずか2300万人ながら正規軍約30万人を擁し、軍事予算は約1兆円で欧米各国から最新兵器を調達している、侮れない「軍事大国」であります。
幸福実現党は、軍事的拡張を続ける中国に対抗し、「対中包囲網」を構築する上でも、価値観と利害が一致する周辺諸国との関係強化を訴え続けて来ました。
今回の日台漁業協定の締結を歓迎すると共に、大局的・戦略的観点から、今後とも周辺各国との一層の連携強化を訴えて参ります。
(幸福実現党総務会長 加藤文康)