白川総裁のデフレ独裁――政府は日銀法を改正し、金融政策の目標設定権限を確保すべき
米連邦準備制度理事会(FRB)が2%の「インフレ目標」を導入してから、日本の国会においても、デフレを放置している日銀の責任を問う声が高まっています。
※FRBはの表現は“a longer-run goal for inflation”(インフレに対する長期的なゴール)という表現であり、「インフレ目標」と言っても差し支えないと考えます。
日銀の白川総裁は、国会予算委員会の答弁で、今回のFRBの「インフレ目標」の導入について「日銀に近づいてきた」と強弁しましたが果たしてそうでしょうか?
日銀は「インフレ率を2%以下のプラス領域、中心は1%程度を中長期的な物価安定の理解とする」としています。
よく意味が分からない「理解」が、FRBの「インフレ目標」と同じというのでしょうか?
嘉悦大学教授の高橋洋一氏は「1998年の新日銀法施行以降、日本で前年同月比のインフレ率が0~2%に収まっていたのはわずか1割6分。一方、FRBが1~3%に収めたのは実に7割以上」であるとして、落第生日銀の「理解」と優等生FRBの「目標」は全く違うことを指摘しています。⇒http://goo.gl/8tpkF
「インフレ目標」を導入している各国は数値目標だけでなく、達成期間、説明責任などを明確に定めています。
例えばニュージーランドは、インフレ目標を達成できなかった時には、政府は中央銀行総裁を罷免することができます。イギリスは、目標2%の上下1%を超えると、中央銀行総裁の財務大臣に対する説明責任が生じます。
日本は2011年度まで3年連続で消費者物価の上昇率はマイナスです。しかし、日銀総裁は何ら責任をとる必要はありません。
内閣府の試算によると、2011~2020年の物価上昇率の平均が、成長シナリオで1.7%、慎重シナリオで1.1%です。⇒http://goo.gl/RSW4z
古川経済財政担当相は10日午前の衆院予算委員会で、政府の財政政策と日銀の金融政策の両面から「2%程度の緩やかなインフレの達成に向けて、全力で(成長シナリオを)行っていきたい」と発言しています。
しかし、日銀は中心を「1%」としているため、政府の「2%」とはあまりに離れています。
白川総裁が「これをどう説明するのか」と同委員会で問われても、「ピンポイントで定めるのは難しい」と曖昧な答弁に終始し、「2%を達成する」という強い意志は全く示されませんでした。
1998月4月1日に施行された新日銀法では「金融政策の目標の設定」と「それを達成する手段」の両方に関して、日銀に政府からの独立を認めてしまいました。
「インフレ目標」を採用している諸外国では「金融政策の目標は政府が最終的に決定する権限を持ち、それを達成する手段は、中央銀行が政府から独立に決める」という「手段の独立性」を認めているに過ぎません。
現在の日銀法の下では、たとえ政府が「成長シナリオ」を進めたくとも、金融政策に関しては日銀が主導権を持っているため、政府に決定権はありません。
白川総裁は「デフレは潜在的成長力、生産性が低下しているのが原因であって、日銀がいくら流動性を供給(貨幣供給)しても脱却できない」と、開き直りとも思える発言を繰り返しています。(経済成長戦略や規制緩和等によって「潜在成長率」を高める努力を怠って来た民主党政権も問題ではありますが。)
学習院大学教授の岩田規久男氏は、白川日銀の「物価の安定」とは「デフレの安定」である。言いかえれば、日銀の金融政策の目標は「安定的なデフレ」という「デフレ・ターゲッティング」に他ならないと指摘しています。(『WiLL』3月号「デフレ・超円高の元凶は日銀だ」)
白川総裁は、文藝春秋3月号にて、インタビューを受けていますが、その中でも、現在は、積み上がった債務を正常なレベルに戻していくことが優先され、その間は、支出が切り詰められるため、成長率は低下すると、デフレを容認しています。
もはや白川日銀総裁は「疫病神」と言われてもいたしかたありません。すみやかに国会は日銀法を改正し、政府が金融政策の目標を決定する権限を持つべきです。
(文責・加納有輝彦)