Home/ 2022年 April 2022年 April ウクライナ紛争で核戦争も辞さず。プーチンの覚悟とは? 【後編】 2022.04.03 https://youtu.be/0gkDzQ4tQA0 幸福実現党党首 釈量子 ◆北朝鮮のミサイル発射 アジアに目を転じると、北朝鮮の金正恩総書記が、核兵器の有効性を確信して、ミサイル発射を繰り返しています。 3月24日には、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と言われている「火星17型」を発射しました。 高度6000キロメートル、滞空時間70分と言われ、米国に到達可能なミサイル開発が成功したことになります。 今回のミサイル発射には、金総書記の「ウクライナ問題を見ても、米国には核戦争の勇気はないが、北朝鮮はその覚悟がある」というメッセージが込められているように思います。 ◆ウクライナの次は台湾? そして、中国がいま、虎視眈々と台湾を狙っており、トランプ前大統領は、2月22日に出演したラジオ番組で、「次は台湾だ」と警告しました。 3月18日、バイデン大統領が習近平国家主席との電話会談で、「同盟関係強化による対中包囲網を形成せず、台湾独立を支持しない」と述べました。 この電話会談で、習氏は「あなた(バイデン大統領)の表明を非常に重くみている」とクギを刺したと報じられています。 ロシアを制裁するために中国に協力をお願いするようなバイデン大統領を、習氏は足元を見ているわけです。 ◆バイデンは台湾を守るのか ウクライナは独立国ですが、NATOに加盟していないため、NATOは軍事行動をしていません。台湾がウクライナと異なる点は、米国と台湾の間に「台湾関係法」があることです。 しかし、「台湾関係法」には、台湾防衛に必要な戦闘機やミサイルなどの供与は書かれていますが、軍事的関与は、明記はされていません。 ◆蔡英文総統の台湾国防策 一方で、台湾の蔡英文総統は米国に頼るだけではなく、自衛力を強化しています。 台湾では2018年に徴兵制を止め、現在志願制を採用していましたが、少子化などで十分な兵員数を確保できていません。 そこで、志願していない18歳~36歳の男性を対象に4か月の軍事訓練義務を今後、1年間に延長しようとしています。 さらに、台湾政府はハンドブックを作成し、緊急事態やゲリラ戦を想定し、市民の戦争への準備を行う予定です。 5月には、ミサイル攻撃を受けた場合の避難訓練も行います。まさに戦争前夜です。 ◆バイデン外交の限界 3月24日、バイデン大統領は訪問先のブリュッセルで、記者からロシアに対する「経済制裁による抑止」は見通しが甘かったのではないかという質問を受けました。 これに対してバイデン大統領は、「経済制裁で、プーチン氏を抑止すると言ったことはない」と語気を強める場面がありました。 「核を落とすぞ」といった強い姿勢があれば止められたのかもしれません。しかしバイデン大統領は「アメリカは軍事介入しない」と早々に言ってしまっています。 バイデン大統領は、アフガンに続いて、ウクライナへの対応についても「失敗した」と見られ始めています。 大川隆法党総裁は3月26日、『金正恩の霊言』の冒頭で、バイデン外交の問題点を次のように指摘しています。 「バイデン大統領が、権威主義VS民主主義の戦いで、独裁者スタイルでやっているところを全部敵に回しているが、勢いだけで煽って、人気を取ろうとした場合、後始末しなくてはいけなくなる。」 バイデン大統領から権威主義国家と見なされたロシアや中国、北朝鮮、イラン、パキスタンなどの国の結束がどんどん強くなり、世界大戦の構図が出来つつあります。 厄介なことに、権威主義国家はどこも核兵器を保有しており、国を護るためには核を撃つ決断ができる国家元首ばかりです。 ◆日本はいかにあるべきか ひるがえって日本の岸田首相は、3月27日、防衛大学校で「事態の展開次第では世界や日本も戦後最大の危機を迎えることになる」と話しました。 核シェアリングを含めた核装備など、戦後日本がタブー視してきた防衛策についても踏み込まないといけません。 ウクライナ問題は、「世界大戦、核戦争を防ぐためにどうすべきか」という大局的な観点から「ウクライナの中立化」を目指すべきだと思います。 最近、ゼレンスキー大統領が「中立化」を受け入れる準備があると報じられましたが、日本はロシアとウクライナが早く合意する方向で努力してほしいと思います。 ウクライナ紛争で核戦争も辞さず。プーチンの覚悟とは? 【前編】 2022.04.02 https://youtu.be/0gkDzQ4tQA0 幸福実現党党首 釈量子 ◆プーチン「核戦争も辞さず」の覚悟 ロシアとウクライナの紛争が長引く中で、「ロシアが核兵器を使用するのではないか」という見方が出ています。 マスコミは、ロシアの軍事介入は国際法違反といった枠組みの報道ばかりですが、プーチンの「核戦争も辞さず」の覚悟を理解しないと判断を見誤ります。 2月24日の開戦前のプーチン大統領が行った演説に、ロシアにとっての「大義」を表明しています。 ◆NATOのユーゴ軍事介入 演説では、冒頭でNATOの東方拡大がロシア国境に迫っていることを指摘した後、NATOや米軍の軍事介入の歴史を振り返っています。 最初に批判したのが、1999年にユーゴスラビアの首都で、ドナウ川の古都「ベオグラードに対する流血の軍事作戦」と「コソボ空爆」です。 「(NATOは)国連安保理の承認なしに、ベオグラードに対する流血の軍事作戦を行い、ヨーロッパの中心で戦闘機やミサイルを使った。数週間にわたり、民間の都市や生活インフラを、絶え間なく爆撃した」 バルカン半島南部のコソボ地方で、地域の9割以上を占めていたイスラム系のアルバニア人が、1998年に自治権を奪われ独立を要求しました。 ユーゴスラビア政府がこれを弾圧したことで、翌1999年NATOが軍事介入。NATOによる空爆は1万回を超え、古都は破壊されました。 ユーゴ側の発表では、民間人1200人、NATO側の発表で兵士5000人が亡くなっています。 ◆米軍のイラク侵攻 次にプーチン大統領は、米軍が2003年に「何の法的根拠もなく行ったイラク侵攻」について次のように非難しました。 「イラクに大量破壊兵器が存在するという、信頼性の高い情報をアメリカが持っているということだった。後になって、それはすべて、デマであることが判明した。イラクに化学兵器など存在しなかったのだ。」 「イラク戦争」では、2011年の米軍撤退までに、イラク民間人11万6000人と多国籍軍兵士4800人が亡くなっています。民間人併せて50万人が死亡したという説もあります。 後にこれがイスラム国台頭のきっかけとなり、イラクでは10万人単位での死者を出しています。しかしアメリカは「戦争犯罪」と非難されることもないというわけです。 ◆米国の傲慢さ さらに、同演説でプーチン大統領は次のように警戒しました。 「米国は気に食わない政権を転覆させるために軍事介入し、民間人も大量に殺してきた。冷戦は終わっているのに、NATOは加盟国を増やし攻撃的だ。ロシアの危機は国境まで迫っている。」 実際、最近バイデン大統領が「プーチン大統領は権力の座にいてはいけない」と思わず本音を言って、慌ててホワイトハウスが「政権転覆の意図はない」と釈明しました。 米国には、こうした傲慢な面があり、アメリカを嫌う国が結構あることを知る必要があります。 ◆戦術核の使用もあり得る 次に、プーチンが最も使う可能性が高いとされる「戦術核」ですが、戦術核は、戦略核である広島の原爆と比較して、威力の小さい核兵器のことです。 プーチン大統領が戦術核の利用を考えるきっかけが、前述の演説で取り上げた「ベオグラードに対する流血の軍事作戦」「コソボ空爆」でした。 ロシアは「コソボ空爆」を見て、NATOの爆撃が非常に精密なことを目の当たりにし、ロシア軍の通常兵力ではNATOに敵わないと思ったわけです。 そこでロシアは軍事方針として、「ロシア軍の防衛力を上回る、通常兵器による攻撃があった場合、戦術核による限定的な攻撃を行って、事態を好転させる」という作戦を立案しました。 当時、プーチン氏はロシアの国家安全保障会議のトップを務めていたのでこの作戦立案に深く関わっていました。 米議会の報告書によると、ロシアの戦術核の弾頭保有数は1000~2000発もあります。米国の保有数は200発強、そのうち100発前後が欧州にあります。 ◆NATOが報復に出る可能性 最近、米国は核兵器の使用を「敵国の核攻撃の抑止」に限定するという見直しを予定していました。 しかし、ウクライナ危機で、米国の核の傘に入っている同盟国から反対もあり、従来通り「先制攻撃」や、大規模な通常兵器による攻撃にも、核兵器で反撃できるという選択肢を残すことになりました。 ロシアが戦術核を使用した場合、NATOが報復に出れば、報復合戦で核戦争が起きてしまう可能性があります。 このように、プーチン氏は米欧の横暴から祖国を守るために「核兵器の使用も辞さない」という覚悟で臨んでいるわけです。 これはキューバ危機ときのケネディと同じ、国家元首としての覚悟です。 (後編につづく) すべてを表示する « Previous 1 2