日本経済は「バブル」ではない!「バブル論」は国民をミスリードする愚論
日本経済は「バブル」なのか?
安倍政権誕生後、東京株式市場が活性化し始めたあたりから再び「バブル」という言葉がメディアに登場します。
確かに、週刊誌などでは、「株式の次は不動産だ」「勝てる銘柄はこれだ」という論調も目立ち、1980年代の「バブル経済」を二重写しにするかのような記事も散見されます。記事としてはなかなか面白いのですが、民主党から自民党へ政権交代してまだ二ヶ月弱であり、日経平均株価も1万1千円台で「バブル」だというのは時期尚早であり、違和感を覚えます。正確には、「アベノミクスへの期待感を反映し、デフレ不況下から回復中」と書くのが妥当です。
アナリストや経済学者からは、「実体の伴わない株価上昇はバブル」だとしています。
失業率やGDP成長率などの改善がなく、株式市場のみが活性化している場合は庶民には縁のない話だという論調も十分に成り立ちます。従って、投資家のみがおいしい思いをするので「バブル」だと評したいのでしょう。背景には、株価で儲ける人たちへの嫉妬もあります。ただ、投資をして成功する人は少数であり、誰もが株価上昇によって成功しているわけではないことは知るべきです。
いずれにしても、現時点の短期的な株価上昇だけを持って「バブル」だとするのは短絡すぎます。
「バブル」と聞いて日銀はどう動くか
さて、世間ではアベノミクスへの期待と不安が入り混じっている状況ですが、アベノミクス自体は不況期のマクロ経済政策としては標準的なものです。インフレ目標や日銀法改正という技術的な問題はあるにせよ、真新しいものは特にありません。幸福実現党との違いについても、筆者が2月7日に出演した幸福実現TVで触れているので、興味がある方はご覧下さい。→http://youtu.be/Pk5hNDcqHlc
幸福実現TVでは「バブル」という言葉を使いませんでしたが、現在の株価上昇が今後も続いた場合、日銀がどう動くかを見ていく必要があります(ただし、実際は増税が始まる2014年までとなるだろう)。
内閣官房参与の浜田宏一イェール大学名誉教授の存在によって、日銀の金融政策と日銀法が改正される圧力が一気に高まったさなか、白川方明総裁が辞任を表明しました。次の日銀総裁が誰になるかは分かりませんが、日銀は典型的な官僚組織であること、独立性を守るためにあらゆる手段を使って安倍政権の動きに対して牽制をすることが予想されます。
具体的には、世間で「バブル大合唱」が起きてくると、日銀はゼロ金利の解除をするインセンティブを持ちます。つまり、金融引き締めに入る可能性が高いということです。時の日銀総裁のさじ加減次第で、アベノミクスの株価上昇が止まる可能性が高まります。つまり、日銀の金融引き締めが起こるようだと、景気回復は腰折れとなるのです。
産経新聞の田村秀男記者は、「株式や不動産市場が活性化する前にバブルを警戒して金融緩和をやめるのは、回復しかけた重病人から栄養剤を取り上げるようなものである」(ZAKZAK 2013年2月1日)と記していますが、実に適切な表現です。
問題となるのは、次の日銀総裁人事です。
財務省出身者とするのか。それとも、経済学者を登用するかによって日本経済に対する影響力は大きく異なってきます。アメリカのFRB議長やイングランド銀行の総裁は経済学者が座っているように、日銀総裁も学者となることは可能です。ただし、日銀の御用学者では無意味です。安倍首相の頭の片隅には、浜田宏一氏をそのまま日銀総裁に据える案があるのかもしれません(両者は父の安倍晋太郎氏の頃からの知り合いなので、十分に可能性はある)。
財務省はしたたかに増税路線を実現している
一方、安倍政権になって沈黙を保っている財務省はどうでしょうか?
政権交代をしたとはいえ、自公政権は基本的に増税路線です。現時点では麻生財務大臣が消費税増税は避けられないことを言及しているので、消費税増税が既定路線になっています。所得税や相続税の最高税率引き上げも、自公民の三党合意がなされました。
また、国土強靭計画のような大型の公共投資は、本来財務省が嫌う政策です。同時に、「経済成長をしても財政再建ができない」という奇妙な経済学を主張していた財務省が沈黙を保っているのは、2014年4月と2015年10月に待ち受けている消費税と富裕層増税ができるからです。彼らにとっては、自公政権になって多少経済成長路線に傾いても、全く痛くも痒くもないのでしょう。
言い換えれば、彼らが真に恐れるのは、本気で減税路線を実現する政党や政治家の出現であり、世論が減税に傾くことです。その意味で、幸福実現党の存在意義は十分にあります。
要するに、マスコミの「バブル大合唱」は、日銀の金融引き締めと財務省の増税を容易にする道が開けているわけです。バブルでもないのにバブルと騒いでいる日本の現状は世界から失笑を買うことになるでしょう。安倍首相は断固として、こうした愚論を退けるべきです。
(文責:中野雄太)