ホルムズ海峡波高し!――「日本の生命線」の危機に備えよ!
イランの核開発問題を巡って、ホルムズ海峡は急速に「一触即発」の状況に近づいています。
既にアメリカはイラン周辺に空母2隻を配備。これまでのアメリカの対応などから、アメリカが本気でイランとの戦争を準備している可能性が強まっています。
ホルムズ海峡を巡って、欧米とイランが開戦する事態に至れば、中東に石油を依存する日本にとっては、決して対岸の火事では済まされません。
昨年末、アメリカは核開発を続けるイランへの経済制裁の動きを急激に強め、オバマ大統領はイラン中央銀行と取引を行う企業や金融機関への罰則を定める「2012会計年度国防権限法案」に署名しました。
同中銀はイランの原油取引の決済の大部分を担っているため、イランから原油などを取引している全ての国が対象となり、アメリカ主導の「経済封鎖」網が敷かれることになりました。
これに呼応して、EUは1月23日、イラン産原油の輸入禁止を決定。豪州もEUに同調しています。日本政府はイラン産原油の輸入削減を含む具体的な圧力強化策を米側に提示しています。
こうした動きに対して、イランは世界の海上石油貿易量の3分の1以上が通過するホルムズ海峡を封鎖すると警告。緊張状態が続いています。
この流れを見ると、同じような歴史を思い出す方もいるでしょう。
そうです。かつてアメリカが太平洋戦争開戦前の1941年、日本に対して行った「ABCD包囲網」です。当時日本は、この「包囲網」によって石油が輸入できなくなり、自滅的な「開戦」を余儀なくされました。
今回は逆に、イランが自国の経済収入の柱である石油輸出を止められる形で、「開戦」に追い詰められているようにも見えます。
この流れを見ると、アメリカは並々ならぬ決意でイランを追い込み、戦争をしようとしているようにも見えます。だとすると、なぜアメリカはイランと戦争を始めたいのでしょうか?
これについて、国際関係研究家の北野幸伯氏は『RPE(ロシア政治経済ジャーナル)』で、アメリカは以下の五つの理由で、イランとの開戦を決意していると主張しています。
1.ドル体制防衛――石油のドル建て決済を中止したイランの現政権を倒し、傀儡政権を樹立させ、決済通貨をドルに戻したい。
2.石油、ガス利権――原油確認埋蔵量世界4位、天然ガス埋蔵量世界2位という世界有数の資源大国の利権を確保したい。
3.公共事業――アメリカは軍産複合体が経済を動かしているため、経済浮揚政策として開戦したい。
4.イスラエル防衛――大統領再選に向けて、イスラエルの宿敵イランを攻撃することで、国内ユダヤ人の支援を得たい。
5.中国封じ込め――米中関係悪化に備え、中東産油国を脅して中国に原油を売らせないようにするため、イランに親米政権を作りたい。
今回のイラン制裁強化に対しては、様々な見方・見解がありますが、弱肉強食の国際政治の現実と、アメリカの国益の観点から見た視点として、北野氏の分析も説得力があります。
危機管理の鉄則は「最悪の状態を想定して最善を尽くし、最悪の状況を抑止し、被害を最小限に抑えること」です。
日本政府は外交交渉によってイランと欧米諸国との仲立ちをし、核問題と海峡封鎖の問題に目途をつける努力は当然すべきですが、同時に、戦争が勃発した場合の対策も迅速に進めていく必要があります。
開戦によってホルムズ海峡が封鎖されれば、最もその影響を受けるのは日本です。
現在、日本の1次エネルギーの8割強を石化エネルギーが占めており、その内、原油は中東地域からの輸入が86.6%を占めており、中東原油の主要な原油の積出港は全てホルムズ海峡の内側にあります。
同地域が通過できなくなれば、原油価格の高騰と共に、「脱原発」によって電力各社が依存度を高めている液化天然ガス(LNG)価格も高騰し、電気料金が急騰し、国民生活と日本経済は壊滅的な打撃を被ります。
にも関わらず、民主党野田政権はエネルギー安全保障に対する対策や備えを行っているふしはありません。24日の野田首相の施政方針演説でも、今回のイラン危機に対しては「各国と連携して適切に対処します」と触れたのみです。
この事態に備え、日本独自の防衛行動も必要です。例えば、イランはホルムズ海峡封鎖に当たって機雷の敷設が予想されます。だとすれば、日本は事前に「訓練目的」と称して、自衛隊の掃海艇を現地に派遣しておくことも検討すべきです。
また、「エネルギー安全保障」強化も不可欠です。具体的には、福島原発事故で低下したままの原発の再稼働を迅速に進め、原油輸入が滞った際のエネルギー不足、電力危機に備えるべきです。
馬鹿げたことに野田政権はこの非常事態に「増税」に向けて全力を投入しています。鳩山・菅・野田政権と、民主党政権は「危機管理」を放棄し続けています。
しかし、幸福実現党が主張し続けているように、「国民の生命・安全・財産」の確保や「エネルギー安全保障」の強化こそが、政府が取り組むべき最大にして喫緊の課題であるのです。
(文責・矢内筆勝)