Home/ 経済 経済 日銀の金融政策「据え置き」では不十分 2012.04.11 日本銀行(以下日銀)は4月10日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を発表しました。唯一変化があったのは、成長分野に対しての貸付強化だけです。貸し付け総額は120億ドル。受付期間は2014年3月末までとすることを発表しています。⇒http://bit.ly/HuCCU4 同じく、日銀はデフレ脱却と経済成長を「極めて重要であると認識している」と表明しています。政府内でも、デフレ脱却のための閣僚会議を新設し、4月内には日銀の白川総裁もオブザーバーとして参加する方向性を定めました。 政府と日銀は、表向きはデフレ脱却と金融緩和に向けた姿勢を示したことは評価できます。ただ、結論としては、1%の物価上昇率を達成するのに「現状維持」では不十分です。 なんと金融引き締めをしていた! 加えて、指摘しなければいけないのは、表向きの態度とは裏腹に、日銀は通貨供給量を絞っていたことです。 4月3日に発表された市中に流通する現金と日銀当座預金で構成される通貨供給量は3月、対前年同期比0.2%減と減少。2008年8月以来3年半ぶりの減少に転じました(2月の、11.3%増から大幅に縮小した)。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は、「まるで金融引き締めを実施したような収縮ぶりだ」と指摘しています。⇒http://bit.ly/IkLB6L 同氏は、日銀が通貨供給量を増やさないと、再度円高デフレが進行することに懸念を表明しています。 元日銀副総裁が苦言 日本経済研究センター理事長であり、元日銀副総裁の岩田一政氏も更なる金融緩和を提言。具体的には、長期国債買い入れを増やすなどを実施し、2%の消費者物価指数の上昇が必要であることを指摘(ただし2%は決して高くなく、不十分)。 もう一つ、岩田氏が注目すべき発言をしたのは「日銀券ルール」に関するものです。日銀券ルールとは、長期国債保有額を日銀券発行額の限度内に収めるものです。 ただし、早稲田大学の若田部昌澄教授によれば、「経済学的な根拠はない」とされ、量的緩和を導入する時に、いわば日銀が「勝手に」決めたものとして批判しています。 岩田氏は、「日銀券ルールは、経済が順調に成長しているとき通貨を供給するための、いわば平時のルール。戦時のルールではない。(中略)長期国債の買い入れを始めた2010年10月をもって日銀券ルールは放棄された」とまで発言しています。⇒http://bit.ly/IdHt8Y 実質上「日銀券ルール」が放棄されているならば、岩田氏が指摘するように長期国債買い切りオペを断行するべきであって、「金融引き締め」をするべきではありません。 金融緩和のカギは「インフレ予想」と期待に働きかけること 金融政策には効果があります。 例えば、08年のリーマン・ショック時に米英の中央銀行が2倍以上バランスシートを拡大し、デフレと景気悪化を食い止めたのは金融緩和でした。米英の景気回復は緩慢ですが、少なくともデフレは止めています。 FRBのバーナンキ議長をはじめ、世界の中央銀行が大量の株や証券など購入をして通貨供給を増やしたのは、大恐慌や日本のバブル崩壊の反省に基づいているからです。言い換えれば、「不況から恐慌を食い止めるためには金融緩和が必要」という共通認識が、中央銀行関係者には共有されているのです。 三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員の片岡剛士氏の研究によれば、昭和恐慌や米国の大恐慌からの経験は次のようにまとめられます。 金融緩和→デフレ予想の払拭→資産価格上昇→資産が増えることでの消費拡大や為替レートの円安による輸出企業の業績改善等→総需要の増加→デフレ脱却→企業の借り入れ増による金融システムの復活。詳細はこちら⇒http://bit.ly/Hx4juD つまり、上記のような過程を経て初めてデフレ脱却が可能となるのです。現在の日銀の金融政策では規模が小さく、一過性の効果しかもたらしません(実際、日経平均株価は下がり始めている)。 言い換えれば、金融政策が効果を発揮するには一定の時間が必要だということ。さらに言えば、人々がマイルドなインフレになるという期待が起こるまで継続すべきです。 今後の課題としては、金融政策の目標達成責任を明確にすること。事実上のインフレ目標を導入した以上、日銀法の改正も視野に入れた金融政策の実効性を高める努力も必要となることでしょう。(文責:中野雄太) イラン情勢、脱原発、「環境税」創設の三重苦――燃料価格高騰に全国で悲鳴 2012.04.06 消費税論議の陰で、2012年度税制改正法案が3月30日の参院本会議で可決されました。これにより、二酸化炭素(CO2)排出抑制を目的とする地球温暖化対策税(環境税)創設が成立しました。 原油や液化天然ガス(LNG)にかかる石油石炭税に上乗せ課税し、税収は再生可能エネルギー普及や省エネルギー対策などに充てるというものです。 現行の石油石炭税は1キロリットルあたり2040円が課されていますが、今年10月以降は250円増の2290円に、2014年4月以降は2540円に、2016年4月以降は2800円となり、最終的に760円上乗せになります。 これらは業者に課せれますが、ガソリン価格に転嫁され、消費者の負担増として家計にも直接的に打撃を与えることになります。 既に増税を待つことなく、イラン情勢の緊迫化により、ガソリン全国平均価格は158.3円/リットル[4/2])に高騰し、2月中旬(142.9円/リットル[2/13])より7週間連続値上がりしています。 この値上がり傾向は当面続くと見られており、イラン情勢いかんでは170円、180円程度まで値上がりするとの観測もあります。 さて、158.3円/リットルを例にして、ガソリン価格の内訳を見ると、本体価格94.92円、石油石炭税2.04円(2016年4月以降は2.8円)、ガソリン税53.8円、この合計150.76円に消費税率をかけた7.54円を足すと158.3円となります。(ガソリン税に消費税をかける事に対しては、二重課税との猛反発があります。) ガソリン税53.8円の内訳を見ると、28.7円が本税(揮発油税24.3円、地方道路税4.4円)で、25.1円が暫定税率による上乗せ税(揮発油税24.3円、地方道路税0.8円)となっています。 2009年の民主党マニフェストでは暫定税率を即時廃止すると公約し、政権を取りましたが、その後、一転して民主党政権は財源不足を理由に、暫定税率の廃止を取りやめ、維持することになりました。 政府は2010年1月、揮発油税の特別措置(トリガー条項)として、ガソリン価格が高騰し、3か月連続して1リットル当たり160円を超えた場合、暫定税率相当分(25.1円/リットル)の課税を停止することを決めました。 しかし、昨年4月、復興財源確保を理由に、政府はこのトリガー条項を一時凍結し、現在に至っています。トリガー条項を発動した場合の減収額は4500億円以上に及ぶと見積もられています。(2011/4/18 産経⇒http://goo.gl/HZveM) 現在、ガソリン価格の高騰で国民が悲鳴をあげているにも関わらず、政府は財源確保ができないとして、トリガー条項凍結の解除の動きは見られません。 福島県は観光産業の復興にも力を入れていますが、福島県の観光課によると、旅行者の交通手段は74%が車です。ガソリン価格の高騰は、観光をはじめ、復興に大打撃となります。 また、大豆や菜種の原価高騰により、大手食用油メーカー各社は、今月から食用油の出荷価格の値上げに踏み切りました。小売価格の値上げも時間の問題です。 さらに、燃料価格が高騰する中、政府は「脱原発」という愚策を続けており、東京電力以外でも電気料金の値上げの可能性があります。 デフレ経済下で、ガソリンや食料、光熱費の価格が上がれば、消費者は消費を切り詰める以外に対処する方法はありません。 また、生産者はデフレ基調の中で売り上げ低下を恐れ、原材料の値上げ分を売価に転嫁することは容易ではありません。特に中小企業ほど、価格転嫁は難しく、コスト上昇分は賃金カット等でしのぐしかなく、失業の増大をもたらします。 こうした原油や輸入食料の価格の上昇に伴う物価の上昇は「コストプッシュ・インフレ」と呼ばれ、投資や消費を抑制し、最終的にはデフレ要因となります。 こうしたデフレ圧力だらけの経済環境下で、野田首相が推し進めていることは最大のデフレ圧力となる「消費税増税」であります。 このままでは、野田首相は後世、日本の経済を殺した「史上最悪の首相」として名を残すことになるでしょう。(文責・加納有輝彦) 「内憂外患」の日本――そして希望 2012.03.31 国や組織が衰退していく時に見舞われる兆候として「内憂外患」という言葉が使われますが、日本はまさに、その真っ只中にあります。 政府は30日、消費税率を2014年に8%、2015年に10%に引き上げる消費税増税関連法案を閣議決定し、国会に提出しました。それを巡って永田町は混乱を極めています。 もし、消費税増税法案が成立すれば、ただでさえデフレ不況と東日本大震災で大打撃をうけている日本経済は沈没し、二度と立ち上がれなくなります。 野田首相を影で操る勝栄二郎財務事務次官ら官僚勢力は、政治の劣化と国家危機を利用して、自らの権益と利権、既得権益の拡大に奔走しています。――まさに「内憂」です。 そんな日本の政治と行政の劣化を見透かしたように、北朝鮮は、日本の領土である尖閣諸島や沖縄上空をめがけて長距離弾道ミサイルの発射を予告。 そうした危機から国民の生命を守るべき防衛大臣は、かろうじてイージス艦3隻とパトリオットPAC-3を沖縄県内に配備して迎撃態勢を準備するものの、アメリカの国防戦略(エアシーバトル構想)も知らず、PAC-3をP3C(哨戒機)と言い間違えるという「素人」ぶりです。 それと前後して、中国が尖閣諸島の領有と主権の確保=実効支配に向けた、矢継ぎ早の行動を起こしています。 日本政府が、尖閣諸島4島を含む計39島に名前を付けて公表すると、中国政府(国家海洋局と民政省)はこれに激しく対抗して、尖閣諸島の71島すべてが中国領土だと主張し、中国名を付けて発表(3月3日)。 さらに人民解放軍の現役少将が中国のテレビ番組に出演し、「釣魚島附近で軍事演習を行う必要がある」と、武力を背景に日本を恫喝(3月6日)。 そして沖縄・尖閣諸島沖の日本の領海に中国国家海洋局所属の巡視船「海監50」と「海監66」の公船2隻が侵入し、「魚釣島を含むその他の島は中国の領土だ」と公言するという暴挙に出ています(3月16日)。 中国はいよいよ、尖閣諸島の実効支配に向けて本格的に動き始めました――まさに「外患」です。 日本の政治が内部から腐敗し、それが外敵を呼び込み、国家を存亡の危機に直面させているのです。それが「内憂外患」の正体です。 その危機から日本を救う方法は、まず日本の政治に新しい理想と理念を吹き込み、それを実行する新しい政策を打ち立て、私たちの力で実行していくことです。 実は今、日本が闇に沈もうとする中にあって、そうした「希望」の光もまた、輝きを増しています。 その一つが昨日3月31日、東京で開催された「増税が国を滅ぼす!国民集会」です。(開催報告⇒http://goo.gl/0aMtP) あいにくの悪天候にもかかわらず、会場には約3000名が大結集し、過去最大級の集会・デモとなりました!首都圏のみならず、全国各地からも貸し切りバス等でご参加頂き、誠にありがとうございました。 国民集会には「増税に反対し、小さな政府を実現する」という政策に賛同する数多くの市民団体や支援者の方々が全国から駆け付け、財務省のある霞ヶ関一帯や新橋、銀座に、雨天を吹き飛ばす「増税反対」の声が響き渡りました!! また来たる5月3日(木)には、同じく東京日比谷で、幸福実現党主催の「国防強化を求める国民集会&デモ」も開催される予定です。 現在の政治は与党も野党も含め、幕末の幕府のように利権と腐敗、官僚支配の極致にあり、今こそ、大胆な維新が必要です。 今、暗闇に沈もうとする日本にあって、新しい経済政策と新しい国防政策に基づく、新しい政治を実現する国民運動が広がろうとしています。 それが、幸福実現党の存在であり、それを支援する方々の活動の広がりです。 闇が深まれば深まるほど、光もまた強さを増していきます。ここに未来への確かな希望があります。その主役は、私たち一人一人にほかなりません。 「内憂外患」が深まる中、一人でも多くの国民の皆さまが、この「救国の活動」に参加頂くこととを心より願っております。(文責・矢内筆勝) 日本を没落させる「奇妙な経済学」 2012.03.28 日本には、実際に経済政策に影響を与えている「奇妙な経済学」が存在します。今回は、いくつかの例を出して説明します。 「増税しても経済成長できる」 増税の論調が幅を利かせているのは、財務省が独特の経済学を信奉しているからです。例えば、「増税で経済成長する」という視点は、均衡財政乗数定理といいます。例えば、1兆円の増税をして1兆円分の財政支出をすれば1兆円GDPが増えるというものです。理論的には、乗数は常に1なので、税の徴収分と同額使う、つまり財政は均衡しているのでこう呼ばれます。大阪大学の小野善康教授が、菅政権の際に均衡財政乗数定理をさらに精微化したモデルを「ご進講」したことで、有名になりましたが、この定理は、大学生が経済原論かマクロ経済学で習う乗数定理の特殊ケースであり、教科書によっては取り扱っていないものも見られます。 近年の計量経済学の分析結果が示すように、日本経済の財政乗数は低下しています。理論通りに財政出動してもGDPはあまり増えていないことを示しているのですが、ましてや均衡財政乗数定理が成り立つ保証はどこにもありません。 さらに言えば、10兆円分を増税によって社会保障に支出するとしても、財源不足の穴埋め分だけに使われるとしたら全く意味がありません。現在政府が進めている税と社会保障の一体改革は、増税分が右から左に流れるだけであり、成長にも寄与しない可能性が大です。よって、均衡財政乗数定理を理由に増税を正当化し、成長を見込むのには無理があるのです。 インフレで財政再建はできない 財務省と日銀はそろってインフレ路線を否定します。特に財務省は、成長したら国債金利が上昇するので財政再建ができないと主張します。最近話題となっている消費税増税法案に絡む「景気弾力条項」でも見られる議論です。 例えば、3%の名目成長率、実質成長率2%を数値として盛り込むということは、インフレを1%に設定していることを意味します。簡単に言えば、この数字を下回る時は、景気に配慮して増税をしないというのが景気弾力条項です。ところが、民主党の藤井裕久民主党税制調査会長をはじめとして、インフレを認めることを極端に嫌う人たちは、なぜか長期国債の価格低下=金利上昇を過度に煽り、数値を盛り込むことに大反対をしています。全く取り越し苦労といえばそれまでですが、日本経済の長期金利は安定的に推移しているので、1%程度のインフレで金利上昇が起こる可能性は低いとみるべきです。なお、国家経営に責任を持つ政府関係者や日銀総裁などが、安易に財政破綻などを口にするのはおかしなことです。 「インフレは悪魔」 経済系の主要閣僚をいくつも経験している与謝野馨氏は、「インフレは悪魔」だと断言し、成長による財政再建の方法を否定します。しかしながら、ノーベル経済学者たちは、3%から4%程度のマイルドなインフレならば問題ないとします。この認識のギャップは経済政策を考える上で極めて重要です。 アメリカではこの10年の間にITバブルと住宅バブルがありました。バブルとは、主に株価が理論値を大幅に超えたことを指します。主な特徴としては、ITや住宅のように、一部の財や産業に投資が集中して、関連株価がつりあがること。そして、必ずバブルが破裂して、経済全体に多大な損失をもたらしています。その意味では、バブルには負の側面はあります。ただし、経済理論が示すところでは、バブルは必ずしも経済にとって悪くはないのです(詳細な議論は、竹森俊平著『資本主義は嫌いですか』参照)。 例えば株式投資にしても企業の直接投資にしても、投下した金額以上のリターンを想定しなければ、投資は成立しません。また、収益率が借入の利子率よりも高ければ、返済も容易になります。 経済学では、利子率を上回る成長率をバブルと呼ぶことがありますが、一般に想定されているバブルとは大きな隔たりがありますので、経済学者が「バブル」と言う言葉を使うときは注意が必要なのです(櫻川昌哉著『経済を動かす単純な論理』の論点も参照)。よって、インフレやバブルにはデメリットがあるとはいえ、成長や富の形成をもたらすメリットもあります。必要以上にバブルを恐れるのは間違っています。 日本の「常識」は世界の非常識 ここで挙げた例は、日本では「常識」となっていますが、世界では非常識として扱われます。その証拠に、スティグリッツやクルーグマンのようなノーベル経済学者が日本に増税を提言しているという話は寡聞にして聞きません。むしろ、減税や一層の金融緩和やインフレ路線、積極的な財政出動を行うべきという意見です。 日本経済の復活は、政策を正しく選択することから始まります。20年間平均ゼロ成長を続けてきている以上、政策の方針転換が必要であるのは明らかです。(文責:中野雄太) 「経済成長恐怖症」の民主党・日銀・財務官僚は総退陣せよ! 2012.03.23 日銀が事実上の1%のインフレ目標を発表(2/14)して以降、株価が上昇基調に入り、現在、日経平均株価は1万円を超えています。また現在、対米ドル為替レートは82円台半ばで、2月中旬の76円台から円安傾向に入っています。 政府、日銀は昨年、10月31日に8兆円超の過去最大の円売りドル買い介入を行いましたが、その効果は限定的で長続きしませんでしたが、今回の日銀のインフレ目標は効果も大きく、持続的です。 過去、日銀の白川総裁は「デフレ脱却のために金融政策で出来ることは限られている」と消極的な発言を繰り返し、結果的にデフレを放置し続けてきました。 23日参院予算委員会では、自民党の礒崎氏が「この白川総裁の発言が嘘だったのではないか。謝罪してほしい」と白川総裁に詰問しました。 しかし、白川総裁は謝罪することなく、今回の株高や円安の原因は、欧州債務危機の改善、米国の経済環境の改善により内外の投資家がリスクを取り始め、世界全体でリスクが動いていると、あたかも今回のインフレ目標の導入が原因ではないと言わんばかりでした。 さらに白川総裁は同委員会で、国債などの債券の金利が今の水準から1%幅上がると、国内の銀行がもつ債券が6兆円超も値下がりし、損失を被るおそれがあるという試算を明らかにしました。(http://goo.gl/BXH1S) インフレになり、市場が物価上昇を予想すると名目金利が上がる。すると国債が下落し、預金の大半を国債で運用している銀行が大きな損失を被るという論法です。 市場が株価上昇、円安傾向を歓迎しているのとは裏腹に、白川総裁からは、さらに成長を下支えするという積極的な言葉が出ないばかりか、インフレを懸念する発言が目立っています。 産経新聞編集委員の田村秀男氏は、これら一連の発言を受け、政治が「経済成長恐怖症」の財務・日銀官僚を突き放さない限り、日本再生は不可能だと論評しています。(http://goo.gl/F9Efu) 田村氏は「脱デフレで名目成長率と名目金利が上がれば、国内の余剰資金は、株式市場に回り、経済が活気づく。金融機関、企業、年金、家計などの保有株式資産価値はグンと上がる」「経済成長して財政破綻する国なんてありえない」と「経済成長恐怖症」の財務・日銀官僚を切って捨てています。 民主党政権の幹部もまた、「経済成長恐怖症」あるいは「経済成長懐疑症」ともいえる病に侵されています。 23日参院予算委員会において、岡田副総理は、名目経済成長により税収が増大する可能性は認めつつ、しかしそれらの税収増をあてにして政策判断してはならないと繰り返し、増税の必要性を訴えました。 また、民主党内事前審査で議論されている景気の動向次第で増税を停止する「景気弾力条項」(付則18条)に経済成長率(名目3%・実質2%)などの数値目標を明記することについて、党税制調査会長の藤井裕久氏(元大蔵官僚)は「数値目標を設定すれば、長期金利が上昇する」と猛反対しています。(3/20 朝日⇒http://goo.gl/PaFFX) こうした論理は日銀総裁と全く同じ病状であり、「経済成長恐怖症」の政治家こそが日本を衰退に追いやっているのです。 経済成長こそ財政再建の鍵です。今回のインフレ目標の効果は、これまで幸福実現党が主張して来た政策の正しさの証明でもあります。幸福実現党は知恵ある政策で日本の飛躍的な経済成長を実現して参ります。(文責・加納有輝彦) 日銀の金融緩和から一ヶ月を総括 2012.03.14 日本銀行(以下日銀)が2月14日に発表した「中長期的な物価安定のめど」からちょうど一ヶ月が経過しました。 白川方明日銀総裁が頑なに拒み続けてきた実質上のインフレ目標導入に対して、円安と株価上昇という現象が起きています。 為替レートは82円台まで回復し、日経平均株価は1万円近くまで回復しました(2012年3月13日現在)。 為替レート以上に注目するべきは株価上昇です。短期的に見ても、一定の効果があったとみるべきです。 さて、国際金融の世界では2010年頃から「通貨戦争」という言葉が使われています。 ことの発端は、ブラジルのド・マンテアガ財務相が2010年の9月27日、サンパウロ州工業連盟のセミナーの中で各国が自国通貨を安く誘導する「通貨戦争」状態にあるとの認識を示したことから始まっています。 ブラジルは、レアル高に苦しんでいる中において、主要国が金融緩和を通じて自国通貨安を狙っていることを批判したわけです。 これまでのマクロ経済学のテキストでは、自国通貨を意図的に切り下げることは「近隣窮乏化政策」と呼ばれ、好ましくない政策だと教えられてきました。 根底には、「輸出=得、輸入=損」という考え方があり、特に1930年代には輸出促進のための通貨切り下げと輸入品に対する高率関税を課す貿易戦争が誘発されました。 その結果、国際貿易は縮小して世界不況を招く原因となったというのがこれまでの定説でした。 しかしながら、最近の研究によれば事情がだいぶ変ってきています。早稲田大学の若田部昌澄教授は、大不況に関しての研究で「国際学派」と呼ばれるグループの見解を紹介し、世界各国の通貨安戦争は「近隣富裕化政策」になると紹介しています(エコノミスト 臨時増刊11月15日号参照)。 同教授は、当分野の先駆者であるB・アイケングリーン カルフォリニア大学バークリー校教授が主張する、「経済危機を脱出するための通貨切り下げ」を推奨していることを紹介していますが、これには一定の背景説明が必要でしょう。 特に、2008年のリーマンショック以降、各国は一斉に大胆な金融緩和を行いました。例えば、他国が何もしない状態で自国が金融緩和を行えば、それだけ自国通貨安の要因となります(例:円安)。 ただし、各国が同じペースで行う場合は、ドルやユーロの一方的な通貨安は起こりません。加えて、金融政策は国内の雇用創出やGDPの押し上げにもなるので、どこの国も傷がつくことはありません。 金融緩和の協調は、自国と他国両方にプラスの効果をもたらすという意味で、「近隣富裕化」と呼ぶのです。 しかしながら、他国が行っている金融政策に歩調を合わせない場合、その国の通貨は相対的に高くなります。加えて、不況のショックを緩和することができずにデフレも誘発します。 言うまでもなく、現状の日本経済を指しています。現在の円高は、日本の円が強いのではなく、むしろ通貨供給量が足りないために相対的に価値が高くなっていることが原因です。 要するに、日本は「為替戦争」に乗り遅れていたために、デフレ不況が慢性化しているのです。 実際に日銀は金融緩和を行ってはいますが、08年以降にバランスシートを一気に二倍にしたアメリカやイギリスと違って、二割程度しか増やしませんでした。 日銀は、金融緩和をやっているのですが、規模が不十分だということが問題なのです。 これまで一般的に信じられていた「為替戦争」は、金融緩和を伴わない為替介入や為替操作でした。 この場合、教科書が教えている通りの「近隣窮乏化政策」となるのは言うまでもありませんし、為替介入には一時的な効果しかありません。⇒為替介入をどうみるか 一方、金融緩和を通じた為替切り下げ競争は、デフレ不況から日本経済を救う回復手段としても有効だとも言えるのです。 なぜなら、金融緩和自体は一円も借金することなく、日銀の自由裁量によって行えるからです。 加えて、世界では不況打開のために金融緩和を容認しているのですから、日本が大胆な金融緩和をすることで困ることは一つもありません。 幸福実現党は、昨年から日銀の国債直接引受をはじめとする金融緩和とインフレ目標の提言をしてきました。 本年になってからは、『日銀総裁のスピリチュアル診断』発刊後に日銀の金融緩和と「事実上のインフレ目標導入」がありました。 これまでの一ヶ月を見てわかる通り、日銀が動くことによって為替レートと株式市場に好影響が出ています。 日銀は、成長分野への特別融資も発表しました。この一ヶ月でだいぶ積極的な行動に出ているのは評価できますが、まだまだ世界の「為替戦争」=「金融緩和の協調」から見たら不十分です。 幸福実現党は、引き続き日銀の金融緩和に対して提言をし続けていきます。(文責・中野雄太) 3.11の大きな教訓~明確な国家ビジョンの下でのインフラ強化を 2012.03.08 3.11の東日本大震災から1年を迎えるに当たり、改めてインフラの重要性を考えてみたいと思います。 3月6日付の朝日新聞は「首都高速道路で2002年度以降見つかった損傷は累計で約26万、うち09年度末時点で9万7千件が補修できずにいた」と報道。中でも損傷が激しいのは築40年以上の部分で、約7万件存在。橋脚の亀裂などで通行止めにつながりかねない重大な損傷も存在していたとのことです。 首都高の内、「都心環状線」や「羽田線」など全体の3割の90キロは築40年以上経っています。また、日本の物流を支える大動脈である名神高速・東名高速も、それぞれ開通して40年以上経過しています。道路も橋も50年で寿命を迎えると言われており、まさに補修しなければならない時期に来ています。 日本は地震大国です。『ザ・リバティ』2012年4月号で、遠田晋次・京都大学防災研究所地震予知研究センター准教授は「東京の下ではいくつものプレートが重なり合っていて、M7.5クラスの首都直下型地震がいつ起きてもおかしくない状況」と指摘しています。 中央防災会議は、東京湾北部地震が発生した場合の経済被害の損失額を、直接被害額66.6兆円(建物・インフラ被害)、間接費用45.2兆円の112兆円としています。東南海・南海地震は57兆円、東海地震は37兆円の損失とし、この3地域だけで計200兆円の損失が予想されています。⇒http://goo.gl/oqis8 高速道路が地震で崩れた場合、建物被害に加えて多くの人命が犠牲になります。また、道路を寸断して緊急車両が通れなくなった場合、二次被害につながります。大惨事につながる前に手を打たなければなりません。 2月23日の朝日新聞は、昨年末の時点で、東日本大震災の復旧費として第一・二次補正予算でつけられた道路や堤防、下水道に関しては、予算の3.8%しか執行されていないと報道(本格復興策を盛り込んだ第三次補正は昨年11月に成立したばかりなので除く)しています。 民主党の「コンクリートから人へ」のスローガンが間違いであったことは、今回の震災を通じて、私たち国民は痛いほどよくわかりました。しかし、民主党からはこの間違いを認め、謝罪をする姿勢は一切見せません。 それどころか、“4年間消費税増税は行わない”と言っていた約束を破り、被災地の方々にものしかかる“社会保障のための増税”を成し遂げようと血眼になっています。 復興を言い訳にして、財源がないから増税すると民主党は言っていますが、ここに嘘があります。 国債整理基金の余剰金の活用、日銀の国債引き受けによる建設国債の発行など、財源確保の方法は存在します。むしろ今足りないのは「国家のあるべき姿」の提示です。 被災地の状況からも復興のビジョンがないために、智慧・人手・資材を集めることができず、復興を進められないのは明らかです。まずは将来への備えとして、適切な首都圏・東南海・東海地震への耐震対策を行うことが必要です。 『公共事業が日本を救う』の藤井聡氏は「被害予想総額の10分の1である20兆円あれば、被害を半減(100兆円)できる」と指摘しています。確かに20兆円は大きな金額です。しかし、将来を考えるならば今、絶対に投資しなければならない金額です。 また、日本にはデフレギャップが20兆円以上存在しています。20兆円分の需要を創り出すことは、不況に苦しんでいる日本経済にとっても、今まさにやらねばならないことなのです。 それを行わず、日本を大地震が襲い200兆円近い損失が出て、国が機能しなくなってしまってからでは、どうすることもできなくなってしまいます。 公共事業でつくられたインフラが将来に残すものは、“不安”でもなければ、“子供たちに対するツケ”でもありません。“日本国民の財産・資産”であり、“世界の国々を支え、繁栄に向けて力強く引っ張っていくための発展の土台”なのです。 日本全国の未来ビジョンを示し、民間に仕事を回すことで、被災地は復興し、日本は必ず景気回復するのです。 3.11を大きな教訓として、明確な国家ビジョンの下にインフラを強化し、本当の意味での「国民の生活が第一」を一日も早く、成し遂げていかなければなりません!(文責・湊侑子(みなと・ゆうこ) 貿易赤字に一喜一憂する愚かさ 2012.02.29 貿易赤字が48年ぶりに赤字を記録 2月8日、財務省は平成23年度の国際収支統計を発表しました。 経常収支(貿易収支+所得収支+経常移転収支の合計)は9兆6289億円の黒字を計上していますが、黒字は対前年度比43%減、経常収支の中で最も有名な貿易収支を見ると、1兆6089億円の赤字となり、48年ぶりの貿易赤字への転落です。 信州大学の真壁昭夫教授の分析によれば、今回の貿易赤字転落の原因は二点に集約されます。⇒http://bit.ly/xxEAg8 第一は、昨年の東日本大震災によって主に東北地方の生産拠点とサプライチェーンが破壊された影響で、輸出は対前年度比で1.9%の62兆円余りに減少したことです。 さらに、原発停止などにより、液化天然ガス(LNG)などの輸入が増加し、対前年度比15%プラスの約64兆円強となり、輸入総額を押し上げました。 第二は、主力輸出品の国際競争力の低下です。しかしながら、真壁教授は、国際競争力の定義を明記していません。国際競争力を企業に適用される場合は、製品の品質や世界的なシェア、製品コストが安いことなどが挙げられます。 実際、製品コストとシェアが中国などに奪われたと考えれば説明はつきますが、国際競争力には、製品のイノベーションや商標、特許などの知的財産権まで含めて議論するものです。 よって、一概に日本企業の国際競争力の低下が貿易赤字の原因だとは言えません。 経常収支黒字をもたらす所得収支黒字 日本の経常収支黒字は、所得収支が大幅な黒字(14兆円)でもたらされています。所得収支とは、海外からの利子や配当の受け取りから、日本企業が海外への利子や配当を支払った差額です。 黒字ということは受け取りの方が大きいことを意味していますが、近年の円高で海外でのM&Aや現地生産、直接投資や証券投資を通じて、「日本企業が海外で稼いでいる」ことが主な原因です。 よって、経常収支は、貿易赤字となっても巨額の所得収支黒字があるため、当面は赤字に転落することはありません。 ただし、今後は経常収支が赤字となる可能性は高いでしょう。なぜなら、経常収支は、国内貯蓄と投資の差で決まるからです。 少子高齢化に直面する日本では、高齢者による貯蓄の取り崩しが始まり、次第に経常収支黒字幅を縮小させます。 国内での貯蓄が吸収できなくなれば、当然海外からの資金でファイナンスする必要があります(専門的には、経常収支の赤字化=資本収支の黒字化と呼ぶ)。 経常収支赤字化は問題なのか ところが、経常収支が赤字化することで国内外の投資家が日本国債を売却=金利が上がると煽る記事が一定数あるのも事実です。 金利が上昇すると、国債の利払い費が増えるために財政が破綻する。そのために、消費税増税が必要であると。関連記事⇒http://bit.ly/xr9YSN しかしながら、データを見る限り、たとえ日本が経常収支赤字に陥ったとしても、必ずしも国家の衰退や財政破綻を意味しません。 なぜなら、アメリカ、イギリス、カナダは経常収支赤字国です。特にカナダは、100年間、ほとんどが経常収支赤字でも十分発展しています。 嘉悦大学の高橋洋一教授によれば、赤字国であっても高金利と低成長とはなっていない事実を指摘しています。 つまり、政府によるマクロ経済運営が安定していれば、経常収支が赤字でも問題は小さいというのが結論です。詳細はこちら⇒http://bit.ly/xwdpte 財団法人国際貿易投資研究所の研究によれば、日本の所得収支額は世界五位です。 対外資産負債残高だけ見れば、日本は世界第一の債権国ですが、対直接投資に占める投資収益率をみると米英の約半分の4.6%にしか過ぎません。 経常収支が黒字を計上している間に、対外資産を効率的な直接投資に振り向けることができれば、所得収支をさらに大きくできます。 貿易赤字で一喜一憂するのは愚か 要するに、問題の本質は経常収支(より正確には、資本収支を加えた国際収支)全体で考えるべきであり、貿易赤字で一喜一憂するのは愚かです。ましてや、将来の経常収支赤字を盾に取った増税論議など論外です。 むしろ、今必要なのは「投資大国・日本」を目指して、国民の富を大きくすることです。(文責・中野雄太) 日銀のデフレ脱却政策は本物か 2012.02.15 日本銀行こと、日銀が14日の金融政策決定会合で追加金融政策を発表しました。実質上のインフレ目標1%と資産買い入れなどの基金を10兆円積み増しました。 具体的な骨子として、当面は消費者物価指数の上昇率1%を目指すこと。1年ごとに物価が安定しているかどうかを点検すること。ゼロ金利を当面維持し、デフレ脱却に向けて政府、民間企業、民間金融機関が協力していく旨が述べられています(日本銀行「金融緩和について」)。 デフレ脱却と追加金融緩和という姿勢を強く打ち出したことは、これまでの消極的な日銀からすれば大いなる進歩と言えるでしょう。 また、インフレ目標の導入をかたくなに拒否していた白川方明日銀総裁の「豹変」も大いに注目されることです。 この裏では、先月インフレ目標を決定した米連邦準備理事会(FRB)の動向があるのは間違いありません。同時に、10月から12月のGDPが2期ぶりのマイナス成長となったことへの緩和措置もあります。 もう一点、特筆するべき点があります。1月末に発売となった『日銀総裁とのスピリチュアル対話』の発刊、幸福実現党の党員や学生によるビラまきが徹底して行われていた事実を無視することはできません。 もちろん、かねてから日銀の金融政策を批判してきた嘉悦大学の高橋洋一教授や学習院大学の岩田規久男教授のような学者の存在、デフレ脱却を政府に進めてきた評論家の活動もあります。 こうした地道な活動が日銀を動かしてきたことは事実であり、ある意味一定の成果につながっているのは間違いないのです。 日銀の政策が発表されたことで外国為替市場も反応しています。14日午後の円相場は円売りドル買いが進み、一時は1ドル78円を超えました。それまでは、77円付近だった水準から円安が進んだことになります。 東京市場で78円を記録したのは昨年末の12月27日以来です。加えて、海外の外国為替市場でも1ドル78円台を記録、ユーロに対しても103円台まで円安が進んでいます。 今後、日銀が徹底した金融政策を断行するならば、さらに為替相場に影響を与え、次は株式市場へも影響を及ぼすと考えられます。 ただし、今回の日銀の金融政策を手放しで喜ぶことは慎むべきです。まず、デフレ基調は1998年から始まっており、まだ改善されていません。さらに、昨年は東日本大震災や原発事故、円高の高進、失業率の上昇などが明確になっています。 雇用が24万人創造され、失業率が下がったアメリカ経済でも、まだまだ回復の途次にあります。欧州は、ギリシャ債務危機によって揺れており、内外の経済情勢が厳しさをます昨今、今回の日銀の決定は遅すぎたと言っても過言ではありません。 もう一点、資産の買い取り基金として10兆円を積み増したわけですが、これでは物足りないということです。現在、デフレギャップは20兆円以上あるとの試算があるわけですから、日本経済を震災復興から回復させるためには、10兆円では少なすぎます。 また、実際に10年物などの長期国債を購入するかどうかも甚だ疑問です。これまでの日銀の行動を見る限り、基金は積み上げたが実際に購入するかどうかは極めて未知数なのです(同様の内容をクレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストも指摘している)。 さらに、FRBのようにいつまで金融緩和を続けるのかという時期が設定されていないこと。そして、政策としての拘束力がないことを指摘することができます。日銀には、イングランド銀行のように、目標を達成できなかった場合の責任問題がありません。 これは、1998年に日銀法が改正されて、日銀が政治圧力から独立しているとう法律の問題とも関連があります。 本格的に日銀のデフレ脱却を推し進めるならば、日銀法の改正を見据えた目標設定権限を強化するべきでしょう。⇒白川総裁のデフレ独裁――政府は日銀法を改正し、金融政策の目標設定権限を確保すべき とまれ、腰の重い日銀が動き出したことはよいことです。課題は政策のタイミングが遅いこと、資金提供の規模が小さいこと、政策の拘束がないために責任問題が曖昧なことです。 要するに、「日銀がデフレ脱却に本気かどうか」を判断するのは時期尚早だということです。 引き続き、日銀をウォッチしていく必要があるのは言うまでもありません。(文責・中野雄太) 白川総裁のデフレ独裁――政府は日銀法を改正し、金融政策の目標設定権限を確保すべき 2012.02.10 米連邦準備制度理事会(FRB)が2%の「インフレ目標」を導入してから、日本の国会においても、デフレを放置している日銀の責任を問う声が高まっています。 ※FRBはの表現は“a longer-run goal for inflation”(インフレに対する長期的なゴール)という表現であり、「インフレ目標」と言っても差し支えないと考えます。 日銀の白川総裁は、国会予算委員会の答弁で、今回のFRBの「インフレ目標」の導入について「日銀に近づいてきた」と強弁しましたが果たしてそうでしょうか? 日銀は「インフレ率を2%以下のプラス領域、中心は1%程度を中長期的な物価安定の理解とする」としています。 よく意味が分からない「理解」が、FRBの「インフレ目標」と同じというのでしょうか? 嘉悦大学教授の高橋洋一氏は「1998年の新日銀法施行以降、日本で前年同月比のインフレ率が0~2%に収まっていたのはわずか1割6分。一方、FRBが1~3%に収めたのは実に7割以上」であるとして、落第生日銀の「理解」と優等生FRBの「目標」は全く違うことを指摘しています。⇒http://goo.gl/8tpkF 「インフレ目標」を導入している各国は数値目標だけでなく、達成期間、説明責任などを明確に定めています。 例えばニュージーランドは、インフレ目標を達成できなかった時には、政府は中央銀行総裁を罷免することができます。イギリスは、目標2%の上下1%を超えると、中央銀行総裁の財務大臣に対する説明責任が生じます。 日本は2011年度まで3年連続で消費者物価の上昇率はマイナスです。しかし、日銀総裁は何ら責任をとる必要はありません。 内閣府の試算によると、2011~2020年の物価上昇率の平均が、成長シナリオで1.7%、慎重シナリオで1.1%です。⇒http://goo.gl/RSW4z 古川経済財政担当相は10日午前の衆院予算委員会で、政府の財政政策と日銀の金融政策の両面から「2%程度の緩やかなインフレの達成に向けて、全力で(成長シナリオを)行っていきたい」と発言しています。 しかし、日銀は中心を「1%」としているため、政府の「2%」とはあまりに離れています。 白川総裁が「これをどう説明するのか」と同委員会で問われても、「ピンポイントで定めるのは難しい」と曖昧な答弁に終始し、「2%を達成する」という強い意志は全く示されませんでした。 1998月4月1日に施行された新日銀法では「金融政策の目標の設定」と「それを達成する手段」の両方に関して、日銀に政府からの独立を認めてしまいました。 「インフレ目標」を採用している諸外国では「金融政策の目標は政府が最終的に決定する権限を持ち、それを達成する手段は、中央銀行が政府から独立に決める」という「手段の独立性」を認めているに過ぎません。 現在の日銀法の下では、たとえ政府が「成長シナリオ」を進めたくとも、金融政策に関しては日銀が主導権を持っているため、政府に決定権はありません。 白川総裁は「デフレは潜在的成長力、生産性が低下しているのが原因であって、日銀がいくら流動性を供給(貨幣供給)しても脱却できない」と、開き直りとも思える発言を繰り返しています。(経済成長戦略や規制緩和等によって「潜在成長率」を高める努力を怠って来た民主党政権も問題ではありますが。) 学習院大学教授の岩田規久男氏は、白川日銀の「物価の安定」とは「デフレの安定」である。言いかえれば、日銀の金融政策の目標は「安定的なデフレ」という「デフレ・ターゲッティング」に他ならないと指摘しています。(『WiLL』3月号「デフレ・超円高の元凶は日銀だ」) 白川総裁は、文藝春秋3月号にて、インタビューを受けていますが、その中でも、現在は、積み上がった債務を正常なレベルに戻していくことが優先され、その間は、支出が切り詰められるため、成長率は低下すると、デフレを容認しています。 もはや白川日銀総裁は「疫病神」と言われてもいたしかたありません。すみやかに国会は日銀法を改正し、政府が金融政策の目標を決定する権限を持つべきです。(文責・加納有輝彦) すべてを表示する « Previous 1 … 74 75 76 77 78 Next »