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「下山の思想」は世界にもあった!脱成長論の危険性を斬る

村上龍氏が主宰するメールマガジンJapan Mail Media(以後JMM)で「経済成長と幸福」を扱ったテーマがありました。詳細はこちら⇒http://bit.ly/N9QxyL

成長期に必ず出てくる脱成長論

上記のメルマガでは、大方成長を肯定する意見が多く出ていますが、巷では「下山の思想」をはじめとする「脱成長論」が蔓延しています。こうした議論は古くからあり、決して新しい話題ではありません。

例えば、1970年代の高度経済成長期には公害や都市過密化などが社会問題化したことを受け、「くたばれGNP」という議論がありました。80 年代に入ると、いわゆる「バブル経済」期に中野孝次氏の『清貧の思想』がベストセラーとなる現象が起きました。

もう一つ例を挙げれば、1970年代にローマクラブが「成長の限界」というレポートを出し、20年間で石油資源は枯渇するため、成長には限界があると予測しました。現実は、全く逆であり、彼らは技術革新の効用を見落としていたわけです。

幸福を指数化する試み

近年では、ノーベル経済学者のJ・スティグリッツとアジア人初のノーベル経済学者であるA・セン教授は、GDPは極めて不完全な会計であり、人間の幸福度を測る指標を作成することを研究しています。実際、フランス政府は二人の教授を招聘したほど力をいれています。

日本でも1973年に経済審議会がNNW(Net National Welfare 国民純福祉)の導入を試みました。GDPには含まれない公害や個人の余暇の経済価値を金額に換算して評価する手法です。

ただし、指標を作成する際の基準が曖昧であり、指数化することが難しいため、NNWは「なにがなんだか分からない」と揶揄され、結局失敗に終わっています。上記二人の教授が進める研究は、果たしてうまくいくのか、極めて疑わしいと言わざるを得ません。

成長と幸福に関してはブータン王国の例があります。

ワンチュク国王夫妻が来日されたことでも有名になったのが、GNH(Gross National Happiness、国民総幸福度)と呼ばれる手法です。人口70万人の9割程度が幸福を感じているとして、メディアでも紹介されましたが、見落とされている事実があります。

ブータン王国は09年の成長率は6.7%、10年には8.3%、11年には8.1%を記録しています。つまり、ブータン王国では経済成長の重要性を十分に認識したうえで、生活の質や幸福を追求しているのです。成長なくして幸福はないと言い換えても過言ではありません。

経済成長なき幸福という幻想

成長と幸福の関連性は、欧州でも活発に議論されています。

ニューズウィークのシュテファン・タイル記者の10年4月26日の記事によれば、イギリスやフランスでも「下山の思想」に相当する考え方が政策に影響を与えていることが分かります。

ただし、シュテファン記者は、脱成長論の道徳倫理的な価値観を認めつつも、健康や長寿、生活の質は経済成長と密接な関係にあることを強調します(前回紹介したR・バロー教授の研究も同様の結論を出している)。

さらに、経済危機や成長が鈍化するとしても、成長を諦める理由はないとします。むしろ、教育や技術革新などを通じて成長を高める政策に全力を尽くすべきだと提言しています。⇒http://bit.ly/KENDks

これまでの議論を総括に相当し、脱成長論は間違いであることを強調しているのが、法政大学大学院の小峰隆夫教授の論文です。小峰教授は、成長には所得上昇と雇用の増大、税収の拡大などを含め七つのメリットがあると説き、「経済成長は七難を隠す」と言い切ります。⇒http://nkbp.jp/JLYInE

同教授は、「脱成長を唱える人は、自分の所得を喜捨してからそういうことを言ってほしい」という趣旨の発言をした高名な経済学者の言葉を引用していますが、まさに正鵠を得た言葉です。

脱成長論者には、高名な政治家や学者、メディアに存在しますが、そういう方はえてして高所得者です。ご自身の信念として清貧の思想を貫くのは結構ですが、国の成長を否定するのは間違っています。

脱成長論は亡国への道

これまでの議論からわかる通り、経済成長と幸福には正の相関関係があると言えます。人間の悩みの大半が経済的問題であることを考慮すれば、成長が果たす役割は無視できません。貧しい方を本当に救いたいならば、やはり成長することで所得や雇用を増やすべきです。

ましてや、震災や原発事故があった日本で脱成長を唱えるのは、国家としての自殺行為です。その意味で、脱成長論は亡国への道であり、絶対に与してはなりません。
(文責・中野雄太)

中野 雄太

執筆者:中野 雄太

幸福実現党 静岡県本部幹事長

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