復興財源――なぜ、復興債の日銀直接引受か
幸福実現党は、東日本大震災の復興には、増税ではなく復興債の発行と日銀の直接引受を主張しています。理由は、迅速に財源が確保できることにつきるでしょう。そして、早急に復興支援対策として財政出動ができることが主な理由です。
確かに、野放図に直接引き受けを行えば、インフレとなる可能性はありますが、現時点は被災地の被害総額とデフレギャップを加味した金額は20兆円強だと推計されています。裏を返せば、20兆円程度までならインフレは起きないことを意味しているのです。
また、同じような金融政策に、日銀による国債買い切りオペというのがあります。言葉は難しいですが、既に発行されている国債を金融機関などから購入することを指します。つまり、既発国債の購入を買い切りオペ、新発国債の購入を直接引受と言って区別しています。
両者の違いをもう一点付け加えるとすれば、買い切りオペは日銀が金融市場から調達するのに対して、直接引受は財政法5条の例外規定によって政府が日銀に指示ができます。買い切りオペの場合は、政府が日銀に指示できるものではない点、実効性は不明だと言えるでしょう。
しかしながら、日銀はどちらの政策にも否定的な見解を示しており、このままでは政府と財務省主導の増税路線が先鋭化してしまいます。
政府は、復興対策として増税を検討しています。特別会計から財源を確保して、できる限り増税額を圧縮しようとする努力は見られますが、デフレと震災不況が蔓延しており日本経済で増税をかけるのはあまりにもリスクが高すぎます。
加えて、増税の場合は税収が確定するのが来年度以降となりますので、それだけ復興財源が確保するのが遅くなることを意味します。被災地の復興を考慮すれば、国債を発行して日銀に直接引受をしてもらい、一日も早く財源を確保するのが第一の任務です。
「復興には数年を要するので、増税によって獲得した財源を来年度以降に使うからよいではないか」というご意見もありますが、この議論の弱点は、増税による経済へのマイナス効果を過小評価していることです。
消費税のような間接税(税金を支払う主体と納める主体が違うケース)であろうが、所得税や法人税のような直接税(税金の支払いと納める主体が一致しているケース)であろうが、増税によって国民の可処分所得(税引き後の所得のこと)は確実に減ります。
実際、1990年以降の日本経済では、増税によって税収が増えているとは言えません。かえって、トータルの税収は減っています。
一番顕著な例は、1997年です。消費税、特別減税の廃止、医療費上昇などの総額は9兆円にも上り、97年までは2%台の成長率だったものが、98年にはマイナス1.9%まで低下しました。一般税収もわずか1年で54兆円から49兆円強まで落ち込んでいます。
97年には、東アジアで通貨危機や山一證券の破綻といった金融危機も起こったことも強く影響しているのは言うまでもありません。
このように、90年の「バブル崩壊」から少しづつ回復していた日本経済が、増税路線によって見事にマイナス成長となった事例を忘れるべきではありません。同じ過ちをわざわざ繰り返す必要などないのです(実際、橋本首相は当時の政策が誤りであったことを国民に謝罪した)。
当時は、まだ成長段階でしたが、現在は震災と原発事故による経済的損失も加わっています。財政法5条には、「特別な事由」がある限り、国会の議決を経た範囲内で日銀の直接引受を行うことができます。
「千年に一度」と言われる未曾有の震災と言われている以上、日銀の直接引受を行う正当性は法的にも担保されているのです。
財政学の原則でも、人災の被害を最小化するには、増税ではなく国債の発行です。原理原則に即して考えても、増税が復興支援になるとは言えないのです。
以上、幸福実現党が復興増税ではなく東日本復興債(破壊されたインフラ整備をする以上、建設国債が妥当)の発行と日銀直接引受を主張する理由を述べました。
日銀の直接引受と聞いただけで拒否反応を起こすような論調が目立ちますが、私たち幸福実現党は、理論と関連法案、経済史などを考慮して日銀直接引受を主張しています。
震災復興という特殊な環境下での政策ですので、永久に実施するものではありません。今、必要なのは「非常事態の経済学」なのです。日銀の直接引受は、その最たるものなのです。
(文責・中野雄太)