学力把握は教育に不可欠~学力テストへの全員参加で学力を引き上げよ!
[HRPニュースファイル248]「子どもの学力向上は学校(教員)の責務である~学力テスト実施・結果の公開義務付けを~」で湊侑子氏が指摘している通り、今月17日、全国学力テストが行われ、抽出から外れても自主参加を希望する学校が後を絶たず、参加率は81.2%となり、1回目の73.5%を大きく上回りました。
全校参加した都道府県も、前回から8県増え、21県になりました。ここまで自主参加校が増えた背景には、学力低下への不安などがあります。国は、実態との乖離を数字からも分析し、早急に政策を見直すべきです。
2007年に全員参加方式でスタートした学力テストは、民主党政権になり、コスト削減を理由に、10年度から約3割の学校を抽出する方式に変更しています。
「全国一斉に同一テストを課すことで、課題克服など学力向上に活用しよう」との現場のニーズに応えていたにもかかわらず、民主党は「事業仕分け」してしまいました。
民主党の有力支持母体である日教組が「過度の競争を招く」と、学力テストに反対してきたことも大きかったのでしょう。
文科省は「来年度はいったん全員参加方式で実施するものの、再び抽出方式に戻し、全員参加は数年に一度にする」などと信じられないことをいっていますが、こんな中途半端なやり方が一番迷惑です。
こんな中、毎日新聞の社説は「学力課題をつかむには抽出で足る。改善に具体的にどう取り組み、成果を積み上げていくかに直結させなければ、テストの意味はない」として、 抽出制度の維持を主張しています。(4/23 毎日「社説:学力テスト 今後に生かしてこそ」⇒http://goo.gl/VzQPJ)
しかし、そもそも抽出方式では、全体の大雑把な傾向は分かっても、市町村や学校別のデータは分からず、各学校が学力面での位置づけを正確に知ることができず、したがって検証しようがないのが現実です。
小中学校の勉強は、現状の学力を把握し、そこから、学校そして家庭での学習量が増えれば「縁起の理法」の通り、結果が出てきます。
15歳を対象に、読解力、数学知識、科学知識の学習到達度を調査する、国際学習到達度調査(PISA)が3年に一度、継続して行われています。
日本は2000年には、数学1位、科学2位、読解力8位という高順位でした。しかし、2006年には数学10位、科学6位、読解力15位にまで下がりました。誰の目にも明らかなのは、小中学校で実質的に2002年度から実施された「ゆとり教育」の影響です。
韓国など、国を上げて教育に力を入れているのは「教育の低下が国力の衰退につながる」ことを明確に意識しているからです。
現在の子供たちに対する教育の内容によって、国のワン・ゼネレーション後の未来が規定されます。ますますグローバル化される未来社会で、国際競争力を維持するには教育の力がどれほど大切か計りしれません。
学力テストが「競争を煽る」「学校の序列化につながる」など、議論している場合ではありません。
私たち大人が、福沢諭吉の「学問のすすめ」の精神に戻って、「学問で身を立てよ。学問は人格を変化させ、向上させ、世の中の富を増やすのだ」という考えをもう一度持って、この国の教育を考えていくべきではないでしょうか。
「教育によって新しく生まれ変った人たちが次の世代を担っていく」という考えの下、私は教育の力をどこまでも信じています。
(文責・竜の口法子)