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社会保障における「公平な負担」とは何か

◆75歳以上、医療保険引き上げ

社会保障費用を1兆円圧縮しようと、厚生労働省が模索しています。

その一環として、75歳以上の主婦を対象に保険料を9割減らす特例の廃止を検討しています。 (10/16 日経)

対象者は毎月の保険料が平均で360円から1810円に増加します。一年間で1万7400円の負担増です。

しかし、それと同時に所得の低い人に対しては、保険の軽減適応を500万人増やすとしています。

◆国民年金を払わずに、老後は生活保護?

厚生労働省は「負担の公平」をかかげ、「所得の少ない人は保険料を安くし」、「比較的経済力がある人への特例は段階的に縮小する考え」だそうです。

しかし、所得の高い人には重い負担を課し、所得の低い人には保険料を安くする、というのは本当に「負担の公平」でしょうか。

医療費ではありませんが、年々増える年金の負担に嫌気がさし、「国民年金は払わない。老後、生活ができなくなったら生活保護を受ければいい」と考える若者もいるそうです。

努力して多くの所得を得ている人に重い負担を課し、安易に国に頼ろうとする人に手厚い支援を行えば、国が立ち行きません。

◆「公平な負担」とは何か

確かに、自治体によっては医療保険が「人頭税」になっているような地域もあります。「人頭税」というのは、所得に関わらず、すべての人が一律同じ税金を支払うことです。

医療は子供から高齢者まで、すべての人が利用します。利用者全員に均等にかかる均等割の割合が多い地方自治体では、世帯主の所得に関わらず、扶養家族が多ければ医療費の負担は増加します。

こういった地域では、「所得に応じた負担」を求めることは理に適っていると思われます。

しかし、経済的に余裕のある人に対しては負担を重くする、というのは行き過ぎです。

これは税金でいうと、「累進課税」です。「累進課税」では、所得が上がれば上がるほど税率が上がります。

現在の日本の所得税では、195万円以下の場合、税率は5%、195万円~330万円以下の場合10%、その後20%、23%、33%、40%とあがっていきます。

今年の始め、フランスで高額所得者への税率が41%から75%にあがったために、俳優のジェラール・ドパルデュー氏がロシアへ移住したという報道がありました。

高額所得者に重く、低所得者には軽い負担は、高額所得者の海外流出をまねき、労働意欲を減退させ、国民全体を貧しくしてゆきます。

では、「公平な負担」とは何か。

私はフラット・タックスこそ、公平な負担であると考えています。

フラット・タックスとは、所得総額に関係なく、全ての人が同じ税率を負担することです。年収300万円の人も、年収1000万円の人も10%なら10%、15%なら15%の税金を納めます。

実は、フランスのドパルデュー氏が移住したロシアは12%のフラット・タックスを採用しています。

所得に応じて、すべての人が一定の割合を負担する。「公平な負担」というのであれば、フラット・タックスの導入だけで十分ではないでしょうか。

◆医療費負担に対する提言(私案)

医療費負担の問題は、とても複雑な問題です。健康に気を使って運動・睡眠・食事をコントロールされている人もいれば、喫煙をしている方もいます。

こういった人が同じ保険料でいいのかという問題もあります。窓口負担3割、5割、7割を選択でき、それに応じて窓口の負担を変えてはどうかと思います。

窓口負担3割の人は月々の保険料が高い代わりに、直接の負担は3割で済み、窓口負担7割の人は月々の負担は安いけれど、窓口では7割を負担するという形です。

さらに健康に自信のある人であれば、月々の保険料を払わず、全額自己負担ということもあってもいいかもしれません。

社会保障は「選択」と「責任」を問うものであってもいいのではないでしょうか。(文責・伊藤希望)

伊藤 のぞみ

執筆者:伊藤 のぞみ

HS政経塾1期卒塾生

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