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チェルノブイリ原発事故後のウクライナから日本は何を学ぶべきか

◆未だ帰れない福島の人たち

東日本大震災は、2013年12月4日で震災発生から1000日を迎えました。復興庁によれば、避難者は11月14日時点で27万7609人。

住んでいた県以外に避難している人は5万8309人で、そのうち福島第一原発の事故の影響を受ける福島県民が84%の4万9554人です。

阪神淡路大震災が起こった神戸は、3年後にはかなり復興が進みましたが、東日本大震災では原発問題が絡んでいるため、政府の復興方針も曖昧なままです。

◆スラブチッチ市について

チェルノブイリの事故が起きたウクライナから学ぶことは数多くあります。

ウクライナを訪れた福島県民約30人の視察団の代表NPOハッピーロードネット理事長の西本由美子さんと、そのきっかけを作られた北海道大学 奈良林教授の講演から多くの学びがありました。

参考例の一つがWEDGE2013年11月号でも特集が組まれていた「夢の街」スラブチッチです。

スラブチッチ市は、チェルノブイリの東50キロの地点に存在するニュータウンです。チェルノブイリの事故後、初めは原発作業をする作業員のために作られた街でしたが、今は原発の作業員を含めた普通の大人子どもが24,700人暮らしています。

コンセプトは、子供たちが楽しく暮らせる「おとぎの国」。この街は原発事故から2年経たずに建設され、街では子供の遊ぶ姿やベビーカーを押す家族の笑顔が見られます。

幼稚園は子供たちが歩いて通えるようにと400m毎に7つあり、産業もガラスの装飾工場や刺繍工場を設置して住民の雇用を確保しています。

この街は、チェルノブイリ原発事故から3年後の放射能レベルが、福島第一原発の避難区域のうち「避難指示解除準備区域」レベルであったにも関わらず、健康被害が住んでいる人に起こることもありませんでした。(WEDGE2013年11月号)

避難指示解除準備区域とは、年間積算線量が20ミリシーベルト以下が確実であると確認された区域のことです。

年間100ミリシーベルト以下の地域では健康に被害がないことが国際機関においては既に確認されておりますが、福島においては2013年8月8日時点で、避難指示解除準備区域に住んでいた約3万4000人もの人が未だに避難しています。(福島民友 minyu-net)

今ではウクライナ一住みやすいと言われる「夢の街」スラブチッチ。

福島には、スラブチッチのような新しい街も作られないばかりか、ふるさとを捨てなければならない人が後をたちません。これは政府の対応の遅さと、マスコミの報道被害によるものです。

◆ウクライナの原発・農業政策について

更に学ぶべきは、ウクライナのエネルギー政策です。1990年、ウクライナではチェルノブイリ事故のショックから「ウクライナでの原子力発電所の建設凍結」を発表し、事故5年後の91年に全原発を停止させました。脱原発を選択したのです。

しかしその後、電力不足による停電が何度も発生。電気代高騰から工場の操業率は低下し、経済が破綻しました。失業や将来の展望が見えない中、鬱やアルコール中毒による数万人の自殺者が発生したようです。

そのため、94年に原発再稼働を決意します。現在は原発15基を稼働させ、全電力の約50%を担う世界第7位の原子力大国になっています。

2030年までには、更に原発2基を新設する予定です。日本でもこのまま原発ゼロが続けば、ウクライナの二の舞になることは明らかです。ウクライナが一度犯した脱原発という間違いを決して繰り返してはなりません。

また、ウクライナの国立農業放射線研究所では、ペルシアンブルーという無害の色素を塩に混ぜて牛に食べさせると、牛の体内のセシウムを輩出させ1/17に激減させる方法をすでに発見しています。牛乳も、バターやチーズに加工したらセシウムが1/4~1/6に低減するそうです。
原発事故後すぐに、ウクライナ政府は日本政府に研究結果を手渡していました。活用しなかったのは、政府です。

その結果、日本は数多くの牛を殺処分し、牛乳を大量廃棄しました。本当であれば、この方法を使って酪農家と牛を救済することができたのです。民主党の責任は今後も追及されなければなりません。

◆人類に原発は必要だ

ウクライナには、チェルノブイリ事故で被災した人とお茶を飲んだり、世話をして心のケアをしているNGO「ゼムキャリ」という団体があります。この団体が日本からの視察団に対して、「原発で公害がなくなった」「人類に原発は必要」と言うのです。

誰よりも原発の恐ろしさを実感した人々と日常的に接している人たちが言うこの言葉の重さを、日本の政治家は真摯に受け止められるでしょうか。

そして彼らは「放射能の100倍ひどいのが報道汚染」とも言います。日本のマスコミには、原発や放射能の恐怖を煽るばかりでなく、チェルノブイリや福島の真実を報道し、国民の知る権利を保障してほしいと願います。

「人類に原発は必要だ」 この言葉の重さをかみしめながら、真実を伝え行動を起こすことが、被害に遭われた方々や被災者への真摯な態度であるはずです。(文責:兵庫副代表 HS政経塾1期生  湊 侑子)

参考:(第一回「原子力の安全と利用を促進する会」シンポジウム―チェルノブイリに学ぶ福島の復興の促進―2013.11.27)

みなと 侑子

執筆者:みなと 侑子

HS政経塾1期卒塾生

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