Home/ 経済 経済 日本政府よ ギリシャのデフォルト危機を救出せよ 2012.02.08 再びギリシャのデフォルト(債務不履行)が取りざたされています。 理由としては、ギリシャ政府の財政赤字削減計画が予想以上に遅れていることと、3月20日には144億ユーロ(約1兆4100億円)にのぼる国債償還日が近づいていることが主な原因です。 ギリシャは、「トロイカ」と呼ばれる欧州委員会、欧州中央銀行、国際通貨基金との債務削減交渉が合意に達しないと融資が受けられず、国債の返済もできなくなる恐れがあるのです。いわゆるデフォルトが現実感を増しているわけです。 昨年9月に実施する予定だった融資は三カ月後に先送りされました。こうした影響で、昨年末に予定されていた50億ユーロ(4900億円)の融資は再度3月に延期され、3月に予定されていた100億ユーロ(約9800億円)の融資も6月にずれ込むことが発表されています。 加えて、難航している交渉状況を鑑みると、上記の融資が実行されるかも依然不透明です。 欧州でギリシャ支援を積極的にリードするフランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相は、ギリシャのユーロ存続を望みながらも、ギリシャ政府が債務削減交渉に合意する件に関しては、「もはや猶予はない」という発言をしており、いら立ちを示し始めています。 ただし、ギリシャ政府にとっても交渉をすんなり受け入れられない事情があります。労働者の最低賃金20%カット、年金削減、公的部門の整理による1万5千人のリストラ策に対して、労働組合が激しく反発。7日には、首都アテネでは労働組合による1万3000人が集まり、緊縮財政への抗議集会とストライキを敢行しています。 ギリシャ議会は、民衆の激しい抗議や経済状況もあり、債務削減に関する会合を結局延期しました。その結果、ユーロ圏の首脳たちを不安に陥らせています。 ギリシャは、融資を受ける代わりに厳しい財政削減を義務付けられていますが、これで問題が本当に解決できるのかは極めて疑問です。 ギリシャのシンクタンクIOBEのヤニス・ストウナラス氏によれば、ギリシャ経済は対前年度比でGDPは6%以上低下することが必至だと分析しています。 確かに、失業率も2011年の段階で19%と高く、このまま債務削減が継続されれば、一層高くなるでしょう。 ギリシャ経済が低調であれば、税収も減ります。同時に、支援しなければいけない国は、イタリアやポルトガルスペインと多数にのぼっており、ユーロ圏の経済に足枷をかけています。全体的にもユーロ圏経済が一層冷え込めば、ギリシャ支援どころの話ではなくなります。 「トロイカ」が求める財政赤字削減案は厳し過ぎるとの意見もあり、欧州から世界不況を起こす懸念があることを指摘する投資家もいます。実際、その可能性は否定できません。 さらに、経済学者の中には、ユーロの構造的欠陥を指摘しているハーバード大学のJ・フランケル教授がいますが、同教授は、ユーロ離脱ということも十分考えられるべきだと述べています。詳細はこちら→ 「EU離脱なし」のギリシャ救済は本当に可能か 日本政府は、国内の消費税増税法案に熱心ですが、欧州発の世界不況を回避するためにも、ギリシャ政府に対して直接融資をすることも検討するべきでしょう。 国際通貨基金(IMF)を通すことなく、直接融資することが大事です。金額は、「トロイカ」との交渉によって決めていく柔軟な外交を展開することも考えるべきでしょう。 少し論点はそれますが、昨日、財務省は覆面介入として1兆円強の為替介入をしたことが記事になりました。「為替介入をどう見るか」でも紹介した通り、円高是正のための為替介入自体を否定しませんが、金融緩和を同時に発動していなければ効果は限定的です。 また、わざわざ「覆面介入」という姑息な手段に対して資金を使う余裕があるのなら、同額程度をギリシャ政府に融資しても問題ないわけです。 さらに言えば、昨年から始まった日欧EPA(経済連携協定)を円滑に進めるためにも、今は欧州に恩を売っておくことも大事です。 また、中国が執拗に欧州に対して金融支援を行う意思表示をしている以上、外交・安全保障の観点からも欧州を味方につけることは極めて大事になるでしょう。 日本政府は、内政ばかりに目を向けず、上記のような国際的視点からの政策も視野に入れて行動するべきです。相応の努力を怠ると、最悪の場合は日本が孤立することになります。 日本は欧州の危機を救う力を持っているのですから、日本政府は、堂々とギリシャ支援を実施するべきです。(文責・中野雄太) FRBの「インフレ目標」導入であらわになる「日銀の無策無能」 2012.01.27 米連邦準備制度理事会(FRB)はとうとう25日、インフレ率2%を長期的なゴールと位置づける「インフレ目標」の導入に踏み切りました。同時にゼロ金利を2014年まで延長することも決定しました。 26日の朝日、読売、毎日、日経、東京の夕刊はどれも、このニュースを一面で取り扱っています。27日の朝刊各紙にも大きく報道されました。 FRBのバーナンキ議長は「インフレ目標」導入について、「2%の目標を明確にすることで、物価の安定化や適度な長期金利を促すことができる」と説明しています。 「インフレ目標」とは、政府や中央銀行がインフレ率(物価上昇率)の目標を設定・公表し、その達成に主眼を置く金融政策のことです。 インフレ目標は、1990年にニュージーランドが採用して以来、カナダ、イギリス、韓国など20カ国以上で採用されています。先進国でインフレ目標を取り入れていないのは、日本と米国だけでした。 幸福実現党は2009年の立党当初より、「3%程度のインフレ目標値を設定」することをマニフェストに掲げて来ました。しかし、日本では日銀を筆頭に「インフレ目標」に対して否定的な論調が主流を占めています。 日銀が反対している理由について、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は「インフレ目標にすると、それを達成できない場合には、日銀に説明責任が発生するが、日銀はそれを嫌っていたのだ」と述べています。(高橋洋一の民主党ウォッチ「FRB、ついにインフレ目標導入『取り残された』日銀どうするのか」) 日銀は、これまでもデフレに対して無策でしたが、「インフレ目標」に対しても、自らの責任回避のために避けて来たのです。 今回、FRBがインフレ目標の導入に踏み切った事で、日銀の「米国もインフレ目標をやっていない」という主張は説得力がなくなります。 一方で、「今回のような法的拘束力のない『インフレ目標』なら、日銀は既に設定している」という日銀擁護論も出ています。 しかし、東京大学大学院教授の伊藤隆敏氏は「日本銀行も1%程度の上昇率を示しているが、それはあくまで『望ましいと考える水準』にすぎない。デフレから脱出するためには『いつまでに何%にするのか』を示すべきだ。それに、海外では2%の目標が一般的で1%は低すぎる」と述べています。(1/27 朝日) 日銀のデフレに対する無策ぶりに対しては、例えばノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン博士は「今、日銀が重い腰をあげないというなら、日銀総裁は銃殺刑に処すべき」とまで酷評しています。(2010年08月20日週刊『現代』独占インタビュー) 日銀の白川総裁の東大時代の恩師であるエール大学の浜田宏一教授は、2010年に出版した著書の中で、教え子たる白川総裁に対し、「いまの日銀は、金融システム安定化や信用秩序だけを心配して、本来のマクロ金融政策という『歌』を忘れたカナリヤ」だと警告しています。 白川総裁はこれらの批判に耳を傾けることなく、「私は日本の政府・国民は財政バランスを回復する意志を持っていると信じている。これがマーケットの信任に繋がる」と、非常に抽象的な表現で煙に巻き、緊縮財政デフレ路線を正当化してきました。(2011/4/25 NHKクローズアップ現代「復興の道筋 日銀・白川総裁に問う」) 白川総裁は積極的な金融緩和に対しては「通貨の信認を守る」の一点張りで、何もしないことの言い訳にしています。「デフレ放置」が仕事であるかのような日銀白川総裁の石頭に、もはやなす術がないかの如きです。 奇しくも、米国のインフレ目標導入が大々的に報道された1/27日に『日銀総裁とのスピリチャル対話』(大川隆法著、幸福実現党発行)が店頭発売となりました。一種の「神仕組み」と言えましょう。 本書は白川日銀総裁の本心を明らかにする「守護霊インタビュー」であり、抽象的な表現、煙幕の奥にある白川総裁の本心が見事に解き明かされており、今、日本を貧しくしている「元凶」が白日の下に晒されています。 「日銀のメンツをつぶしたくない」という白川総裁のメンツなど、どん底の日本経済を救うことに比べれば瑣末なことであります。 もちろん、「インフレ目標」は万能ではありません。「インフレ期待」を醸成しつつ、日銀の金融緩和とのコラボで、政府が効果的な財政政策や大胆な規制緩和を打ち出し、経済を回復・成長軌道に乗せることが不可欠です。 幸福実現党は、リニアモーターカー等の高速交通網の全国整備、航空宇宙産業等、ロボット産業等、新たな基幹産業振興に向けた、確かな未来ビジョンを有しています。 幸福実現党は必ずや、大胆な金融政策と財政政策のミックス政策を通じて、「新・所得倍増計画」を実現して参ります。(文責・幸福実現党 岐阜県本部参議院選挙区代表 加納有輝彦) アメリカがインフレ目標を導入か 2012.01.25 不況に苦しむアメリカが、打開策としてインフレ目標の導入に踏み切ることを検討しています。「インフレ目標」政策とは、中央銀行が物価上昇率に一定の目標を定めることを指します。 様々な金融政策を通じて市場への通貨量を増加させて、マイルドなインフレを起こす政策ですが、現在では1990年にニュージーランドで導入されて以来、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの主要国を含め20ヶ国以上で実施されています。ただし、ドルや円、ユーロなどの主要通貨を持つアメリカ、日本、ユーロ圏では導入されていません。 現在、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)には、インフレ目標推進派のB・バーナンキ議長がいます。学者時代から大不況を克服する重要政策は金融緩和にあることを主張しており、日本のバブル崩壊後の金融政策に関しても批判を展開している方です。 バーナンキ議長は、24日から25日にかけて実施される連邦公開市場委員会(FOMC)において、前月に協議した「金融政策の長期目標と政策戦略に関する声明」に関する草案をさらに踏み込むことが予想されています。 そのため、アメリカの主要メディアでも日増しに注目が高まっています。ただし、共和党の保守派勢力からは、バーナンキ議長の「過剰な」金融政策がインフレを引き起こす懸念があることを批判され、金融緩和第三弾(QE3)を実施する時期が未定でした。 こうした批判に対して、具体的なインフレ目標値を導入することによってインフレ懸念を抑え込み、QE3実施に道筋をつける目論見があるとも考えらます。 現時点(日本時間1月25日18時時点)では、詳細は出ていませんが、もしアメリカがインフレ目標値を導入したらどうなるかを考えてみたいと思います。 結論は簡単です。FRBがインフレ目標値導入と金融緩和に踏み切ると予想したならば、ドルの供給量が増えるわけですから、物価水準が上昇=インフレ傾向となり、同時にドルの相対的な価値が他の通貨に対して下がります。 言い換えれば、「円高ドル安」になるということです。加えて、日本政府は増税路線を鮮明にしていますし、日銀はインフレ目標や国債の日銀直接引受などの大胆な金融緩和を否定しているので、日本経済はデフレが定着すると予想ができます。 その結果、円の価値が高止まりする可能性が出てくるのです(インフレ目標値の是非や上記のメカニズムをもっと知りたい方は、『日本経済再建宣言』のついき党首が担当した第二章を参照のこと。また、より詳しく知りたい方で入門的な解説書は、岩田規久男著『デフレと超円高』講談社現代新書や『ユーロ危機と超円高恐慌』日経プレミアシリーズを参照)。 日本経済はデフレと円高問題に苦しんでいるのなら、政策としては「金融政策」を割り当てるのが筋です。特に、アメリカでは不況打開策として金融緩和をしてドル安へと誘導するわけですから、輸出企業を数多く抱える日本にとってはなおさら対策が必要とされます。 よって、政府は日銀の白川総裁に一層の「金融緩和」を迫るべきです。幸福実現党としては、長期国債の買い切りオペや日銀の国債直接引き受け、量的緩和の拡大などを行い、過度なインフレにならないようにインフレ目標の導入も併せて提言しています。 アメリカがやるから日本もやるといった単純な議論ではなく、既に昨年から「日本再建宣言」の一環として、デフレ脱却と震災復興の打開策として打ち出しているものです。 現状を見ると、本来ならばアメリカではなく日本においてインフレ目標を含めた金融緩和策が議論されなければいけません。日銀の白川総裁は、いったい何をしているのでしょうか。 幸福実現党としても、現在の日銀の金融政策に断固軌道修正を求めていきます。(文責・中野雄太) 2012年、日本の分岐点―日本再建に向け、「富の分配」ではなく「富の創造」を! 2012.01.01 新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。 野田首相は1月1日付で平成24年の「年頭所感」を発表しました。「社会保障制度の持続可能性を高める必要性」を指摘する一方、「歳出削減と、税収収入の確保」に全力で取り組むと方針を示しました。「力こぶを入れて取り組んでいく」そうです。 さて、昨年末から、消費税増税を巡る民主党内の攻防が激化し、9人が離党届を提出しましたが、今回、注目したいのは「所得税の最高税率を現状の40%から45%に引き上げる」案です。 見直しの理由は、経済格差の是正を図るための「所得再分配機能の回復」とされています。つまり、高額所得者からの税収を増やし、低所得者向けの社会保障サービスを充実させるということです。 しかし、これは大変、危険な見直し案です。人の何倍も働き、長年努力して来た高額所得者を狙った増税は「働く意欲を失わせる」ことに繋がります。社会主義国のように「努力が報われない社会」になります。 その結果、富裕層が、税金の安い香港やシンガポールに移る「資本逃避」が現実となり、一層、税収が下がることでしょう。 実際、米国で「富裕層に対する増税案」に賛成しているといわれる、富豪、著名投資家のウオーレン・バフェット氏も、シンガポールに移住しています。 「所得の少ない人ほど負担感が強くなる消費増税への理解を得るには、富裕層に負担を求める必要がある」として、最高税率の引き上げを指示した野田首相。野田首相の頭にあるのは「富の分配」ばかりです。 消費増税の不満を減らし、支持率や国民世論、選挙を考えての「迎合主義」と言わざるを得ません。 民主主義では、高額所得者も税金を納めていない者も同じ一票です。一万人に一人の富豪から税金をとって、一万人に分配すれば「一票が一万票に化ける」。政治家にとっては、抗しがたい誘惑なのでしょう。 しかし、これはマルクスが『共産党宣言』で打ち出した「強度の累進課税」と発想が同一です。 「強度の累進課税で、高額所得者から財産を取って分配する」――つまり、財産を全部、国家の方に持っていこうとする社会主義的発想が強く見られます。 政府税制調査会が30日にまとめた税制抜本改革案には相続税の最高税率5%引き上げも明記されています。改正が行われれば、相続税の対象になる人が全国民の4.2%から6~7%まで増えると試算されています(ニッセイ基礎研究所調査)。 ここにも、マルクス『共産党宣言』(「相続権の全面廃止」)の強い影響が見られます。 現在、所得税と個人住民税を合わせた個人所得課税の最高税率は50%です。税と所得を折半する「五公五民」となっていますが、最高税率引き上げが実現すれば、高額所得者は課税所得の過半を税で納めることになります。 働いても、働いても、半分以上を税で取り上げる仕組みは、国家による「合法的な略奪」であり、憲法18条の「奴隷的拘束の禁止」に明らかに違反する行為です。 野田増税内閣が突き進んでいるのは、まさしくハイエクが言う「隷属への道」そのものであります。 ハイエクは、たとえ、「共産主義」であろうが、「ファシズム」であろうが、「福祉国家」であろうが、「富の分配」であろうが、その「目的」に関わらず、私有財産を中央集権的に管理統制する「集産主義(collectivism)」という「手段」は同一で、その「手段」こそが「暴政」と「貧困」という、「隷属への道」を生み出すことを指摘しています。 「社会保障と税の一体改革」が「国家社会主義への道」であることを指摘しているのは、幸福実現党だけです。 ※詳細は1月18日、幸福実現党より緊急発刊される『国家社会主義への警鐘~増税から始まる日本の危機~』(大川隆法名誉総裁とついき秀学党首との公開対談)をご覧ください。 松下政経塾で無税国家を学んだはずの野田首相は、「無税国家」を目指した松下幸之助氏の理想とは見事に真逆に進んでいます。 2012年、「税収収入の確保に力こぶを入れて取り組んでいく」のなら、日本を豊かにするための、「富の創造者」の輩出に努力すべきです。 あの、「岩崎弥太郎」を100人輩出する!」という目標でも立てたらいかがでしょうか。 「富の分配」ではなく、「富の創造」への努力こそ、「日本再生に歩み始める最初の年」となるはずです。 野田首相は、「増税に不退転」になるのではなく、「多くの雇用を生み、国富を増やしてくれる人こそ国の宝」と考え、「未来のリーダーを創る」ことに「不退転」であるべきです。 所得税の最高税率を上げていく考え方は、日本を豊かにしていく道とは反対方向に進む道です。 イギリスのサッチャー元首相は「お金持ちを貧乏にしても、貧乏な人はお金持ちになりません」と言い切り、労働党政権が続けてきた「福祉国家路線」を大きく転換。「自由な競争社会」に改革し、イギリスの国力を復活させました。 「世界中の成功者が住みたくなる国」「新しい成功者を続々と輩出する国」――幸福実現党は、そんな豊かで自由な日本にして参ります!(文責・竜の口法子) 「政治家の使命」とは何か――政治家の心意気こそ経済成長の牽引力 2011.12.30 民主党の社会保障と税の一体改革両調査会の合同総会は29日、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%と2段階で引き上げる消費税増税案を含む一体改革大綱素案の税制抜本改革案を了承しました。(12/30産経) これを受けて、政府は30日、消費税増税を柱とする「社会保障と税の一体改革」の素案をまとめました。与野党協議を経て、年明けの通常国会で消費増税の関連法案を3月末までに提出することを目指しています。 消費税増税に向けた野田首相の意志は固く、「政治家の集大成のつもりで臨む」「私の政権で一番苦しく逃げてはいけないテーマは社会保障と税の一体改革だ」と決意を示しています。 「無税国家」を掲げる松下政経塾出身の初の首相として、国民の負担増と経済衰退をもたらす「増税」を政治家の集大成とするというのはあまりに淋しく、政治家の風上にも置けません。 「社会保障と税の一体改革」の間違いは二つあります。その第一は「歳出削減の努力」が欠如していることにあります。 野田首相は、復興増税で国民に10兆円以上の負担を押し付けておきながら、復興増税成立後、早々と議員定数削減を先送りし、国家公務員の冬のボーナスを4.1%も増額しました。 国と地方の公務員のボーナス平均は76.5万円(みずほ証券調べ)で、民間平均37.8万円の2倍以上となりました。野田首相は「歳出削減」どころか、公務員の人件費増大を推し進めています。 政治家や官僚は決して身を削らず、肥える一方、疲弊する国民から増税して税金を取り立てている姿勢は、国民を飢餓に追いやってでも、豪華な暮らしを続けている北朝鮮の豚親子と何ら変わりありません。 「社会保障と税の一体改革」の間違いの第二は「経済成長」の視点が完全に欠けていることにあります。経済成長して、GDPが伸びれば、税収は飛躍的に増大します。 「社会保障と税の一体改革」という問題設定自体が「経済成長」を視野から外し、「社会保障が毎年増加する→増税は不可避」という財務省による巧みな詐術(トラップ)であることを私たちは見抜かなくてはなりません。 税収が経済成長と密接に関連がある以上、問題設定は「社会保障と税の一体改革」ではなく、「経済成長と税の一体改革」であるべきです。 しかし、野田首相は「経済成長」には関心を示さず、ただ「増税」に対してのみ「不退転の決意」で臨もうとしています。 本来、政治家は自国を世界一豊かにするというビジョンを持ち、その実現に向けて「不退転」で努力しなければなりません。 幸福実現党のついき秀学党首は、今、日本が持つべきビジョンとは「世界一にして世界最先端の経済社会の実現」ということを掲げています。(ついき秀学党首論文「これが本物の経済成長戦略だ」⇒http://p.tl/RrAC) 「増税推進派」の政治家、学者は総じて悲観論に立っています。「これ以上の経済成長は望めない。成長しても金利が上がり、借金が返せない、借金が膨らみ、日本はギリシャのように破綻する」としています。 「このままの雲行きだと、明日は大嵐がくる」と天気予報をしているようです。学者は天気予報で良いでしょう。しかし、政治家は天気予報ではだめです。 幸福実現党のついき秀学党首のように、「明日は快晴にする!」というビジョンを国民に示して国民を導き、天気予報自体を変えることが「政治家の使命」なのです。 国家経営も企業経営も本質は同じです。「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ。未来を予測しようとすると罠にはまる」という、ドラッカーの格言を今こそ噛みしめるべきです。 したがって、「明日は嵐になる(財政破綻)。傘(増税)が必要です」という財務官僚、学者の天気予報に唯々諾々と従い、不退転の覚悟で「傘を集める(増税する)」という野田首相の姿勢は、国家の「経営者」としての資質に欠けていると言わざるを得ません。 「明日は必ず快晴にしてみせます!皆さん、傘はいりませんよ!」と明るい未来ビジョンを示してくれる政治家の心意気こそ、今の日本には必要なのです。そうであってこそ、投資も活発化します。 野田首相の「増税路線」では、民間からさらに富が剥奪され、税金が増えるどころか、国民全体がいよいよ貧しくなり、税収が激減することは火を見るより明らかであります。 今こそ、政治家、官僚共に「国富」を創造するという一点に、あらゆるエネルギーを集中すべきです!そして、民間に富が蓄積されてこそ、税収が増えるのです。「経済成長と税の一体改革」こそが必要なのです。(文責・加納有輝彦(岐阜県本部幹事長)) TPP:日本は「自由貿易」を推し進め、「世界経済の牽引役」を果たせ! 2011.12.09 幸福実現党の機関紙「幸福実現News」第27号(党員限定版、PDF⇒http://p.tl/UTAp)が発行されました。 1面の特集では「TPP参加で大国の責任を果たせ」と題し、「企業同士の競争では『ゼロサム・ゲーム』のような弱肉強食的競争が起こりますが、国家間の自由貿易は『勝つか、負けるか』ではなく、国際分業によるwin-winの関係をもたらします」と述べられています。 では、なぜ、国家間の自由貿易は、企業の競争と違って、互いの国に利益をもたらす「プラスサム・ゲーム」になるのでしょうか? これは、経済学の最初期から論じられてきた重大なテーマです。 「経済学の祖」であるアダム・スミスは「重商主義」を徹底的に批判し、自由貿易によって経済が活性化し、国富が増大することを明らかにしました。 「重商主義(貿易差額主義)」とは、輸出増大を図る一方、「関税」によって輸入を制限することにより、国内産業を保護育成しようとする保護貿易政策です(「輸出-輸入」の差額を最大化させる政策)。 これは輸出を「善(利得)」、輸入を「悪(損失)」と見る考え方で、TPP批判論者の多くがこの間違いに陥っています。 アダム・スミスは、輸出が「得」で、輸入が「損失」と考えるのは「重商主義が『富は貨幣あるいは金銀に存する』という通俗的な見解に立っている」からだと批判しています。(鈴木真実哉教授著「『重商主義』再考」(聖学院大学論叢第18巻第2号2006.3)⇒http://p.tl/xgsh) このアダム・スミスの重商主義批判を理論化したのが、リカードの「比較優位論」です。 これは簡単に言えば、自由貿易が進めば「国際分業」が進み、互いの国が最も得意とする分野(生産性の高い分野)に、資源(労働力、資金等)を集中することで、各国の生産性が高まり、国富が増大し、世界全体の生産性も高まるという理論です。 「比較優位の原則」とは、例えば、会社の社長がその秘書よりもタイピングが上手かったとしても、社長はタイピングを秘書に任せて経営に専念し、秘書は経営ではなくタイピングに専念した方がトータルの生産性が高まることは数学的にも明らかです。 幸福実現党が、TPPによって安い輸入品を入れると共に「日本経済は、もう一段の高付加価値産業へのシフトを成し遂げるべき」と提言しているのは「比較優位論」にも則っています。 では、こうした「自由貿易が経済を活性化させる」という経済学の理論は、現実の経済にあてはまるのでしょうか? 大戦後、発展途上国や社会主義国の多くは、先進国経済に席巻される恐れから「貿易の自由化」を拒み、高関税、非関税障壁などの保護貿易政策を取ってきました。 しかし、保護貿易政策を行った国家で急速な発展を遂げた国は一つも生まれませんでした。 その中で、韓国、台湾、香港、シンガポールといった「アジアの四小龍」が貿易自由化を推し進め、急速な経済成長を遂げました。 有名な事例として、米国から台湾に戻ってきた著名な経済学者が、貿易自由化や資本を誘致することが台湾の経済に大きく貢献するはずだと政策転換を迫り、それが台湾の成功に繋がったと言われています。(伊藤元重著『ゼミナール・現代経済入門』日経新聞社刊) こうした国々の経済成長を見て、中国、タイ、マレーシア、インドネシアなども保護貿易から「開放路線」に政策転換し、急速な成長軌道に入りました。 「自由貿易が、国の経済に活力をもたらす」というアダム・スミスの理論は、歴史的にも実証されています。 TPPは「アジア太平洋自由貿易圏 (FTAAP)」 の構築に向けた一過程であり、TPPを道筋として、将来的にはWTOが目指している世界的な自由貿易圏の構築を目指すべきです。 日本はTPPを通じ、より一層の貿易の自由化を推し進め、もう一段の経済成長を成し遂げると共に、「世界経済の牽引役」を目指すべきです。(文責・黒川白雲) 東証と大証の経営統合を日本経済再建に繋げよ 2011.11.26 東京証券取引所と大阪証券取引所が、2013年1月1日に「日本取引所グループ」として経営統合することを発表しました。 統合後の新会社に上場する企業の株式時価総額は3億6000ドル(役277兆円)と「ロンドン証券取引所」を抜き、「NYSEユーロネクスト」と「ナスダックOMX」に次ぐ世界第3位の規模となります(国際取引所連合10月末公表データ)。 現物株式の取引で国内シェア9割以上を占める東証と、デリバティブ(金融派生商品)など先物取引を強みとする大証が統合することで相互に補完することとなり、市場規模の拡大と金融商品の多様化を実現し、魅力ある市場となります。 また、取引を支える高度なコンピューターシステムへの投資や運営コストを年間70億円程度削減することができ、グローバル競争力の強化と利便性を提供することとなります。 日本においては、2007年には1日平均3兆円を超えていた売買代金の市場が、現在では1兆円規模と極端に縮小しており、地盤沈下に対する危機感をもって経営統合の判断が下されました。 しかし、市場が経営統合により財務が強化されるだけで、日本市場が活況を呈することはありません。実際、経営統合が発表された後、11月24日には、日経平均株価は年初以来の最安値8100円台を更新しています。 幸福実現党は日経平均株価株価2万円台を政策目標と掲げていますが、株式市場の活性化は、日本経済再建の原動力となります。そのためには、政府としても株式市場活性化に向けた支援政策が必要です。 市場統合を日本経済の再建につなげるためには、まずは、大胆な金融緩和によって、「貧血状態」とも言えるデフレから脱却し、マイルドなインフレ・トレンドに乗せなければ経済活動の体温は上がりません。 また、証券税制の軽減税率撤廃により、来年2012年1月より上場株式等の配当および譲渡益の課税が10%から20%に増税されます。「軽減税率撤廃」によって、多くの投資家の撤退と株式市場の低迷が懸念されています。 中国、韓国、香港、シンガポールなど、株の譲渡益課税は原則非課税であり、日本だけが世界の潮流に逆行しています。幸福実現党は株の配当課税、譲渡益課税の廃止を掲げていますが、今こそ政府は「株式減税」を断行すべきです。 同時に、法人税の減免、金融商品課税の減免も大胆に行い、企業活動の重荷を無くし、企業が積極的に設備投資・金融投資を行う意欲を高めていくべきです。 特に、法人税の足枷は国際競争力を削ぐだけでなく、日本企業の海外流出を促し産業の空洞化を拡大させ、外国企業の投資や誘致を阻害することにもなっています。実際、東証に上場する外国企業の数は、1991年に127社ありましたが、現在はわずか12社しかありません。 また、日本の「縦割り行政」に代表される「経済障壁」を排除していく規制緩和が必要です。株式や金利は金融庁、石油は経済産業省、農産物は農林水産省といった「縦割り行政」が元凶となって、商品相場に連動する金融商品の開発が遅れていることは問題です。 さらに「新産業の振興」の育成も必要です。カネ余りが続く中、資金は新たな「成長株」を求めています。政府は大胆な規制緩和と金融政策、インフラ整備投資によって、企業家精神を促す経済環境を形成し、「新産業の振興策」を進めていくべきです。 株式市場は日本経済の活力の源泉です。政府は、東証と大証の経営統合を梃子として、株式市場の活性化を強力に支援し、「日本経済再建」「新高度経済成長」を実現すべきです。(文責・小川俊介) TPPは本当にデフレを加速するのか 2011.11.23 最近なにかと話題の多いTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。 野田首相のTPP参加表明に際しても、与党内でも賛成派と反対派に二分されるなど、党内の連携が困難を極めました。一方、経団連などの財界は概ね賛成を、農協や日本医師会などは明確に反対を表明しています。 保守系団体はほとんどが反対を表明しており、現在でも各地でデモや集会、インターネット番組を通じてTPPの反対の論陣を張っています。 中には、TPPは「亡国最終兵器」だと主張されている方や、アメリカ陰謀論、農業や公的医療制度の崩壊を懸念する声も出ています。議論をすることは結構ですが、いささか感情論に走っていると見えなくもありません。 さて、TPPが懸念されている最大の問題は、「例外なき自由化」にあります。 TPPは、世界貿易機構(WTO)や自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)などの国際貿易の専門機関や貿易協定よりも強く自由化の促進を要求しています。 参加国内では、10年ほどの歳月をかけて関税を撤廃し、各国特有の商慣行や法律で貿易や投資の妨げとなる非関税障壁も見直すという意味では、「過激な自由化論」だという意見もあります。 よって、国内での職や市場シェアを外国勢に奪われることを懸念される方が声高に反対を表明しているのは一定の理解はできます。 さらに言えば、遺伝子組み換え食品や労働条件の悪化を懸念する声もあり、国民の生活を脅かす可能性があるとのことですが、いたずらに国民の不安を煽ることは賢明ではありません。 そのためには、参加国には約10年の時間があることや参加国全体で意見調整をして懸念を一つひとつつぶしていくことで対応するべきでしょう。 今やるべきは国民の不安を煽るのではなく、冷静な分析です。 このように、TPPの論点は多岐にわたっていますが、本日は貿易(自由化)がデフレを悪化させるのか否かについて絞って議論します。というのも、TPP反対派が盛んに主張しているのがこの論点だからです。 実は、貿易がデフレを悪化させるという論点は、最近も似た事例がありました。 現在、昇竜のごとく高成長を維持している中国からの輸入です。日本がデフレとなっているのは、中国からの安い商品が大量に入ってきているとする説です。 いわゆる「輸入デフレ説」です。貿易自由化とは異なりますが、参考までに取り上げてみましょう。 「輸入デフレ説」に従えば、全世界がデフレとなっているはずですが、現実はそうなっていません。 名目成長率を実質成長率で割ったGDPデフレター(インフレの程度を表す物価指数とも言える。これがプラスならばインフレ、マイナスならばデフレ)を見れば、日本は90年の「バブルつぶし」からずっと低下しています。 一方、アメリカ、イギリス、ドイツの先進国はずっと上昇トレンドを描いています。つまり、日本だけがデフレに陥っているのです。 デフレの原因は通貨供給量を絞っているからであって、輸入が原因ではないのです(IMFのデータ参照。1980年から2010年の期間の計測)。 実際、貿易自由化ならびに自由貿易を促進することによって国内価格よりも安い輸入財が入ってくることは事実です。 そうすれば、国内製品は輸入財と比較して割高となりますので、価格の引き下げをしなければなりません。場合によっては市場から撤退することもあります。いわゆる、貿易のデメリットです。 同時に、輸出価格と輸入価格の比率を示す交易条件も変化します。輸入財価格の低下は、交易条件を改善させます。 言い換えれば、より多くの製品を海外から購入できるとことを意味していますので、消費者にもメリットをもたらします。 加えて、消費者は安い輸入財が入ってきても、浮いたお金で他の製品を購入できるので、総需要は大きく変わることはありません。つまり、変化するのは相対価格であって一般物価ではありません。 最後に、景気との関連について述べておきましょう。 まず、輸入は国内の所得水準と密接に関連しています。現在の日本経済はデフレ不況です。国産品にせよ、輸入品にせよ、所得が低下している状況では消費は伸びません。 ましてや、日本の輸入依存度(輸入額対GDP比)を見ると、10.8%にしか過ぎません(総務省統計局2009年のデータ参照)。 つまり、日本人は、所得の中で輸入財に使う割合は、わずか1割程度だということです。貿易自由化によって多少増えるとしても、「デフレが深刻化する」というレベルでないことは明らかです。 一方、輸出にしても、現在のところ元気な国はありませんので、日本からの輸出が大きく伸びる可能性は低いと言えましょう。 貿易と景気は関連していますが、わが国では生活に影響を及ぼすほど大きなものではないのです。やはり、一般物価水準に影響を与えるのは金融政策です。 TPP反対派も認めているように、まずはデフレを脱却しなければなりません。デフレ対策は金融政策で対応するべきです。また、デフレ対策は円高対策にもなります。 国内の主要企業が輸出企業であることを考慮すれば、行き過ぎた円高ではTPPによる輸出増加というメリットを十分に活かすことはできません。 また、円高で交易条件が良くなっていても、国内が不況であれば、輸入すらも伸びません。その意味で、財政出動も行って景気回復を進めることも大事になります。 現政府は、復興増税や消費税増税を模索していますが、デフレ不況下の増税は景気悪化を招きます。政府が本気でTPPの効果を最大化したいならば、増税は引っ込め、金融緩和と財政出動を発動するべきです。 このように、TPP参加を表明したことで、かえってマクロ経済政策の重要性が高まったと言えます。だからこそ、政府は増税を急いではいけないのです。(文責・中野雄太) 過去の増税と今回の増税の違い 2011.11.09 与党の民主党と野党の自民党・公明党の3党の幹事長が会談し、第三次補正予算に関連する復興債の償還期限を10年から25年に延長したことを正式合意しました。 これにあわせて、たばこ税導入を見送る案も出ていますが、財源確保法案の早期成立に向けた動きが加速することは間違いありません。 補正予算に絡めた増税法案である以上、国民の声が届かず、このままいけば、今月中には復興増税が正式に決定してしまいます。 さて、今回の増税と過去20年間に実施された増税と比較検討してみたいと思います。例として、1989年の消費税導入と97年の消費税増税を取り上げます。 まずは、竹下登内閣時の1989年の消費税導入は難航を極め、ようやく誕生しました。 そして、翌年の1990年には、日銀による金融引き締めや大蔵省(現財務省)による不動産などの総量規制を設けて、いわゆる「バブルつぶし」が行われました。 当時は、東京23区の不動産価格でアメリカ全土が購入できるとも言われ、株式市場では、1989年12月29日に最高値の38,915円を記録したほどです。 ただ、「バブルつぶし」によって、わずか9カ月後には2万円割れとなるまで経済は落ち込み、税収も1990年の60兆円をピークに下がり続けました。 急激な経済の引き締めが行われたことで、以後は日本経済が回復の足並みは遅く、「失われた20年」という低空飛行が続くことになります。 アメリカのFRBのバーナンキ議長や中国人民銀行は日本の「バブルつぶし」から「加熱した経済を急激に引き締めてはならない」という教訓を得たとも言われています。 次は1997年のケースです。当時は、1995年の阪神・淡路大震災から日本経済は復興をなし、名目経済成長率は2%台まで回復していた時期です。 橋本龍太郎首相(当時)は、六大改革(「行政改革」「財政構造改革」「経済構造改革」「金融システム改革」「社会保障構造改革」「教育改革」を指す)という壮大なプランを掲げ、97年には財政再建の一環として財政構造改革法を成立させました。 具体的には、消費税の増税と特別減税の廃止、医療費の値上げなどです。その結果、国民負担は9兆円にのぼりました。 しかしながら、政策当局の予想に反して、アジア通貨危機や山一証券などの金融危機なども加わり、翌98年には日本経済はマイナス1.9%へ転落。失業率も高くなり、自殺者は同年から3万人台に突入したことは周知の事実です。 上記2つの増税は、経済がまだまだ上向きの時に実施されています。 2つとも不況を招いたという点では同罪ですが、デフレ不況時に実施しようとする今回の復興増税と消費税増税とは意味合いが大きく異なるという点は見逃すことはできません。 現在の日本経済は、デフレと円高、震災被害の深刻化、原発事故による放射能汚染問題や電力不足問題と、経済にマイナス要素がいくつもあります。すでに、内閣府をはじめ、IMFなどの国際機関も日本のマイナス成長を予測しています。 明らかに経済が落ち込んでいる時に、増税を強行することは自殺行為です。もし、復興増税と消費税の増税がダブルパンチで実施されたならば、日本経済は97年以上の被害が出ることは必至です。 私が懸念するのは、増税によってさらなる景気の悪化を招き、失業や倒産が増加するだけではなく、自殺者も増える可能性すらあることです。これは決して大げさでもなく、実際に97年以降に起きていることなのです。 過去20年間の歴史を見ると、わが国は人為的に不況を作り出したことが明らかです。 そして、今回が三回目となるかどうかの瀬戸際です。過去二回と異なって、デフレ不況+震災被害+原発事故+行き過ぎた円高が加わっています。普通の神経の持ち主ならば、増税を行うことはあり得ません。 「痛みを分かち合う」という美しい言葉で国民を欺き、日本財政の真実を伝えようとしないマスコミにも大きな罪があります。 増税が税収増ではないことは明らかなのですから、いい加減に増税礼賛一本の論調は慎むべきでしょう。 政府は、財源確保法案の成立を急ぐ必要性はありません。政府保有株の売却や国債整理基金の定率繰り入れから12兆円など、11.2兆円規模の財源はすぐにでも用意できます。また、復興債の日銀直接引受という手段も残されています。 増税によらない震災復興は可能なのです。(文責・中野雄太) TPP交渉参加問題と日本政治の機能不全 2011.11.08 [HRPニュースファイル084] TPP交渉参加問題と日本政治の機能不全 G20を終えて、次なる政治課題として「TPP交渉参加問題」が突き付けられており、連日、是非を問う報道が熱を帯びています。 野田首相は、今週末(11/12~13)開催されるAPEC首脳会議において、TPPへの参加表明を目指しています。 民主党は6日にプロジェクトチームの役員会を開き、9日までに意見集約する方針を決めました。7日にも主な論点を整理、8日から9日で役員会・総会を開き提言として取りまとめ、10日には参加表明の記者会見を予定しています。 11日に衆参予算委員会でTPP集中審議をして、12日からのAPECで参加表明をする方針です。 東日本大震災の発生により、3月30日に米国通商代表部ロナルド・カーク代表が「震災復興に専念するため、6月迄にTPPに参加するかどうかの基本方針決定の先送りを容認する」と述べたことで猶予を与えられはしました。 しかし、民主党は今ごろ、論点整理をし、一週間で結論を出そうとしているドタバタぶりは、政権を預かる政府与党として不適格であり、機能不全に陥っていると言わざるを得ません。 昨年のAPEC首脳会議を前に、菅元首相は「包括的経済連携に関する基本方針」(2010/11/9閣議決定)において、「『歴史の分水嶺』とも呼ぶべき大きな変化に直面しており、政府を挙げて取り組む」と、議長国として「経済連携の推進」への決意を述べました。しかし、政府や民主党はこの一年間、一体何をしていたのでしょうか? そのような中で、各社が世論調査を行いました。11月7日付の毎日新聞によれば、TPP交渉参加問題について「関心がある」との回答が70%を占め、「関心がない」28%を大きく上回っています。関心が高い一方で、参加の是非は「わからない」39%との回答が多く、政府が十分情報を提供できていない現状がうかがえます。 共同通信が5、6両日に実施した全国電話世論調査でも、TPP参加問題をめぐり「参加した方がよい」は38.7%、「参加しない方がよい」は36.1%と賛否が拮抗しています。 参加した場合の影響を政府が「説明していない」との回答は計78.2%に達し、「説明している」の計17.1%を大きく上回り、政府の姿勢に強い不満をうかがわせています。(東京11/7) 世論調査の結果を見る限り、TPP参加表明を目前に控えながら、全く国民への理解が得られていない状態が明らかになりました。賛否が拮抗していることの背景には、政府が国民に判断材料を示せていないことが挙げられます。 本年2月に開催された「開国フォーラム」においても、質疑応答に対応できず、情報不足が露呈していましたが、この期に及んで、与党・民主党議員でさえも「情報が不十分である」との声を上げており、国会審議の場でも、情報開示を求める声が相次いでいます。 ※アメリカ政府は、各州の産業へのTPPの影響をホームページで情報開示しています。http://www.ustr.gov/trade-agreements/free-trade-agreements/trans-pacific-partnership/state-benefits-tpp また、「交渉に参加していないから情報が無い」という政府側の弁明も、政府の機能不全の言い訳に過ぎません。 日本を含めると、参加10カ国のGDPを比較すると、日米で91%を占めるため、実質的には日米FTA(自由貿易協定)であるとも言われています。主導権を握るアメリカに対して、もっと率直に交渉参加を判断するための意見交換や情報収集をなすべきでした。 そのような自主外交の姿勢が無いからこそ、「アメリカの食い物になる」との疑念や不安を増幅させているのです。 更に「普天間基地移設問題の早期解決」「米国産牛肉輸入規制の緩和」「南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣」などの外交判断においても、独立国家としての主体的な国家戦略や外交における構想力が見えず、唯々諾々とアメリカの意向を強いられているという印象を国民は感じています。 国政選挙において、まるで地方選かと思うほど、国内問題ばかりが争点となり、外交・国防・経済戦略は議論されません。外圧に対して、単に受身的に反応しているだけの日本政治に、国民は不信感と危機感を強く感じているのです。 TPPは一年前、横浜で開かれたAPEC首脳会議で実現に向けた合意がなされたFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現に向けた取り組みの一環であり、中国主導ではなく、日米主導の自由経済圏にアジア、太平洋圏を統合していく過程として重要なステップです。 政府は関連する行政諸機関をフル稼働させて、情報収集を万全に行い、24分野における基本方針を明確にし、日本のグランドデザインとしてメリット・デメリットを具体的に国民に開示し、その上でデメリットを克服するための戦略を取りまとめ、国民に提示すべきです。 (文責・小川俊介) すべてを表示する « Previous 1 … 75 76 77 78 Next »