中国に自由は無い――活動家や少数民族への弾圧を強める中国
中国が国内の人権・民主化活動家や少数民族への弾圧を強めています。
中国の著名作家である余傑(よけつ)氏が今月初め、米国で政治亡命を申請しました。
余傑氏はノーベル平和賞を受賞した劉暁波(りゅうぎょうは)氏らと、2008年に発表された「08憲章」に署名した人権活動家で、亡命の理由を「中国にとどまれば命の安全すら保証されず、作家としての表現の自由は全くない」と話しています。(2/7 産経「中国、自由派知識人ら続々出国 党大会控え、言論弾圧強化」⇒http://goo.gl/RM47i)
国内では常に厳しい当局の監視下に置かれ、不当に拘束されて厳しい拷問を受けたといいます。
中国では、昨年から政府に批判的な知識人の国外脱出が相次いでいます。改革派新聞記者の長平氏はドイツへ、政府系シンクタンク中国社会科学院の著名政治学者の張博樹氏は米国へ出国しました。
反体制派著名人を海外に追い出すことが政府の方針とされ、「当局からの暴行を受けた後『どこでもいいから外国に行け』と言われた知識人もいた」といいます。
また中国国内では、些細な理由で「国家政権転覆罪」懲役刑を受ける民主活動家が増えています。
人権の尊重などを訴える文書を国外メディアやインターネット上に発表した民主活動家の李鉄氏は懲役10年の判決を言い渡され、四川省と貴州省の民主活動家らがそれぞれ懲役9年と10年の判決を言い渡されています。
2月6日のロイター通信によれば、中国四川省カンゼ・チベット族自治州色達県でチベット族の住民3人が、中国政府に抗議するため焼身自殺を図り、1人が死亡、2人が重傷を負ったといいます。
今回の事件を含めると、中国でチベット僧らが焼身自殺を図るケースが過去11カ月間に19件発生したことになり、このうち少なくとも13人が死亡しています。
また四川省では1月末、色達県など3カ所でチベット族の住民らがデモを行い、治安部隊と衝突。チベット独立を支援する人権団体によると、治安部隊の発砲でデモ参加者7人が死亡、数十人が負傷したといいます。
海外メディアで、このように断片的に報じられる事件は「言論の自由」も「報道の自由」もない中国においては、文字通り、「氷山の一角」に過ぎません。
同じような人権弾圧や命と引き換えの抗議行動が一体、中国全土でどのくらい起きているのか――その正確な数字は、知るすべもありません。
国内の暴動だけでも、年間18万件も発生していると言われている国なのです。
いずれにしても、はっきりしていることは、習近平氏が新しい国家主席となる秋の共産党大会を控え、中国政府が反政府運動や民主化運動の活発化を恐れ、国内の締め付けをこれまでになく強めているという事実です。
逆に言えば、それほど締め付けを強めなければならないほど、共産党一党独裁支配への国民の不滿や反発のエネルギーが高まっており、政権安定のための舵取りが難しくなっているということです。
支配者である中国共産党への国民の反発のエネルギーの矛先をそらすために、中国政府は次の段階で、必ず国外に敵を作り出し、ガス抜きを図るでしょう。
それがベトナムなのか、台湾なのか、それとも尖閣諸島なのか――。
そうした視点で中国の国内の動きを注視し、日本としても中国の民主化、自由化を積極的に支援していくべきです。
(文責・矢内筆勝)