Home/ エネルギー政策 エネルギー政策 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(9)政府の支援で原子力事業環境を整備 2019.06.08 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(9)政府の支援で原子力事業環境を整備 ◆英国では政府の支援で原発を新増設 前回、「電力システム改革」や再生可能エネルギーの大量導入といった事業環境の変化により、民間企業による原子力事業が困難になり、特に原発の新増設はほぼ不可能になることについて述べました。 この問題を解決するため、米国の一部の州や英国では、制度的措置により原発の支援策を講じています。 例えば英国では、差額決済型固定価格買取制度(FIT-CfD)により、事業の予見性を高め、原発の新設を支援しています。 FIT-CfDは、原発や再エネなどの低炭素電源から供給される電気について、政府機関と発電会社とで投資回収可能な基準価格(ストライクプライス)を事前に契約し、基準価格よりも市場価格が安い場合には差額を政府機関が補填し、市場価格が高い場合には差額を発電会社が政府機関に支払う制度です(※1)。 この制度は固定価格買取制度(FIT)と異なり、買い取りが保証されていないため、発電会社にも経営努力を促す利点があります。 しかし、英国では先行するヒンクリー・ポイントC原発(※2)で市場価格の2倍近い基準価格(※3)を設定し、批判を受けました。 このため、日立製作所が建設を検討してきたホライズン原発事業では、基準価格が約20%引き下げられ(※4)収益性が見込めなくなったことが、計画凍結の原因の一つともいわれています(※5)。 このように、再エネの普及でほぼ「限界費用ゼロ」の電気が増えていく現状では、FIT-CfDのような市場価格を参照する制度で原発を支援することには限界があります。 ◆政府出資の原発会社も選択肢の一つ 原発は、市場原理の中で運営することが難しい一方、日本の安全保障の観点からは、絶対に手放せないものです。 このようなインフラは、道路、鉄道、河川、空港、港湾、防災施設、防衛施設など数多くあり、これらの管理の一部を民間に開放したとしても、公共財として政府が最終責任を持つことに違和感はないでしょう。 実際に、原発を強力に推進する中国・ロシア・インドは国営、原発大国フランスは実質国営、カナダは州営、米国は民営と州営の混在で原子力事業が営まれています。 日本は福島事故以前には、民間企業のみが原発を運営する、世界でも珍しい国でした。 これは、地域独占による発電・送配電・小売の一体経営(垂直統合)と、総括原価方式による規制料金が可能にしたものであり、核燃料サイクル等には多額の国費も投入されていたことから、諸外国と同様に、政府による原発への強い政策的支援があったといえます。 核燃料の調達や再処理は、核兵器の拡散とも絡んだ重要な外交問題であり、政府の関与なしに原子力事業が進むことはありませんでした。 現在、東京電力は実質国営化されていますが、東京電力の廃炉部門と原発部門をそれぞれ分離して、東京電力の原発部門を母体とした、政府出資の原発会社を設立することも選択肢の一つです。 この会社に希望する原子力事業者を統合して大規模化し、低金利の長期資金を政府保証で調達するなどして、将来に備えた原発の新増設を国策として推進することが、現実的な方法であるといえます。 これにより、日本国内での原子力利用を堅持するとともに、中国やロシアなどの「原子力強国」に対抗して、海外の原発事業にも参画し、日本の原子力技術を維持・向上することができます。 ◆原発の小型化は「救世主」となるか なお、別のアプローチとして、現在の主流となった100~150万kW級の大型原発とは別に、小型モジュール炉(SMR)と呼ばれる30万kW以下の小型原発の開発が、米国を中心に英国、中国、韓国、フランス、カナダ等で進められています。商用化は2020年代後半といわれていますが、日本はやや出遅れています。(※6) SMRは設備の大部分を工場で製作し、5万kW程度のモジュールをトラック等で運んで現場で組み立てるため、工期を短縮し、建設にかかる初期投資を抑えることができます。熱出力が小さいため、外部電源等がなくても自然循環で冷却できることから、受動安全性に優れ、燃料交換をせずに長期間運転できるため、核拡散防止の観点からもメリットがあります。(※7) SMRは、1モジュールあたりの設備投資額が小さいことから、投資に伴うリスクを限定することができます。 また、負荷追従運転が容易であり、出力が変動する再エネと協調して運転でき、小型のため分散型電源として設置することも可能です。SMRは、「電力システム改革」や再エネの大量導入といった事業環境の変化に適応する、新しい原発といえます。 ◆政府の支援で事業環境整備を 幸福実現党は、現在建設中・計画中の原発(軽水炉)に加えて、軽水炉およびSMR等の原発の新増設を訴えています。 しかし、上記のような特長をもつSMRであっても、やはり政府の支援で原子力の事業環境を整備することが、開発の前提となります。 我が党は、政府の強力な支援と制度的措置により、国家の独立と安全保障の基盤である原子力エネルギーを堅持し、原子力の利用を着実に推進します。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「世界の電力事情 日本への教訓 英国編:自由化・制度改革で先行した英国が抱える課題」 丸山真弘 日本工業新聞社・電力中央研究所「月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー」 2013年12月 https://criepi.denken.or.jp/press/journal/eneco/2013/004.pdf ※2 英国で約20年ぶりに建設される原発で、フランス電力(EDF)と中国広核集団(CGN)の合弁事業。 ※3 1MWhあたり92.5ポンド(1kWhあたり13円程度) ※4 「原発輸出ゼロでも再編はない 日立・東芝・三菱の袋小路」 宗敦司 エコノミスト 2019年2月4日 https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190212/se1/00m/020/068000c ※5 「日立、原発プロジェクト凍結は大英断なのか」 山田雄大 東洋経済 2019年1月21日 https://toyokeizai.net/articles/-/261236 ※6 「原子力イノベーション政策の追求」 資源エネルギー庁 2018年12月5日 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/018_04_00.pdf ※7 「海外で開発が進む小型原子炉の可能性」 阿部真千子 三菱総合研究所 MRIマンスリーレビュー2018年9月号 https://www.mri.co.jp/opinion/mreview/topics/201809-2.html エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(8)民間による原子力事業は困難に 2019.06.07 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(8)民間による原子力事業は困難に 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆原子力発電は「電力システム改革」と相性が悪い 現政権が進める「電力システム改革」により、2016年度から小売全面自由化が施行され、2020年度からの発送電分離に向けて準備が進められています。しかし、「電力システム改革」によって、民間による原子力事業が難しくなり、特に原発の新増設がほぼ不可能となる可能性が指摘されています(※1、※2)。 原発は火力発電と異なり発電コストに占める燃料費の割合が低く(※3)、ひとたび巨額の設備投資をすれば、少ない限界費用(※4)で長期間発電できる特長があります。この点は再生可能エネルギーと似ていますが、原発の建設には数千億円を要するため、低金利の長期資金を調達し、数十年かけて安定的な電気料金収入を得て設備投資を回収することが事業の前提になる点が、小規模な再エネとは異なります。 電力会社はこれまで、発電と送電の設備の建設時期をずらし、キャッシュフローを融通することで巨額の長期投資を行ってきましたが、発送電分離により、これが不可能となります。 また、小売全面自由化で、発電会社と小売会社が長期間一定の価格で電気の売買を確約することは難しくなったため、低金利の長期資金を調達することが困難になります。 電力会社の長期資金の一つであった一般担保付社債(※5)も、対等な競争条件(イコールフッティング)の観点から2020年度に原則廃止され、2025年度には経過措置も含めて全廃される予定です。 ◆政治の影響で原子力事業の予見性が低下 日本の原子力事業は「国策民営」で、政府が制度をつくり事業環境を整備し、民間が営利事業を行うことによって、民間の効率性を生かした公益事業を展開してきました。 しかし、福島事故の際には、民主党(当時)政権の菅直人・元首相が自ら事故現場に介入、政府が事故処理の前面に立つことを避けて「東京電力の第一義的責任」を強調し(※6)、住民に対しても避難指示の混乱を招くなど、事故対応コストは政治の失敗で大きく膨らむことが判明しました。 例えば、民主党(当時)の細野豪志氏が政治主導で除染目標を「年間1ミリシーベルト」と決めたことにより、除染費用の総額は6兆円(※7)となり、民主党(当時)の失政で数兆円増加した可能性が指摘されています(※8)。 また、福島事故後には、原子力規制委員会による既設の原発の新規制基準への適合性審査が行われていますが、審査に合格するには莫大な工事費と長期間を要し、その間は原発が運転できないばかりか、合格しても運転期間が40年に制限され、地元の同意が得られなければ、さらに運転期間は短縮してしまいます。 原子力事業は制度変更や政治の影響により、当初は想定されなかった大きな不確実性に直面しています。 ◆政府のリーダーシップで原発の新増設を推進 このような事業環境の変化により、政府の関与や制度的措置がなければ、やがて民間企業は原子力事業から撤退し、特に原発の新増設を民間に期待することは困難になると考えられます。 現在、日本には廃炉を決めていない既設の原発が約30基あります。これらは新規制基準に対応するために安全対策工事を行ったとしても、運転を継続すれば一定の収益性は見込めます。 しかし、このままでは新増設はリスクが大きく、民間が投資を決めるだけの経済合理性がありません。 幸福実現党は、「電力システム改革」や再エネの大量導入に伴い、原子力事業の環境が大きく変化する中でも、政府の強力なリーダーシップによって原子力利用を堅持し、原発の新増設を進めることを訴えています。 その具体的な方法については、次回に述べたいと思います。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「原発と電力自由化が両立するには」 日本経済新聞 2016年10月3日 https://www.nikkei.com/article/DGXKZO07912890T01C16A0PE8000/ ※2 『エネルギー産業の2050年 Utility 3.0へのゲームチェンジ』 竹内純子ほか 日本経済新聞出版社 ISBN978-4-532-32170-3 ※3 「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告」 資源エネルギー庁 2015年5月 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/007/pdf/007_05.pdf これによると、原発の1kWhあたりの燃料費(核燃料サイクル費用)は1.5円で、発電コスト(10.1円~)の15%程度。 ※4 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※5 一般担保付社債: 発行会社の全財産によって他の債権者よりも優先して弁済を受けられる権利がついた社債。財投機関債、電力債、NTT債など、特別法に基づいて発行される。 ※6 「政府の第一義的責任のなかでの東京電力の責任」 森本紀行 2012年2月9日 https://www.fromhc.com/column/2012/02/post-167.html ※7 「原子力損害賠償・廃炉等支援機構 説明資料」 原子力損害賠償・廃炉等支援機構 2019年4月 http://www.ndf.go.jp/capital/ir/kiko_ir.pdf ※8 「除染『年1mSv』は民主党政権の大失策だ」 GEPR 2016年2月15日 http://www.gepr.org/ja/contents/20160215-03/ エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(7)原子力発電所は直ちに再稼働できる 2019.06.01 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(7)原子力発電所は直ちに再稼働できる 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆世界最速で「脱原発」に向かう日本 2010年には全国に54基の原子力発電所があり、日本は米国、フランスに次ぐ世界第3位の原発大国でした。 しかし、2011年の東日本大震災・福島原発事故をきっかけに原発が次々と停止し、2019年6月現在、原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査に合格して再稼働に至った原発は、わずか9基しかありません。 残りの45基のうち、規制委の審査に合格し地元同意など再稼働に向けて準備中のものが6基、規制委が審査中のものが10基(ほか新設2基が審査中)、未申請のものが8基(ほか新設1基が未申請)です(※1)。 一方、損壊した福島第一原発の4基を含む、全国21基の原発が廃炉を決定しています(廃炉の方向で検討中のものを含む)。また、未申請のうち柏崎刈羽原発の5基などは、地元の政治に配慮して廃炉になる可能性も否定できません。 福島第一原発以外は設備が損壊しているわけではないため、技術的には運転継続が可能ですが、廃炉の決定が相次いでいる背景には、2012年に民主党(当時)政権が法律を改正し、原発の運転を原則40年に制限(規制委の認可で1回に限り最長20年の延長も可能)したことがあります(※2)。 このため、運転開始から30年程度が経過した原発は安全対策工事をしても数年しか運転することができず、電力会社は設備投資を回収できないため、早期廃炉を決定せざるを得ない事情があります。 現行の「40年運転制限」のままでは、全国の原発が審査に合格し地元同意を得て再稼働したとしても、早期廃炉が進み、楽観的に見積もっても2030年には25基程度、2050年には10基程度に減少する可能性があります(※3)。 ◆原発の「40年運転制限」を撤廃せよ しかし、日本ではもともと、原発の60年運転を前提とした合理的な検査体系が運用されていました。 原発の「40年運転制限」は、震災後の政治的な「空気」の中で、民主党(当時)が主導し自民党・公明党の一部の議員の賛成で決めたものであり、科学的根拠は全くありません。 原子炉等の主要設備はもっと長寿命であり、廃炉の時期は個別の設備の劣化状況に応じて決めるべきであって、一律に40年で打ち切ることに合理的な理由はないのです。(※4、※5、※6) 実際に、日本とほぼ同型の原発が運転されている米国では、大部分の原発が60年運転を許可され(※7)、さらに、一部の原発では80年運転に向けた米原子力規制委員会(NRC)の審査が行われています(※8)。 米国物理学会は、原発の80年運転に技術的障害はないとし、NRCが運転制限を80年まで延長することを提言しています(※9)。 幸福実現党は2016年より、原発の「40年運転制限」の即時撤廃を訴えていますが、少なくとも原則60年の運転を可能とすれば、原発事業の予見性が高まって不合理な早期廃炉が回避されるため、日本の急速な「脱原発」を緩和することができます。 ◆実質的な安全性が確保された原発は、政府の責任で再稼働を 日本の原発は福島事故をきっかけとして、外部電源の喪失や過酷事故への対応が十分になされ、安全性が一段と高まっています(※10)。 一方、このように実質的な安全性が確保された原発の再稼働が遅々として進まない主な原因に、規制委の審査に膨大な時間を要していることがあります。 法律には、原子力の安全の確保は「確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として」行うとあり(※11)、また、これに基づく規制委の任務が規定されています(※12)。 しかし、現状の原子力規制行政は、国家としての大局観を欠いた、技術専門家による「議論のための議論」に陥っており、審査の長期化により莫大な経済的損失が発生し、国民の財産を毀損しているほか、電力の安定供給を阻害し、国民の生命、健康、我が国の安全保障を脅かすおそれもあります。 このため我が党は、2018年9月に規制委に要望書を提出し、原子力規制行政の適正化と審査の迅速化を求めました(※13)。 しかし、より根本的な原因は、規制委の審査への合格が、事実上「再稼働の許可」のように誤認され、それを政府自らが追認していることにあります。 原子炉等規制法は、新規制基準適合性に係る審査の途上にある既設の原発の運転を禁止しているわけではなく、本来は運転を継続しながら原発の安全性を高めていくことが可能です。また、規制委に原発の再稼働を止める権限はありません。(※14、※15) つまり、既存の原発の多くが再稼働できないことに法的根拠はなく、政治的な「空気」によって停止を余儀なくされているというのが実情なのです(※16、※17)。 我が党はこれについても、2018年10月に内閣総理大臣に要望書を提出し、政府の責任において直ちに再稼働を進めることを求めました(※18)。 我が党は、国民の生命・健康・財産を守るため、「脱原発やむなし」の“空気”に負けることなく、今後も原発の再稼働を力強く訴えていきます。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「原子力発電の現状」 資源エネルギー庁 2019年5月24日現在 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_02_001.pdf ※2 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)第43条の3の32において、「発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間は、当該発電用原子炉の設置の工事について最初に第43条の3の11第1項の検査に合格した日から起算して40年とする。」と規定。 ※3 幸福実現党による推定。 ※4 「“原発40年規制”の根拠は『科学と技術』でなく『政治と空気』 ~ 専門家でない政治家が決めた危険な安全ルール」 石川和男 現代ビジネス 2015年2月25日 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/42231 ※5 「おかしな原発廃炉40年ルール 科学的根拠なし」 GEPR 2015年3月23日 http://www.gepr.org/ja/contents/20150323-03/ ※6 「原子炉規制法 原発の40年制限を見直せ」 産経新聞 2017年3月12日 https://www.sankei.com/column/news/170312/clm1703120002-n1.html ※7 「世界の原発はどうなっているのか?」 経済産業省METI Journal 2018年1月22日 https://meti-journal.jp/p/170/ ※8 「原発、米で80年運転申請 新設コスト増、延命で収益狙う」 朝日新聞 2018年12月14日 https://www.asahi.com/articles/DA3S13810875.html ※9 “APS Report Calls for Extending Nuclear Reactor Lifetimes” American Physical Society, December 2013 https://www.aps.org/publications/apsnews/201312/apsreport.cfm ※10 原子力発電所の安全対策 電気事業連合会 https://www.fepc.or.jp/nuclear/safety/torikumi/taisaku/ ※11 原子力基本法第2条第1項において、「前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。」と規定。 ※12 原子力規制委員会設置法第3条において、「原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること(< 略>)を任務とする。」と規定。 ※13 「エネルギー部会は原子力規制委員会に対して要望書を提出いたしました。」 幸福実現党政務調査会エネルギー部会 2018年9月20日 https://info.hr-party.jp/2018/7189/ ※14 「原発はなぜ再稼動できないのか」 池田信夫 アゴラ 2018年9月22日 http://agora-web.jp/archives/1629639.html ※15 「原発のテロ対策工事で運転を停止する必要はない」 池田信夫 アゴラ 2019年4月25日 http://agora-web.jp/archives/2038638.html ※16 「『安倍首相が再稼働を表明すべきだ』 安念潤司中央大学教授に聞く、『空気主権がむしばむ原発行政』」 井本省吾 JBpress 2014年6月13日 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40936 ※17 「原子力規制委員会と法治主義」 安念潤司 GEPR 2015年9月7日 http://www.gepr.org/ja/contents/20150907-01/ ※18 「内閣総理大臣宛てに『全国の原子力発電所の早期再稼働を求める要望書』を提出」 幸福実現党政務調査会エネルギー部会 2018年10月17日 https://info.hr-party.jp/2018/7397/ エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(6)自給率を高めるには再生可能エネルギーが不可欠 2019.05.30 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(6)自給率を高めるには再生可能エネルギーが不可欠 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 (本稿では、読者の皆さまからいただいたご意見・ご質問にお答えします。) ◆原子力発電だけで経済成長を支えられるか 幸福実現党は、2050年頃までに日本の一次エネルギー自給率をフランス並みの50%以上に高めることを目標としています(※1)。 この目標を達成するために、再生可能エネルギーの主力電源化ではなく、原子力発電をさらに推進してはどうかというご意見があります。 我が党は原発の再稼働・新増設を訴えており、現在原子力規制委員会が新規制基準への適合性審査を進めている新設2基(※2)に加えて、合計13基(計画・構想段階の原発9基および我が党独自の提案分4基)の軽水炉の新増設、さらに高速増殖炉等の開発を目指しています。 これが実現すると、2050年の原発による発電電力量は3,000億kWh以上となりますが、それでも過去最高だった1998年度の原発による発電電力量(※3)を超えることは厳しい状況です。 我が党は、減税、規制緩和、大規模なインフラ投資などの成長戦略により、実質経済成長率3%程度を実現することを目指しており、これに基づく2050年の最終エネルギー消費は約1.7倍、電力需要は約3倍(いずれも2016年比)と推定しています(※4)。 2050年における電力需要は約2兆8,000億kWhとなり、このうち原発で供給できる電気は約10%しかありません。 ◆エネルギー自給率を高めるには再エネが不可欠 したがって、残りの90%の電力供給を火力発電と再エネで分担することになりますが、一次エネルギー自給率を50%以上に高めるには、電源のうち再エネの比率を80%程度まで高め、火力発電の比率を10%程度とする必要があります。 ここで、発電用の燃料のうち液化天然ガス(LNG)の一部は、日本近海に豊富に賦存するメタンハイドレートに置き換わることを想定しています。 再エネ比率80%は非常にチャレンジングな目標ですが、日本は海洋・地熱等の未開発の豊富な再エネ資源に恵まれ、先行している太陽光発電についても、システムの低価格化が進んでいます。 大川隆法・幸福実現党総裁は2009年2月の講演(※5)で、時代が脱石油文明にシフトしていくとの見通しを示していますが、実際に2010年代には、世界で再エネに関する技術革新が飛躍的に進み、低炭素技術や化石燃料を削減する技術の普及が一段と進んでいます。この「新文明」の潮流はもはや止まらないと考えられます。 再エネに投資を行い国産資源として活用することは、日本の安全保障を高め、低廉なエネルギーが潤沢に供給される社会の基盤をつくり、政策を誤らなければ投資の大部分を国内経済に還流することも可能なため、国家としての総便益はきわめて大きいといえます。 ◆仮に原発だけで自給率50%以上を目指すなら 仮に、自給率を50%以上に高めるために原発だけを使うとした場合には、現時点で国内最大級の原発(1基あたり138万kW)を250基以上新増設する必要があります(※6)。 日本のような民主主義国で、わずか30年間に250基の原発を新増設することは非現実的ですが、中国のような共産党一党独裁の全体主義国家であっても、ほぼ不可能でしょう。 なお、現在の経済状態が2050年まで続き、エネルギー需給構造や電力需要が変わらないと仮定した場合には、火力発電を全て廃止して原発と再エネに置き換えれば、一次エネルギー自給率は50%程度になります。 その場合にも、再エネを利用しない場合には原発を80基以上新増設する必要があり、現実的ではありません。 ◆エネルギー政策にはバランスが重要 特定のエネルギーに偏る政策は、それが実現しなかった場合の代替エネルギーの確保を困難にするため、リスクが大きいといえます。原発に過度に期待すると、それが実現しなかった場合には、結局は化石燃料への依存から脱却できないことになります。 我が党は、原子力を重要なエネルギー源として位置づける一方、太陽光・陸上風力などの在来型再エネ、洋上風力、潮力、海洋温度差、次世代地熱(EGS)などの新しい再エネに加え、メタンハイドレートの新規開発も進め、石油、石炭、LNGなどの在来型の化石燃料も戦略的に維持することを目指しています。 エネルギーに関するあらゆる可能性を否定せず、情勢の変化に柔軟に対応できるエネルギー供給体制を構築し、日本の独立と繁栄を守ります。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(1) 総論」 HRPニュースファイル 2019年5月12日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3534/ ※2 電源開発の大間原発1号機と、中国電力の島根原発3号機 ※3 エネルギー白書2018 資源エネルギー庁 1998年度の原発による発電電力量は3,322億kWで、電源比率は36.8%と、ともに過去最高。 ※4 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か」 HRPニュースファイル 2019年5月26日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3558/ ※5 『創造の法』 大川隆法 幸福の科学出版 ISBN978-4-86395-014-6 ※6 改良型沸騰水型原子炉(ABWR)で想定。出力138万kW、設備利用率85%とすると、1基あたり年間約103億kWhの発電電力量となる。 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か 2019.05.26 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆原子力発電の推進を一貫して訴えてきた幸福実現党 2011年の東日本大震災・福島第一原発事故後、民主党(当時)の菅直人元首相による法的根拠のない要請で浜岡原発が停止して以来、被災していない全国の原発が相次いで止まり、再稼働ができなくなりました。 当時の世論やマスコミの多くが「脱原発」に傾く中で、幸福実現党は震災直後から、全国の原発の再稼働を強く訴えてきました。 我が党は、エネルギー資源に乏しい日本が液化天然ガス(LNG)や石油等の化石燃料に過度に依存することは、安定供給と経済性の両面で問題があるため、一貫して原発の再稼働や新増設を主張しています。 ◆世界の流れは原発推進 日本ではしばしば、「世界の流れは脱原発」と言われます。韓国、台湾、ドイツ、ベルギー、スイス等での脱原発の動きや、日立製作所による英国原発事業の中断(※1)、再生可能エネルギーの急速な拡大などがある一方で、日本のマスコミは脱原発を強調し、世界の原発推進の動きをあまり報道しないため(※2)、そのような印象があるのかもしれません。 しかし、米国、フランス、中国、ロシア、インド、英国、カナダ等は今後も原発を推進する方針であり、UAEやサウジアラビア等は新たに原発の利用を計画しています。 また、脱原発を表明した前述の国でも、代替エネルギーの目途が立たないため、実際には脱原発が難航しています(※3)。 世界の流れは、明らかに原発推進に向かっています。その最大の理由は、世界の国々が豊かになり、エネルギー需要が大幅に増大することにあります。 国際エネルギー機関(IEA)が2018年に発行した報告書(※4)によれば、エネルギー効率を野心的に高めた「新政策シナリオ」でも、2017年から2040年にかけて、世界のエネルギー需要は25%以上増加すると予測しています。 また、エネルギーの電力化が大きく進み、世界の発電電力量は約57%増加し、再エネの大幅な増加(約2.6倍)を織り込んでも、さらに原発は約41%増加すると予測しています。 ◆日本だけは経済成長しないのか 一方、「人口減少・少子高齢化・低成長の日本ではエネルギー需要の大幅増加は見込めないため、原発がなくても再エネで十分」という、“下山の思想”のような主張があります。 しかし、米国トランプ政権下で景気が好転したように、米国のような成熟国であっても、政策次第で3%程度の経済成長率になることは珍しくありません(※5)。 日本の「失われた30年」の低成長は、バブル期以降の相次ぐ財政・金融政策の失敗、消費税の増税、高い法人税、低い生産性を温存する諸制度、企業活動を制約する不合理な規制等によるものであり、国民がこれらを前提とした低成長を当然視して自縄自縛に陥っている、世界でも特殊な状況にあるといえます。 したがって、これらの政策を変えれば、3%程度の経済成長が実現しても何ら不思議はありません。 ◆経済成長で電力需要が大幅に増える 我が党は、減税、規制緩和、大規模なインフラ投資などの成長戦略により、実質経済成長率3%程度を実現することを目指しています。 経済成長とエネルギー消費には強い正の相関があることが知られており、経済成長に伴いエネルギー消費は増加します。また、経済成長と電力需要には、特に密接な関係があります。 このため、経済成長率を平均3%程度とすれば、2050年の最終エネルギー消費は約1.7倍、電力需要は約3倍(いずれも2016年比)と推定されます(※6)。 電力需要の伸びが特に大きいのは、電力化率(※7)が高まるためです。 これは、国民がより便利な生活を求めて電化製品、IoT(モノのインターネット)機器、ロボット等が増えること、電気自動車(EV)、ドローン、「空飛ぶクルマ」などの交通の電動化、リニア新幹線など高速鉄道の充実、再エネの急拡大、省エネルギーの要請でエネルギー効率の高い電気に転換が進むことなどが理由です。 ◆原子力利用は国家の独立と安全保障の基盤 経済成長には電力の安定供給が不可欠ですが、他国の支配を受けずに安定供給を確保するには、化石燃料への依存を減らし、原発と再エネの利用を進めなければなりません。 そして、今後の電力需要の増大を考えれば、今世紀中に原発が世界の主力電源の座から降りることは絶対にありません。当面は、原発が大量の電気を安定して発電できる最も効率的なシステムだからです。 さらに、原子力関連の技術は原発に役立つだけでなく、医療、新素材の製造、放射性物質の無害化など、多分野の有用な技術につながるほか、次世代原子炉の開発や核融合炉の実用化に向けた技術開発にも役立つものです。 また、日本に向けて核ミサイルを配備する全体主義国家が存在する現状にあっては、潜在的核抑止力としても重要な意味を持っています。再エネがいかに普及したところで、原子力技術およびその利用の重要性は変わりません。 我が党は、今後も国家の独立と安全保障の基盤である原子力エネルギーを堅持し、原子力の利用を着実に推進します。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「日立、英原発事業を中断 2000億円規模の損失計上へ」 日本経済新聞 2019年1月11日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39897670R10C19A1MM0000/ ※2 「『脱原発』は世界の流れに逆行する メディアが報じない欧米・アジアの大半が『原発推進』という現実」 石川和男 JBpress 2019年4月30日 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56257 ※3 「原子力をめぐる“世界の潮流”」 竹内純子 国際環境経済研究所 2019年4月22日 http://ieei.or.jp/2019/04/takeuchi190422/ ※4 World Energy Outlook 2018, International Energy Agency https://www.iea.org/weo/weo2018/secure/ ※5 Gross Domestic Product, US Bureau of Economic Analysis https://www.bea.gov/data/gdp/gross-domestic-product ※6 幸福実現党による試算。 ※7 電力化率: ここでは、最終エネルギー消費に占める電力需要の割合。 オーストラリアで与党勝利のサプライズ 日米豪の連携強化へ 2019.05.21 オーストラリアで与党勝利のサプライズ 日米豪の連携強化へ HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆豪州総選挙で与党が辛勝 5月18日に行われたオーストラリアの総選挙は、保守連合(国民党+自由党)が労働党に勝利しました。 自由党では2018年に内紛が起き、ターンブル前首相が失脚。スコット・モリソン氏は国民の審判を仰がずに首相となったので、総選挙は厳しい戦いでしたが、続投が決まりました。 労働党に有利な数字が並んでいた数か月の世論調査をくつがえすサプライズが起きています。 親米路線を取り、中国のファーウェイ社(華為技術)排除にもいち早く協力した保守連合が勝利したことは、同じく米国との同盟を重視する日本にとっても朗報だといえます。 ◆注目点(1):豪州の外交路線は親米でまとまる 日本から見た時に、今回の豪州選の最大の注目点は、与野党の外交路線です。 モリソン首相と労働党党首の路線が真逆だったので、政権が交代すれば、外交路線が変わる可能性があったからです。 労働党のビル・ショーテン党首は「中国の台頭を歓迎」しており、その台頭を「脅威」ではなく、「チャンス」と捉えていました(※1)。 そして、トランプ大統領に対しては、2016年に「自由世界の指導者に全くふさわしくない」とまで酷評していたのです(※2)。 しかし、保守連合を率いたモリソン首相はトランプ大統領と連携して中国のファーウェイ社の排除を主導。 カナダと豪州、ニュージーランドがいち早く米国に賛同し、これに日本も同調したことで、米国の影響力が世界に印象付けられたといえます(英国は19年4月に全面排除を撤回)。 米中の経済対決は、双方が賛同する主要国の数を競っているので、このたびの保守連合の勝利には、非常に大きな意義があります。 ◆注目点(2):中国包囲網の「豪州切り崩し」は困難に この保守連合の勝利を悔しがっているのは、中国でしょう。 ファーウェイ排除の厳しい網の目を破るために、中国は「豪州の切り崩し」を狙っていたからです。 豪州の貿易において、中国は輸出の3割(30.6%)、輸入の2割(18%)を占めているので、労働党政権ができたら、これを用いて対中政策をくつがえせる可能性がありました。 (※3:出典は外務省HP「オーストラリア基礎データ」) それが必要だったのは、トランプ政権が5月15日に大統領令で安全保障上の脅威と見なされた企業が米企業に通信機器を販売することを禁止したからです。 ファーウェイ社はその中に含まれただけでなく、製品供給も事実上、禁止されるブラックリストに載せられています。 これが完全に実施されれば、ファーウェイはソフトウェア更新やメンテナンス、ハードウェアの交換ができなくなり、経営危機に直面するはずです。 そのため、中国は英国に続いて「豪州切り崩し」を狙っていましたが、それは、今回の選挙で難しくなりました。 ◆注目点(3):労働党のCO2削減案は予期したほどの支持を得られず 3番目に大きな注目点は、豪州のエネルギー政策です。 今回の選挙では、与党も野党もインフラ投資による雇用拡大を掲げており、経済では意外と共通点がありました。 (※ただ、最低賃金の引上げや低所得者減税、富裕層や大企業への課税強化などを訴える労働党のほうが「格差是正」色が強い) しかし、最も大きな違いが分かれたのは、エネルギー政策です。 石炭の産地である豪州は火力発電が8割を占めているので、保守連合は地球温暖化対策にはやや消極的でした。 (※保守連合のCO2等の削減目標は2030年までに2005年比で26~28%削減) これに対して、豪労働党は2030年までに温暖化ガス排出量を45%(2005年比)削減することを公約したのです。 そのために再生可能エネルギーの拡大をうたったのですが、これを実現した場合、火力発電にブレーキがかかり、再エネ用の設備投資や温暖化対策費がかかります。 これに対して、モリソン首相は「コストを明らかにせよ」と批判していました(※4)。 結局、労働党は予想したほど支持されなかったのですが、「火力で十分なのに、なんで再生可能エネルギーがそんなに要るんだ?」という疑問が出てくるのは、きわめて当然のことでしょう。 ◆日米豪でさらなる連携強化を オーストラリアは、日本にとって欠くことのできない友好国です。 同じ自由民主主義国で、ともに米国を同盟国としているだけでなく、わが国は石炭の7割(71.5%)、天然ガス(LNG)の3分の1(34.6%)をオーストラリアから輸入しています。 日本は原油の9割(86%)を中東から輸入していますが、豪州も、違った意味での資源安全保障上の要地なので、失うわけにはいかない友好国です。 また、米国にとっても豪州は秘密情報を共有する五カ国(ファイブアイズ)の一員です。 イギリスとカナダ、オーストラリアとニュージーランドは、米国の同盟国の中で、もっとも親密な国々に位置づけられています。 米海兵隊は豪州のダーウィンに拠点を構え、中国の海洋進出に睨みを利かせています。 グアムと、グアムの北にある沖縄、南にあるダーウィンに米軍が展開することで、東南アジアから日本までのシーレーン(海上交通路)が守られているのです。 (※5:日本の化石燃料の輸入比率は「日本のエネルギー2018」(資源エネルギー庁)を参照) すでに、トランプ大統領からモリソン氏の勝利への祝辞が届いていますが、今後、日米豪が安全保障と経済面で連携を強化し、中国の覇権拡大に対峙していくことが大事だといえます。 【参照】 ※1:ニューヨークタイムズ Bill Shorten Wants Australia to Embrace China. But at What Cost? (By Jamie Tarabay, 2019/5/15) ショーテン氏は“I welcome the rise of China in the world”と述べていた。NYTは he saw China not as a “strategic threat,” but as a “strategic opportunity.”と指摘。 ※2:ガーディアン Australian opposition leader Bill Shorten to declare Donald Trump ‘unsuitable’ to lead US (2016/10/11) 原文は entirely unsuitable to be leader of the free world ※3:2017/18年の「財・サービス」輸入。出典は外務省HP「オーストラリア基礎データ ※4:ガーディアン “Australian election… エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(4)火力発電を戦略的に維持 2019.05.19 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(4)火力発電を戦略的に維持 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆小売全面自由化で価格形成のメカニズムが変わる 電気・ガス・水道・鉄道などのインフラ型産業は総費用に占める固定費の割合が高く、生産量が増加するほど平均費用が低下し、自然独占が生まれやすい性質があります。 このような産業は「費用逓減産業」と呼ばれ、経済学では、一般に限界費用が平均費用を下回ることが知られています。 費用逓減産業においては、政府が独占企業の価格規制を「限界費用」で行うと、価格は下がりますが、企業は固定費を回収できず、政府が赤字を補填することになります。 一方、政府が価格規制を「平均費用」で行うと、独占企業は固定費回収の原資を得て独立採算で黒字経営を維持することが可能ですが、価格は前者に比べて高くなります。(※1、※2) 日本では、1951年に松永安左エ門氏が地域独占・民営の電気事業体制を構築したときから、政府が「平均費用」で価格規制を行い、審査のうえ適正な電気料金を認可する方式を採用しました。 その後、基本的には政府による赤字補填を受けることなく、独立採算で設備投資を行い、完全民営の電気事業が営まれてきました。 しかし、2016年度から始まった小売全面自由化で、電気料金は原則として市場メカニズムで決まるようになり、将来は規制料金が全廃される予定です。 電気には、貯蔵が難しく需要と供給が同時同量でなければならないという制約があるため、自由化された電力市場(kWh市場)では、「限界費用」(※3)で価格が形成されるようになります(※4)。 ◆火力発電は経営困難に 再生可能エネルギーの開発には多額の初期投資を必要としますが、ほぼ「限界費用ゼロ」で無尽蔵のエネルギーを供給できる可能性を秘めています。 しかし、電力市場(kWh市場)で大量の再エネが取引されるようになると、火力発電会社が固定費を回収できないという、厄介な問題が発生します。 例えば、太陽光発電(PV)の余剰買取制度(2012年度に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」に移行)は2009年度の開始から10年が経過するため、いわゆる「卒FIT太陽光」の電気を小売会社が買い集める動きがあります。 これらは既に初期投資の回収が終わっているため、1kWhあたり7~8円程度の安い単価で取引が成立しますが(※5)、今後はこのような低価格の再エネが大量に供給されるため、競争により火力発電にも単価引き下げの圧力が及び、固定費の回収が難しくなります。 その結果、短期的には電気料金を引き下げる効果がありますが、発電会社は火力発電への設備投資を控えるようになるため、安定供給に必要な設備が不足して、長期的には電気料金が上昇する可能性があります。 ◆再エネには火力発電のバックアップが必要 しかし、再エネは天候の変化で大きく出力が変動するため、火力発電が再エネの変動に備えて待機し、再エネを支えているのが現実です。このような火力発電の役割は電力の安定供給に不可欠ですが、小売全面自由化で、発電会社にこれを期待することが難しくなっています。 その傾向が顕著に出ているのがドイツです。ドイツではPVや風力発電が大量に導入され、2018年には電力需要の約38%を再エネで賄っています。国内需要約5,990億kWhに対して、全電源で約6,490億kWhを発電しており、約500億kWhをフランスなど欧州各国に輸出しています(※6)。 しかしこれは、「余った再エネを他国に押し付けている」と見ることもできます。 ドイツでは需要の少ない時間帯には風力発電などの電気が余り、電力価格がマイナスになることもあるため、火力発電の稼働率が大幅に低下し、経営困難となった火力発電の撤退が起きています(※7)。 また、日本でも、自由化以前に大規模災害等に備えて温存していた古い火力発電所が、経済的な理由で次々と廃止されています。 ◆政府の支援で火力発電を戦略的に維持 このように、FITおよび「電力システム改革」の結果として、必要な火力発電を市場原理の中で維持していくことが難しくなっていますが、不安定な再エネを支え、大規模災害など不測の事態に備えるためにも、日本は一定の火力発電を保有し続けなければなりません。 幸福実現党は、政府の支援や効率的な制度設計の導入により、今後も火力発電を戦略的に維持し、電力の安定供給と国益を守ります。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 例えば、『ミクロ経済学入門』 奥野正寛 日本経済新聞出版社 ISBN978-4-532-01523-7 ※2 「容量メカニズムの必要性と必然性」 国際環境経済研究所 http://ieei.or.jp/2017/07/special201204062/ ※3 ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※4 『エネルギー産業の2050年 Utility 3.0へのゲームチェンジ』 竹内純子ほか 日本経済新聞出版社 ISBN978-4-532-32170-3 ※5 例えば、「関電、家庭用太陽光1キロワット時8円で買い取り 四国電は7円」 日本経済新聞 2019年4月22日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44047450S9A420C1TJ1000/ ※6 The Energy Transition in the Power Sector: State of Affairs in 2018 Agora Energiewende 4 Jan. 2018 https://www.agora-energiewende.de/fileadmin2/Projekte/2018/Jahresauswertung_2018/Agora-Annual-Review-2018_Energy-Transition-EN.pdf ※7 『限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』 ジェレミー・リフキン NHK出版 ISBN978-4-14-081687-5 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(3)再生可能エネルギーは高い? 2019.05.17 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(3)再生可能エネルギーは高い? 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆すでに「戦力」となっている太陽光発電 民主党(当時)政権が2012年度から導入した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」により、太陽光発電(PV)を中心として、再エネの利用が急速に進んでいます。 日本のPV導入量は4,300万kW(2018年末現在)を超え(※1)、既に重要な供給力の一部となっています。 例えば、九州エリアでは、2018年春の最も多い時間帯で需要の約81%をPVで賄い、余った電気を他のエリアに融通しました。夏のピーク需要時には約27%をPVが供給しました(※2)。 また、需要の多い東京エリアでは、2018年春の最も多い時間帯で需要の約36%をPVで賄い、夏のピーク需要時には約11%をPVが供給しました(※3)。 このように、PVは特に昼の需要に対しては「戦力」として機能しており、夏の節電要請が4年連続で見送られていることからも、その効果の大きさがわかります。 一方、再エネを電力量(kWh)の点から見ると、2017年度の日本の発電電力量約1兆602億kWhのうち、PVは約551億kWh(約5%)であり、水力・風力・バイオマス等を合わせた再エネ全体でも約1,700億kWh(約16%)に過ぎません(※4)。 エネルギー源として期待するにはまだ量が足りないといえます。 ◆莫大な国民負担 このように、日本ではFITの導入により、PVを中心とした再エネの爆発的な普及が進みましたが、その代償として国民負担が急増しています。 FITを導入した2012年度には、再エネの賦課金総額(国民負担)は約1,300億円でしたが、2018年度には約2.4兆円に膨れ上がりました(※5)。 電力中央研究所は2017年に、このままでは2030年度の賦課金総額は3.6兆円、累計44兆円に達するとの試算を発表しました(※6)。 この試算はメディアでも取り上げられ(※7)、国民や経済界にも負担増への不満が高まってきたことから、経済産業省は国民負担の抑制のため制度設計を段階的に見直し、2019年4月にはFITの抜本的な改革に向けた検討を始めました(※8)。 ◆民主党(当時)の失政が巨額の国民負担を招いた なぜ、ここまで国民負担が増大したのでしょうか。 実は、再エネのコストは高くないばかりか、海外では急速にコストが低下し、既存の系統電力のコストを下回る例も出てきています(※9)。 また、バイオマス以外の再エネは燃料が不要なため、ひとたび初期投資を回収すれば、ほぼ「限界費用ゼロ」(※10)で電気を供給することができます。 国際エネルギー機関(IEA)によれば、日本でFITが始まった2012年当時でさえ、世界のPVの発電原価は既に急速な下落傾向にあり、1kWhあたり25円程度、入札価格はさらにこれを下回っていました(※11)。 ところが、日本はFITの導入時に、1kWhあたり42円(税込み)という、当時のドイツの2倍近い、世界の相場とかけ離れた非常に高い価格でPVの電気を買い取ることを決めました。 これは、メガソーラー事業への参入を予定していたソフトバンクの孫正義氏が、民主党(当時)の菅直人・元首相に強く要望したことが理由ともいわれています。 このように、民主党(当時)政権が再エネ事業者の過大な利益を誘導したことが、PVの爆発的な普及につながったことは間違いありませんが、再エネ事業者が法外な利益を得る一方で、巨額の国民負担が累積的に増加し、高い買取価格を織り込んで日本ではコスト削減が進まないなど、多くの弊害が出ています。 再エネはもっと安いものですが、日本の再エネをここまで高コストにしたのは、明らかに民主党(当時)の失政が原因です。 ◆FITの速やかな廃止で、再エネはもっと安く大量に導入できる 幸福実現党は、FITを速やかに廃止し、電気料金を原資としない補助金制度を創設することを訴えています。 FITでは買取価格が固定されているため、コスト削減の努力が生まれにくいことから、再エネの開発にあたり、競争入札を広く適用します。 また、陸上におけるPV・風力発電等の開発では、乱開発による深刻な環境破壊が各地で発生していることから、規制を強化し、秩序ある開発によって自然環境・生活環境を守ります。 このような施策により、我が党は国民が安心して再エネを受け入れられる条件を整えて、低コストの再エネの導入を拡大し、広く国民がメリットを享受できるようにします。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト https://www.fit-portal.go.jp/PublicInfoSummary ※2 九州電力 系統情報の公開 http://www.kyuden.co.jp/wheeling_disclosure.html これによると、2018年4月29日(日)12:00頃、エリア需要793万kWのうち646万kWをPVが供給。2018年7月26日(木)14:00頃、エリア需要は1,601万kWのピークに達し、そのうち432万kWをPVが供給。 ※3 東京電力パワーグリッド エリアの需給実績公表について http://www.tepco.co.jp/forecast/html/area_data-j.html これによると、2018年5月20日(日)11:00頃、エリア需要2,616万kWのうち952万kWをPVが供給。2018年7月23日(月)14:00頃、エリア需要は5,653万kWのピークに達し、そのうち611万kWをPVが供給。 ※4 平成29年度(2017年度)エネルギー需給実績(確報) 資源エネルギー庁 2019年4月12日 https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/stte_025.pdf ※5 日本のエネルギー2018 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2018.pdf なお、買取費用から電力会社の回避可能費用等を減じたものが、賦課金の額となる。 ※6 「固定価格買取制度(FIT)による買取総額・賦課金総額の見通し(2017年版)」 電力中央研究所 2017年3月 https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/source/pdf/Y16507.pdf ※7 「再生エネ買い取り5年 国民負担は電気代の1割に拡大 論説委員・井伊重之」 産経新聞 2017年7月2日 https://www.sankei.com/premium/news/170701/prm1707010025-n1.html ※8 「経産省、再エネ固定価格買い取り制度を抜本見直しへ」 日本経済新聞 2019年4月25日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44175090V20C19A4000000/ ※9 Renewable Power Generation Costs in 2017, International Renewable Energy Agency https://www.irena.org/publications/2018/Jan/Renewable-power-generation-costs-in-2017 ※10 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※11 「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた今後の論点~第5次エネルギー基本計画の策定を受けて~」 資源エネルギー庁 2018年8月29日 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/007_01_00.pdf エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(2)電気事業の「ゲームチェンジ」 2019.05.15 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(2)電気事業の「ゲームチェンジ」 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆現政権による「電力システム改革」 2011年の福島第一原発事故後、日本の電力業界のリーダーであった東京電力の国有化を契機として、電気事業への政府の関与が強まっています。 政府は2013年4月に「電力システム改革に関する改革方針」を閣議決定し、第1弾=広域系統運用の拡大(2015年4月施行)、第2弾=小売全面自由化(2016年4月施行)、第3弾=発送電分離(2020年4月施行)という3段階の改革のための電気事業法改正案を、2015年までに国会で成立させました(※1)。 このうち第1弾は、東日本大震災の教訓を踏まえて、原則として地域ごとに行われてきた電力需給の管理を、新設した「電力広域的運営推進機関」(※2)が地域を越えて行い、安定供給を強化するものです。 大川隆法・幸福実現党総裁は、震災直後の2011年4月の講演(※3)で、緊急時に電力を広域融通できる仕組みの強化を訴えており、この施策は我が党の考え方とも合致します。 また、第2弾の小売全面自由化については、電力会社の経営が短期志向になるものの、サービスの向上など一定の効果が期待できるため、現政権の方針を静観してきました。 ◆発送電分離は、松永安左エ門氏による戦後の電気事業体制の解体 一方、第3弾の発送電分離は、送配電事業者を公的管理下に置く事実上の「電力国家管理政策」であることから、我が党はこれを見直し、発電・送配電・小売の一体経営(垂直統合)を維持したまま大規模化を図るべきと訴えてきました。 もともと日本の電気事業は、「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門氏などの起業家による民営事業として、明治時代に始まりました。その後、1938年の国家総動員法に続く電力国家統制により、発電・送電は特殊法人の日本発送電に接収され、政府の管理下に置かれます。 戦後、松永氏は9電力会社への地域分割・民営化・垂直統合を強く主張し、日本発送電による全国独占体制の維持や発送電分離を主張する勢力と激しく対立しました。 しかし、最終的にGHQが反対派をねじ伏せる格好で、1951年に民営の9電力(その後、沖縄電力が加わり10電力)体制が発足し、現在に至ります。 松永氏は、送電部門を分離すれば必ずそこに政府が介入し、民間による自由で効率的な経営ができなくなることを見抜き、断固として発送電分離に反対しました。 よって、発送電分離は、日本の電気事業体制の約70年ぶりの大きな方向転換となりますが、さまざまな弊害も指摘されています。 例えば、電力会社はこれまで、発電と送電の設備の建設時期をずらし、キャッシュフローを融通することで巨額の長期投資を行ってきましたが、発送電分離により、供給義務を負わない発電会社は短期的な利益で投資を判断するため、安定供給に必要な発電設備が不足します。 また、送電会社はこれまで以上に公共インフラとしての役割を求められるようになり、より政治的な理由で投資を判断するようになります。 その結果、供給安定性の低下と電気料金の上昇が起きる可能性がありますが、実際に、電力自由化と発送電分離を実施したフランス以外の欧州各国では、こうした傾向が見られます。 このような理由で、我が党は発送電分離の見直しを訴えてきました。 ◆「ゲームチェンジ」を受け入れ、電力システムを強化 しかし、もはや「電力システム改革」は後戻りできないところまで来ています。その理由は、再生可能エネルギーの急速な普及と低コスト化にあります。 今後は自由化された電力市場(kWh市場)に大量の再エネが流れ込んでくるため、このままでは火力などの大規模発電所は固定費が回収できなくなり、経営が困難になります。 仮に小売全面自由化と発送電分離を撤回したとしても、再エネを排除しない限り、大規模発電所の置かれた厳しい状況は変わりません。 しかし、低コスト化が進む再エネを排除して大規模発電所の経営を守ることは本末転倒であり、再エネを生かしつつ、供給安定性と経済性を確保できるよう、適切な制度設計によって電力システムを強化するしかないのです。 我が党は、このような電気事業における「ゲームチェンジ」をいったん受け入れ、2050年頃までは政府がこれまで以上に電気事業に関与することによって、再エネの大量導入と電力の安定供給を両立する体制を構築することとしました。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.com までご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 電力システム改革について 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/system_reform.html ※2 電力広域的運営推進機関 https://www.occto.or.jp/ ※3 「『震災復興への道』講義」 大川隆法総裁 2011年4月24日 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(1)総論 2019.05.12 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(1)総論 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆新しい「主要政策」におけるエネルギー政策 幸福実現党は、「夢は尽きない123の政策―2019年5月主要政策」を発表しました。 これは、昨今の社会・国際情勢の変化を踏まえて2017年10月版の主要政策を見直したもので、政務調査会が2019年2月に発表した「政策提言集2019」がもとになっています。 特にエネルギー政策については大幅な変更を行ったため、その内容について政務調査会エネルギー部会が解説します。 新しいエネルギー政策では、我が党が従来から訴えてきた原子力発電の推進やエネルギー資源調達の多様化など、日本の安全保障と経済成長に寄与する強靭なエネルギー供給体制を目指す基本方針は変わりません。 しかし、エネルギーを取り巻く情勢は大きく変化しており、難しい問題が山積する一方、新しいチャンスも生まれています。 このため、我が党は概ね2050年までの変化を見据えてエネルギー政策を再構築し、今後約30年間で実行すべき施策を提案することにしました。 ◆エネルギー自給率を高めて安全保障を強化 日本の一次エネルギー自給率は9.5%(2017年)で、OECDの35か国のうち34位と、きわめて低い水準にあります(※1)。 2010年の自給率は20.2%でしたが、2011年の福島第一原発事故後に全国の原発の再稼働が進まず、液化天然ガス(LNG)や石油等の化石燃料に大きく依存した結果、自給率が低下しました。 化石燃料は、南シナ海を含むシーレーンを通って日本に届きますが、海洋進出を進める中国が台湾や南シナ海で軍事行動を起こせば、供給が止まる可能性があります。 日本が将来にわたって国家の独立を守るうえで、自給率の低さは致命的です。 これを解決するため、我が党は自給率をフランス並みの50%以上に高めることを目指して、原発の再稼働・新増設だけでなく、再生可能エネルギーの主力電源化、国産メタンハイドレートの開発等を推進します。 従来の日本の再エネ開発は太陽光や陸上風力が中心でしたが、これに加えて、より大量のエネルギーを得るため海洋温度差、潮力、洋上風力、次世代地熱(EGS)等の開発を進めます。 再エネは開発に多額の初期投資を必要としますが、燃料が不要なためランニングコストが非常に安く、ほぼ「限界費用ゼロ」(※2)で無尽蔵のエネルギーを供給できる可能性を秘めています。 ◆送配電ネットワークを再構築 ところが、再エネのほとんどは分散型電源であり、大規模発電所のために建設された既存の送配電ネットワークでは、再エネを十分に受け入れることができません。 また、再エネは需要の変化に合わせて供給をコントロールできず、出力変動も大きいため、十分な調整力がなければ有効活用できません。 このため我が党は、再エネに適した高圧直流(HVDC)送電線(※3)を全国の海岸線に沿って新設するなど、公共インフラとして日本の送配電ネットワークを抜本的に再構築します。 また、電気自動車(EV)の普及を支援し、電力系統に接続されたEVを需給調整に活用するとともに、走行中にEVに充電できる道路インフラ(※4)を整備します。 これにより、EVが電力システムの一部となり、道路交通の石油依存度が低下し、エネルギーとモビリティ(交通)が融合して大きく変化します。 ◆国家の独立と繁栄は「強い電力システム」から 日本の電力化率(※5)は25.7%(2016年度)(※6)ですが、この値は経済成長と強い相関があり、日本では1960年代から現在まで、ほぼ直線的に増加してきました。 今後も再エネの大量導入、EVの普及、省エネの要請等により、エネルギーの電力化が一段と進むことは間違いありません。 我が党はエネルギー政策の中でも特に電力を重視し、原子力利用の堅持と電力システムの抜本的な強化で、国際情勢の変化に対応したエネルギー自給体制を確立し、日本の独立と繁栄を守ります。 参考 ※1 日本のエネルギー2018 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2018.pdf ※2 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※3 例えば、「三菱電機、再エネと連係容易な『直流送電』参入へ」 日本経済新聞 2018年11月16日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37833300W8A111C1000000/ ※4 例えば、「The UK is testing out roads that charge electric cars as they go」 Mashable Aug.18, 2015 https://mashable.com/2015/08/17/electric-car-charging-uk/ ※5 電力化率: ここでは、最終エネルギー消費に占める電力需要の割合。 ※6 エネルギー白書2018 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-1-1.html すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 6 … 17 Next »