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「コンクリートから人へ」が人の命を奪う――トンネル事故は「崩れゆく日本」の序曲に過ぎない

12月2日、山梨県の中央自動車道笹子トンネルで起きた事故では、1トン以上のコンクリート製天井板が下を走る車に次々と崩落し、9人の尊い命が奪われました。

厚さ8センチほどのコンクリート製の天井の板が130メートルにわたって崩れ落ち、車3台が下敷きになり、火災まで発生する大惨事となりました。

亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますと共に、負傷された方々とそのご家族の皆様にお見舞い申し上げます

山梨県警はトンネルを管理する中日本高速などの家宅捜索を進めており、事故原因の特定を目指すと共に、業務上過失致死傷の疑いで捜査を行っています。

トンネルの点検は作業員が懐中電灯で目視で行っていたそうですが、老朽化に伴うボルトの腐食やコンクリートの経年劣化を見落とした可能性があると指摘されています。

人命に関わる大事故を起こした中日本高速の責任は重大であり、今後、徹底的な保守点検や再発防止策を進めていく必要があります。

しかし、今回の事故については、単に中日本高速や笹子トンネル固有の問題として矮小化すべきではありません。今回の事件の本質は「日本全土のインフラの老朽化」にあります。

「つり天井方式」の問題点をクローズアップしている識者もいますが、構造の問題が本質ではありません。身体の老化と同じく、インフラの老朽化は一番弱いところから障害が発生するからです。

何度も言いますが、問題の本質は「インフラの老朽化」にあるのです。

日本では1950年代半ばから70年代初頭までの高度経済成長期に、道路や橋、トンネル、高速道路、鉄道、港湾、上下水道、ダム等の大規模なインフラが続々と建設されて来ました。

現在、これらのインフラの老朽化が著しく進んでおり、「約50年」と見られているインフラの寿命を迎えつつあります。

これまで、国家や地方の財政危機によって、公共事業費が年々削減され、老朽化対策やインフラの維持更新は後回しにされて来ました。

更に民主党政権になって以降、「コンクリートから人へ」のスローガンの下、バラマキ予算のために公共事業費を削り、愚かにも老朽化対策投資を削減して来ました。

※参照:5/11⇒「コンクリートから人へ」で進む日本列島のインフラ荒廃化

その結果、日本では現在、人類史上最速のスピードでインフラの老朽化が進んでいます。

このままであれば、「物理的な崩壊」が日本全土を襲い、全国各地で日本人の尊い人命が次々と奪われる危機に見舞われることになります。

実際、米国はインフラの維持管理投資を怠ったため、1980年代、築40年を経過した大型の橋が次々と崩落するなどの大事故・大惨事が続き、「荒廃するアメリカ(America in Ruins)」と呼ばれました。(参照:S.ウォルター著『荒廃するアメリカ』,開発問題研究所,1982)

米国では1930年代のニューディール政策によって大量に形成された社会インフラが50年を経て、次々と崩壊していきました。日本でも高度経済成長から50年を経て「崩壊する日本」が始まりつつあります。

例えば、事故現場と同じつり下げ式天井板のトンネルは都内の首都高に6本ありますが、首都高の区間の約3分の1はすでに築40年以上を経ています(今回、事故があった笹子トンネルは築35年)。

東京都知事選候補者のトクマ氏(幸福実現党公認)は、今回の事故が起きる前から公約として「老朽化した首都高速の再整備に併せ、順次、首都高の地下化を進める」ことを掲げていますが、首都の大惨事を避けるためにも、こうした「決断できる首長」の登場が強く望まれます。

インフラの老朽化は「ゆるやかな震災」とも言われ、政治家にとっても票が取れる政策課題ではないため、常に後回しにされて来ました。

しかし、全国規模での大規模なインフラ老朽化には莫大な財政投資と時間がかかるため、直ちにバラマキをやめて、インフラの維持更新の投資を行うべきです。

このままインフラの老朽化を放置すれば大惨事は確実に来ます。しかし、着実に対策を行えば、確実に避けることができる震災でもあります。

幸福実現党は「スリムで小さな政府」を実現し、財政負担の圧縮を図りつつ、民間事業者の資金やノウハウを活用し、インフラの維持更新を着実に進め、日本国民が安心して暮らせる国家を取り戻して参ります。
(文責・黒川白雲)

黒川 白雲

執筆者:黒川 白雲

前・政務調査会長

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