「税高くして 民衰え 国滅ぶ」
野田首相は、4日の年頭記者会見で「ネバーネバーネバーネバーギブアップ。私は大義のあることをあきらめない」とチャーチル元英首相の言葉を引用し、消費税増税への強い決意を語りました。
5日付けの全国五大紙の社説は、この年頭記者会見について論じられています。各紙とも「増税は仕方がない」「野党は野田政権に協力すべき」というトーンで見事に統一され、年初から政府、マスコミがこぞって「消費税増税やむなし」の大合唱を行なっています。(Liberty web【新聞読み比べ】「増税」の大合唱 新聞は財務省広報室か?⇒http://p.tl/9Djl)
まるで野田政権とマスコミがつるんで「連立政権」を組んでいるような「異様さ」です。日本のマスコミは「権力の監視機関」としての役割を完全に放棄しています。
消費税増税を含む「社会保障と税の一体改革」について、事実上、「大政翼賛会体制」が構築されていることは明らかです。
増税の必要性については、ギリシャの事例がよく引き合いに出されます。輿石幹事長も、正月のインタビューで、わが国においても財政再建が急務であり、さもなくばギリシャのように国債が大暴落し、国家破綻となると語っています。
これに関しては、わが国の国債はほとんどが円建ての内債であり、ギリシャのように外債中心ではないこと。ギリシャはユーロに関して通貨発行権を有していないこと、円への信用が非常に高いこと等の理由により、日本とギリシャを同列に語ることは全く意味がありません。
しかしながら、ギリシャが財政破綻した大きな要因の一つに「公務員天国」であることがありますが、これに関しては日本も「公務員天国」であり、大胆な「改革」が必要です。
ギリシャの人口の10%、約100万人が公務員であり、労働人口の25%が公務員です。50代から現役時代の90%の年金を受け取り、年金と公務員給与で政府支出の40%を占めています。
ギリシャでは、公務員が学生就職先の「人気一位の職業」となっています。日本の就職先人気においても、公務員が2年連続トップとなっています。(レジェンダ・コーポレーション調べ)
日本の公務員は民間従業員の2.1倍もの報酬を得ており、OECD加盟23か国中、第2位の高給となっています。(大和総研「公務員人件費の国際比較2005年」)
内閣府SNA調査に基づく一人当たりの雇用者報酬では、産業別の一人当たり平均報酬は、農林水産業が206万円、製造業522万円、金融保険657万円、公務員1,001万円となっています。(若林亜紀著『ドロボー公務員』)
国税庁の民間給与実態調査によれば、民間給与は2009年に前年比で平均5.5%も下落していますが、これを受けて人事院は2010年8月に1.5%の引き下げを勧告。当時の菅首相は、民間に下落幅に配慮して、それ以上の削減を公約しました。
しかし、民主党の最大支持勢力の連合が抵抗し、菅首相は言われるままに公約を引き下げ、小幅な引き下げに終わりました。
更に、昨冬のボーナスは国家公務員は4.1%増額となり、国と地方の公務員のボーナス平均は76.5万円(みずほ証券調べ)で、民間平均37.8万円の2倍以上となり、「官民格差」は広がるばかりです。
民主党政権は、議席数を減らしたとされている一昨年の参院選挙においても、労働組合代表の候補は議席を伸ばしています。自治労、日教組等、公務、公益関係の労組が半数を占めています。
どこの会社でも、会社が赤字になれば、値上げをするのではなく、経費削減、合理化から手をつけるのは当然です。
大阪市長になった橋下徹氏の人気を見ても、国民が自治労、日教組等の「公務員の既得権益の打破」を求めていることは明らかです。
しかし、民主党政権は、支持団体である労働組合のしがらみで、最も優先すべき「公務員改革」は「タブー」になっています。
幸福実現党も「公務員改革」として、公務員の給与や賞与の一定割合をGDP成長率、あるいは日経平均株価などと連動させることを提言しています(⇒【ついき秀学のMirai Vision】公務員問題 必要なのは「経済感覚」http://p.tl/TXk2)。
シンガポールでは、公務員の賞与はGDP成長率に連動しており、例えば世界同時不況の影響を受けた2009年には夏のボーナスは支給されていません。
日本でも、景気の変動に連動して公務員給与も上下するという形にすれば、官僚たちも「デフレ下の増税」といった更に景気を悪化させるような愚かな政策は即刻やめて、経済成長をもたらす政策を真剣に考えるようになるはずです。
チャーチルは国を「滅亡」から救うために「Never give up!」と3回繰り返しました。これに対して「デフレ下での増税」によって国を「滅亡」に追い込むために「Never give up!」と4回繰り返す野田首相の悲しいまでの愚かさ。
「税高くして 民衰え 国滅ぶ」(渡部昇一)――これ以上、野田首相の暴挙を看過することはできません!
(文責・加納有輝彦)