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もう「引き締め」はこりごり。ユーロは「成長路線」に転換を!――キプロス金融危機から学ぶべき「緊縮路線」の限界

キプロスから再燃するユーロ金融危機

キプロスでは、ユーロ圏諸国から金融支援を受けるために、キプロス国内の2大銀行(キプロス銀行とライキ銀行)を再編することになりました。

10万ユーロ以下の預金は保護されますが、両行の大口預金者が負担強制することを条件に、EUから100億ユーロ(約1兆2300億円)の金融支援を受け、当面は、財政破綻を回避できる見通しです。(3/25 朝日「キプロス、支援合意主要2行を再編へ」)

今回のキプロスのケースは、今までのヨーロッパ内の支援策とは大きく異なる点があります。

それは、「銀行の大口預金者」と「債券保有者」が損失を被ることです。

今まで財政危機が起きたギリシャやアイルランド、ポルトガル、スペインに対しては、債券保有者や預金者に負担を強いることは、ユーロ圏の銀行からの資金逃避(キャピタルフライト)を招く懸念があり、実施されませんでした。

「資金逃避」とは、国内から海外へ資本が一斉に流出することです。

これにより、国債の買い手が急激につかなくなることによる政府の資金繰りの悪化、銀行預金の大幅な減少に伴う融資の引き締めなどを通じて、経済活動の縮小を引き起こします。

今回のキプロス支援をめぐる一連の動きにより、「銀行の資金調達コストの上昇や、預金移転の活発化、増配の後ずれにつながる可能性がある」という指摘もあり、安全な銀行を求めて、預金がキプロス国外へ流動化する可能性があります。(3/27 ロイター「キプロス支援策で欧州銀に激変も、資金逃避の懸念」)

なぜなら、株主・債券保有者・預金保険対象外の預金者が損失を負うリスクへの不安が、財政懸念のあるスペインやイタリアにも不安が広がることが予想されるからです。

キプロスでは銀行の取り付け騒ぎを回避するために、3月16日から銀行が一時的に休業となっていましたが、3月28日正午(日本時間午後7時)から営業が再開されました。

ユーロの金融危機の岐路ともなりえるため、今後のキプロスの銀行預金の動きには目が離せません。

「引き締め一辺倒」の変わらないユーロ圏の救済策

これまでも資金繰りが悪化しているユーロ圏の国々は、政府歳出の削減と増税による「緊縮財政」を条件に融資を受けていました。

今回のキプロス支援で、銀行預金者や投資家にも損失が広がったことで、「緊縮度合い」が強まったという見方ができると思います。

ユーロ圏諸国でくすぶる金融不安を見ると、そもそも現行の「緊縮政策」はユーロの金融危機は乗り越えるための正しい政策なのでしょうか?

意外と知られていないことですが、ギリシャでは、2009年10月から財政危機が起こる前の2006年から増税して財政を回復しようと試みたにも関わらず、結局、財政再建はできませんでした。

こうした事実を見ても、「引き締め一辺倒」の政策を考え直す必要がありそうです。

ユーロ圏の財政危機・救済プログラムの何が問題かというと、結局「経済のパイを増やす」ことを考えていないことです。

また、ユーロは共通通貨を導入しているため、各国の情勢に合わせた金融政策ができないことも問題を複雑にしています。

国家にとって大切な金融政策

金融政策がどれほど重要か、過去に財政破綻した独自通貨を持つ国の事例から考えてみます。

2001年末に、アルゼンチンは、対外債務返済の不履行を宣言し、財政破綻しました。その後、為替変動制に移行し、アルゼンチン・ペソ安が背景となり、輸出が景気を牽引し、アルゼンチン経済は回復軌道に乗ることができました。

しかし、残念ながらユーロ加盟国は、通貨安による景気の牽引は期待できません。

そのため、成長路線に乗せるためには、「引き締め、引き締め」で国を縛るのではなく、ユーロでも、政府による景気刺激策を容認することが必要ですが、緊縮主義からの政策転換はすぐには期待できそうにありません。そこで、期待されるのが日本です。

日本から停滞するユーロに積極的な提言を!

ユーロ圏では、金融安全網として、欧州安定機構(ESM)から債券を今年1月から発行されています。

日本は2月末まで、発行総額の10.3%に相当する8億ユーロ(約984億円)を購入し、欧州経済の安定化に向け資金面で協力しています。(3/25 時事「ESM債の購入継続へ=政府」)

それだけではありません。日本は、これまでも欧州安定機構(ESM)の前身である、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が2011年1月から発行開始した債券を継続的に購入してきました。

日本は、EU支援の実績を重ねてきています。だからこそ、日本は、もう一歩踏み込み、ユーロ圏を金融危機から回復するための意見提言をするべきではないでしょうか。

今、ユーロ圏に必要なことは、「経済成長」への政策転換です。2009年以来、幸福実現党がブレずに訴え続け、安倍政権で効果を発揮し始めている「財政出動・金融緩和・成長戦略」の成長パッケージを、ユーロ圏にも強力に提案するべきではないでしょうか。

日本の繁栄から、世界の繁栄へ。日本は世界を牽引していくリーダーたるべきです!(HS政経塾1期生・幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ)

吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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