グローバル人材を養成し、日本の国際競争力を高めよ!
大学における学力低下や国際競争力の劣化が国家的課題とされ、東京大学が「秋入学」を提言する中、「入学時期の変更だけで、国際化、国際競争力を獲得できるのか」という疑問や反発の声が上がってきています。
国立大学協会総会では、平野大阪大総長が「秋入学が独り歩きしている。教育の中身の改革議論がうやむやになってはならない」とくぎを刺し、京大の松本総長も慎重な立場です。
清水東大副学長は「建設的な批判が多いと思っている。秋入学だけで何かが変わるというわけでないというのは全くその通り」と語るなど、実現への課題は山積しています。(3/29 産経「秋入学 足並みに乱れ」⇒ http://goo.gl/RwI7a)
政府は2020年までに年間30万人の留学生を受け入れる「留学生30万人計画」(http://goo.gl/4uCPE)を発表していますが、日本における留学生の受け入れ体制は未だ不十分な状態にあり、様々な課題が指摘されています。
日本留学においては、一般的に、渡日してまず日本語学校に入学し、日本語などを1~2年間学習した後、大学などを受験するケースが多く、一番大きな障壁は「日本語教育」であるとも言われています。
英国は、1999年のブレア首相による留学生受け入れ拡大政策の下、ブリティッシュ・カウンシル(英会話スクール)を110カ国に置き、7300人の職員を配置したことが功を奏し、2020年までに87万人(3倍増)、130億ポンド(約1兆6640億円)の経済効果が見込まれています。(4/3 JBpress 村田博信氏「留学生の受け入れ、日本の大学はどこまで本気か、どうすればグローバル人材の育成ができるのか」⇒http://goo.gl/nqWDR)
日本も英国に倣って、物価の高い日本に来日してからではなく、世界各国で「日本語教育」を積極的に実施するなどして、日本の経済力相応に、日本語が「準公用語」と扱われるための努力が必要です。
そうであってこそ、日本に優秀な人材が集結して、大学での研究業績を世界的に発信していく、世界的な影響力を持つことが出来るのです。
一方で、大学が国際競争力を目指しているのに反して、「内向き思考」となっている若者の実態が報告されています。
「海外に留学したい」と考えている日本の高校生の割合は46%で、日米中韓4カ国中で最も低かったことが4日、日本青少年研究所の調査で分かりました。⇒http://goo.gl/U7jkU
「留学したい」としたのは、韓国82%、中国58%、米国53%、日本46%の順。期間では、日本は「1年以上2年未満」が最多ですが、米中韓では「2年以上」が多数を占めています。(4/4 産経「留学希望の高校生46% 利点感じず米中韓より低く」⇒http://goo.gl/62z9G)
グローバル人材のニーズが非常に高まっている中で、実際に海外留学する日本人の数は、2004年度の年間8万2945人をピークに毎年減少傾向にあります。
2009年秋にハーバード大学に入学した日本人学生はたったの1人だけ。また、同年の留学生666人の中で日本人は5人でした。韓国42人、中国36人、シンガポール22人、インド20人に比べると雲泥の差です。
EUは「エラスムス計画」を通じて、学生の10人に1人は自国以外での留学経験を持たせ、「ヨーロッパ人」として育成し、EU加盟国間の学生流動を高めようとしています。
韓国では「グローバルリーダー10万人養成プロジェクト」として、30歳以下の青年を対象に、2013年までの5年間で海外での就業者5万人、海外でのインターンシップ3万人、海外ボランティア2万人を実現させることを推進しています。
現在、韓国の大手企業に就職するにはTOEIC900点以上は当たり前で、最近の大企業はソウル大学のような国内の一流大学よりも、海外の大学出身者を好む傾向にもあるそうです。(前出:4/3 JBpress)
国際競争力の源泉は、世界に通用する「英語力」にあると言えます。日本の若者の内向き思考を打破するためにも、自信を持って英語を語れるレベルを標準化することや、英語でのディベート力を身につける必要があります。
また、文科省の平成24年度予算案を見ると、留学生の「受け入れ」に関しては約332億円で、それに対して「送り出し」は約81億円と約4分の1となっています。
少子化で、希少価値の高まる「人的資源」である日本人の若者への投資を行い、海外経験を通して外国人と伍して勝ち抜いていくことが出来る人材の育成が国力復活に直結します。
今後、日本もTPP参加でグローバル化がより一層進むことが予想されます。日本の繁栄を担うチャレンジ精神に満ちた学生にチャンスを与え、彼らの夢を力強く後押しし、日本の国際競争力を高める「日本開国構想」を持つことが急務です。
(文責・小川俊介)