「日米安保破棄」の危機!?
「日米安保破棄を真剣に検討し始めた米国」――そんなショッキングなタイトルの分析記事が「JBpress」というWEBメディアに11/8に掲載されましたので、今回はそのポイントを紹介致します。 ※興味のある方は全文をお読みください⇒http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/27869
記事はまず、ヒラリー・クリントン米国務長官がアメリカの代表専門誌“Foreign Policy”誌(10月11日号)に発表した論文の要旨として、以下の4点を掲載しています。
(1)米軍は経済力減退に伴い引き続き「世界の警察官」を全うするに足る戦力を維持することができない。従って、今後は、重点戦域を定め、一部からは思い切って撤退し、特定戦域に戦力を集中して配備する必要がある。
(2)しからば、重点的に米軍を配備する正面はどこにするか。それは中国が台頭し、米国の経済的利益も大きいアジア太平洋にほかならない。
(3)アジアにおける冷戦後の重点配備は、日本と韓国であった(合計で5万人強の米軍を配備)が、これを見直す。
(4)新たな配備の方向性として、特に南アジア、インド洋での米軍プレゼンスを強化する。豪州は南アジア、インド洋をコントロールするうえで、戦略的な重要国家。
つまり、クリントン国務長官は、アメリカは今後、経済的な事情から、世界の警察官の任務を放棄せざるを得ない。しかし、台頭する中国と対峙してアジアの利権を守るために、特定の重点地域に戦略を集中する。それは従来の日本や韓国ではなく、オーストラリアだというのです。
そして、近い将来米国は日本の戦略的価値を「要石」などと持ち上げなくなるだろう。その帰結として、次の通りのシナリオが考えられるとしています。
第1のシナリオ:米国は、日米安保を維持するものの、その信頼性は空洞化する。
第2のシナリオ:米国は、一方的に日米安保を破棄する。
第3のシナリオ:米国は、日米安保条約を双務条約に改定することを迫る。
本記事は「戦後、60年以上にわたり、我が国の平和と繁栄の基盤になってきた、日米安保体制が今重大な岐路に差しかかっていることを銘記すべきだろう。日本は、戦後レジームのコペルニクス的な転換の時期を迎えるかもしれない。(中略)
半世紀以上続いた戦後レジームをどのように変えればよいのだろうか。日本国民は、生存(安全保障)と繁栄の道――生き残りの道――について、真剣な議論をしなければならない重大な時期にあるものと思う」と結んでいます。
この記事の執筆者は、陸上自衛隊の元陸将の福山隆氏です。実際に陸上自衛隊の最高位を務めた人物の分析だけに、その結論の意味は極めて重いと言えるでしょう。
福山氏はアメリカは近い将来、日本との同盟関係を大幅に見直し、場合によっては、米軍は日本から撤退し、中国と対峙するために、オーストラリアを戦略拠点とする戦略に切り替える可能性があると分析しています。
これは、米軍の補完的な位置付けとしての自衛隊しか持たない日本にとって、まさに死活的な事態です。
この背景には、民主党政権が普天間基地の移設問題を長引かせたことによって起きた米国の日本に対する不信感が、米国の将来の安全保障戦略を変更させるだけの大きなインパクトがあったとことが推測されます。
「日本国民は、生存(安全保障)と繁栄の道――生き残りの道――について、真剣な議論をしなければならない」とありますが、迫り来る中国の脅威に対抗し、日本が生き残るためには以下の3点の実行が不可欠です。
(1)普天間基地移設問題を日米合意に基づいた方向で解決し、早急に関係を修復し、日米同盟の維持・強化を図る。
(2)外交的にはインドや東南アジア、ロシア、EU等との連携を強め、中国包囲網を形成し、グローバルな視点から勢力均衡を図る。
(3)憲法9条改正、並びに海軍力強化をはじめとする自主防衛強化、日本独自の防衛産業の振興を図る。
「自分の国は自分で守る」――今こそ、私たちが立党以来、訴えて来た幸福実現党の政策の実行が求められているのです。
(文責・矢内筆勝)