不誠実な野田首相の対話集会――野田首相はまず、国民の信を問え!
野田首相は7日、社会保障・税一体改革に関する政府主催の「明日の安心」対話集会に初めて出席し、自ら消費税増税への理解を訴えました。
この対話集会は2月からスタートし、民主党の議員が、社会保障・税一体改革の必要性を訴えてまわり、今までに32府県をめぐりました。
会場に選ばれたのは兵庫県西宮市の甲南大学。若者を中心に現役世代が集まりました。首相は、集会前に「一体改革は若者の支持が低い。若者の理解が大切だ」とアドバイスを受けていたということです。
質問のトップバッターの19歳男性は「増税は仕方がない。高齢化で年金の負担が増えていくことは避けられない」と理解を示す質問でした。
首相は「今日よりも明日が良くなるという展望を持つためには一番の不安を取り除くことが前提。一番の不安は、社会保障の持続可能性だ」などと応じ、対話集会では、社会保障の説明にかなり多くの時間を割きました。
つまり、首相が強調したかったのは、「社会保障・税一体改革は、若者の将来の安心につながりますよ」ということです。
しかし、消費税増税によって、現行の日本の社会保障、特に年金制度を維持することは、もはや不可能と見られます。
東京財団上席研究員の原田泰氏の試算によれば、高齢者一人あたりの社会保障給付費を現状の水準で一定とし、名目GDPが生産年齢人口に連動して減少していくと仮定すれば、社会保障給付費の増加分を全て消費税で賄うなら、実に58.8%もの税率アップが必要と予測されています。
60%超の消費税率は誰がどう見ても非現実的です。「できない」ことを「できる」と言って、お金を集めるのは、無限連鎖講(ネズミ講)と同じ詐欺行為です。
野田首相が強調する「社会保障と税の一体改革」は絵空事と言わざるをえません。
また、野田首相は「未来世代にツケを回さない」と語っていますが、そもそも、これまでの政治家や官僚による予算管理や年金管理・年金予測の杜撰(ずさん)さによって窮状に至っているのであり、それを「増税」という形で「国民にツケをまわしてはならない」のは当然のことです。
増税しても税収が増えるとは限りません。税収増は、経済成長によってこそ可能になります。政治家は、若者に対して、経済成長、所得倍増、GDP2位奪還作戦、自助努力の精神など、もっと夢やビジョンを語り、若者が「夢を持てる国・日本」を目指すべきです。
「下山の思想」が流行る時代、もう一度、「坂の上の雲」を目指して、国のあるべき姿を次世代に示すのが政治家の責務です。
日本が高度経済成長を成し遂げた後、政治家も官僚も「国家の未来ビジョン」を持てず、目先の問題の解決に追われているのが現状です。
「現状維持」を前提とするのが官僚の発想であり、「現状打破」を行うのが政治家の発想です。野田首相の発想はせいぜい「官僚」レベルです。
そして野田首相は、のうのうと対話集会で「増税キャンペーン」を行う前に、2009年の衆院選で「消費税を上げない」と公約したのにもかかわらず、消費税増税法案を国会に提出したことについて、全国を「懺悔(ざんげ)キャンペーン」して回るべきです。
野田首相のような不誠実な大人の態度を若者は見ています。そして、国民は政治への不信感を募らせています。
消費税を増税をしたいなら、民主党政権は衆議院を解散し、正々堂々と「消費税増税」をマニフェストに掲げて選挙で戦い、「国民の信」を問うべきです。
(文責・竜の口法子)