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ロシア軍機日本一周とロシア外交

ロシア軍機が日本周辺空域を1周した問題で、ロシア国防省は9月8日、戦略爆撃機が警戒飛行を行い、自衛隊と韓国空軍の戦闘機計10機の追尾を受けたことを認めました。

一方、プーチン首相は同日、南クリール諸島(北方領土)の開発促進のため年内に追加資金を拠出する方針を示し、北方領土の実効支配を進める意思を明確にしました。

さらに、防衛省は9日夜、ロシアの海軍艦艇4隻が北海道の北にある宗谷海峡を通過したと発表しました。他に約20隻が宗谷海峡に向かい、10日未明までに一部が通過していました。

明らかに、安全保障と領土問題の両面から、発足間もない野田政権の主権意識や外交姿勢を瀬踏みしている公算が大きいと言えます。

それに対して藤村修官房長官は9日午前の記者会見で、外交ルートを通じてロシア側に懸念を伝える考えを示しました。

日本は抗議することも必要ですが、「なぜ、ロシアがそのような行動に出ているか」を理解することも必要でしょう。

近年の日本の政局は1年に1回のペースで首相が交代しており、外交は完全に機能不全を起こしています。

特に外交オンチの鳩山元首相が普天間問題によって引き起こした「米国の対日不信」は、「日米同盟」に深刻なヒビを入れたのみならず、中国、ロシア、北朝鮮等の周辺国にとっても、米国の後盾が薄くなった日本をゆする絶好の機会を作ってしまいました。

また、野田首相に代わったばかりに起きた今回の事態は、ロシアが日本を敵視しているよりも、日本との外交を進めたいがために注意喚起を狙っているとも考えられます。そのためにロシアが一見強硬な手段に出たとも指摘できます。

ロシアが喉から手が出るほど日本に対して求めているのは、貿易・ハイテク技術の支援などの「経済的取引」です。

地理的な視点(西はヨーロッパ、東は中国など)から考えても、ロシアは広大な陸地を有しているため、どこか一つの国に肩入れをすることは難しく、多方面に外交関係を安定させることが必要です。

ロシアから見れば、日本に対しては北東アジアでの中国に対する抑えとしての役割と、経済的な取引相手として見ていると考えられます。

日本側としては政府間の北方領土交渉だけでは前に進みません。日本の外交においては、尖閣・沖縄を中心とした中国の脅威が迫っている以上、優先順位としては中国への防衛を強化しつつ、ロシア外交は戦略的に考えるべきでしょう。

中国とロシアが手を結ぶような手は打つべきではなく、むしろ、ロシアとは経済交流等によって手を結び、対中国包囲網を作っていく戦略の上で手を打たなくてはなりません。

つまり、政府間の領土問題だけではなく、安全保障では定期的な戦略対話を重ね、経済ではエネルギー開発とハイテク技術支援(ロシア版シリコンバレー「スコルヴォ」計画への協力など)を行うなど、「三本柱」をセットとしたロシアとの関係改善・強化を進めていくことが求められます。

優先順位は中露の分断。そのために、日露間は経済レベルで協力しつつ、軍事的にはしっかりと防衛する。領土問題はじっくりと解決していくというスタンスが現在示せるロシア外交の戦略でしょう。

(文責:小島一郎

小島 一郎

執筆者:小島 一郎

幹事長代理

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