「マイナンバー制度」は国家社会主義への道――品性無き大増税ラッシュ
今国会で共通番号「マイナンバー」制度導入へ
政府は1日、国民一人一人に番号を割り振って所得や納税実績、社会保障に関する個人情報を1つの番号で管理する共通番号「マイナンバー」制度の関連法案を閣議決定、国会に提出しました。
法案には野党の民主党も賛成の方向で調整しており、今国会で成立する公算が大きく、政府は平成28年1月の利用開始を見込んでいます。
マイナンバー制度法案の正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」案です。
法案は、地方自治体が国民全員に住民票コードを基に作成した番号を通知した上で、申請者には顔写真を載せた番号ICカード(以下マイナンバー・カード)を交付し、税の申告や年金の受給申請のほか、公的な身分証明書としても使用できるとされています。(3/1 産經「マイナンバー法案提出、今国会で成立の公算大」)
第一段階として社会保障及び税の分野において利用し(フェーズ1)、将来的に幅広い行政分野や(フェーズ2)、国民が自らの意思で同意した場合に限定して民間のサービス等に活用(フェーズ3)することを検討するとしています。(政府・与党社会保障改革検討本部「社会保障・税番号大綱」)
「マイナンバー制度」は「国家社会主義」への道
「マイナンバー制度」は、年金、労働、福祉、医療、住宅、税、災害など広範囲に及び、国による一元管理システムであり、「一つの番号で全ての生活がまかなえる」と喧伝されていますが、「個人情報の全てを国家が一元管理するための共通番号」です。
現在、各省庁や自治体等がバラバラに管理されている国民情報を「共通番号制度」の下、統一して管理し、更に銀行・金融機関や医療機関等と情報を連携することで、国家が国民の全資産や些細な金銭の出入りまで把握掌握することができるようになります。
国家が国民の全情報を管理できるようになることは「国家社会主義」への道であり、ハイエクの言う「隷属への道」です。
これまで根強い反対があり、長らく実現できなかった共通番号制度(マイナンバー制度)が、カード社会の進展と共に年々抵抗感が薄らいできた結果、法案の成立が現実のものとなりました。
しかし、国民の「マイナンバー制度」に対する理解は極めて低く、このまま、なし崩し的に制度が実施されることは非常に危険です。
「マイナンバー制度」は、第一段階としては「納税者番号制」、やがて「国民総背番号制」へと移行するよう組まれています。
日本社会においては、高利貸しをローンと称し、本質を煙に巻く傾向がありますが、このマイナンバー制も本質は「国民総背番号制」の言い換えに過ぎません。
「マイナンバー制度」につきまとうプライバシー侵害・漏えい問題
また、マイナンバー制度は、個人の収入・支出から病歴に至るまで、膨大な個人情報が一元的に管理されるため、個人情報の漏えい、流出、悪用への懸念が指摘されています。
日本の行政機関では、公務員の倫理観の低さによって、年金をはじめ、これまで、ずさんな情報管理や職員による漏えい事件が後を絶ちませんでした。
また、近年、国内外から日本の行政機関のネットワークへの不正アクセスが活発化しており、セキュリティの低さが問題になっています。
内閣府が「マイナンバー」に関する懸念を尋ねたところ、85.7%が「個人情報の漏洩」等を挙げ、政府の情報管理体制への不安が大きいことが浮き彫りになっています。(2012/1/28 産經「共通番号制度 個人情報漏洩に不安85% 内閣府世論調査」)
個人情報保護法は、「個人データの第三者への提供には原則として事前に本人の同意が必要」としていますが、9割近い国民が不安を感じ、「国民が同意していない」状態のまま、マイナンバー制度を強制的に導入することは、プライバシー権の侵害に当たる恐れが強くあります。
こうした多くの問題を抱えたまま、なし崩し的に「マイナンバー制度」を導入することは極めて危険です。
マイナンバー制度を導入するなら、消費税を減税せよ!
税制改革の議論は、国民に高い納税者(主権者)としての意識が存在していることが前提です。
しかし、全就業者に占める割合が85%(厚生労働白書2005)の日本のサラリーマンは、源泉徴収と年末調整の特殊な制度によって、納税者としての権利が奪われ、意識も奪われています。
サラリーマンは納税義務者ではありますが、納税者ではないのです。これはほとんど世界に例を見ない制度です。
納税者意識が奪われた盲目の民の、全ての収入、病歴、職歴等一元管理され100%の捕捉率でもって課税・管理される。これは非常に恐ろしいことです。
そもそも納税者番号制の議論の発端は、サラリーマンに比べて自営業者の所得の捕捉率が悪い、俗にクロヨン(給与所得者の所得捕捉率9割、自営業者6割、農林水産業従事者4割)の問題です。こうした自営業者等の所得税(法人税)を漏れなく吸い上げるために番号制を導入するという観点です。
かつて政府税調会長として活躍された故加藤寛(元千葉商科大学長)は税調会長時代このように発言されています。
「福沢諭吉先生もいっておられたことですが、そもそも人様のフトコロに手をつっこんで税金を取ろうとする考えがよろしくない。所得税とはそういう性格のもので、(中略)納税者番号制など導入すれば、税務署の手は、人々のフトコロのさらに奥深くまで突っ込まれることになります。(中略)
それでも納税者番号制だというのなら、直間比率(直接税と間接税の比率)の是正はやめて、どこまでも所得税中心でいくべきだ。二者択一であるはずなのに、彼らは両方を狙っている。(1997年9月)」(斎藤貴男著『プライバシー・クライシス』)
加藤会長(当時)は、直間比率の観点から、納税者番号制などを導入して所得税を増税するなら消費税を減税するべきであり、消費税を増税するなら所得税を減税すべきだと仰っているのです。これが「二者択一」の意味です。実際、小渕政権下での所得税減税はそうした趣旨で行われたものです。
しかし、現政権は、消費税も増税、所得税も実質増税、全部増税です。これは、もはや人間としての品性の問題です。
幸福実現党は、宗教政党として「品性ある徳ある政治家は、人様のフトコロのさらに奥まで手をつっこむような下品な真似はすべきではない。国民をこれ以上苦しめてはならない、減税せよ!」と訴えているのです。
(文責・幸福実現党 岐阜県参議院選挙区代表 加納有輝彦)