日本はロシアと連携を強化し、「対中国包囲網」を築け!
2012年は、日本の周辺諸国の指導者が一斉に替わる年で、日本の隣国の一つであるロシアも例外ではありません。
ロシア大統領選挙においてプーチン首相が与党統一ロシアから立候補すると表明していますが、2011年12月のロシア下院選挙で統一ロシア側の不正が明らかになり、大規模な抗議デモが起きています。
しかし、ロシアにはプーチン氏を超えるカリスマを持つ政治家がいないため、紆余曲折を経ながらも、プーチン氏が再び大統領の地位に就く可能性は極めて高いと考えます。
プーチン氏が再び大統領の地位に就けば、軍事・安全保障における権限を握り、メドベージェフ氏を首相に据えて経済政策を中心とした内政に専念させることで「強いロシア」を目指すことが推測されます。
日本としては、中国がアジアにおける覇権を握ろうとする中、対ロシア外交戦略を早急に構築していく必要があります。
実際、日本としては、ロシアを取り込まない限り、安全保障において厳しい局面を迎えることになります。
現在、自衛隊は北方防衛から対中国・南西シフトが進んでいますが、ロシア・北朝鮮・中国に提携されると、自衛隊は「二正面作戦」「三正面作戦」になり、現在の兵力では、どう計算しても日本を守り切ることができません。
特に、日本とロシアとの関係を複雑化しているのは「北方領土問題」です。両国の北方領土問題の行き違いは、日本とロシアの友好関係に深い溝を落としています。
ここで日本とロシアの「北方領土」の認識の違いを整理しておきます。
日本は、終戦日をポツダム宣言を受け入れて降伏した1945年「8月15日」としています。
旧ソ連は8月8日に、米国との和平仲介を持ちかけられていた日本に対して「日ソ不可侵条約」を一方的に破り、日本に宣戦布告。武装解除していた日本に侵攻、北方領土を占領しました。
ロシアは、日本がポツダム宣言受諾文書へ調印した「9月2日」を対日戦勝記念日する法案を上院で可決しています。ロシアは、この法案に基づき、9月2日までに占領した北方領土は自国領土とする主張を展開しています。
一方、日本政府は旧ソ連が「日ソ不可侵条約」を破って宣戦布告した点と、サンフランシスコ平和条約に調印していないソ連が占領した北方4島をロシアが現在も実効支配している不当性を指摘し、日本の領土であることを主張しています。
日本は、こうした歴史観、終戦の定義の相違等も踏まえた上で、戦略的外交を展開していくことが不可欠です。
アジアの覇権を狙う中国は、ロシアの北方領土の領有を後押して、日ロ関係の悪化、分断工作を狙っていることも知らなくてはなりません。
したがって、日本がロシアを中国の覇権主義を封じ込める「中国包囲網構築」に参加させるためには知恵を使う必要があります。
例えば、シベリア資源開発等の協力関係の構築を通じて経済的、通商的な関係強化を図る外交戦略を築いていくことが有効です。
既にプーチン首相は昨年10月に野田首相との電話会談で、最大与党「統一ロシア」の11月下旬に開く党大会へ特使を派遣するよう要請した経過があり、プーチン氏は、政権復帰後に極東・シベリアの資源開発に日本の積極的な協力を得ようとしています。
ただし、したたかなプーチン氏は、日本は資源開発だけやらせて、ロシアが権益を奪う可能性もあるため、日本は国益を損なわない、したたかな外交交渉を展開していくべきです。
いずれにしても、資源開発の協力や経済協力等を通じ、ロシアとの友好な関係を強化し、それによって「中国包囲網」の陣形を築き、中長期的には粘り強く「北方領土返還」を交渉していくべきです。
また、エネルギー安全保障の観点からも、ロシアとの友好関係を築く必要があります。日本は原油を1日で約440万バレル消費していますが、その9割は中東に依存しているからです。
更に「脱原発」政策による全国の原発の停止、ホルムズ海峡を巡るアメリカとイランの対立が激化等も勘案すれば、中東以外にもエネルギー供給源を模索していくことは急務です。
日本が国民の生命・安全・財産を守り、経済的な繁栄を維持していくには、エネルギーの安定供給は不可欠です。その意味でもロシアとの連携強化を図っていくことは有意義です。
アジアの平和を脅かす中国の覇権主義を打ち砕く「対中国包囲網」を構築していくためには、米国や韓国、東南アジア、インドと共に、ロシアとの緊密な関係を築いていくことが重要です。
(文責・佐々木勝浩)