日本は米国と共にアジア太平洋の「自由の守護者」たれ!
パネッタ米国防長官は、米国を「太平洋国家」と位置づけた今年1月の新国防戦略発表後、インドを含むアジア諸国を初めて歴訪しました。(6/5 産経「パネッタ米国防長官アジア歴訪、中国牽制の狙い達成」⇒http://goo.gl/SnQz1)
「リバランス(軍事力の再均衡)」をキーワードとした歴訪は「中国への牽制」を念頭にアジア太平洋地域の同盟・友好国との関係強化を図るものであり、「インド洋を含むアジア太平洋地域で、中国に絶対覇権を握らせない」(国防総省関係筋)という米国の強い意志の表れであります。(同上)
今回の歴訪で、パネッタ国防長官がベトナムとインドを訪れたことはアメリカ新国防戦略の重心が太平洋地域およびインド洋地域に移ることを意味しています。
また、パネッタ国防長官は2日、シンガポールで開かれている「アジア安全保障会議」で演説し、2020年までに米軍の海軍力の6割(現在5割)をアジア太平洋地域に集中させる方針を明らかにしました。(6/2 読売「米海軍力6割をアジア太平洋に集中へ…国防長官」⇒http://goo.gl/pPnwJ)
米海軍は現在保有する艦艇285隻を太平洋と大西洋に半数ずつ展開しており、現在、米海軍の部隊は太平洋地域を管轄する「太平洋艦隊」、大西洋地域を管轄する「艦隊総軍」、地中海を管轄する「第六艦隊」、ペルシャ湾や紅海、アラビア海を管轄する「第五艦隊」に分かれています。
米海軍の中で太平洋地域およびインド洋地域を管轄するのは「太平洋艦隊」に属する「第七艦隊」で、日本とも深い関係があります。同艦隊は東経160度線以西の太平洋地域(東経160度以東は同じく太平洋艦隊に属する「第三艦隊」が管轄)、及びインド洋地域という非常に広大な地域を守るために存在しています。
こうした「アメリカ海軍の太平洋地域への集中」のねらいは、第一には、海軍力強化が著しい「中国に対する牽制」があります。
中国が軍事力に物を言わせて過激な活動に走るのを抑止すべく、米海軍の戦力配置のバランスを変えて、アジア太平洋地域の軍事力を増強すると共に、同盟・友好国との連携を強め、「中国包囲網」を築くことがねらいです。
第二のねらいは、中国のカウンターパートとしての「インドとの安保強化」です。
パネッタ国防長官は6日、訪問先のインドでアントニー国防相と会談。軍備増強を進めてアジア地域で台頭する中国をにらみ、海洋などでの安全保障の協力強化を確認しました。(6/6 産経「中国にらみ安保強化確認 米インド国防相が会談」⇒http://goo.gl/6FE7F)
米国はインドを自陣営に加えることで、中国とインドとの間で勢力均衡を図り、アジアに安定をもたらす狙いがあります。アメリカの新国防戦略にインドが名指しされているのはそのためです。
こうした米国の大胆な新国防戦略の背景には、アメリカにとって日本が「主要な同盟国」であるという大前提があります。それは中国が海洋に進出する際に、地理的に塞がっているのが日本であるからです。
パネッタ国防長官は2日、アジア太平洋地域でカギを握る同盟国として、日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイの5か国を挙げ、特に、日米同盟は「アジア太平洋の平和の礎であり続ける」と重要性を強調しました。(前掲、6/2 読売)
しかし、これは日本に対して厳しい現実を突き付けているとも言えます。それは日本がアジア太平洋の「自由の守護者」として自立し、「自分の国は自分で守る」ことを求められているという現実です。
これは普通の国にとっては当たり前のことですが、日本にとっては憲法9条改正を含む、根本的な国防方針の転換が求められているということです。
中国の覇権主義の拡大、北朝鮮の核兵器保有等、国際情勢の現実を考慮に入れれば、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」などと悠長なことは言っていられる現状ではありません。日本も自立すべき時期に来ています。
米国は日本をアジア太平洋地域で「有数の軍事力を持つ国」であると認識しています。それは、今日まで米軍と自衛隊が築き上げてきた協力関係から見ても明らかです。
日本としても「自主防衛」に道筋をつけると共に、インド、ベトナム、タイ、ミャンマー、フィリピン等のアジアの国々と友好を結ぶことによって、「中国包囲網」を築くべきです。
そのためにも、日本はまず、自国の領土である尖閣諸島、沖縄を断固、守り抜く姿勢を示すべきです。そして、日本は米国と共に、アジア太平洋の「自由の守護者」たらんと決意すべきです。
(文責・黒川白雲)