温暖化対策税は焼け石に水
民主党政府は、本年度導入を予定している「温暖化対策税」を復興財源に充てることを検討し始めました。
いつものことながら、時限付で復興財源に回すという方向性で議論が進められています。政府としては、税収を約6000億円程度見込んでおり、所得税や法人税増税を圧縮する狙いがあります。
まず、本来の趣旨は企業の二酸化炭素排出を抑制し、地球温暖化の財源とするものでした。
ところが、菅前首相の判断により、わが国は脱原発に急遽舵を切ることになりました。現在、原子力に代替されるエネルギーは火力発電以外にはありません。
石炭や石油を使う以上、二酸化炭素排出が必至の火力発電では、地球温暖化対策は難しいと言えましょう。鳩山政権時代に約束した1990年比で25%削減という目標は、一層困難となったとみるべきです。
夏場の電力不足はなんとか回避されつつあるとはいえ、まだまだ予断を許さない状況であることは変わりません。なぜなら、原発のストレステストや定期点検を続けることで、来年の春先には全ての原発がストップする可能性があるからです。
そうなれば、これまで発電量の3割を賄っていた電力が失われ、一層火力発電によるシェアが高くなります。必然的に、二酸化炭素排出量が増えてしまい、地球温暖化対策は無効となります。
企業側の必死の節電と生産調整がなされている中、温暖化対策税を導入することは、生産活動をやめろといっているようなものです。
今検討すべきは、温暖化目標を棚上げしてでも、企業の生産活動を促進する政策です。
さすがに、この時期の増税には与党内においても反対が強く、国会でも継続審議となっています。税制改革法案を急ぎ、付け刃的な増税を行うよりも、復興のための財政金融政策が優先されるべきです。
日銀による国債引受という手段を通じて、容易に財源が確保できることに懸念を持つ方多数いますが、デフレギャップを解消する20兆ないし30兆円程度であればインフレを怖れる必要はありません。
国債直接引受を行う肝心の日銀は、デフレと円高対策としての金融緩和の姿勢は示していますが、相変わらず様子見を続けており、抜本的なデフレ脱却の目処がたっていません。
温暖化対策税のように新しい税を導入しても、税収が確定するのは来年度です。これは他の税金に関しても同じです。
今は一日も早く財源が必要な時期です。そのために、幸福実現党は東日本復興債の発行と日銀の直接引受を行い、東北地方へのインフラ整備と防災大国化に向けての投資を提言していますが、それは本気になれば一週間で財源が確保できるからです。 ※[参考]【ついき秀学のMirai Vision】増税ではなく国債の日銀引き受け必要⇒http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110603/mca1106030501001-n1.htm
さらに、「復興から日本再建」を合言葉にして、「新・所得倍増計画」を打ち出し、国防産業や新エネルギー産業などの未来産業育成にも力を入れています。名目経済成長を高め、所得税や法人税の自然増を実現するほうが、よほど国家財政と家計にも優しい政策です。
野田政権は「いかにして足りない財源を補充するか」という発想しかありません。
しかしながら、本来の政治家としての使命は「いかにして国民を豊かにするか」が大事です。デフレ不況時に増税しか対策がないような政権では、わが国の財政は一層厳しくなる可能性があります。
もういい加減に、増税で税収増を図るという政策を捨てるべきです。増税は、必ずしも税収増になっていないことは、1990年以降の歴史を見れば一目瞭然です。
温暖化対策税は焼け石に水であり、日本経済にとって百害あって一利なしといえる愚作です。増税路線を強める野田首相に「Noだ!」と訴えていかなくてはなりません。
(文責:中野雄太)