復興増税成立――政府の無駄を削減すれば増税の必要はない!
東日本大震災の復興財源を賄う臨時増税などを盛り込んだ復興財源確保法案が11月30日、可決されました。
13年1月から所得税は納税額に2.1%上乗せする定率増税を25年間実施。個人住民税は14年6月から10年間、年1000円上乗せされます。また法人税は実効税率を5%引き下げたうえで、その範囲内で3年間増税されます。
野田首相は「将来世代に負担を先送りしない」と言いながら、民意を問うことなく、25年間に渡る実質「恒久増税」をなし崩し的に成立させました。
民主主義の根本には「(民意を無視した)政府の勝手な増税を許さない」ことがありますが、野田首相はこの一線を超え、まさしく「独裁」の域に入りました。
また、政府は「財源が足りないから増税する」と説明する一方で、財務省は11月30日、政府・日銀が10月28日以降、約1か月間に行った外国為替市場での市場介入額が9兆916億円だったと発表しました。
10月31日の介入額は7兆5000億~8兆円前後と見られており、10月31日以降も、介入の事実を公表しない「覆面介入」を続けていたことが明らかになりました。
政府・日銀の介入は、8月分と合わせて約12兆円と見られていましたが、実際には約13.5兆円という、復興増税額(10.5兆円)をはるかに超える額を為替介入に投下していたことが明らかになりました。
単独介入の効果の薄さ、単独介入に対する国際的批判を鑑みるに、13.5兆円という介入資金枠を復興財源に回すべきでした。そうすれば、復興増税を回避することができたはずです。
※為替介入の資金は、政府が政府短期証券を発行して借金で調達していますが、既に政府短期証券は171兆円まで残高が膨らんでおり(10/29読売)、更に円高によって、外国為替資金特別会計は年間の税収額(40兆円程度)に相当する「含み損」を生んでいます(11/2ブルームバーグ)。
また、復興増税が成立した直後の12月1日、野田首相は安住財務大臣に対して、2兆円を超える規模の第4次補正予算案の編成に入るよう指示しました。
会談後、安住財務大臣は「財源については、赤字国債などは発行せず、国債の(利払いの)不用額などが出てくるので、その中で対応する。規模は2兆円を下回ることはないと思う」と述べ、2兆円を超える規模の埋蔵金の存在を示唆しました。
幸福実現党は「国債整理基金特別会計の剰余金(10兆円程度)で財源を捻出すれば復興増税は必要ない」と主張しておりましたが、復興増税成立前にはそうした埋蔵金の存在を一切、秘匿し(あると分かれば復興増税不要論が盛り上がるため)、復興増税成立直後に埋蔵金の存在を明かすのは非常に卑怯な手口です。
今後、政府は復興増税をスプリングボードとして、消費税率を10年代半ばまでに10%まで引き上げる法案を次期通常国会に提出する予定ですが、1997年の消費税増税でも日本経済は痛い経験をしましたように、消費増税は景気に対して極めて深刻な打撃を与えます。
政府は増税に次ぐ増税を企図すべきではなく、特殊法人等への補助金や財政支出を含む、膨大にして多岐に渡る無駄を削減すると共に、増税ではなく、経済成長によって税収を増やしていく「成長戦略」をこそ選択すべきです。
(文責・黒川白雲)