イラン、原油禁輸ならホルムズ海峡封鎖――日本も世界平和に影響力を行使せよ!
オバマ大統領は、1月5日にアメリカ国防総省にて演説を行い、「Sustaining U.S. Global Leadership: Priorities 21th Century Defense(米国のグローバルなリーダーシップを維持する:21世紀の国防の為の優先順位)」を発表しました。⇒http://p.tl/yd5D
この文書は、アメリカの安全保障政策の根幹である「国家安全保障戦略」を、次の10年を見据えながら見直していくというスタンスで書かれているものです。
特筆すべき点としては、国防費削減に対処するため、「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」に基づく「二正面戦略」を見直し、「一つの大規模紛争」に限定し、「第二の地域」では敵が戦争を起こさないよう抑止していくという「選択と集中」戦略が取られていることです。
今回発表された文書の巻頭言はオバマ大統領自身が書いていますが、特に強調されているのは「イラクの戦いを終わらせた」「ビンラディンに正義の裁きを与えた」「国防予算を削減した」という三つです。これらは、今年の11月に行われる米大統領選に向け、オバマ大統領が自らの功績をアピールしていると推測されます。
本文に目を移すと、アメリカにとって「東アジア」と「中東」が、安全保障における重要な地域であることが言及されています。
「東アジア」では、アジアにおける同盟国との関係が、アジア太平洋地域の「安全保障の重要な基盤」であるとし、また、インドとのパートナーシップ構築を行い、北朝鮮の核計画抑止に努力するとしています。
一方、中国に関しては「覇権主義」という言葉は使われていないものの、より大きく扱われており、「脅威になりつつある」と表現しています。
中東については、暴力的な過激派と不安定の脅威に対抗するだけでなく、同盟国やパートナー国に対してアメリカがなした約束を履行するとし、懸念材料としては、中東における大量破壊兵器の拡散を挙げています。
ここでは、イランは名指しされておらず、中国の問題以上にイランの問題を慎重に取り扱っているように見受けられます。
しかし、現状、イランを巡る問題は極めて深刻です。
イランは、国際社会を相手に2011年末から2012年の年頭にかけてホルムズ海峡を巡って政治的・軍事的な駆け引きをしており、アメリカもパネッタ国防長官が現地時間8日、イランがホルムズ海峡を封鎖すれば軍事行動も辞さないという考えを示しています。
既に、イランは12月24日からペルシャ湾のホルムズ海峡で最大規模の軍事演習を行っており、27日には副大統領が「イランの原油輸出に対する制裁が科されたら、原油は一滴たりともホルムズ海峡を通過することはない」と海峡封鎖も辞さない構えを見せています。
イランがこのような危ない橋を渡っているのは何故でしょうか?
国連決議を無視してウラン濃縮活動を進めているイランに対して、米欧はイランの原油禁輸を行うよう各国に働きかけを強めており、外貨収入の約8割を占める原油輸出が滞れば、国連安保理による四度の制裁決議で打撃を受けている経済がさらに疲弊するのは必至です。
これにより、イランは従来の政策を維持して対決姿勢を堅持するか、それとも核兵器を捨てて経済状態を回復させるかの選択と決断が迫られているため、焦りが生じているものと推測されます。
誰も中東における更なる戦乱と混乱を欲してはいませんが、もはやアメリカとイランとの2国間で協議することは不可能な状態にあります。
それにもかかわらず、どの国もアメリカや欧米諸国とイランとの関係を取り持とうと動かないことは問題があります。
どこかの国が調停に乗り出さないと戦争が起こる可能性が十分にあり、日本としても、最大限の紛争回避の努力をなすべきです。
もし、日本向けタンカーの9割が通過するペルシャ湾のホルムズ海峡で紛争が起これば、「脱原発」というポピュリズムによって原油依存度を高めている日本にとっては生命線を断たれることに繋がります。
日本は、アメリカと違ってイランと石油の取引をしている関係にあり、イランにとって日本は一番の輸出相手国です。同時に日本はアメリカにとっても有力な同盟国の一つでもあり、両者の仲介に立つには最適のポジションにあります。
また、日本はキリスト教とイスラム教との対立を第三者の立場で仲介していくことができる立場にあります。
日本は今こそリーダーシップを発揮してアメリカとイランとの仲を取り持って、戦争の危機を未然に防ぐべきであります。
(文責・黒川白雲)