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「シビル・アンコントロール」内閣

一川防衛相は防衛大臣就任に伴い、「私は安全保障の素人だが、それが本当のシビリアン・コントロール(文民統制)だ」と述べました。

この発言に対して、自民党の石破茂政調会長(元防衛相)は「閣僚解任に値する。任命した野田佳彦首相の見識も問われる」と批判し、国会などで追及する考えを示しました。

「シビリアン・コントロール(文民統制)」とは、「民主主義国家における軍事に対する政治優先」、または「軍事力に対する民主主義的な政治統制」を意味しています。

研究社の新英和中辞典によれば、“civilian”とは、名詞として「(軍人・聖職者に対して)一般人、文民、軍属、非戦闘員」とあり、形容詞としては「文官の」「文民の」という意味があります。

すなわち、(軍人でない)政治家が軍を統制することであり、広い意味では(政治家を選ぶ)国民が軍を統制する原則です。

これは、旧憲法下において統帥権が独立し、内閣の統制が及ばずに軍部が独走した反省を踏まえ、国民の意思によって、自衛隊が整備・運用される制度を企図したものです。

具体的には、内閣総理大臣は自衛隊に対する最高の指揮監督権を有し(菅直人氏は首相就任後、しばらくしてこの事実を知ったそうですが…)、防衛大臣は自衛隊を含む防衛省全体の組織を統括することでシビリアン・コントロールが図られます。

防衛大臣は、防衛官僚や自衛隊高官の意見を聞き、決断し、一国の運命と国民の生命・安全・財産を守る責任があり、その判断責任は極めて重く、決して素人であって務まるものではありません。

特に、現状においては、軍拡にひた走る中国の覇権主義に対する対策、尖閣諸島防衛の強化、北朝鮮の核ミサイルと朝鮮半島有事への対応、普天間基地移設問題の解決等、我が国を取り巻く外交・国防上の課題は緊急かつ重大な局面を迎えています。

そうした中、防衛大臣が“安全保障の素人”では、防衛省や自衛隊を統制できず、「シビル・アンコントロール(無統制)」状態に陥ってしまいます。

野田首相は新内閣を「適材適所の布陣だ」と自負していますが、防衛大臣のみならず、外務大臣に就任した玄葉光一郎氏も外交経験がありません。また、財務大臣に就任した安住氏も財政、為替、経済政策等の経験がなく、素人同然の布陣だと言えます。

重要三閣僚がこれでは、野田内閣を「シビル・アンコントロール」内閣と命名したくなります。

(文責・黒川白雲)

黒川 白雲

執筆者:黒川 白雲

前・政務調査会長

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