Home/ 財政・税制 財政・税制 国民皆保険の未来 2017.03.12 文/幸福実現党・岡山県本部代表 たなべ雄治 ◆安心安全!?日本の医療 行かないに越したことがないのが病院ですが、皆さんは年に何回通院されますか? 日本人の医師受診回数の年平均は13.1回だそうで、OECD加盟国の中でトップです。 それもそのはず。日本にいると安心して、安くて優れた医療を受けられるからでしょう。 最先端の医療技術ながらも、「医療保険」のおかげで自己負担は3割に抑えられています。 ◆保険とは何か この「医療保険」は、政府が運営する「社会保険」の一つです。強制加入であり、国民皆保険とも呼ばれています。 また、社会保険とは別に、民間企業が運営する「生命保険」「自動車保険」「民間医療保険」などの多種多様な「民間保険」があります。 ところで保険とは、あるリスクに対して、その発生確率に見合う保険料を加入者が出し合って、万が一の時には積立金を支給してもらう相互扶助の制度です。 リスク発生時の支払いの総額を、徴収する保険料の総額で相殺できなければ、保険としては成り立ちません。 医療保険のように、たとえ強制加入であっても、たとえ社会的意義が大きいとしても、この原則には変わりはありません。 ◆日本の社会保険の現状 とても使いやすい「医療保険」ですが、収支はどうなっているのでしょうか。 まず社会保障全体で見てみましょう。 118兆円の社会保障給付費のうち、「年金」は約48%、「医療保険」が約32%、「介護保険+その他」で残りの約20%という比率です。社会保障支出の多くの割合を社会保険が占めます。 その財源にあたる保険料収入はというと、社会保障給付費のうちの60%にも満たない有様です。年金、医療保険ともに、同様の比率です。 そして残り40%の財源には、税金が投入されているのです。 バブル崩壊の1990年以降、概ね毎年15~50兆円の財政赤字が発生しています。 もし社会保障給付費が保険料で賄えていたとすると、この財政赤字は丸々発生していなかったことになります。 政府の借金が1,000兆円を超えたとも言われますが、その原因は社会保障支出であり、政府の保険制度設計の不備が原因だったということです。 ◆今後のトレンド 続いて、今後のトレンドを見てみましょう。 少子高齢化社会と言われて久しい日本ですが、2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳)となります。世に「2025年問題」と言われるものです。 その時には、人口比約30%が高齢者になります。 また、生涯医療費の49%が70歳以上の医療費にあてられるという推計もあります。 年金は言うに及ばず、医療保険にとっても、時間が経てば経つほど負担は大きくなってきます。 ◆政府の方針は? 社会保障費増大の予想に対して、政府は消費税の増税で対応しようとしています。 2019年には消費税の10%引き上げが予定されていますが、税収増の見込みは、5%からの換算でも年間13.5兆円に過ぎません。 ところが、社会保障費の不足は現時点でも44.8兆円もあります。消費税増税は解決策ではありません。 それどころか、逆に景気を悪化させ、持続可能な財政再建を阻む愚策です。 保険料を賄おうとするならば、GDPを増やすしかありません。 増税で政府にお金を集めて、GDPを稼がない官僚の人員を増やしても意味はありません。 逆に減税で、民間がお金を使えるようにして、GDPを生み出す民間に資本を集中させるべきです。 ◆どうすればよいのか 医療保険料が高くなるのは望ましくありません。診療報酬の自己負担が増えてしまうのは困ります。 しかし、自分にとって都合が悪くなるからと言って、現状維持で良いはずはありません。 医療保険が賄えるような適正な保険料が求められます。低所得者層には、医療バウチャーの導入も必要でしょう。 併せて、医療業界全体の改革に着手しなければならないでしょう。 今の医療業界は、参入の規制があり、診療報酬に規制があり、自由な競争状態にはありません。 診療報酬を監査する審査団体すら、厚生労働省の天下り先になり、不備も指摘されています。 そのような既得権益と戦いながら、国民の痛みを伴う改革を覚悟し、国民に対して正直に説明ができる政治が望まれます。 そのためにもまず私たち国民が、痛みを伴う改革を覚悟し、選択する必要があるのではないでしょうか。 次世代にツケを残さないために、今こそ、新しい選択を!幸福実現党は戦い続けます。 第3次補正予算が成立—見え隠れするアベノミクスの限界 2017.02.04 HS政経塾第4期卒塾生 西邑拓真 ◆第3次補正予算が成立 2016年度第3次補正予算が先月31日の参院本会議で、賛成多数で可決、成立しました。 一会計年度の年間予算として成立した当初予算に対し、補正予算は、会計年度途中に予算の追加や変更が生じた際に、議決を経て組まれる予算のことを指します。 今回の補正予算の歳出総額は6225億円を計上しています。 また、今回、税収の見通しが当初の見込みよりも1兆7440億円引き下げられたことから、その不足分が赤字国債の発行で穴埋めされます。 年度途中に赤字国債を追加発行するのは、リーマン・ショックの影響を受けた2009年度以来、7年ぶりです。 ◆見え隠れするアベノミクスの限界 税収が当初の見込みよりも落ち込んだ要因として、「円高」に端を発した「法人税収の伸び悩み」に求められています。 しかし、第二次安倍政権の発足以来掲げられたアベノミクスの限界が、国内景気の悪化を招いて税収減をもたらしているのが実態であり、それゆえにこそ今回、赤字国債の追加発行に踏み切らざるをえなかったとみるべきではないでしょうか。 アベノミクスにより、金融緩和策と消費増税をはじめとした一連の増税策が行われ、日本経済はまさに「アクセル」と「ブレーキ」を同時に踏み込んでいる状況です。 先月には、給与所得控除の引き下げによる増税策が始まりました(注1)。 また、今年4月には、タワーマンションの建物の固定資産税評価見直し、18年には預貯金口座へのマイナンバー付番開始が予定されるなど、安倍政権下で今後、「大増税パッケージ」実施が待ち構えています。 (注1)17年1月1日より、年収1000万円を超える会社員の所得控除額の上限が230万円から220万円に引き下げられた。財務省の試算によると、今回の税改正で、夫婦と子供二人の世帯で、年収が1200万円の場合3万円、1500万円の場合4万円の税負担がそれぞれ増加することになる。 ◆ 「トランプノミクス」に邁進するアメリカ 翻って米国は、トランプ新大統領により、35%から15%への法人減税、所得税率の区分を7つから3つへの簡素化と最高税率の39.6%から33%への所得減税の実施を明示しています。 注目すべきは、大胆な減税策だけではありません。先月30日、トランプ大統領は、「一つの規制を作った場合、既存の二つの規制を廃止する」という旨の大統領令に署名しており、併せて、米国内の全ての規制の75%を廃止するとしています。 このように、「トランプ革命」へひた走る米国は今、大胆な減税と規制緩和策によって、経済の活力向上に大きく向かおうとしています。 ◆「日本ファースト」戦略により、大胆な減税・規制緩和策を 今、「シムズ論(注2)」に注目が集まっています。 かねてより大胆な金融緩和策によりデフレ脱却を図るべきだと訴えてきた内閣官房参与・浜田宏一氏は、当理論に影響を受けたとしたうえで、アベノミクスの手詰まり感を解消するために今必要なのは「財政拡大だ」とする考えを主張しています。(朝日新聞17年2月3日付「アベノミクスに手詰まり感―「生みの親」浜田・内閣官房参与に聞く」参照) ただし、今回の補正予算の成立で2016年度の歳出総額は100.2兆円にものぼることになりましたが、この理論によりやみくもな財政出動が合理化され、結果的に「大きな政府」へ向かうのは避けなければなりません。 民間活力の向上なくして、景気回復もなければ、経済成長もありません。 日本が本当に必要としている財政政策とは「減税政策」であり、これに大胆な「規制緩和策」を併せた「自由の領域」の拡大が今、この国に求められているのではないでしょうか。 トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を掲げ、前例なき施策を相次いで明らかにしている中、自国の発展と繁栄のために、日本も、とるべき政策を淡々と実行すべきでしょう。 (注2)クリストファー・シムズ米プリンストン大学教授が提唱する「物価水準の財政理論」では、金利がゼロ近辺まで低下すると量的金利が効果を持たなくなり、マイナス金利幅を拡大すると金融機関のバランスシートを損ねるとしたうえで、今後は減税も含めた財政の拡大が必要であるなどといった考えが述べられている。 参考文献 週刊エコノミスト「財政が物価水準を決めるシムズ論を読み解く」(2017年1月31日号) 週刊エコノミスト「徴税強化2017」(2017年1月31日号) 「健康・病気予防」と、テーラーメードな医療保険のあり方を考える 2017.01.16 幸福実現党・青年局部長(兼)HS政経塾部長 吉井としみつ ◆かつても「メタボ健診」で医療費削減を目指した 医療政策においても、「予防」に重点を置くことで健康を増進して、「医療費の伸びも抑制」しようという政策が徐々に進められています。 2006年の小泉政権下でも、いわゆるメタボ健診が始まりました。生活習慣病を予防することで、医療費を2兆円抑制することを目指していましたが、これは実現できませんでした。 メタボ検診の受診率が低い場合は、健康保険に対してペナルティを課すことができなかったこと、そして、日本人は肥満率が各国と比較して低いこともあり、「そもそもメタボ検診の指標に妥当性があるのか?」ということで、この改革は進みませんでした。 「何をもって病気の予防とするか」「健康の指標とするか」については、なかなか決めきれないことが現状の課題といえます。 ◆健康維持推進に向けての事例 データ収集と分析をすることで、健康維持に効果的なサポートをしようという取り組みもあります。 例えば、厚生労働省では「予防・健康づくりインセンティブ推進事業」のプロジェクトでは、レセプト・健診データの分析により健康分布図を作成することで、「非肥満だが高リスク者が多いという集団の特徴」を把握して、保険加入者の健康維持に役立てようという事例もあります。 【参照】厚生労働省「予防・健康づくりインセンティブ推進事業」 データヘルス計画推進シンポジウム(http://pari.u-tokyo.ac.jp/event/201603/hpm/1850/report) ◆「これが健康の指標」と決められるのか? 2015年度の法改正を受けて始まった、健康で医療費の利用が少ない人を優遇する「インセンティブ制度」の具体的な成果についてはこれからですが、この方向性は医療費の適正化に向けても必要なことだと思います。 ただ、国として「これが健康の指標」と決めきれるかといえば、様々な健康法が出ている今、極めて難しいのではないでしょうか。 医療保険の適用範囲も広げ続けることはできません。 むしろ、国としてのサポートは最低限に絞り込み、公的医療保険の適用範囲を限定し、追加で、その方のライフプランに応じた民間の医療保健を選ぶ流れを検討するべき時かもしれません。 ◆個人の生き方に応じた医療保険 今のまま医療費を抑制できない状態が続くと、国の財政としてどうしようもなくなり、突然、「医療保健の適用範囲を縮小します」ということにもなりかねません。 これこそ、一番困るパターンです。 公的医療保険の負担は軽くする代わりに、保険適用範囲を狭める。 追加の選択肢として、民間の医療保険を選ぶ。 「病気の予防」や「健康の増進」と合わせて、医療保険制度のあり方にも踏み込んでいくことが、本当に安心して子供たちにもバトンタッチできる医療政策のためにも必要ではないでしょうか。 そして、身体の健康だけではなく、「生きがいのある仕事」など、生涯現役で心身ともに健康で、誰もが生きがいを持てる社会を目指すべきだと考えます。 IR推進法は浪費推進法!?――賭博で日本を豊かにできるのか? 2017.01.01 幸福実現党・大阪第5選挙区支部長 数森 圭吾 ◆IR推進法とは 2016年12月15日の衆議院本会議で自民党や日本維新の会などの賛成多数で「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」、いわゆるIR推進法が成立し、カジノ合法化への道が開かれることになりました。 このIRとはIntegrated Resortの略で統合型リゾートを意味しています。 この統合型リゾート施設とは、地方自治体の申請に基づいて、カジノの併設を認める区域を指定されて設置される国際会議場・展示施設やホテル、商業施設、レストラン、劇場・映画館、アミューズメントパーク、スポーツ施設、温浴施設などと一体になった複合観光集客施設をさしています。 この説明ですと、IR推進法が地域にエンターテイメント性や商業性の向上をもたらし、人もお金も集まってくる良いイメージを持つ方もいるのではないかと思います。 このIR推進法の主なメリットとしてあげられているのは、「国内外からの観光客の誘致やMICEの振興」「カジノ税収入など新規財源の創出」「地域での雇用促進や経済波及効果」などです。つまり政府は「消費促進にともなう経済効果」「新たな財源(税収)」を狙ってカジノを合法化しようとしているといえます。 ◆刑法185条 賭博の禁止 しかし日本では刑法185条によって賭博が禁止されています。これは、賭博を放置すると国民の勤労意欲が失われ、さらに賭金の獲得や借金の返済のために窃盗や強盗など他の犯罪が誘発されることなどが懸念されるためであり、賭博罪とは、風俗ないしは経済倫理・秩序に対する罪であるとされています。 IR推進法の成立によって、今後日本でカジノの法制化がすすめられるにあたり、この刑法で定められた賭博罪との矛盾を乗り越えることは非常に難しい問題です。 個人で賭博をした場合には犯罪となるにも関わらず、国が関わるカジノは合法となることには疑問が残ります。 ◆「賭博が国を滅ぼす」と考えた歴史の為政者たち 歴史を振り返ると、日本初の賭博禁止令を出したのは689年の持統天皇で、その対象となったのは「すごろく」でした。 また戦国時代には武士たちが陣中などでも賭博に熱中したことから、「賭博」が士気に関わる懸念材料の一つとなっていたそうです。そのため徳川家康が天下統一を果たすと、賭博常習者を厳罰に処したとされています。 歴史的にも為政者にとって「賭博は国を滅ぼす」と認識されることが多かったと言えます。しかし反対に、今の政府はこの賭博を合法化しようと考えているのです。 ◆カジノ解禁によるデメリット カジノ解禁によるデメリットとして、「反社会的勢力の活動の活発化」や「ギャンブル依存症問題」などが懸念されています。 カジノ解禁によって暴力団やマフィアが介入する可能性が高まり、反社会的勢力の資金源を増やすことになる。またマネーロンダリングにカジノが利用される可能性もあるといえます。 またカジノが身近にできることによってギャンブル依存症となる人の増加が見込まれるともいわれています。 ◆IR推進法によって促進されるのは消費?浪費? IR推進法は消費促進にともなう経済効果と新たな財源を狙ったものです。政府の思いは「なんとしても国民に金を使わせたい」というのが正直なところでしょう。 刑法にある理念や倫理を無視してまで行われる消費推進はいつのまにか「浪費推進」になっていくのではないでしょうか。これでは国民の堕落を招きかねません。 ここ最近の政府の他の動きをみると、10年以上使われていない預金を政府が回収する「休眠預金法案」や、月末の金曜は15時退社を推進する「プレミアムフライデー」がすすめられています。 財源確保や消費促進のためなら私有財産没収を行い、民間企業の就労スタイルにまで口をつっこむ政府は「国民が消費するためなら手段は選ばない」という次元にまできているのではないでしょうか。 この考え方を極端にしていくと「理想実現の為なら暴力革命も厭わない」という共産主義的発想に通じるような怖さもどこかで感じてしまいます。 政府は自由主義・資本主義の精神に基づいた政治理念について考え直し、減税など、健全な消費を促す政策を実行し、経済発展に伴う税収の確保を第一とすべきではないでしょうか。 世界の一流企業を日本へ誘致するために 2016.12.20 HS政経塾第6期生 坂本麻貴 ◆国外へ立地していく日本企業 最近、服を買っても、本棚や家具、百円均一で小物入れや雑貨を買っても、中国製などの商品が非常に多くなっています。 二次産業に限らず、大企業の製造工場の多くは、税率のやすい海外へと移転し、日本国内の空洞化が問題となっています。 ◆生産の国内回帰促進でメイドインジャパンを世界に なぜ、企業は工場や本社を海外に立地するのでしょうか。 その理由は、一つは労働力の確保の容易さや人件費の安さ、もう一つは、税率の低さがあります。現在、日本の法人税実効税率は29.97%ですが、これは世界で7番目に高い税率です。 それに対してシンガポールが15%、韓国は24.2%です。イギリスは20%、アメリカ38.92%ですが、今回の大統領選で勝利したトランプ氏は、15%まで引き下げようとしており、それを受けてイギリスでも17%まで引き下げようとしています。 アメリカが15%まで引き下げ、中国などに進出している工場などがアメリカ国内への立地が進めば、日本の国力はどんどん落ちていってしまいます。 国民の生命と安全、財産を護るためには国力をつけなくてはなりません。 国力とは、産業と軍事力が中心だということを考えれば、日本国内に新産業をそだてる環境を整えるのと同時に、海外に進出していった企業を呼び戻し、国際競争力をつける必要があります。 ◆法人税パラドックス 法人税率を下げると税収が下がってしまうという理由で、財務省は減税に消極的です。 しかし、たとえば、イギリスでは税率を33%から23%に引き下げた時、税収は年平均4.8%伸びています。このうち4.5%分は経済成長によって企業の課税所得が拡大したためとされています。 また、ドイツでも、2008年に9%下げたことにより、ドイツ企業の国際競争力が上がり、オランダやアイルランド等の低税率国に移転されていた所得が、再びドイツに戻り、税収も上がっています。 つまり、高すぎる税率だった場合、ある程度まで下げることによって逆に税収増が見込めるのです。 ◆国力を支える哲学の必要性 現在の税制には哲学がありません。哲学がないため、税制改正草案をいくら練って表面的な数字を変えても、どこかで必ず失敗するのが目に見えています。 それは、公正・公平であるということにとらわれ過ぎて、「結果平等」になっているからです。結果平等は、「結果さえよければ手段は何をしても構わない」という共産主義的な考え方からくるものです。 共産主義の思想のもとに税制を考えると、基本的に取れるところから取れるだけ取る、というような方向に進んでいきます。 しかしそれでは、努力を重ねて稼いだ人も、そうでない人も同じ税率を負担するということになります。 こういう考えの下では、個人の能力も企業の活力も育まれにくくなります。そういう「公平さ」よりも、努力した人が報われる、「機会の平等」をもとにした税制であるべきではないでしょうか。 長い目でみて産業を育てていく税制改革を進め、産業を復活させて雇用や消費を増やしていかなくてはなりません。 混合診療の解禁から医療産業の発展を 2016.12.13 HS政経塾 第6期生 野村昌央 ◆4月に創設された「患者申出療養制度」 皆さんは「混合診療」という言葉をご存じでしょうか。 医療保険の効かない医療行為(自由診療)を行う時、保険が適用される医療行為(点滴や入院費用など)を一緒に受けることを「混合診療」と言います。 これまでは混合診療は一部しか認められておらず、自由診療を受ける場合は、保険が適用される医療行為も全額自己負担となっていました。 今年2016年の4月から「患者申出療養制度」が創設され、保険の効かない先進医療などについて患者の希望を起点とした申し入れから、厚労省の審査を経て混合診療の承認を得ることができるようになりました。 医師会などからは、「混合診療の拡大につながる」と懸念が示されてきましたが、こうした反対などから、まだまだ混合診療の解禁は遠いというのが現実です。 ◆混合診療で考えられるメリットとデメリットは? なぜ混合診療の拡大は懸念されるのでしょうか。 混合診療の拡大で、「医療では患者側は医師の勧める治療が効果的かどうか判断できないため、よけいな医療行為が増える」「粗悪な医療行為が保険診療と一緒に行われる可能性」「自由診療を受けられる人と受けられない人の間に医療格差が生まれる可能性」などのデメリットが生じると言われています。 しかし、混合診療の規制緩和はがんじがらめの規制でガラパゴス化していると言われる日本の医療産業の発展に不可欠です。 混合診療の規制緩和によって、自由診療を受けるための患者負担が減ると同時に、自由診療部分におけるサービスの多様化が可能となれば、自由診療部分における市場が活性化していきます。 市場の活性化によって様々なニーズに応える医療機器や新薬の開発、サービスの向上、医師の技術の向上などが期待されます。 また、自由診療分野の民間保険の市場も拡大していきます。 ◆デメリットは解消できるの? まず、医療の質を評価するための情報公開を進めます。 現在公開される情報は、平均在院日数や救急受入件数などのプロセス部分での評価指標がほとんどです。 例えば「○○の手術件数」や、所属医師の実績を公開することで、医療機関の質の評価をできるようにします。 こうした情報が公開されることで、保険会社が医療機関の不正や経営努力を怠っていないかどうかを監視できるようになります。 これによって保険会社を通じて「どの医療機関がよいのか」を知ることができます。 同時に、中医協などの機関が不正を監査し、罰則規定を設けることで、数字の改ざんなどの医療機関と保険会社の癒着を防ぎます。 混合診療拡大での医療格差の問題については、自由診療を受けやすくなるという点では共通しているため、日本においては大きな問題とはならないと考えられます。 ◆混合診療の解禁から医療産業の発展を このままでは、日本の医療費負担はさらに増えていきます。しかし、財政難から将来的に医療保険の範囲は小さくなっていくと予想されます。 医療制度のあり方を見直し、産業を成長させ、自助努力と健康増進を基礎とした抜本的な制度改革を行っていかなくてはなりません。また、社会保険制度と福祉制度を一緒くたにせず、分けて考えることも必要です。 混合診療の拡大は日本の医療産業のサービスの多様化と市場の拡大という点において、発展の道を拓きます。 そのためにもまずは、一定の機能を有する病院、例えば臨床研修指定病院などで混合診療を認めていくことから始めていく必要があります。 これによって選択の自由を拡大し、医療産業の活性化を行っていくべきであると考えます。 「規制緩和で医療を輸出産業に」 http://hrp-newsfile.jp/2016/2946/ 日本の製造業復活に向けて—大胆な法人税改革の実施を 2016.11.27 HS政経塾第4期卒塾生 西邑拓真 ◆日本経済の「牽引車」である製造業 安倍政権は現在、2020年ごろにGDPを600兆円に増やす目標を掲げているものの、いまだ低成長に喘いでいるのが現状です。 安倍政権が発足してまもなく4年が経過しようとしていますが、安倍政権の経済政策は、「アベノミクス」第一の矢である金融緩和策に大きく重点が置かれていますが、本格的な経済成長を実現するには、「いかに実体経済をよくするか」という視点が欠かせません。 ここで、戦後経済を振り返ってみると、日本の戦後復興期、高度経済成長期、その後の安定成長期の中で、産業構造の変化は見られたものの、概して言えば、製造業が日本経済を大きく牽引してきました(吉川・宮川, 2009参照)。 現在でも、製造業はGDPのおよそ2割と、サービス業と並んで最大の割合を占めています。また、それだけでなく、製造業は生産・雇用への波及効果が高い産業であるため、製造業が回復することによって日本経済の復活の道筋をつけることができるようになります。 こうしたことを考えても、今、日本経済の再起を考える上では、製造業の重要性を再認識し、その復活を期すための最大限の努力を行う必要があるでしょう。 ◆「六重苦」にあえいできた日本の製造業 では、製造業の再起を図るためには、どのような政策を実施する必要があるのでしょうか。 近年、日本の製造業は、行き過ぎた円高、法人実効税率の高さ、経済連携協定への対応の遅れ、厳しい環境規制、エネルギーコストの上昇、労働規制・人手不足からなる、いわゆる「六重苦」にあえいでいると言われています。 「六重苦」の一つである「超円高」は改善されているものの、他の項目に関しては、まだ課題が残されている状況にあります。 本稿では、製造業復活を喫すべく、特に「法人税」のあり方に焦点を当てて、議論を進めてまいります。 ◆法人税減税の効果 法人税減税の効果は、「立地競争力」が向上するところに求めることができます。 立地競争力というのは、企業が拠点などの立地選択を行う際の、国・地域が持つ競争力のことを指します。例えば、ある地域において、事業コストが高かったり、規制が厳格すぎる場合、企業は他の地域に拠点を置く方が事業を行う際に、より大きなメリットを享受することができます。したがって、「その地域の立地競争力は低い」ということになります。 経済産業省「海外事業活動基本調査」によると、2013年の日本の製造業企業の海外生産比率は22.9%と比較的高い水準が記録されています。企業にとっての事業コストを削減させる法人税減税を実施することで、国の立地競争力が高まり、国内企業がこれ以上に海外流出することを食い止めることができるでしょう。 また、これにより、企業の利益の国内への還流や国内雇用の増大、さらには、国内製造業の知識や情報、ノウハウといった貴重な経営資源が国外へスピルオーバー(流出、波及)することを避けることも期待できます。 一方で、立地競争力の向上で、国外企業による国内投資が喚起されることも指摘できるでしょう。これにより、先ほどとは反対に、国外企業の経営資源が国内へスピルオーバーすることも期待でき、国内外の貴重な経営資源を国に蓄積することも可能となります。 ◆国際的な法人税減税競争の機運 今月8日に行われた米国大統領選に勝利したトランプ氏は、来年1月の就任後の100日間で、法人税率を現行の35%から15%へ一気に引き下げるなどして、「経済成長を加速させていき、最強の経済をつくる」としています。 これまで、米国企業は節税策として、法人税率が12.5%に設定されているアイルランドをはじめとした「租税回避地(tax haven)」への投資を活発化させ、そこを拠点としてきました。 今回、トランプ氏は、大胆な減税策を打ち出すことで、海外事業における利益や、米国企業の莫大な(2兆ドルとも言われる)貯蓄額をアメリカに還流させようとしているわけです。 また、EU離脱が決まっている英国においては、2020年までに法人税を現行の20%から17%に引き下げることが決まっていますが、EU離脱が国内経済へ悪影響を及ぼすことが懸念されています。こうした中、今月21日、英国のメイ首相が「法人税をG20で最低水準にする」と述べたことで、法人税の更なる引き下げが行われる可能性が浮上したわけです。 では、日本の法人税はどうでしょうか。日本の法人実効税率は、2014年3月に34.62%でしたが、法人税減税策により2016年度に29.97%に引き下げられ、2018年度には29.74%となる予定となっています。 確かに、安倍政権の中で法人税改革が取り組まれ、税率が「20%台」に引き下げられたことは事実ですが、国の立地競争力確保という観点を踏まえて法人税減税策が打ち出されている各国の動向を見た場合、まだまだ十分な改革が行なわれているわけではないというのが実際のところです。 ◆大胆な法人税改革の実施を 日本が立地競争力を高め、企業が日本で事業を行うことのメリットを享受するためには、法人税を10%台へ減税するなど、思い切った減税策が必要です。 法人税改革を進め、「小さな政府・安い税金」国家が実現した時、ものづくり大国・日本が復活し、再度、高度経済成長への軌道が見えてくるのではないでしょうか。 参考文献 吉川洋・宮川修子, 2009, 『産業構造の変化と戦後日本の経済成長』,RIETI Discussion Paper Series 09-J-024. 『トランプ大統領』で日米両国の何が変わるのか 2016.11.20 参考「ザ・ファクト」日本に有利?不利? トランプ新大統領の政策を徹底分析する https://www.youtube.com/watch?v=_UbcqOOEzDQ ◆トランプ当選の鍵は「選挙人制度」にあり 米国大統領選挙は、米国内外の多くのマスコミの予想を覆し、トランプ候補の勝利となりました。総投票数で若干劣っていたものの「選挙人」の数においてヒラリー氏を上回っていたために、勝利が決まりました。 米国大統領選挙では、例えばカリフォルニア州は55人、ニューヨーク州は29人などと選挙人数が決まっており、一票でも多い候補がその州の選挙人をすべて獲得するという事になります。 当初はヒラリー候補290、トランプ候補230程度の選挙人獲得が予想されていたので、マスコミはヒラリー圧勝を予想をしていたのです。 しかし、ペンシルバニア州(選挙人20人)、ウィスコンシン州(選挙人10人)など、前回オバマ氏に投票し、その勝利に貢献した地方の白人層及びブルーカラー層が民主党を見限り、トランプ氏へ投票した事が大きかったと分析されています。 ◆トランプの勝因はオバマ大統領にあり それでは、なぜ今回の大統領選挙で上記の有権者がトランプ氏を選択したのでしょうか。 それば、8年間のオバマ大統領による経済政策が間違っていたと判断したからです。彼は、主として以下数点の政策を推進しました。 1、 富裕層と大企業に増税 2、 貧困層優遇、福祉優先 3、 所得の再配分 4、 国民皆保険(いわゆる「オバマケア」) 上記の「社会主義的な」路線をとり続けてきた結果、米国は戦後最低の経済成長率を記録することになってしまいました。 特に「オバマケア」は、当初アメリカ初の国民皆保険制度として、これまで保険に入ることが出来なかった貧困層も加入できるようになり、期待されました。 オバマ政権は将来的保険料が下がることを予想していましたが、逆に大幅な値上がりとなったことが米国民の不信感を増長させた可能性があります。 日本では、自民・民進などの既成政党が、オバマ氏が推進してきたほぼ同様の政策を進め、「失われた20年」とも言われる日本経済の低迷をもたらしています。 一方、トランプ氏に対しては「具体的な政策がない」と批判されてきましたが、彼の発言を注目すると、経済政策として以下4点を挙げることができます。 1、個人と企業に大減税 2、オバマケアを就任初日に廃止 3、インフラへの大規模投資を推進 4、所得の再配分より経済成長重視 上記の政策を通じて、米国経済の復活を有権者が期待したのです。 ◆トランプだと孤立主義になるのか また、外交・安全保障では米国が孤立主義に入るのではないか、と懸念の声も聞かれます。 例えば「日米同盟で日本が米国を助けないのはおかしい」「日本は在日米軍の費用をもっと負担せよ」「さもなければ米軍を撤退させる」等の発言は日本の安全保障を考える上で危機ではないかと感じます。 しかし、トランプ氏の真意は「孤立主義」ではなく「不干渉主義」とも言えるもので、17日に行われた安倍総理との会談でも明確に「日米同盟堅持」の方向で合意をしています。 日本に対する費用負担の話は、ビジネスマンの感覚では、まっとうな主張であり、一方、今まで米国が絶対阻止としてきた日本の核装備は容認へ向かうと思われます。これは日本にとって革命的な出来事です。 さらに広い国際情勢に目を向けると、緊張状態にあったロシアのプーチン大統領とは強い信頼関係を結ぶことで、中東のIS(イスラム国)問題は終息を迎える事になりそうです。 そして、日本・米国・ロシアの関係が強化することで、東アジアの平和が当面続くことにもなりそうです。 トランプ氏はTPPに対して批判的な立場をとるものの、習近平体制で覇権主義を進める中国に対し厳しい対応をとる事になり、日本にとっては安全保障上の脅威が後退する可能性が出てきました。 ◆「幸福実現党」的なトランプの政策で世界の繁栄が見えてきた 勝利が予想されていたヒラリー候補が敗れたということで、選挙当日は世界の株式市場も大きく株価を下げたものの、翌日には大きくリバウンドして現在では上向きのトレンドを維持しています。 元々、共和党内部でもトランプ氏に対する批判は強く、どちらかと言うと、「共和党的」というよりも「幸福実現党的」な経済、安全保障政策を持っているトランプ氏が次期米国大統領に就任することは、米国が再び強い経済力を持つことと同時に、我が日本にとっても失われた20年からの脱却する大きなチャンスであります。 私たち幸福実現党も、日本の更なる繁栄を目指し、経済・安全保障の分野を始め政策の発信を行い、日米両国のさらなる発展に向けて活動を進めて参る所存です。皆さまのさらなるご支援を心よりお願い申し上げます。 儲かる林業の可能性――財政出動の在り方を問う 2016.11.19 幸福実現党・岡山県本部副代表たなべ雄治 ◆林業に未来はあるのか 後継者不足の産業にはいくつかありますが、代名詞の一つと言えるのが林業でしょう。 どうして後継者が不足するのでしょうか。それは、儲からないからです。儲かる限り、後継者は自ずと出てきます。 ではなぜ、林業は儲からないのでしょうか。あるいは、本当に儲からないのでしょうか。現在の林業を儲からなくしている要素がいくつかありますので、見てまいりましょう。 ◆経営規模の制約 山の所有者の方から、冗談半分にこんなことを言われたことがあります。「運び出して売るんだったら、俺の山の木をあげるよ。」と。 お話を伺ってみると、木を切り倒しても運搬に大変コストがかかるのだそうです。林道が整備されていないことがその要因です。 林道を作れば良いのですが、それもなかなか容易ではありません。なぜなら、昨今は山の所有が細切れになっていて、適切なルートで林道を通すことが困難だからです。 近年、所有していても利益にならない山は、遺産相続のたびに深く考えられることもなく気軽に分断されてしまいます。 分断された山の土地は、大変使い難くなります。林道を通したくても、他人の山に勝手に道を作るわけにはまいりません。 運搬に必要以上のコストがかかったら、売れる木材も売れなくなってしまいます。これが問題の一つです。 ◆外材に勝てないのは、値段ではなくて質の問題 たとえ木を安く伐り出すことができたとしても、外材(輸入木材)の値段には太刀打ちできない、という説もあります。 そう思われがちですが、この説は正しくありません。 建築現場で外材が選ばれる理由の一つは、寸法が正確だからです。アジアなどから輸入されてくる外材は、乾燥処理がされているために変形が少なく、木材の寸法が正確なのです。 一方で国産材の7割は乾燥処理がされないまま加工されており、切った後で収縮・変形します。さらに反りなどを補正するための追加工が施され、その結果として国産材の寸法足らずが常態化しています。 また近年は、安定供給という面でも国産材は外材に勝てなくなっています。 外材の方が高価格な場合すらあります。人工乾燥などの設備の整った外材に、国産材は値段ではなく質で負けているということなのです。 ◆財政出動の在り方を考え直そう 現在の林業の多くは補助金に頼っています。間伐については、7~8割を補助金がまかなっています。 しかし、主伐しても売れない材木のための間伐に、税金を投入し続けたところで何かを生み出すわけではありません。財政出動の在り方を考え直すべき時です。 本来、公共投資とは、民間による投資が困難な部門を担うべきものです。 民間の投資が難しいのは、例えば大規模なインフラ投資や、基幹産業の育成、基礎研究への投資や、宇宙開発などの大規模投資など、将来必要とされながらも、すぐに利益を生み出せない部門です。 利益が生まれ始めて市場が形成されたら、そこから先は民間の役目であり、政府は手を引くべきです。 逆に、補助金などをあてにして政府に依存する民間も、自身の役割を勘違いしていると言えるでしょう。 ◆儲かる林業を生み出すための財政出動を 一方で、儲かる林業のモデルとなる、国内林業の成功事例もいくつかあります。 土地の所有権はそのままに、地上権だけを委託してもらって最適な林道を引くなど、山全体での最適な林業経営を実現した岡山県西粟倉村の例があります。 また、森林組合と山の所有者との信頼関係を築き、受託契約率が100%に近い、京都府の日吉町森林組合があります。 いずれも、権利関係の整理や地籍調査が成功の鍵です。それには、全国に散らばった地権者の同意を取らなければならず、大変な作業となります。 こういう部門こそ、政府は支援すべきでしょう。補助金の投入によりこの作業が進めば、全国各地で大規模かつ統一的な林業経営が実現できます。 あるいは、人工乾燥施設の設備投資への減税も一つの手でしょう。 国民の血税が充てられるわけですから、間伐などの、その場限りの補助金ではなく、将来のビジョンの伴う財政出動であるべきです。 現時点で様々な引っ掛かりがあるのが現在の日本の林業ですが、これらの引っ掛かりを取り除くことで、「儲かる林業」は十分に実現可能なのです。 引っ掛かりを取り除くために、規制緩和と併せて、効果的な財政出動を利用すべきです。 幸福実現党は、選挙のための票の買収と見られかねない財政出動は自粛して、未来ビジョンの伴う財政出動の実現に尽力してまいります。 日銀のマイナス金利政策を改めて考える 2016.09.29 HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真 ◆日銀の「総括的な検証」 日銀は今月21日、金融政策決定会合でこれまでの金融緩和策について「総括的な検証」を行い、その上で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を行うと発表しました。 これを受け、幸福実現党は声明を発表しています。 幸福実現党 党声明「日銀の『総括的な検証』を受けて」 (https://info.hr-party.jp/press-release/2016/3703/) ◆資本主義精神を失わせる「マイナス金利政策」 今回、日銀の発表した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」とは、概して言えば、「マイナス金利の維持を含めた金融緩和策の拡大」を実施することを意味します。 具体的には、「長短操作」とは、日銀が10年物の長期国債の買入れを行うことによって、長期金利をゼロ%程度に推移するようにする一方、市中銀行が日本銀行に預ける当座預金の一部を「マイナス金利」とすること等を通じて、短期金利を低水準にコントロールしようとするものです。 また、日銀の政策が意味する「量的・質的緩和」とは、大まかに言えば、 (長期を含めた)国債や上場投資信託等の金融資産を大量に買い付けることで、市場へ潤沢な資金を供給しようというものです。 大胆な金融緩和政策を行うこと自体は、日本の景気回復実現にとって重要であるのは事実ですが、「禁じ手」としての「マイナス金利政策」には、長期的に資本主義精神を損なわせるなど、様々な負の側面があることを否定できません。 ◆3メガバンクの利益が減少 そして、見逃すことができないものとして、マイナス金利政策が民間金融機関の利益に負の影響を与えているという点を挙げることができます。 8月1日付毎日新聞は、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクの16年4-6月期の最終利益が、前年同期比で28%減少し、マイナス金利政策が銀行収益に悪影響を及ぼしたと指摘しています。 日銀のマイナス金利政策というのは、市中銀行が日銀に預けるお金の一部に対してマイナス金利が適用されることにより、市中銀行が日銀に預けているお金を積極的に貸出に回そうと動機づけるものです。 市中銀行が企業や個人にお金を貸し出す際の貸出金利が、日銀によるマイナス金利に呼応して下がる一方で、銀行の預金金利は既にほとんどゼロパーセントの水準にあることから、これ以上銀行は資金の調達費用を下げることができません。 したがって、市中銀行は貸出金利から預金金利を差し引いた「預貸金利ざや」が低下してしまうことになります。しかも、今の日本経済は「利ざやの低下を貸出の増加でカバーできる」ような状況にはないのが事実です。 こうしたことから、日銀のマイナス金利政策に端を発して、メガバンクの収益が悪化することになったわけです。 ◆地方中小金融機関へのダメージ 地方銀行への影響も深刻なものとなります。 全国地方銀行協会の中西勝則会長は6月、マイナス金利について「国内を中心にやっている地銀全体にとっては収益に深刻な影響を与えている」とし、「今年は大変厳しい経営を強いられると思っている」と述べています。 中小金融機関のうち有望な貸出先がない金融機関は、預金を国債で運用するところもありますが、日銀の金融政策により長期金利が低下したために大きな損失を被っていることも、マイナス金利政策により地銀がダメージを受けていることの背景の一つとして挙げることができるでしょう。 ◆政府は「日本の繁栄は絶対に揺るがない」未来志向型政策を! 基本的に、日銀によって行なわれている「特例的」な金融緩和策を実際に機能させるためには、いかに「資金需要を増大させるか」という視点が欠かせません。 メガバンクの首脳からは「企業は先行きに不安を抱えており、金融緩和をしても成長投資に資金を振り向けていない」との声も上がっています(日本経済新聞(電子版)7月22日付)。 やはり、日本の新・高度経済成長の実現のためには、「日本の繁栄は絶対に揺るがない」という先行きへの確信が持てる成長戦略を採用していく必要があります。 この戦略を推進させることによって、民間銀行が企業や個人に対する貸出を活発化させるでしょうし、これを通じてこそ、健全な経済成長の姿が見えてくるのではないでしょうか。 参考資料 2016年8月1日付 毎日新聞(電子版)「3メガ銀 利益28%減 マイナス金利が影響」 2016年7月22日付 日本経済新聞(電子版)「企業、国債敬遠し預金へ マイナス金利影響 銀行収益圧迫」 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 … 33 Next »