Home/ 2018年 November 2018年 November 米中新冷戦の鍵となる「個人情報」――プライバシーとイノベーションの両立を目指せ! 2018.11.18 米中新冷戦の鍵となる「個人情報」――プライバシーとイノベーションの両立を目指せ! HS政経塾8期生 藤森智博 ◆「データを制する者は世界を制する」 この言葉は、中国の巨大IT企業アリババの創業者・馬雲(ジャック・マー)氏が語ったものです。 これを体現するかの如く、アリババは「データ」によって急成長し、現段階では5億人以上の個人情報を手がけています。2018年8月末時点で世界7位の時価総額を誇ります。 アリババのビジネスは、ネットとリアルを橋かけするものです。 「アリペイ」という新しい支払いシステムによって中国で爆発的にキャッシュレス経済を普及させました。現在は街全体をネットでつなぎ、人工知能(AI)で効率的な管理を実現する「スマートシティ」を手がけています。 中国ではこのようなIT技術の飛躍的な進化とともに国家の監視が強まっています。 矢野経済研究所によると、監視カメラの世界市場のうち、半分以上が中国を占め、2018年の1年間で3500万台近くの監視カメラが中国で売買されています。 この監視カメラと「顔認証」の技術を組み合わせて、国民一人ひとりの人間関係まで調べ上げることができるのです。 ◆アメリカに迫る最先端の技術 また、中国は自動運転などの技術でアメリカに迫っています。世界に先駆けて、運転席のない自動運転バス「アポロン」の公道投入に成功しました。 もちろん、まだ「アメリカ超え」には至っていません。公道試験の累計走行距離はアポロンの1万キロメートルを超える程度で、最大手のGoogle系ウェイモの1600万キロメートルには及びません。 しかし、本格的に市場投入が始まれば、逆転の可能性もあります。個人情報を国家で自由に扱える中国のほうが、走行記録の収集はたやすいでしょう。 走行記録からは、私生活が分かるため、重要な個人情報ですが、そのような情報を元手にして、AIのさらなるイノベーションも可能です。 ◆中国に対抗するため欧米諸国に必要なこと このような中国に日本や欧米諸国が対抗していくためには、個人が情報を預けられる「信頼」の構築と「イノベーション」を両立できる環境の両立が不可避です。 欧米諸国では、プライバシー意識の高まりから、個人情報を大量に扱う巨大IT企業に厳しい視線が向けられています。日本でも今年10月、8700万人の個人情報が流出したFacebookに対して行政指導が行われました。 ◆EUで施行された強力な個人情報保護法 EUでは個人情報を保護するための「一般データ保護規則(GDPR)」が今年5月25日に施行されました。GDPRは、プライバシーを守るための強力な権利を個人に保障しているという点で優れています。 一方で、細かすぎるルールや、中小企業も対象とした一律的な厳しい規制、2000万ユーロ(日本円で約26億円)か、世界売上高4%のいずれか高い方という高額な制裁金などが自由を抑制し、イノベーションを後退させてしまう懸念もあります。 トランプ政権のロス商務長官も、5月末にフィナンシャル・タイムズにてGDPRを「不要な貿易障壁」と評しました。 ◆「プライバシー」と「イノベーション」の両立を目指すアメリカ GDPRなどの動きを受け、アメリカでは、連邦全体のプライバシールールを作ろうという動きが強まっています。 9月下旬には、商務省管轄の国家電気通信管理局(NTIA)が、高度なプライバシー保護に向けた新しいアプローチを発表。11月9日まで広く意見を募集しました。 新しいアプローチは、「リスクベースマネジメント」を核とすることで、イノベーションができる柔軟性と個人のプライバシー保護の両立を目指しています。 扱う個人情報の「重要性」や「量」に応じた責任を追求する一方で、その責任の果たし方については一律的な規制は設けず、自由を重んじています。 これに対し、世界中から寄せられたコメントは200以上に及び、GDPRに携わる欧州委員会をはじめ、肯定的な意見が目立ちました。 従って、アメリカでは、この新しいアプローチを基にした統一的なルールが作られていくと言えるしょう。 ◆日本も「リスクベース」のアプローチを 日本では、現在、総務省を中心として「情報銀行」など個人が自分の情報をコントロールできる取り組みが進んでいます。 しかし、中身を紐解いてみると、「市場を育てる」のではなく、「国家主導で市場を作っていく」という社会主義的姿勢が目立ちます。 一方、個人情報保護法などの基礎となるルールも不十分です。 現行法の水準では、GDPRと違い、個人は企業から自分が預けたデータを取り戻せません。情報銀行より前に、環境整備が急務と言えましょう。 個人の権利と企業のイノベーションの両立には、法の明快さと柔軟性が不可欠です。 幸福実現党は「リスクベース」のアプローチから個人情報保護法を改正することで、「データ保護体制」で日米と連携し、中国の「デジタル共産主義」に対抗していきます。 参照 ・『チャイナ・イノベーション』(李智慧著、日経BP刊) ・『EU一般データ保護規則』(宮下紘著、勁草書房刊) ・矢野研究所HP https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1868 ・日本経済新聞社 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181116&ng=DGKKZO37736220U8A111C1EA1000 https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181117&ng=DGKKZO37736270U8A111C1EA1000 ・フィナンシャル・タイムズ https://www.ft.com/content/9d261f44-6255-11e8-bdd1-cc0534df682c ・NTIA https://www.ntia.doc.gov/files/ntia/publications/fr-rfc-consumer-privacy-09262018.pdf https://www.ntia.doc.gov/press-release/2018/ntia-releases-comments-proposed-approach-protecting-consumer-privacy ・総務省 http://www.soumu.go.jp/main_content/000559366.pdf 自治体行政の将来の在り方について――自治体戦略2040構想 2018.11.16 自治体行政の将来の在り方について――自治体戦略2040構想 幸福実現党公認 薩摩川内市議会議員 松澤 力 ◆今後の人口構造の変化と自治体行政 総務省の資料では日本の人口は2008年の約1億2800万人をピークに、大都市や地方で高齢化が急激に進行し、2040年頃には日本の総人口が毎年100万人近く減少していくと予測されています。 この人口減少は自治体の税収や行政需要に非常に大きな影響を与えると懸念されています。 国立社会保障・人口問題研究所のデータから作成された人口変動の資料によると、私が住んでいる薩摩川内市も、2015年の人口約10万人から2040年には人口が約30%減少すると予測されています。 医療、福祉、インフラ、空間管理など、住民サービスの多くは地方自治体が支えています。 その地方自治体が持続可能な形で住民サービスを提供し続けられるようにすることは、「住民の暮らし」や「地域経済」を守るために非常に大切です。 ◆自治体戦略2040構想 現在、検討が進められている自治体戦略2040構想では、高齢者人口がピークを迎える2040年頃にかけて迫り来る日本の内政上の危機を明らかにして、共通認識にした上で、その危機を乗り越えるために必要な新たな施策の開発と、その施策の機能を最大限発揮できるようにするための自治体行政の書き換えを構想するものです。 課題や施策のとりまとめが行われている自治体戦略2040構想研究会は、座長・座長代理・委員等の10名のメンバーによって構成され、既に第1回~第16回まで会議が開催され、第一次報告・第二次報告が総務大臣に提出されています。 ◆2040年頃の内政上の危機と対応案 2040年頃にかけての危機の一例として、自治体戦略2040構想研究会の報告の中では、急激な高齢化によって東京圏では入院・介護ニーズの増加率が高くなり、医療介護人材が地方から東京圏へ流出すると懸念されています。 検討されている対応案としては、元気な高齢者が支援を必要とする高齢者の支え手にまわる仕組みづくり、圏域内の自治体が連携した医療・介護サービス供給体制の確立、AIによる診断など技術革新の成果を積極的に導入して支え手不足の緩和する、などが出されています。 また、中山間地域等では、集落機能の維持や耕地・山林の管理がより困難になることが懸念されています。 この課題に対して、中山間地域等においては集落移転を含め、地域に必要な生活サービス機能を維持する選択肢の提示と将来像の合意形成などの検討案が出されています。大変難しい課題のため、今後更に検討が必要となります。 ◆人口縮減時代の自治体行政への転換の必要性 2040年頃は、高齢者人口がピークを迎えて、特に若年労働者を中心に労働力の絶対量が不足するが想定されています。その時に備え、自治体行政も人口縮減時代に対応する体制に転換していかなければなりません。 自治体行政の将来の在り方として、まず、スマート自治体への転換があります。 先ほど、自治体戦略2040構想研究会の中でも医療・介護サービスへのAIの活用案がありましたが、自治体行政においても今後の人材不足・税収減等の経営資源が大きく制約されることを前提に、従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組みが必要となります。 AI・ロボティックスが処理できる事務作業は全てAI・ロボティックスによって自動処理するスマート自治体への転換が急がれます。 次に、市町村の行政フルセット主義から脱却し、地方圏の圏域単位での行政を検討する必要があります。 従来の都道府県・市町村の二層制を柔軟化し、それぞれの地域に応じて都道府県と市町村の機能を結集した行政の共通基盤の構築の検討を進めなければならないと考えます。 地方自治体が持続可能な形で住民サービスを提供していくため、新しい時代に対応した自治体行政の構築のため、今後も精進して参ります。 政調会ニューズレターNo.18「首相による消費増税表明について」【概要版・後編】 2018.11.09 政調会ニューズレターNo.18「首相による消費増税表明について」【概要版・後編】 幸福実現党 政務調査会 *ニューズレター全文は、党HP(https://info.hr-party.jp/2018/7564/#_No18)に掲載しております。 安倍首相は、先月月15日臨時閣議で2019年10月に消費税率を8%から10%へ引き上げることを改めて表明しました。 今回は、増税と連動して行われる経済対策について、ポイントを整理します。 ◆経済対策の罠 安倍首相は増税表明の際、「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないように全力で対応する」と述べ、増税が個人消費に与える影響を抑えるための万全の対策を急ぐよう指示しました。 今回、経済対策として幼児教育・保育の無償化のほか、軽減税率の導入、中小店舗でキャッシュレス決裁を行った時のポイント還元、住宅購入時のポイント還元・住宅ローン減税の拡充などが検討されています。 このような一連の経済対策が行われるのであれば、「何のための増税なのか」というのが率直なところでしょう。 期間限定の経済対策については、駆け込み需要とその後の反動減を少しでも抑えようという狙いがあると思われますが、消費増税の影響は中長期に及ぶため、増税前後の短期的な現象が経済に与える影響を少しでも抑えようとするのは筋違いと言えます。 いずれにせよ、バラマキによる増税や複雑な税制の導入は、経済活動の自由の領域を狭めさせるほか、経済の歪みにもつながっていき、国の発展の阻害要因そのものとなります。 やはり、小さな政府・安い税金を心掛けるとともに、シンプルで公平な税制の構築を志向すべきです。 以下、補足点を列挙します。 ★軽減税率 増税で標準税率が10%になるのに対し、軽減税率は、酒類や外食を除く飲食料品、定期購読の新聞については税率を8%に据え置くとする制度です。 「スーパーやコンビニで買う食料品を持ち帰れば軽減税率が適用されるが、イートインコーナーなど店内で飲食する場合には適用されない」といった例があるように、どのような商品や消費形態が軽減税率の対象になるかが非常にわかりにくいと指摘されています。 そのほか、標準税率、軽減税率のどちらを適用するかを恣意的に判断できるようになるという意味で、政府は新しい権限を手にすることになり、この点にも非常に大きな問題を見出せます。政府による「恣意性」を排すには、消費税は一律5%に戻すのが得策と言えるのではないでしょうか。 また、消費税は事務手続き上、非常に複雑な税であると言われています(注2)。現在、軽減税率に対して準備を行っている中小企業は約8割に留まるとされていますが(注3)、来年、税率変更に加えて軽減税率が導入されることになると、企業は一層の負担を強いられることになります。 同様の制度を実施している欧州では、すでに課題が大きいとして制度を廃止すべきとの議論もあるようです。今、日本があえて軽減税率を導入する合理的な理由は見当たりません。 (注2)企業が行うすべての取引に消費税がかかるわけではないため、企業は消費税の納入に際しては、仕入れ、売上含めた全取引を「課税取引」「非課税取引」「不課税取引」に分類しなければならない。企業にとって多大な事務的負担を要している。 (注3)日本商工会議所「中小企業における消費税の価格転嫁および軽減税率の準備状況等に関する実態調査(第5回)」(2018年9月28日)より ★キャッシュレス決裁時のポイント還元 商店街の小売店など資本金の少ない中小店舗を対象に、クレジットカードなどのキャッシュレス決済を行った際に、期間限定で2%のポイント還元を行うとする支援策も検討されています。 ここには「キャッシュレス経済」の普及促進の狙いも垣間見られますが、クレジットカードや電子マネーなどに対応するレジを導入するための企業側の費用負担は大きいものです。政府が設備投資を行う企業に補助を行うとしても、そこに血税を使う正当性はあると言えるでしょうか。 キャッシュレスになじみのない高齢者などを考慮して「プレミアム付き商品券」を発行すべきとの意見も政権与党にはありますが、これも本質的な議論とは言い難いものがあります。 ★防災・減災対策 増税による需要喚起策の一環として、防災・減災対策に向けたインフラ整備費用が、第2次補正予算案、2019年度当初予算案に計上される見込みとなっています(注4)。 わが国では、高度経済成長期に建設されたインフラが「使用期限」を迎えており、修繕・補修の必要に迫られていますが、これまで、社会保障の財政予算が拡大する中で公共投資に対する予算が削減される傾向にありました。 防災・減災対策などをはじめとするインフラ整備に対して積極的な姿勢がとられていることについては評価できますが、インフラは国の資産になるほか、経済成長にもつながるものであることから、その整備に向けては増税実施の有無にかかわらず、国債発行をためらうことなく積極的に実施すべきと考えます。 (注4)今月15日には、西日本豪雨への対応など、今年相次いだ災害からの復興関連の歳出を中心とした第一次補正予算(9,356億円)が閣議決定されている。 (終わり) 政調会ニューズレターNo.18「首相による消費増税表明について」【概要版・前編】 2018.11.07 政調会ニューズレターNo.18「首相による消費増税表明について」【概要版・前編】 幸福実現党 政務調査会 *ニューズレター全文は、党HP(https://info.hr-party.jp/2018/7564/#_No18)に掲載しております。 安倍首相は、先月15日臨時閣議で2019年10月に消費税率を8%から10%へ引き上げることを改めて表明しました。 このタイミングでの増税表明は、企業に軽減税率の導入に向けた準備を促すなどの狙いがあるとみられますが、そもそも、消費増税は経済に大きな打撃を与え、「健全財政」の観点からも実施すべきではありません。 以下、ポイントにまとめます。 ◆そもそも、国の債務1,100兆円は自民党政権により積み上げられてきたもの 消費増税に対する議論は「財政健全化や社会保障の充実に向けては増税が不可欠」との考え方が前提となって進められていますが、そもそも、国の債務が1,100兆円という天文学的な額に及んでいるのは、政府・自民党によるこれまでの失政、バラマキ政治によるものに他なりません。 健全財政に向けては、覚悟をもって取り組むべきなのは言うまでもありませんが、借金をこしらえた政府が国民にツケを支払わせようとしている事実については、見過ごすことはできません。 ◆消費増税の中止と、税率5%への引き下げを 本格的に成長軌道に乗っていない今増税を行えば、成長率を鈍化、あるいはマイナスに転じさせることにつながり、かえって財政状況を悪化させることにつながるでしょう。 日銀は、来年10月に予定されている消費税率10%への増税を行った場合、2020年度の家計負担の増分が2.2兆円になり、前回の増税時の4分の1程度になると試算していますが(注1)、消費増税のインパクトを決して過小評価すべきではありません。 政府はリーマン・ショック級の経済危機が起こらない限り増税を実施するという立場ですが、消費増税こそリーマン・ショック級の経済危機のトリガーになりかねないと言っても過言ではなく、早期のデフレ脱却、中長期の経済成長を実現するためには、消費増税の中止と、税率5%への引き下げこそ行うべきです。 また、政府は、増税による税収の一部を幼児教育・保育の無償化への財源に充てるとしていますが、増税・バラマキは日本を「大きな政府」へと向かわせ、国を一層の停滞に直面させることにつながりかねません。 消費減税こそ全ての家計に恩恵をもたらせ、最も望ましい福祉と言えるのです。 (注1) 日本銀行「経済・物価情勢の展望(2018年4月)」より ◆「健全財政」に向けて 財政の健全化に向けては、国際標準として用いられている「累積債務残高/GDP(GDPに占める債務残高の割合)」をわが国も財政健全化の指標としながら、経済成長による自然増収を達成して中長期的な財政再建の達成を図るべきです。 成長に向けては、消費税増税の中止と税率5%への引き下げなどといった大胆な減税政策、徹底的な規制緩和を行うことはもとより、交通インフラ、新たな基幹産業など、経済成長に資する分野への大胆投資を実行する必要があります。 同時に、政府の「バラマキ」に当たる無駄な財政支出については削減を図り、「メリハリある財政」を行う必要があります。行政機関のスリム化に向けた組織・事務事業の抜本的な見直しなどを含め、今こそ「健全財政」向けて、議論を進めていくべきでしょう。 (後編に続く) すべてを表示する