TPP:日本は国家戦略を描き、イノベーションを成し遂げよ!
11日、野田首相が記者会見を行い「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と表明、ハワイで開かれているAPEC閣僚会議で、日本はTPP参加方針を表明しました。
これを受けて、幸福実現党はついき秀学党首より「野田首相のTPP交渉参加表明を受けて」という声明を発表致しました。 ⇒http://www.hr-party.jp/new/2011/14151.html
国内からは「TPP参加表明」は「見切り発射」だと批判され、民主党内における意見集約も不十分、国会における承認も無く、国民の理解も得られぬまま、戦略無き方針が発表されたと言えます。
ついき党首の声明にも、「我が党はTPP交渉参加を是とするものだが、閣僚の中には首相の会見を参加表明ではないとの認識を示す者もいるなど、政権内で合意形成が十分になされておらず、交渉参加に向けた政府・与党の態勢作りには疑念を抱かざるを得ない」と懸念を表明しています。
TPP交渉参加が「亡国への道」に至るのか、さらなる「繁栄への道」を切り拓く導きとなるのか。結局のところ、今後の政府の「交渉力」「外交力」にかかっていると言えます。
【国家戦略を描き、政官民一体となって実現せよ!】
外交文書を紐解くと、1994年「APECボゴール宣言」で「APEC経済間の経済発展段階の違いを考慮に入れ、先進工業経済は遅くとも2010年までに、また、開発途上経済は遅くとも2020年までに自由で開かれた貿易及び投資という目標を達成する」(外務省HP)との合意をしています。
しかし、「ボゴール宣言」より既に17年が経過しておりながら、自由貿易に向けた日本の経済戦略や国際戦略はどうだったのでしょうか?全く機能していない国会、政治家の不作為が浮かび上がってきます。
また、世界各国は「政・官・民」が一致して世界シェア獲得のために鎬を削っていますが、日本は各企業の孤軍奮闘で厳しい努力が続いています。
例えば、リニア新幹線はJR東海だけで行っているプロジェクトですが、政官民一体となれば新産業を育成することになり、社会インフラとして輸出産業とすることが出来ます。貿易自由化の中で、もっと創造的な政治判断が求められることになります。
さらに、TPPは単なる通商条約としての経済連携ではなく、社会基盤となる医療や訴訟等も含める法的枠組みを提供し、国家的・社会的に強固な関係となる条約である以上、国家戦略が不可欠です。
TPP反対派が言うように、確かにTPPは食品安全基準や公的医療制度への影響など、問題点も多々見受けられます。これらも、政府がどのように交渉を進めていくか、そして、国内政策による中和をいかにして成し遂げるか、政府の交渉力と構想力が試されます。
今後、自由貿易の流れの中で、世界的分業における日本が果たすべき役割は、世界最先端技術をさらに高度化する挑戦であり、創造開発することにあります。
「TPPは国内の雇用を失わせる」という批判も根強くありますが、そうならないためにも、発展途上国の労働者との差別化を図るべく、国内雇用者の付加価値と生産性を高めるための高等・大学教育の改革も急務です。
また、新産業の技術開発における要となる航空・宇宙・軍需産業の育成、前提となる「武器輸出禁止三原則の撤廃」など、自由貿易における繁栄実現への体制づくりが必要となるでしょう。防衛産業なども自由貿易が進めば、成長産業の一つとなることは間違いありません。
国益を実現するのであれば、単なる交渉参加では終わることなく、日本が繁栄するための「国家戦略」を打ち立て、その実現に向けた大きな社会変革を伴うイノベーションを断行していくべきです。
そのような構想力無くして、自由貿易の時代に国富を増やしていくことは出来ないでしょう。
【国民の意識変革とイノベーション】
そして、最後に申し上げたいことはTPP交渉参加に伴い、日本人に求められる意識変革です。
日本は押しも押されもせぬ「大国」であり、「他国を救う力」があるにもかかわらず、私たち日本人には未だ「発展途上国意識」が残っていると言わざるを得ません。
中国や発展途上国の追い上げにより、フローの統計の相対的地位は下がっても、日本が「経済大国」であり、ストックとして巨大な国力を有していることに何ら変わりません。
2010年末までの日本の企業や政府、個人投資家が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産は、円高などの影響を受け、前年比5.5%減の251兆4950億円となり、2010年末の時点で、日本は20年連続で「世界一の債権国」となっています。
幸福実現党は「日本はギリシャの経済危機を救うべき」と提言していますが、ギリシャのGDPは、現在の為替レートで23兆円程度に過ぎません。東京都のGDP(約90兆円)は言うに及ばず、大阪府(約39兆円)や愛知県(約35兆円)のGDPをも下回っています。
日本は一都市が一国を上回る程の「巨体」となっており、「他国を救う力」を既に有しているのです。
また、超円高が続くトレンドも変わらないでしょう。日本は超円高を好機として、往年のアメリカのように、世界中からもっと輸入し、世界の経済危機を救うと共に、下位国のためにも、もっとモノを買って上げて、世界経済を牽引すべきです。
それが「世界のリーダー国家」としての役割であり、使命でもあります。
「保護貿易」は発展途上国の国家戦略であり、「一国平和主義」の経済版に過ぎません。いつまでも「保護貿易」「輸出依存」では、世界の「リーダー国家」にはなれません。
日本は「大国」として、「開国の重み」に耐え抜き、これを好機として、国民の総力によって、もう一段の高付加価値産業へのシフトを成し遂げ、今こそ、「世界のリーダー国家」に向けたイノベーションをなしていくべきです。
(文責・小川俊介)