Home/ 2018年 July 2018年 July 宇宙産業ビックバン―日本の経済成長を支える100兆円産業へ【後編】 2018.07.27 宇宙産業ビックバン―日本の経済成長を支える100兆円産業へ【後編】 幸福実現党 広報本部チーフ 西野 晃 ◆将来を悲観視する若い研究者たち―研究環境の整備の必要性 日本の経済成長を考える上では、技術力不足・人材不足も課題です。 日本経済新聞の調査では、20代~40代の研究者141人を対象に実施したアンケートで、約8割が「日本の科学技術の競争力が低下した」と回答しました。 同じく、2030年頃の日本の科学技術力の見通しを聞いたところ、約7割が「人材の空洞化が一段と進む」と回答し、将来を悲観視した意見が多数を占めました。 現在、宇宙産業に関わる日本の従業員数は1万人程度、主要ベンチャー企業では合計で260人程度となっています。 一方、大学・大学院の航空宇宙課程からは年間2400人規模の学生が卒業しますが、宇宙産業へ就職する学生は1割未満です。 他産業からの転職組も僅かなため、人材の流動性の低さや最適配置の問題が懸念とされています。 政府は「宇宙ビジネス投資マッチング・プラットフォーム(S-Matching)」などの開設や、宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」の開催等を通じて、より多くの研究者・企業・アイデアと投資家とのマッチング・事業化支援を図っており、施策の速やかな実行が望まれます。 日本経済新聞の調査・大学「論文の生産性」で世界トップだったシンガポール・南洋理工大学では、人工知能(AI)やバイオなど戦略分野を明確にし、高給を提示して有力研究者を呼び寄せています。 日本も長期的な視野で研究できる環境や研究者の研究時間が確保出来る環境の整備を進め、外国人技術者やインターン(学生)の活用、宇宙研究の広報活動による人材の呼び込み、大学と企業が連携した職業教育システムの構築にも取り組むべきです。 ◆宇宙強国化を進める中国―抑止力となる科学技術力 昨今、国際社会が混迷する中で各国の軍事力が注目される機会も増えてきました。 例えば、中国では2030年までに米国と並ぶ宇宙強国になるという計画を進めており、近年の宇宙進出は目覚ましいものがあります。 2015年には空軍と宇宙開発を統合した空天軍が創設され、中国の宇宙戦略はいよいよ開発段階から実践段階に移行、2016年に中国の宇宙事業60周年を迎えたことを契機に「サイバー空間での軍事的優位を確立するための宇宙戦略」という方針が明らかとなりました。 2020年には火星探査機の打ち上げ、2022年には中国版宇宙ステーションの運用開始まで予定されています。 自民党の宇宙・海洋開発特別委員会は今年、宇宙における安全保障の基本方針を定めた「国家安全保障宇宙戦略」の策定を政府に求める提言案を示しました。 その際、宇宙も含めた軍備を進める中国の脅威などを念頭に、自衛隊の対応能力について、「危機的に不足している」と明記しています。 現在、米国が中国に対して行っている関税発動も、中国への最新技術の流出を防ぐ事が理由の一つとされています。同様に日本の技術者の人材流出も心配されています。 日本の人材流出を防ぎ科学技術力を高める事は、同時に国防にもつながります。中国の軍事的脅威に対する抑止力となるものです。 ◆日本は世界の潮流に乗り遅れるな こういった防衛技術は民間に転用する事によって新たな技術革新を生み出し、産業競争力の強化と経済の活性化にもつながります。 巨大航空機メーカー市場を二分するボーイング社の生産拠点がある米シアトルには、航空宇宙産業クラスターが形成されています。 現在では、ワシントン大学が供給源となって、AIの研究開発で世界最先端のビジネス生態系も形成されつつあります。 このボーイング社は先日、マッハ5で飛行する「極・超音速機」の実用化を目指すと表明しました。世界の主要都市に2~3時間で到達出来るとする、非常に野心的な構想を掲げています。 同様にもう一つの巨大航空機メーカーであるエアバス社の生産拠点がある仏トゥールーズには、フランス国立宇宙研究センターがあります。ここはヨーロッパ各国が共同で設立した欧州宇宙機関(ESA)で中心的な役割を果たしています。 日本も戦略的に宇宙産業を集積させた地域的な取り組みが必要です。例えば特区の活用です。 愛知県や岐阜県、三重県など5県にまたがる地域には、国家戦略総合特区「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」があります。 このエリアは、将来的には東京・名古屋・大阪を結ぶリニア中央新幹線の沿線となる地域で、更なる発展が見込まれます。 岐阜大で航空宇宙産業の人材育成に向けた技術センターを設置する動きもありますが、航空・宇宙産業に特化した大学新設も視野に入れながら、「技術立国・日本」の成長・発展を牽引する宇宙産業エコシステムを構想することも可能でしょう。 その際に人口減少化時代を見据えて、世界中の優秀な外国人技術者を大規模に受け入れられる東海道(東京・名古屋・大阪)メガロポリス新都市計画構想案を検討しても良いかもしれません。 前出のマスク氏は「人類を火星に移住させる」と夢を語り、ベゾス氏も「数百万人が宇宙で暮らし働く時代を創る」とビジョンを掲げます。 日本もこの潮流に乗り遅れてはいけません。世界は今、宇宙産業黎明期の真っ只中にあります。私たちはその宇宙時代の幕開けの瞬間に立ち会おうとしているのです。 (参考) ■竹内一正「世界をつくり変える男 イーロン・マスク」 ■石田真康「宇宙ビジネス入門」 ■大貫美鈴「宇宙ビジネスの衝撃」 ■宇宙産業ビジョン2030について―内閣府 http://www8.cao.go.jp/space/vision/vision.html ■内閣府特命担当大臣記者会見要旨―内閣府 http://www.cao.go.jp/minister/1711_m_matsuyama/index.html#press ■ビジネスの“生態系”がもたらす5つの変化―ハーバード・ビジネス・レビュー http://www.dhbr.net/articles/-/3493 ■宇宙ビジネス投資マッチング・プラットフォーム―内閣府 http://www8.cao.go.jp/space/s-net/s-matching/index.html ■スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク―内閣府 http://www8.cao.go.jp/space/s-net/s-net.html ■宇宙イノベーションパートナーシップ―JAXA新事業促進部 (http://aerospacebiz.jaxa.jp/solution/j-sparc/) ■アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区―内閣府地方創生推進事務局 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/sogotoc/toc_ichiran/toc_page/k5_koukuuutyuu.html ■科学技術「競争力低下」8割、若手研究者アンケート、研究時間と予算が不足(ニッポンの革新力)―日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30138080V00C18A5EA2000/ ■土壌を鍛えろ(1)日本苦戦、100位内に4校、大学「論文の生産性」、アジア勢と差拡大(ニッポンの革新力)―日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO31313440T00C18A6TJC000/ ■防衛省 宇宙統括部門を 「自衛隊の対応力 不足」 自民委が提言案―読売新聞 https://news.infoseek.co.jp/topics/20180426_yol_oyt1t50016/ ■ボーイング「極・超音速機」はマッハ5、相次ぐ開発構想―日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33175540Z10C18A7X11000/ ■岐阜大で航空宇宙産業の人材育成を―朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/CMTW1807202200001.html 宇宙産業ビックバン――日本の経済成長を支える100兆円産業へ【前編】 2018.07.26 宇宙産業ビックバン――日本の経済成長を支える100兆円産業へ【前編】 幸福実現党 広報本部チーフ 西野 晃 ◆新たな宇宙開発の潮流が始まった―世界を驚嘆させたイーロン・マスク氏 タイ北部で、洞窟に閉じ込められていた13人の少年たちが7月10日に無事救出されました。救助活動が困難を極める中、協力を名乗り出て世界中で大きな話題となった人物がいます。 アメリカの実業家、イーロン・マスク氏です。電気自動車会社のテスラモーターズ社や、国際宇宙ステーションへのロケット輸送を担っているスペースX社のCEOとしても有名です。 マスク氏が作った宇宙ロケットは、NASAが作るロケットの10分の1ほどの費用で製造されています。通常のロケットは燃料がなくなると切り離されて地球に落下しますが、スペースX社のファルコン9ロケットは回収が可能で、最低でも10回は再利用出来る設計となっています。 そのため、大きなコストダウンに成功したのです。民間企業による宇宙進出を大きく前進させたマスク氏の偉業に世界中が驚嘆しました。 このような、「New Space」とも言われる新たな宇宙開発の潮流が世界で始まっています。 ◆各国で進む宇宙産業への支援体制 この大きな流れが始まったのが2005年のアメリカ政府による政策変更です。 スペースシャトルの後継機の開発を民間に任せて、NASAは一顧客として民間ベンチャーから打ち上げサービスを購入するという大転換を行いました。 国家事業から民間主導へと進み始めた事により、商機を見出した投資家や事業家達によって市場が拡大し始めます。 米国の場合、ベンチャー企業が成長出来る素地があります。例えば、冒頭のマスク氏が呼びかければ、マスク効果と呼ばれるような、多くの資金や技術者が集まります。 起業したばかりのスタートアップ企業に対して、投資会社(VC)やエンジェル(個人投資家)による支援体制が整っているからです。 宇宙ベンチャー企業への投資額も全世界で伸びており、2014年に約500億円だったのが、2016年には約3000億円へと拡大しています。 アマゾン設立者のジェフ・ベゾス氏は、自身が設立した航空宇宙企業米ブルーオリジンに毎年1000億円の投資を行うと発表しました。 欧州・ルクセンブルクは、既に巨額のリスクマネーを供給し、法整備や規制環境などを整えて企業誘致を積極的に展開中で、今年には同国初となる宇宙機関の創設を計画しています。 石油依存型経済から脱却し投資収益と知識集約型産業に基づく国家建設を目指しているサウジアラビア政府は、宇宙旅行サービスを目指す米ヴァージン・ギャラクティックに1000億円の投資を行う予定で、宇宙エンターテイメント産業を構築することも視野に入れております。 オーストラリアでも宇宙機関が発足し、今後4年間で同機関の活動や国際協力のために約45億円の予算が計上されました。併せて宇宙利用の予算として同国の地球科学局にも約288億円が割り当てられています。 ◆日本経済の主力エンジンに 2018年4月のIMFによる見通しでは、世界経済の成長率は2018年・2019年共に3.9%に達する見込みです。 一方、宇宙産業の世界での市場規模は、2010年に27兆円だったのが、2016年には38兆円へと拡大しており、成長率は5年間で5%に達します。このペースで進めば2030年代には約70兆円以上に達すると言われています。 100兆円市場に向かって成長する宇宙産業ですが、同規模の市場と言えば自動車産業やIT産業など様々です。 非常に大きな経済効果を発揮する産業が新たに誕生すれば、日本の経済成長を一段と加速させるチャンスでもあるため、日本も負けてはいられません。 日本では、2009年6月に策定された「宇宙基本計画」の中で、宇宙政策を「研究開発主導から高い技術力の上に立った利用ニーズ主導に転換」することが明示されました。 それを受けて、官僚システムの中心が、文部科学省から経済産業省に移管したことによって、ベンチャー企業やこれまで宇宙と関係のなかった異業種企業の参入が本格的に加速しています。 日本の宇宙関係の国家予算は3550億円、対して米国の予算は約5兆円と10倍以上の差があります。 国内市場規模は1.2兆円となっており、各種インフラ・金融・医療・物流などと比較するとまだ小規模と言えます。 日本政府は2018年度から5年間、日本政策投資銀行や官民ファンドの産業革新機構を通じて、1000億円規模のリスクマネーを民間宇宙ビジネスに投入する方針を明らかにしました。 宇宙産業に関わる日本のベンチャー企業は現在20社程度ですが、ボトルネックであった資金調達の環境も改善されつつあります。 日本の自動車メーカーや航空事業者・玩具メーカーといった「非宇宙系企業」が、スポンサーシップやパートナーシップ等で参画するといった日本独自の動きも起こり始めています。 国債の発行などによって宇宙産業への投資を集中的に行うとともに、国は一定程度を支え、民間主導の産業振興が行われる環境整備を急ぐべきです。 幸福実現党では、高付加価値の未来産業に対して、10年以内に100兆円を投資し、振興を図ることを提案しております。宇宙産業もその一つです。日本経済の主力エンジンの一つとして期待される成長産業として積極的に取り組む必要があると考えます。 (参考) ■竹内一正「世界をつくり変える男 イーロン・マスク」 ■石田真康「宇宙ビジネス入門」 ■大貫美鈴「宇宙ビジネスの衝撃」 ■平成29年度宇宙関係予算案について―内閣府 http://www8.cao.go.jp/space/budget/h29/fy29yosan.pdf ■宇宙産業ビジョン2030について―内閣府 http://www8.cao.go.jp/space/vision/vision.html ■世界経済見通し―IMF https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2018/03/20/world-economic-outlook-april-2018 ■内閣府特命担当大臣記者会見要旨―内閣府 http://www.cao.go.jp/minister/1711_m_matsuyama/index.html#press ■成功者が語る「米国ベンチャー企業の必達条件」―PRESIDENT Online http://president.jp/articles/-/13885 ■「マスクがやるなら」 リスクに乗る者たち―日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31604420R10C18A6000000/ ■宇宙政策、ビジネス重視に 政府の工程表見直し―日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31816140V10C18A6TJM000/ ■宇宙ベンチャー、成功する?-奥平和行編集委員―日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32489600S8A700C1I10000/ 「日本人よ、中国の属国になってもいいのか?!」――HS政経塾オープンセミナーレポート 2018.07.25 「日本人よ、中国の属国になってもいいのか?!」――HS政経塾オープンセミナーレポート HS政経塾 第7期生 高橋 侑希(たかはし ゆき) ◆「日本人よ、中国の属国になってもいいのか?!」 『チベットには27万人のお坊さんがいたのです。朝から晩まで平和のために祈っていたのです。しかし、たった2万人の中国軍が送られると、私たちは何にもできなかったのです。』 『日本の国会前では「平和、平和」と言って活動している人たちがいますが、それでは平和は守れません。それを私はこの身で実感しました。』 ――こう語るのは、チベット出身の国際政治学者のペマ・ギャルポ教授です。 7月21日(土)ユートピア活動推進館にて、国際政治学者ペマ・ギャルポ教授をお招きし、HS政経塾オープンセミナーを開催いたしました。 100名近くの方々がご参加くださり、また、第2部懇親会ではペマ教授もご同席され、日本の未来について参加者と膝詰めで語り合われました。 ◆国家主権の侵害、そして人権弾圧 以下、ペマ教授がセミナーでお話しされた「生の声」(『』部分)をお伝えいたします。 『現在この地球上においては、個人の人権を奪い、民族の自決権を奪い、国家の主権さえも無視している―そういう国家勢力が存在しています。 消えていく国、民族には、国民にはある意味において責任があります。それは、中国の侵略を許してしまった責任です。 チベットの問題は、民族自決権の問題であり、国家の主権の問題であります。人権の問題だけではありません。 1965年、中華人民共和国はチベット自治区にし、その結果、お金・切手が一切使えなくなりました。 中国は「わが先祖が受け継いできた領土(チベット、南シナ海、沖縄、尖閣諸島)を他国には渡さない」と教科書に書いています。』 そこに国際法は存在しません。中国のルールで国家の主権を奪っていくのです。 ◆中国の野望と侵略の仕方 『現在、中国は2050年までにアメリカに代わって世界の大国になると明確に言っています。それは中国が隠し続けてきた「野望」でしたが、ここまで明確に言うようになったのは軍事的にも経済的にも自信がついてきたからでしょう。 中国は心理作戦をする国です。相手の国・組織に入り込んで中を弱体化させているのです。 日本に対してはメディアに入り、国内の世論をコントロールしようとしています。中国では、「10名の記者をごちそうするよりも1人のデスクをしっかりおさえなさい」と教えられるそうです。 たとえば、スポーツでは、相手に勝たせていい思いをさせなさいと指示しているといいます。 健全な試合にまで国家が介入するのです。それが中華人民共和国の体制です。本人たちはスパイとして利用されているとわかっていない人たちが大勢います。 ミサイルは最後の侵略です。中国の侵略の仕方は相手の国の中に入って弱体化させ、攪乱させるのです。自分の国の意のままに動かせる組織をつくろうとします。』 ◆日台関係について 『日本において、表玄関にあたる国は台湾です。台湾を守ることは、日本の安全保障に直結すると思います。台湾の位置づけをもっと認識することが必要です。 中国に対して、台湾は日本に対して重要だと示すべきです。 台湾は若い人のほうがしっかりしています。台湾の独立を目指して模索している若者が大勢いるのです。 日本が台湾を大事にすれば、アジアから見て、日本は頼れる仲間になるのだということを示すことができます。』 アメリカも「安全保障の表玄関」である台湾防衛のために動きだしています。 今月7月7日、米海軍の駆逐艦2隻が台湾南部の海域から台湾海峡に進入し、東北方向に向かったと発表されました。米艦艇の台湾海峡通過は異例で、台湾への軍事的圧力を強める中国をけん制する狙いがあるとみられています。(※1) ◆アジアの平和を守るために ペマ教授は、『日本はアジアの同胞たちの真の解放のためにお手伝いしてくれた国であり、中国に対して謝り続ける必要はない』と何度も言ってくださいました。 来月8月15日は終戦記念日ですが、私たちはいつまでも「アジアに対して迷惑かけてごめんなさい」と言うべきではありません。 日本に感謝し、日本を頼りにしたいと思っているアジアの国々と連携することが、中国をけん制するために必要でしょう。 中国は虎視眈眈と尖閣諸島を狙っています。今月7月4日尖閣諸島周辺の領海に、中国の海上警備を担当する中国海警局の船3隻が相次いで侵入いたしました。そのうちの1隻には機関砲のようなものを搭載していたようです。(※2) もはや、中国の覇権は想像・推測ではありません。この国を無神論国家に手渡さないためにも、日本人は当事者意識を持たなければなりません。 幸福実現党は、アジアの平和を守るために、日本と台湾、インドの関係をより強固なものにし、独裁国家の専制を阻止してまいります。 ※1米駆逐艦2隻が台湾海峡航行、中国牽制か(7/7「産経ニュース) https://www.sankei.com/world/news/180707/wor1807070031-n1.html ※2尖閣周辺に中国海警局の船 軍事委の傘下編入後で初「領海侵入」(7/4「産経WEST」) https://www.sankei.com/west/news/180704/wst1807040030-n1.html 中国化する世界?「一帯一路」構想の真相について 2018.07.24 中国化する世界?「一帯一路」構想の真相について 幸福実現党 政務調査会外交部会部会長 HS政経塾2期卒塾生 服部まさみ 7月17日に、幸福実現党政務調査会外交部会として内閣総理大臣宛てに「中国の『一帯一路』構想における日本政府の協力見直しを求める要望書」を提出致しました。 世界が中国の「一帯一路」に警戒感を持ち距離を置き始めているなか、日本は中国の動きを協力する方向に動きました。政調会外交部会は、政府の協力見直しを強く要望しています。 ◆内閣総理大臣宛てに「中国の『一帯一路』構想における日本政府の協力見直しを求める要望書」を提出 https://info.hr-party.jp/2018/6783/ ◆「一帯一路」は世界の覇権を拡大する中国の国家戦略 「一帯一路」は、習近平国家主席が提唱し、国を上げて進めている新しいシルクロード計画のことです。 ヨーロッパまでつながる海と陸のシルクロードで巨大な経済圏をつくろうとしていますが、その目的は、世界に覇権を拡大する国家戦略です。 ◆中国の「債務の罠」 発展途上国に対して、港や空港などのインフラ整備の資金を援助しますが、それらは融資であり、発展途上国から見ると借金です。 中国は、莫大なお金を貸すことで影響力を強めていきますが、返済できない場合、土地や資源運営権などを奪い、たとえば港を中国の軍港として使用する場合もあります。 これを中国の「債務の罠」といいます。特に、先進国が援助しない、友達が少ない国やお金がない国、交通の要所である国に、積極的に融資します。 中国が支援する事業は、中国の国営企業が請け負い、資金も中国企業の懐に入る仕組みで、水増し請求や手抜き工事など中国企業が不当な利益を得る構造なのです。 ◆中国の「債務の罠」に「はまった国」 スリランカは、ハンバントタ港の建設を中国の融資に頼り、返済できず、強制的に港を99年間中国の国営企業に貸し出すことになり、軍事拠点化される懸念があります。 パキスタンも、インド洋とアラビア海への玄関口に当たる要所のグワダル港の建設支援を受けましたが、返済できず、43年間の貸し出しに合意し、それを足掛かりにして、他の港にも中国の海軍基地を建設予定です。 また、「一帯一路」の重要な位置のモルディブは、中国から支援を受けて空港や橋などの建設を進めましたが、返済できず、中国が開発している土地一帯を全て受け渡しました。 その他にも、ミャンマーやバングラディシュ、ギリシャなども、中国の軍事拠点化が進んでいます。 また、タジキスタン、キルギス、モンゴルやラオス、ジブチやモンテネグロといった国も、中国との返済問題を抱えています。 ◆「一帯一路」へ強まる警戒感 中国の「債務の罠」の実態が明らかになり、「一帯一路」に警戒感が強まっています。 例えば、マレーシアのマハティール首相は、中国が手掛けてきた鉄道建設などを白紙撤回。安全保障上の理由に加え、中国のインフラ事業は、汚職や腐敗の温床になっていたためすべて見直しました。 インドは「一帯一路」への支持を明確に拒否しています。 そして、EUの27カ国の駐北京大使が「一帯一路」を批判する報告書を作成。イギリスのメイ首相も「一帯一路」への全面協力に関する覚書への署名を拒否しています。 また、フランスのマクロン大統領は「一帯一路」は、各国を属国にする新たな覇権の道だと批判。ドイツの外相も、「一帯一路」の価値観は、民主主義、自由の精神とは一致しないと批判しています。 このように、世界は、「一帯一路」に協力しない方向に動いています。 ◆世界の覇権を握ろうとする悪魔に手を貸す日本 しかし、日本は、5月9日に安倍首相が李克強首相と日中首脳会談を行い、一帯一路構想での協力を話し合う官民合同委員会を設置することで合意しました。今年は、日中平和友好条約締結40周年にあたり、融和ムードを打ち出しています。 日本の経済界などは、「一帯一路」をビジネスチャンスと肯定的に捉えますが、実態は、中国の覇権拡大の野望を後押しすることにほかなりません。 中国政府系シンクタンクによると、「一帯一路」は、毎年5000億米ドル(約53兆円)の資金不足が発生しており、中国はその資金を日本に出させようとしているのでしょう。(※1) そのような構想に日本が協力することは、中国の覇権拡大に手を貸すのと同じことです。政調会外交部会は、日本政府に要望書を提出し、協力見直しを求めました。 「一帯一路」を抑止するために、官民合同委員会設置の見直しを行うこと。中国の民主化・自由化を促すための外交努力を展開すること。そして、同盟国や自由主義国と連携して、途上国への経済支援を進めていくこと。 憲法9条の全面改正を行うとともに、日米同盟を基軸としつつ、英国やロシアとの関係強化を含めた戦略的な外交を展開すること。 そして、自由や民主、信仰といった価値が広く守られる世界の実現に貢献することを目指して参ります。 ※1 一帯一路、毎年5000億米ドルの資金不足=中国政府シンクタンク(4/17「大紀元」) http://www.epochtimes.jp/2018/04/32586.html 「サヨク」が知らない中国共産党の「人権侵害」 2018.07.19 「サヨク」が知らない中国共産党の「人権侵害」 幸福実現党 三重県本部統括支部長 HS政経塾第6期卒塾生 坂本麻貴 ◆民主主義の重要性 『宇宙時代の幕開け』という演題の講演会を、大川隆法幸福実現党総裁が7月4日に行いました。その講演の中で次のように指摘しています。 『多様な考えを持つ人や多様な人種、民族が調和して暮らしていくためには「自由」「民主主義」「信仰」が大切であり、無神論の名においてウイグルやチベット、内モンゴルを占領したり一方的に滅ぼしたりするような事態は間違っている』 1950年に中国共産党はチベットを侵略しています。その後も周辺の国々を占領し、中国化をすすめています。 ◆中国の「成長」と他国の「中国化」 1950年代の中国は、毛沢東による政策の失敗によって、経済は崩壊の危機にありましたが、その後の政策で急成長してきました。 同時に軍事費も右肩上がりに増額しており、過去26年間で40倍にもなっていますが、それに対して日本の成長率や防衛費はこの30年間だけをみても横ばいです。日本は2011年についに中国に追い抜かれています。 中国が経済的にも軍事的にも力を蓄え始めると、周辺の国々の侵略を実行し、中国領土を広げています。中国共産党は話し合いで条約を締結しても、ことごとく破っていきます。 例えば、1950年にチベットを侵略した際に、次のような条約を締結しました。 「チベットの現行政治制度やダライ・ラマの固有の地位及び職権にも中央は変更を加えない」 「チベット人民の宗教信仰と風俗習慣を尊重し、ラマ寺廟を保護する」 「チベットに進駐する人民解放軍は取引は公正にし、人民の針一本、糸一本といえどもとらない」 しかし、この条約はことごとく破られていきました。 その証拠に、1959年にダライ・ラマ14世がインドへ亡命しました。 また、1950年から1976年の間で17万人以上のチベット人が強制収容所で死亡しており、15万人以上が処刑されています。 その他にも拷問死や自殺、飢餓など含めて合計で120万人以上の犠牲者を出しています。 中国には「国境」という概念がありません。チベットやウイグルはあくまで「辺境の地」であり、その辺境の地を取り戻すことは中国にとっては必然なのです。 そして今度は中東からヨーロッパまでを「中国化」しようとしていることは、一帯一路計画からも読みとれます。 他国を「中国化」するために、民族意識を形成する宗教を否定します。チベットでも多くの寺院が一方的に破壊されました。 チベットでは数人で集まって話しているだけで逮捕されるのです。共産主義政権下では、言論の自由も信仰の自由もないのです。 宗教を弾圧し、民族ごと消そうとする中国が、チベットやウイグルに対して行っていることは、単なる人権侵害を通り越して、ジェノサイドだといえます。 こうした事実を知って、その上で憲法9条の改正や自国の防衛について考えるべきではないでしょうか。 ◆アジアのリーダーとして必要な国力 日本は「自由」と「民主主義」によって世界をリードしていく必要があります。 そのために、憲法9条の「改正」、核装備はもちろん、持続的な国力をつけるための成長戦略が必要不可欠です。 その成長戦略とは、法人税、消費税などの減税と、リニア中央新幹線などの成長の見込みのある分野への投資です。 都市と都市をつなぐインフラを強化する事で、企業が日本の国内で活躍できる環境をつくることが、持続的な国力の増強につながります。 左派思想を掲げる人たちがやさしいのだという事は分かりますが、そのやさしさは、自立しない学生が夢や理想を語っている姿に似ています。 国が力を持つということは、他国を生かしはぐくむことや、許すことを現実に実行することができ、より多くの人を守ることができるようになるということです。 国力をつけてこそ、国際社会の中で「自立」できるのです。 皆さんのお声を伺いにまわっていますと勘違いされていることがありますが、幸福実現党は左派ではありませんが、「ウヨク」でもありません。 今後も私たちは国を愛する真の保守政党として、希望の未来へと変えてまいります。 参考書籍 ・岩崎尚人(2015)『中国の経済成長と展望』 ・ペマ・ギャルポ著(2018)『祖国を中国に奪われたチベット人が語る侵略に気づいていない日本人』ハート出版 【HS政経塾からのご案内】 ◆7月21日(土) ペマ・ギャルポ教授によるオープンセミナーのお知らせ https://hs-seikei.happy-science.jp/2018/5836/ このたび、当塾に国際政治学者のペマ・ギャルポ氏をお呼びし、「日本人よ、中国の属国になってもよいのか ~激変するアジア情勢と日本~」と題したオープンセミナーを開催することになりました。 演題:「日本人よ、中国の属国になってもよいのか」 講師:ペマ・ギャルポ氏(拓殖大学教授、桐蔭横浜大学大学院教授) 日時:7月21日(土) 於:ユートピア活動推進館 2F 大礼拝室 〒107-0052 東京都港区赤坂 2-10-8 受付開始 13:00~ セミナー 13:30~15:00 懇親会 15:15~16:30(※ペマ氏同席) 参加費:3000円 (懇親会別途500円) 今回の講演では、1959年に中国軍によるチベット侵略からインドに逃れ、その後、日本に留学されたペマ教授から、「国を失うとは、どういうことなのか」という重大な問題に関して、実体験を踏まえたお話を語っていただきます。 なぜ、平和国家だったチベットが侵略されたのか。 侵略でどれほどの人が犠牲になったのか。 中国による人権侵害の実態はどうなっているのか。 こうした切実な問題は、「平和国家」を謳っている日本にとっても、他人事とは思えません。 中国は現在、公表額で日本の3.7倍の軍事費(約18.4兆円)を用いてアジアで米国に対抗できる軍隊の建設を目指しているからです。 (※海外シンクタンクでは、中国の軍事費は日本の5倍近くになるとも見積もられている〔ストックホルム国際平和研究所〕) 「日本は、今のままで本当に大丈夫なのだろうか」 そんな疑問をお持ちの方に、お勧めのセミナーです。 是非ともお越しいただければ幸いに存じます。 皆様のご来場を心よりお待ちいたしております。 お問い合わせは、Tel:03-6277-6029、Mail:hs-seikei@kofuku-no-kagaku.or.jpまで 「ユーロ」の行く末――ギリシャからイタリアへ 2018.07.17 「ユーロ」の行く末――ギリシャからイタリアへ HS政経塾 第7期生 安原 宏史(やすはら ひろし) ◆イタリア発の経済混乱 2018年3月4日。イタリアの総選挙で与党民主党が惨敗、コメディアン出身のディマイオ氏率いる「五つ星運動」と「同盟」の連立政権が誕生しました。 両政党ともEU懐疑派です。新首相のコンテ氏は、内閣発足時の所信表明演説の中で、最低所得保障導入(ベーシック・インカム)と減税に向けた税制改革など、両立しがたい政策を掲げました。(※1) 結果、急激なイタリア国債売りが進み、金利が急上昇、市場が混乱しました。今後、EU離脱に加え、イタリア発の経済危機にも備える必要がありそうです。 ◆欧州危機のからくり イタリアの経済危機はどう発生し、どう波及するのでしょうか。その鍵はイタリアの経済規模と債務の大きさです。 イタリアはギリシャの約10倍のGDP(約210兆円、2017年時点※2)です。債務は約265兆円(2016年時点※3)で、EUで1位、世界第4位の大きさです。 金融危機対応のための欧州システムであるESM(欧州安定メカニズム)準備金は約100兆円ですが、これを超えたらユーロ圏では対処不能、世界的規模の恐慌となる可能性があります。 国債の金利が7%近くなると、いわゆるジャンク債(紙切れ)扱いされ、デフォルト(債務不履行)の懸念が高まります。金利が上がれば上がるほど、債務国の財政負担はますます厳しくなり、新規国債発行も買い手がつきません。 国債は売られる一方で資金調達の術なく、破産状態に陥ります。これがユーロ危機のからくりです。 ◆ユーロ圏の抱える「構造的な問題」―為替変動と各国経済の乖離― ギリシャ、イタリア、スペイン、フランスなどの南欧では、財政赤字対GDP比3%以内、累積債務残高対GDP比60%以内などのEUが定める厳しい財政規律をクリアできずにおります。 この財政規律達成のためにも、国内産業育成による経済成長が必要です。 しかし問題なのが共通通貨ユーロというシステムです。共通通貨ユーロを採用するユーロ圏各国の金融政策はECB(欧州中央銀行)が一括で行い、各国経済に応じた独自の金融政策はとれません。 通常、各国の経済の強さに応じて為替は変動しますが、ユーロ圏各国では「ユーロ圏の経済力」として為替が推移します。 ドイツのような経済強国では、本来の為替より低く推移し、ギリシャのような経済弱少国では、本来の為替より高く推移します。 ドイツは輸出に有利、ギリシャは輸出に不利だと言えます。発展途上国の成長モデルでは輸出増が大切な要素ですが、ドイツ製の割安で質のいい製品ばかりを消費者が好むなど、国内産業が成長していきません。 ◆ユーロ圏の抱える「構造的な問題」―各国バラバラの財政政策― また、金融政策は統一にも関わらず、財政政策が各国独自である点も問題です。先に述べたイタリアの例が顕著です。 ただバラバラといってもルールはあり、ユーロ圏は財政面でも厳しい規律を求め、基準を超すとペナルティがあります。当然、バラマキや年金、雇用や労働規制についての構造改革は必要です。 しかし結果として、減税や公共投資なども絞られ、有効需要の創出まで削がれてしまいます。国内経済の成長戦略が採りづらいのが問題です。 ◆ヨーロッパ合衆国構想とユーロ圏の行く末 ただ、もしユーロ圏が金融・財政政策とも均一であれば、この危機を超えられるかもしれません。 つまり、ユーロ圏の各国が日本の都道府県やアメリカの州のような位置付けとなり、全体として合衆国的に動くということです。 ただ、そのためには財政政策の決定権等を中央に移譲せねばならず、国の主権放棄と言えます。それを各国が呑めるかといえば、現実的に考えて難しいのではないでしょうか。 思うに、EUの前身であるECができた時に英国首相サッチャーが参加を拒否したのは、主権の放棄につながると直感的に感じたからではないでしょうか。(※4) 結局ユーロ圏がユーロ圏である限り、改革不能な問題をはらみ続けております。未来にEUや共通通貨ユーロがあるかどうか―。 それは、(1)危機は構造上の問題 (2)EU合衆国実現の見通しも限りなく厳しい、ということから、「ユーロ圏はどこかのタイミングで体制の崩壊に繋がる可能性がある」と言わざるをえません。 【参考文献】 白井さゆり2011「ユーロ・リスク」 藤原章生2010「ギリシャ危機の真実 ルポ『破綻』国家を行く」 ※1日本経済新聞2018年6月5日「イタリア新首相『我々はポピュリズム政権』 上院で所信表明」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31416050V00C18A6FF8000/ ※2世界銀行データバンク https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?year_high_desc=true ※3IMFデータバンク http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2018/01/weodata/weorept.aspx?sy=2016&ey=2023&scsm=1&ssd=1&sort=country&ds=.&br=1&pr1.x=30&pr1.y=10&c=122%2C941%2C124%2C946%2C423%2C137%2C939%2C181%2C172%2C138%2C132%2C182%2C134%2C936%2C174%2C961%2C178%2C184%2C136&s=GGXWDN&grp=0&a= ※4大川隆法著「サッチャーのスピリチュアル・メッセージ」9「EUの失敗」は予測していたP.113 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=933 移民を受け入れ、豊かで魅力ある日本にするために 2018.07.13 移民を受け入れ、豊かで魅力ある日本にするために 幸福実現党・東京都本部江東地区代表 HS政経塾第5期卒塾生 表なつこ ◆減り続ける日本人と、増える国内の外国人 今月11日、総務省が人口動態調査を発表しました。 それによると、2018年1月1日現在の日本人の総人口は、前年より37万4055人減の、1億2520万9603人(0.3%減)です。減少幅は過去最大です。 年齢別では、労働力とみなされる「生産年齢人口」の15~64歳が、初めて全体の50%台に突入しました。 対して、日本人と外国人の合計に占める外国人の割合は増加の一方で、外国人を調査対象に加えた2013年以降で最高の249万7959人となりました。 国内では、人手不足に悩む企業が、海外からの技能実習生や留学生を雇う動きが広がっています。(※1) ◆「外国人材は移民ではない」? 日本の矛盾 先月15日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針2018)」を閣議決定しました。 「外国人材の受入れを拡大するための新たな在留資格をつくる」など、外国人材の受け入れを今後も進める方針が明記されています。 ですが同時に、その受け入れ拡大について「移民政策とは異なるものとして」という文言が入っています。 政府は、「労働力として外国人材は受け入れるが、これは移民政策ではない」と主張しているのです。 しかし、国連の定義では、移民とは「通常の居住地以外の国に移動し、その国に12ヶ月以上住む人」とされています。 「移民政策ではない」と政府が言う理由は、政権支持層の多くが移民反対派だからだ、などと指摘されています。 移民政策に詳しい多くの有識者からは、「事実上の移民政策なのに、単なる『労働力』としてしか外国人材を見ていない」「定住を前提にするべきだ」という批判や提言が出ています。(※2) 定住が認められた移民は国内で旺盛に消費してくれますが、認められない外国人は消費を抑えて母国にお金を持ち帰ろうとするために、日本経済への貢献があまり期待できない、という指摘もあります。 ◆他国の失敗・成功事例に学ぶ ここで、ドイツ(大きくは欧州)の移民政策の事例を見ていきたいと思います。 ・失敗(1)定住を想定せず受け入れた 1950年代~70年代、ドイツは深刻な労働力不足に陥り、「ゲストワーカー」という短期の外国人労働者を受け入れましたが、人手不足の常態化によって、外国人労働者は家族を呼び寄せドイツ国内に定住していきました。 しかし、ドイツ政府は「彼らは移民ではない」というタテマエを貫いたため、法的な保護を受けない中途半端な立場の移民が増加しました。 ・失敗(2)「多文化主義」をとりすぎた 今度は、移民の言語や文化を尊重するリベラルな「多文化主義」がとられました。 しかしその結果、移民は自分たちのコミュニティを作り、受け入れ国となじもうとしない、社会の断絶が生まれてしまいました。 ・成功事例 以上の反省から、現在は、「インターカルチュラル(異文化間交流)」政策がとられるようになっています。 これは、移民コミュニティと受け入れ側のコミュニティの間で積極的に交流を行い、相互理解を深めるところが特徴です。 また、移民のもたらす新たな文化を、地域活性化のテコにしようと考える点も特徴的です。 ドイツでは、母国で取得した資格がドイツでも有効、ドイツ語能力の強化支援、生活面のカウンセリング、移民の起業支援などの、社会統合政策がとられています。 異文化間交流が進んでいるイタリアのレッジョエミリア市副市長は、「自分たちと彼ら」ではなく、「われわれレッジョエミリア市民」という一体感が大事だ、と語っています。 また、おもしろい事例としてカナダでは、求める移民の人材像を各州が明確にし、それに合った基準や項目を設けて移民を公募しています。 オンライン上の事前審査で、移住の可否と、申請者に適応した移民プログラムが提示されるそうです。 ◆移民受け入れマインドの醸成を 以上のような他国の事例を見ると、「移民ではなく労働者」という扱いのまま、彼らの母国文化や日本での暮らしのことを考えないでいると、日本もドイツなど欧州がたどった失敗を踏襲してしまいかねない恐れがあります。 日本には、1995年の阪神淡路大震災から生まれた、多文化共生という取り組みがあります。 在外外国人に震災時の支援をすることから始まり、今では多くの自治体がこの取り組みに基づき外国人住民との共生を進めています。 移民は、日本の成長に必要だから来てもらうものです。 移民の受け入れは、親日国から段階的に進めていくべきであり、なし崩し的に受け入れるのでは将来に不安が残ります。 外国人に国内で労働してもらうのなら、日本は腹を括って、「一緒に、豊かで魅力ある日本をつくろう」と、受け入れのマインドをつくるべきではないでしょうか。 【参考文献】 毛受敏浩 (2017)『限界国家』 朝日新書 ※1朝日新聞デジタル2018年7月11日「日本人37万人減、総務省人口調査 外国人は最大の増加」 https://www.asahi.com/articles/ASL7C4DZ0L7CUTFK00C.html ※2 ・ハーバービジネスオンライン2018年6月20日「安倍政権による事実上の移民受け入れ宣言 『骨太の方針』の『骨なし』っぷり」 https://hbol.jp/168632 ・西日本新聞2018年6月18日 「外国人就労拡大『定住前提に支援を』 教授に聞く政府方針の課題」 https://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/425498/ ・現代ビジネス2018年6月13日「日本政府はなぜ『移民政策ではない』という呪文を唱え続けるのか」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56081 「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【後編】 2018.07.11 「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【後編】 幸福実現党 宮城県本部統括支部長 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) 【前編】に続いて本日は、【後編】をお送りいたします。 ◆北朝鮮の未来を描く「ビデオ映像」 米朝首脳会談の記者会見の冒頭、「男2人、指導者2人、一つの運命。」と題した4分間にわたるビデオ映像が流れました。 これは「結末は二つしかない。」として、前進するか、後退するかを迫るイメージ映像となっています。 前進は「経済建設」を選ぶ道で、株式市場や、荷物を運ぶドローン、自動車工場が映し出され、逆に後退の道は、空爆で破壊されたとみられる建物や発射台から上昇するミサイル、商品のない商店、戦闘機も映し出されています。 この映像は金正恩氏も見て、「気に入ってもらえたようだ。」とトランプ大統領は自賛。その上で、「これを現実の未来にすることができる」と述べ、非核化を選択することで北朝鮮に大規模な経済支援・投資を行うことを示唆しました。 さらに、不動産王のトランプ氏らしく、北朝鮮には素晴らしいビーチがあるので、それを活かしたマンションや世界最高のホテルを建設できると提案しています。 北朝鮮の未来の姿を示すこのビデオで、前進させるか、後退させるか、判断し行動することを促しました。 ◆積極報道されたシンガポール訪問 北朝鮮の公式メディアは、今回の米朝会談における金正恩氏のシンガポール訪問を北朝鮮は大々的に取り上げました。 「歴史的な米朝首脳会談のため」と積極報道し、北朝鮮がトランプ大統領と渡り合う国際的な地位を確保したことを宣伝。朝鮮中央放送など国営メディアはシンガポール外遊最中の最高指導者の動静を大々的に報じています。 今年3月以降、金正恩氏が2回の中朝首脳会談のため北京と大連を訪れた際には、平壌に戻るまで訪中自体を報じなかったことに比べれば、異例の報道を展開しています。 シンガポール市内の名所を観覧し、「多くの分野でシンガポールの立派な知識と経験に学ぼうと思う」と述べたと報じ、夜景を見下ろして、「シンガポールは聞いていた通り、清潔で美しく、すべての建物に特色がある」と称賛したことも伝えました。 ◆北朝鮮の「開国」で経済改革を加速 シンガポールの知識と経験に学び、それを北朝鮮に導入することは、北朝鮮の「開国」を意味します。北朝鮮が経済的に開国することで外資を誘致し、経済改革を加速させる意向を示していると考えられます。 実際、北朝鮮は今年4月の党中央委員会総会で「経済建設と核武力建設並進」の路線からの転換を宣言しています。 核開発を推進させて国際的な地位を高めることに勝利したという前提で、今後は、「経済建設のための有利な国際的環境を整える」と強調し、経済建設に集中することを宣言しました。 開国と言えば、日本では幕藩体制の解体を促進させ、明治維新と近代化の決定的条件となった出来事です。資本主義的世界市場に組み込まれ、政治、社会、経済、文化のあらゆる面で急激な変化をもたらしました。 北朝鮮が開国に向けて準備を進めているとなると、「歴史的な大転換」を迎えようとしているのです。 米朝会談で緩やかな「米朝同盟」ができました。北朝鮮が開国し、経済建設へと舵を切り、新しい時代の構築へと歩みだした事を認識すべきです。 もちろん、非核化に向けた査察の徹底など、合意の履行には十分な注視が必要ですが、日本として、この世界史的な大転換をしっかりと捉えて、未来志向で、勇気と気概を持った判断で外交を展開していくべきです。 【参考】 米朝首脳会議 共同声明の全文 ホワイトハウス公式会見録 米朝会談「歴史の新章」 トランプ大統領の会見全文 小学館 日本大百科全書 時事通信 「「前進か後退か」北朝鮮に迫る=米作製の映像、正恩氏お気に入り?」 2018年6月14日 時事通信 「ポンペオ米長官、「2年半以内」非核化を=軍事演習中止は交渉継続前提」 2018年6月14日 毎日新聞 「「国際的な地位確保」北朝鮮が大々的に報道」 2018年6月12日 毎日新聞 「ボルトン氏「協力あれば1年以内に廃棄」」 2018年7月2日 産経新聞 「ポンペオ米国務長官が訪朝 完全非核化の具体的措置で協議へ」 2018年7月6日 東京新聞 「北朝鮮、経済路線を国内で協調 「核保有」が前提」 2018年4月23日 朝日新聞 「「冷戦から新時代に」米ソ首脳会談で確認」 1989年12月4日 読売新聞 「米ソ会談 評価は歴史の中で」 1989年12月5日 高野孟 「高野孟のTHE JOURNAL」 2018年6月25日 「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【前編】 2018.07.10 「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【前編】 幸福実現党 宮城県本部統括支部長 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆世界が動向を注視した米朝首脳会談 先月6月12日、トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による史上初の米朝首脳会談がシンガポールで行われました。 両首脳は、北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化に取り組み、アメリカが体制保証を約束するとした共同声明に署名しました。 多くのメディアでは、いつまでに、どうやって、非核化を実現するのかが盛り込まれておらず、具体性に欠けた内容だったことから、「中身がない」という厳しい反応が見られます。 果たして、合意された「朝鮮半島における完全非核化」が実現されるか、世界が動向を注視しています。 共同声明だけ見ると、トランプ大統領が譲歩して、北朝鮮ペースで進んだようにも見えます。 当初、トランプ政権側は、「『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』がアメリカの受け入れられる唯一の成果だ」と述べていました。 それにもかからず、「『板門店宣言』を再確認したうえでの、朝鮮半島の非核化」となり、非核化の具体的な方法まで踏み込まれていません。 さらに、「北朝鮮に安全の保証を与えること」という約束までしました。 ◆だまされ続けてきた「北朝鮮の非核化」 これまで北朝鮮における非核化の約束は覆されてきたため、今回の北朝鮮の対応に懸念するのも理解できます。 例えば、日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、北朝鮮の6か国が集い、外交会議にて北朝鮮の核問題の解決に向けた六者会合があります。 2003年8月に第1回目の協議が開催され、外交交渉で朝鮮半島の非核化を目指すとともに北東アジアの平和と安定の維持について話し合われました。 2005年に北朝鮮の核放棄などを盛り込んだ共同声明を採択しましたが、翌年の2006年に核実験を強行し、世界から非難を浴びました。 その後も、2009年、2013年にも核実験を行い、ミサイル発射実験を繰り返しています。 ◆トランプ政権は「2年半以内」に非核化を実現したい だまし続けてきた北朝鮮が今回の共同声明に対して揺るぎのない約束を果たせるのか、そして、金正恩氏を信用できるのか、トランプ大統領は記者会見で問われています。 トランプ大統領はこれまでの歴史を見て、まっとうな質問であることを認め、金正恩氏を「信頼している」と答えました。 金正恩氏の強い意志を感じており、包括的な文章に沿って行動することを期待しているといいます。 さらに、トランプ大統領を支えた交渉チームが今回の成果に大きく貢献しており、彼らの活躍を評価しています。 米朝交渉の当事者であるポンペオ国務長官は、平壌で北朝鮮側の交渉責任者らと面談し、核戦力や核・弾道ミサイル開発に関連する情報の全面開示を要請するなど、非核化の詳細を詰める作業を進めています。 彼は、トランプ大統領の1期目の任期が満了する2021年1月を念頭に「2年半以内」に「完全な非核化」の成し遂げたいという期限に言及しました。 ボルトン大統領補佐官も北朝鮮が核・ミサイル施設に関する情報を完全に開示し協力するなら、「1年以内」に大部分の達成が可能との見方を示しています。 まだ、予断を許しませんが、トランプ政権は強い意志を持って、非核化を成し遂げようとしています。 ◆共同宣言すら出されなかった「マルタ会談」 また、米朝会談の共同声明が具体性を欠き、不備が目立つと批判する声もありますが、「冷戦から新時代へ」と新しい世界秩序形成の節目となった1989年の「米ソ首脳会談(マルタ会談)」では首脳がそれぞれ10分間程度ずつ声明を読み上げただけで、共同宣言は出されていません。 当時の反応も懐疑的なものもあります。「共同宣言がなく、今一つ合意内容がはっきりしない印象を受ける。」「これといった具体的成果も生み出さずに徹頭徹尾、米ソ両首脳の意見交換の場になった」という意見も出ていました。 しかし、マルタ会談で世界安定化に向け幅広いテーマが話し合われた後、数次にわたる外相レベルでの準備会談を経て、翌年、本格的な米ソ首脳会談が行われました。 この首脳会談で多くの文書が合意され、署名に至り、歴史的な大転換となっています。 ジャーナリストの高野孟氏は「首脳同士が合うこと自体が、時代の貴重な一大転換を象徴するという場面はあるものであって、シンガポール会談もその1つだったと言える」と評価しています。 ◆米朝会談での異例な出来事 歴史的な米朝会談では、初めから1対1の首脳会談で始まり、異例ともいえる出来事がありました。 それが、4分間にわたる「ビデオ映像」と北朝鮮メディアの「積極報道」です。北朝鮮が新たな明るい未来に向けて第一歩を踏み出したということを感じさせるのです。 次回、【後編】では、4分間にわたる「ビデオ映像」がどんな内容であったのか、そこから米朝会談の本質に迫り、日本はどうあるべきかについて述べて参ります。(つづく) すべてを表示する